23話 ソフィーちゃんのお菓子
「シルフィアさん!下界に行きましょう!」
「…あらあら。分かったわぁ」
と、いう事で、シルフィアさんに用件だけ伝えてレミコ様の元に戻ります。シルフィアさんとも昨日お別れしたばかりですが、シルフィアさんは少し驚いただけで、あまり気にしていない様子です。流石はシルフィアさんです。落ち着いていますね。…決して、私なら何をしてもおかしく無いと思われている訳ではありませんからね。決して!!
「戻りました!」
「…随分と早いのですね」
私がシルフィアさんを迎えに行っていた時間は、1分もかかっていないでしょうし、レミコ様にとっては1秒くらいの感覚かもしれませんね。
「初めまして、レミコ様。シルフィアと申します」
「…あなたがシルフィアですか。本来、私に会えるのは成人した天使のみですが、メイは知らないので仕方がありませんね」
…おっと。そんなルールが有ったのですね。道理でレミコ様がシルフィアさんを知らない訳ですよ。…というか、そんなルールが有るなら事前に伝えるべきですよね。まぁ、レミコ様があまり気にしていないので、そもそも必要のないルールな気がしますけど。
「では、行きましょうか!教会に繋げますね!」
ジジッ…ジジジジ…
怒られる事は無さそうですが、私に何か言われる可能性もあるので、私は急いで闇魔法を使います。
「…あらあら。これに入らないといけないのかしら」
「…え? はい。これで行けますよ?」
…どうしたのでしょうか。シルフィアさんは私の闇魔法を見た事があるのに、何故か躊躇しています。
「レミコ様も行きましょう!」
「…いえ。私は『転移』スキルを持っていますから、大丈夫です」
………入りたく無いのですね。
…別に良いですけど。
「…先に行ってますね。場所は分かりますか?」
「メイの魔力を感知するので大丈夫ですよ」
…そうですか。別に、きちんと来てくださるなら良いのですけどね。
♢♢♢
「ソフィーちゃん、来ましたよー」
…………。
…誰も居ませんね。まぁ、『神官』の部屋なので、ソフィーちゃんが居なければ、誰も居るはずが無いのですけどね。
「シルフィアさん、ソフィーちゃんはまだ来ていないので、少し待っていましょうか」
「あらあら、じゃあ、お菓子でも食べていましょうかね」
シルフィアさんは、そう言うと棚を弄り出しました。数年前まではシルフィアさんの部屋だったので、お菓子の場所くらい把握しているのでしょうね。
そして、シルフィアさんが出してきたのは、美味しそうな和菓子でした。ソフィーちゃんを待っている間、頂きますかね。
シュンッ
「あ、 レミコ様も一緒にお菓子でも食べましょう。『魔力感知』を持った人はもうすぐ来ると思うので」
「お菓子ですか。有り難く頂きましょう」
レミコ様もお菓子がお好きな様で、少しだけ嬉しそうに見えますね。もしかしたら、あの場所が代々の神官のお菓子置き場なのかもしれませんね。
「美味しいですねぇ」
ガチャ…キー
お、ソフィーちゃんが来たみたいですね。あと、カーラも。
…と言うか、今、鍵を開けましたね。
…ごめんなさい。完全に不法侵入していましたよ。まぁ、事前に行くと言っていたので良いですよね?
「…は?…メイ、どうして私のおやつを勝手に食べているのよ」
「…え?…えっと。ごめんなさい」
…いやいや、私は悪く無いのですけどね。私は出されたお菓子を頂いていただけですし。ですが、ソフィーちゃんの顔が少しだけ怖くてく謝ってしまいました。私たちが不法侵入した事を一切気にできないほど、楽しみにしていたおやつだったのでしょうね。凄く美味しいですし。
「あらあら、ごめんなさいねぇ。私が出しちゃったわぁ」
「…は?何でこんな子供が私のおやつの場所を…え?…神官様??」
お!流石はソフィーちゃんですね。愛くるしい姿のシルフィアさんの正体を見破りましたよ。私とは大違いですね。私なんて、正体を教えてもらっても夢だと思いましたよ。
「久しぶりねぇ、ソフィーちゃん。でも、もう神官じゃ無いわよ。神官はソフィーちゃんでしょ?」
「…いえ。…私は『大神官』になりました。…え?本当に神官様??」
…ソフィーちゃん、それは別にどちらでも良いと思いますよ。称号なんて、飾りみたいなものですし。実は『大神官』になれた事が少しだけ嬉しかったりしたのでしょうかね?
「え…⁈ちょっと待ってください。あなたが『大神官』?…随分と若く見えますが」
すると、レミコ様が2人の再会に口を挟んできました。私としては、もっと感動とか驚きとかを見たかったのですけどね。まぁ、シルフィアさんを見たソフィーちゃんよりも、ソフィーちゃんが『大神官』だと知ったレミコ様の方が驚いている様に見えるのですけどね。
そしてソフィーちゃんは、レミコ様の問いに訝しげな表情で答えます。
「…はい。…どちら様ですか?」
「『大天使』のレミコと申します。以後お見知り置きを、若き後継者よ」
「…は?」
ソフィーちゃんには理解出来る内容とは思えませんが、レミコ様は後継者と呼び、握手を求める様に手を出しました。
…まぁ、ソフィーちゃんはその手を取らないのですけどね。
「…メイ。説明して」
おやおや。私が説明しなくてはならないのですね。まぁ、良いでしょう。…いや、良いのですかね?ソフィーちゃんに死後のお話をしても。
まぁ、良いですよね?どうせ80年後くらいには分かる事ですし。




