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メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
1章 勇者討伐編
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10話 嫌なイベント

 

「…つまり、勇者様と枕投げをしたら、そのレベルになった…という事ですか?…冗談ですよね?」


 サクラさんに昨夜の出来事を伝えると、怪訝な目を向けられてしまいました。どうやら、信じてもらえていないのかもしれません。まぁ、信じる事が難しい内容だという事は、私も分かっていますが。


「…えっと、対人戦の経験でもレベルを上がりますよね。それと同じだと思います」


「…言いたい事は分かりますが、少し無理があると思いますよ?」


 うぅ、サクラさんの視線が痛いです。逆の立場だったら、間違いなく私もそうなりますけどね。


「それに今の話ですと、メイ様が本気を出せば勇者様は手も足も出ない…という事になりますが、間違いありませんか?」


「…え?…そんな事は無いと思いますよ?」


 あれ?…そんな事は無いですよね?そんな事は絶対にありえません。


「「……………」」


 …あぁ、沈黙が痛いです。私をそんな目で見ないでください。枕投げが私のスキルと相性が良いだけですから。普通に戦えば、カーラに勝てる訳ありませんから。


「はぁ、まあ良いです。では、メイ様はいつから聖女様になられたのでしょうか?」


「…昨日、ギルドで聖女の称号を獲得しました」


 本当に謎ですよね。私なんかが聖女だなんて、分不相応ですし。


「…どうして私が聖女になったのでしょうか?カーラはご存じですよね?」


 そう言いつつ、私はカーラに目線を向けました。カーラは聖女になる方法を知っているから、私が聖女になった事がすぐに分かったのでしょうし。


「知ってるよ。メイは何だと思う?」


 すると、カーラはすぐには答えずに私に聞いてきました。私に聞いたという事は、あの状況から推測できる内容だという事でしょうね。


 私が聖女の称号を得た時…。カーラを倒した・カーラの攻撃を受けた・カーラを回復させた…のどれかでしょうね。聖女と言えば回復でしょうけど、たったそれだけで聖女になれるとは思えませんね。


 …となると。


「勇者の称号を持つ人物を倒して回復させる事ですね」


「ふっ、違うよ!そんな事ができるのはメイくらいだよ」


 …いやいや。勇者の称号を持っている人物を倒すくらい、私じゃなくても出来ると思いますよ?…出来ますよね?


 ……考えるのは止めましょう。不正解だっとのであれば、考えるだけ時間の無駄ですからね。


 …うーん。分かりませんね。勇者様の攻撃を受けるというのは違うと思いますし。


「…あ!では、勇者の称号を持つ人物と仲を深めた状態で回復魔法を使う…とかでしょうか?」


「え⁉︎ メイがそう思うって事は、メイはボクと仲良し(ラブラブ)だと思ってるって事だよね!嬉しいな」


 …う。完全に失言でしたね。勇者様がうねうね体を揺さぶって少し気持ち悪いです。


「はぁ。勇者様、もったいぶらずに早く教えてください」


「あ。ごめんね、サクラ。見せびらかしてしまって」


 ……どうしてカーラはそういう発言をするのでしょうね。サクラさんに誤解されてしまうではありませんか。


「んん、『聖女』の称号を得る条件はね、回復魔法を使える者が100レベル以上で『勇者』に初めての回復魔法を掛ける事だよ。つまり、メイの初めてをボクが貰ったって事だよ!」


「…んなっ⁉︎」


 何を口走っているのでしょうか、カーラは。言い方が酷すぎますよ。…ですが、その条件だと間違いなく一致しますね。私は覚えたての回復魔法を勇者様に使いましたし。


「普通は回復魔法を覚えた『聖女』になる為に育てられた子と勇者が一緒に旅をして、時間をかけてレベルを上げて『聖女』になるんだよ。ソフィーの時も1年以上かかったからね。だけど、メイはボクと出会ったその日に『聖女』になったから、もう運命としか言いようがないよね!」


「運命…ですか」


 嫌な運め…というのはカーラに悪いですね。私も少なからず楽しんでいますし。こうして『聖女』になってしまったのですから、受け入れるしかありませんね。


 しかし、ソフィー様というお方が1年以上かけて成し遂げた事を、私がほぼ半日で成し遂げるのは、物凄く申し訳ない気持ちになりますね。ほぼズルですからね。私は戦っていませんし。…いえ、カーラを1回ビンタしましたね。たったそれだけです。


「因みに、『大聖女』になる条件は『勇者』と共に『魔王』を討伐する事だよ。あと少しで新しい『魔王』が選ばれるだろうから、メイはすぐに『大聖女』になれるね!」


 …どうしてカーラは嬉しそうに言うのでしょうね。私は魔王討伐なんて絶対に嫌ですよ。怖いですからね。大聖女になるのも嫌です。聖女でさえも嫌なのですから、これ以上目立つ称号は要りません。


 …いや、称号に関しては心配不要でした。私は『勇者』と一緒に『魔王』を倒しませんからね。私が共闘するのは間違いなく『魔王』です。『勇者』にデバフを掛けないといけませんからね。まぁ、私が大聖女になれない事はカーラに教えないでおきましょう。


 …はぁ。


「心底嫌になりますね」


「ええぇ⁉︎ 嫌とか言わないでよ!メイが居ないと一瞬で終わっちゃうじゃん!3年に一度しか無いイベントなんだよ!」


 …私達人族にとって恐ろしい事でしかないにも関わらず、それをイベントと言いますか。…新しく誕生する『魔王』に同情してしまいそうです。…いや、同情はしないですね。 



「勇者様、少々不謹慎ですよ。まぁ、倒して下さるのであれば、どう戦おうと問題ありませんが。決して負けるような事が無いようにお願いしますね」


「うんっ!」


 …はぁ。『魔王』は討伐されると、約3年後に新しい魔王が誕生すると言われているので、私は3年おきに魔王城に行かなければならないという事ですか。カーラが負けるとは思えませんし。



♢♢♢



「では、メイ様。いえ、聖女様。そろそろ教会からの文書をご確認ください」


「…う。聖女だなんて呼ばないでほしいです。あと、できれば様付けも敬語も止めていただきたいです」


 改めて聖女様だなんて呼ばれると、凄く嫌ですね。私なんかが偉い人みたいに扱われるのは恐れ多いです。今ならカーラが名前で呼ばれたがった事にも同意できますね。私とは違う理由だと思いますが。


「ちょっと待ってよ!メイだけずるいよ!サクラはボクの事も名前で呼んでくれないのに!サクラ、ボクの事も名前で呼んでよ!」


「え、よろしいんですか?遠慮しませんよ?」


「うん!」


「じゃあ、メイちゃん早く読んで。早く終わらせたいからカーラはもう黙っていなさいよ」


 ………おぅ。そうなりますか。そうなるんですね。カーラは邪険に扱われたにもかかわらず、凄く嬉しそうです。さすが担当受付嬢という事ですね。カーラの扱いに慣れているみたいです。勉強になりますね。





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