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メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
4章

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12話 私が頼んだら乗せてくれますよ

 

「ごほん。では、会議を始めさせていただきます。お手元の資料をご確認ください」


 国王様によって騎士団長が追い出され、静かになった事で、ようやく会議が始まった。


 進行の男性は、私たちが資料を手に取ったのを確認すると、咳払いをして資料を元に説明を始めた。


 資料のおおまかな内容は、大英雄・『魔王』メイ殿との和平協定から1年以上が経過した今の現状と今後についてだった。


 争いは完全に集結し、領土の返還が終わった事。そして、魔族領から近いケルディ領には数人の魔族が滞在を始めている事。そこで発生した通貨の違いによる問題の改善について。そして、この国で最も戦力が集結し、魔族である私が受付嬢を務めるユリアール領でも、本格的に受け入れを始めようという内容だった。


 メイお姉ちゃんが望んだ和平のためにも、私も十三天王として出来る限りの事はしなけければならないと思う。メイお姉ちゃんを『大英雄』と表現している事から察するに、メイお姉ちゃんが結んだ和平は、人族にとって、それだけ価値のある事だったのだろうから。


「では初めに、ユリアール領での魔族受け入れについてですが、ユリアール侯爵はどのようにお考えでしょうか」


 資料の説明が終わると、早速議題についての討論が始まった。そして、ユリアール侯爵が指名されたことで、侯爵に皆の視線が集まる。


「…そうですね。ユリアール領だけで考えれば『魔族のギルド受付嬢が居る』という事実を知らない人は少ないと思うので、多少混乱はあれど、何とかなると思います。ただ、魔族がユリアール領まで来る行程を考えると、現実的に見て少々難しいのではないでしょうか」


「…ユリアール侯爵の言う通りだな。ケルディ領からの馬車でも10日…。その間の御者を引き受けてくれるものが居るかどうか怪しいな」


 ユリアール侯爵の言葉に国王様が付け加える様に発言し、それに皆が納得してしまった事で、会議室は静まり返った。


 侯爵の言う通り、私が居るからユリアール領は大丈夫な気がする。サクラさんと一緒に買い物や食事をする事も多いから、ユリアール領や王都では、私以外の魔族が居ても、そこまで問題にならないと思う。でも、ユリアール領まで来るには、人族の案内が必要になる。


 だけど、それを引き受けてくれる強者は、殆ど居ないと思われる。何故なら、おそらく人族領にやって来ようと考えている魔族は、自衛の手段がある者に限られるからだ。長い間続いた争いが解決したからといって、すぐさま観光気分で来ようとする者は居ないだろうし。


 きっと最初に来ようとするのは、魔族の上位冒険者や魔王十三天王。そんな魔族を複数人相手に出来るのは、私の知る限り、サクラさんとカーラさんだけ。でも、サクラさんはギルドマスターとして忙しいし、カーラさんは絶対に引き受けてくれない。だからといって、魔族が来ようとする度に、多くの実力者を同行させる訳にもいかない。


「…やはり、難しいか」


 そして、誰も意見を発しない事で、国王様がそう言った。国王様は、何とかならないものかと考え続けているみたいだけど、顔をしかめているだけで良い案が出ない様だ。


 でも、そんな空気の中、サクラさんが口を開いた。


「…あの。私なら数時間で連れて来れますよ」


「…それは本当か?」


 サクラさんは数時間と言うが、国王様はそんな方法は存在しないと思った様で、訝しげな表情でサクラさんを見つめる。私も、いくら何でも数時間は無理だと思うけど、サクラさんが国王様の前で嘘を付くとは思えない。


 だけど、サクラさんは自信満々に続けて発言する。


「はい。七聖龍に乗せてもらえば良いんです」


「「「……は???」」」


「…あらあら」


「七聖龍に乗れるの⁈」


 サクラさんの発言に、国王様・前国王様・ユリアール侯爵は素っ頓狂な声を出し、神官様は戸惑い、カーラさんは嬉しそうに興味深々な様子だ。


「ちょ…ちょっと待たれよ。サクラ殿、真面目に言っているのか?」


「はい、もちろん真面目ですよ」


 サクラさんは、国王様に疑われるが、変わらぬ表情で答える。サクラさんの事だから、きっと嘘ではないのだろうけど、サクラさんをよく知っているつもりの私でも、理解が追いつかない。


「…そうか。…で、どのようにして七聖龍に乗せてもらうのだ?」


「私が頼んだら乗せてくれますよ」


 ………何を言っているのだろうか、サクラさんは。もう全く理解できない。


「…そう…なのか?」


 そして国王様も私と同じで、サクラさんの言葉を理解できない様だ。


「はい。氷聖龍と海聖龍だと半日くらいかかると思いますけど、炎聖龍・緑聖龍・雷聖龍なら数時間だと思います。特に雷聖龍は速いですよ」


「…そうなのか。…ん?氷聖龍?氷龍とは違うのか?」


「あ、それはですね…」


 そして、皆が置いて行かれたまま、サクラさんの詳しい説明が始まった。


 先ず、メイお姉ちゃんが氷龍をテイムした事。海龍をテイムし、進化させた事。竜を進化させ、炎聖龍・緑聖龍・雷聖龍を誕生させた事。そして、天界に行く前に、戻って来るまでサクラさんに従うようにと指示をした事。


 メイお姉ちゃんが居なくなった後、サクラさんは何度も乗せてもらったそうで、それぞれの乗り心地を、スピードや安全面の観点から丁寧に説明する。


 皆はサクラさんの嘘のような話を呆然と聞き、自らの頭の中を出来るだけ整理しようとする。カーラさんだけは、そんな事を考えず、ただただ羨ましそうにサクラさんを見つめる。どうやら、サクラさんは適切な判断をし、カーラさんにバレないように、七聖龍に乗っていたみたいだ。


「…どうでしょうか?馬車で来るよりは全然良いと思いますけど」


「………あぁ」


 そしてサクラさんは、説明が終わると国王様にそう言った。だけど国王様は、まだ理解と判断が追いつかなかったようで、曖昧な返事をした。


 皆が、サクラさんを。それ以上にメイお姉ちゃんの凄さを改めて理解する。本当に、メイお姉ちゃんは何者なのだろうか。


 私が理解しているメイお姉ちゃんの凄さは、ほんの一部だったのだと改めて実感させられる。きっとメイお姉ちゃんは、まだまだ私の知らない凄いことを沢山しているのだろうと思う。



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