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ポンコツ王太子のモブ姉王女らしいけど、悪役令嬢が可哀想なので助けようと思います〜王女ルートがない!?なら作ればいいのよ!〜【WEB版】  作者: 諏訪ぺこ
第三章

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159.解けない呪い

 ーーーーアレ?と内心首を傾げる。


 確か、前にウィズ殿下を治した時はもっとゴッソリ、魔力を持って行かれた気がしたのだ。でも今回はそんなに持っていかれなかった。

 前に比べてだいぶ魔力量は増えたけども……チラリと、サリュー様の顔を見上げると、真っ白だった顔にほんの少し紅がさしたようになる。

 目の色も元の綺麗な翡翠色だ。


「あ、色が……」

「本当だ。ありがとう!ルティア姫」

「あ、いえ、でも……」


 私が言い淀むと、ウィズ殿下は首を傾げた。私も首を傾げたい現象が目の前で起きている。だって花が消えないのだ。サリュー様を白い花が覆っている。

 白い花、といっても実際に真っ白な花というわけではなく、透明な花に薄らと白い色が付いているようなもの。だから表情とかはよくわかる。


 サリュー様の目の色は元に戻った。でも、花が消えない。花が消えないということはつまり、呪いが解けていないことを意味している。治ってしまえば花は消えてしまうのだから。


 今までにない事態に私はどうしたらいいか考える。このまま魔力を注ぎ続けていいものか、それとも一旦止めるべきか。


「ルティア姫、術式を……止めてください」

「え、でも……」

「呪いは、消えていないのでしょう?」


 その言葉に私は小さく頷く。するとウィズ殿下がすごくショックを受けた顔をした。そして私からサリュー様の手を取り、握りしめる。

 魔術式の展開を止めると、サリュー様の眼はまた先ほどのように真っ黒になってしまう。何も写さない、真っ暗な闇。綺麗な翡翠色は見る影もない。


「そんな、どうして……!!」

「理由はわかりません。ただ、ウィズ殿下を治した時のような、魔力が持っていかれる感覚がありませんでした」

「それは……いや、そうだな。呪い、そのものを姫君は知らないものな」

「はい……お力になれなくて申し訳ありません。たぶん、ですが……常に術式を展開していれば眼は見えるのではないかな?と思うのです」


 サリュー様に、術式が発動している時は見えていたか?と問えば、見えていた、と答えが返ってくる。つまりずーっと魔術式を発動したままなら、見えてるということ。でもずーっと発動し続けるのは不可能だ。


 だって彼女は王太子妃。とても忙しいはず。今日はこんな事態であったから、床に伏せているけれど本来は忙しく動き回っているのだ。

 それに赤ちゃんのお世話だってしているし……そんなサリュー様にずっとついて回ることはできない。国の機密事項なんて知ってしまった日には私はファティシアには帰れなくなるだろう。流石にそれは困る。


「私の時は、魔力が持っていかれる感覚があった、と言ったがそれはサリューに使っている時とは全く違うのかい?」

「そうですね。本当にゴソッと魔力が持っていかれる感覚がありました。でもサリュー様に対しては、そうではないのです。えっと、たとえるなら貯めていた水が一気に無くなるのと、チョロチョロなくなるのとでは違いますよね?」

「ああ、なるほど。常に一定量の魔力が持っていかれている、ということか?」

「そんな感じがします。でもごく少量です」


 成長して魔力量が増えたとは言っても、自分の魔力の流れのようなものはそう簡単に変わらない。だから断言できるが、前回と今回では全く違う。

 呪いに種類があるのなら、ウィズ殿下とサリュー様では質が違うのだ。でもだからといってこのままにしておくのもまずいわけで、私はどうしようなあ?と考え込んでしまう。


「呪いをかけた人は見つからないのですか?」

「残念ながらまだ見つかっていない」

「これってやっぱりかけた本人が解くのが一番ですよね」

「そうだね。だが、そう簡単に口を割るか……前回は自らの命を呪いに使っていたからね」

「そ、そんな命懸けなかけかたするんですか!?」

「モノによるけれどね」


 呪いって怖いモノなんだな。命を使ってまでかけるなんて……それほど恨みを抱いていたということだろうか?それとも別の理由がある??

 うーん……全然頭が回らない。


 ぐぅー…


 小さいけど、確かに聞こえた音。私は視線を巡らせる。こんな小さな音だもの、聞こえてないわよね?ね??

 そんな願いも虚しく、コンラッド様が横を向いて肩を振るわせはじめた。そして目の前にいるサリュー様もクスクスと笑いだす。唯一、ウィズ殿下だけが申し訳なさそうな表情になった。


「あ、うん。すまない。本当にすまない。寝起きだったものな」

「……お気遣いありがとうございます」

「ここは怒って良いところですよ?ルティア姫、ウィズ殿下が姫君のことを何も考えずにこちらに連れてきたのですから」

「いえ、その、ご飯食べたらもう一度きます……」


 それ以上言える言葉がなかった。

 だって見えてないとはいえ、サリュー様に睨まれてウィズ殿下はしょんぼりしているのだもの。私が更に怒ったら、きっと後でもっと怒られてしまう。

 ウィズ殿下だってわざとではないのだ。サリュー様を心配して一番治せる可能性の高い私を連れてきたに過ぎない。


「ウィズ、一度姫君をあちらの宮に戻すよ?いいね」

「はい。申し訳ない、姫君。また後でお願いできるだろうか?」

「ウィズ様!姫君は遊びに来ているわけではないのですよ?わたくしの為にそのような……!!」

「いいえ、大丈夫です。本当に。ご飯食べたら来ます!でも、その……一度、カーバニル先生に相談しても良いかしら?」

「ええ、構いません」

「サリュー……」

「姫君にお願いする立場なのです。その師である方に話を通すのは筋ではありませぬか」


 私の申し出にウィズ殿下は難色を示したが、それをサリュー様が嗜める。確かに呪いにかかった、なんて大っぴらにはできない。でもファティシアにはそもそも「呪い」といわれる現象はないと思うのだ。

 だから私が聞くのはもっと別のこと。それには先生の知恵を借りなければいけない。こればかりは私の力だけではどうにもならないのだ。


 ひとまず、その場は後にしてコンラッド様と私に割り当てられている部屋に戻る。

 本当は普通に歩きたかったけど、流石に寝巻き姿で出歩くわけにもいかず……帰りはコンラッド様に横抱きにされている状態だ。ハッキリ言って恥ずかしい。

 どうしてこんな羞恥心を試されるようなことばかり連続で起こるのだろう?


「ううう……すみません。コンラッド様重いですよね?」

「姫君は羽のように軽いから問題ないよ」


 にこにこと良い笑顔で言ってくるコンラッド様に、そんなわけないわよ!とツッコミをいれる気すら起きない。お腹の音は聞かれるし、横抱きに抱えられてしまうし、本当に私が何をしたのだろう?

 ちょっとだけウィズ殿下を恨みたくなってしまった。きっと私達がいなくなったあとで、サリュー様が怒ってくれているだろうけど。


「それにしても……姫君の力でもどうにもならないとなると、犯人を早く探さないとなぁ」

「術式をずっと発動していれば問題ないんですけど、流石にずっとサリュー様にくっついてるわけにはいきませんしね」

「そうだね。そんなことしたらウィズから恨まれてしまうよ。アレで独占欲が強いんだ。それに彼女はウィズのつがいだしね」


 私は聞きなれない言葉に首を傾げる。番、とはなんだろう?


「あの、つがいってなんですか?」

「ああ、番というのは言葉にすると難しいんだけど……唯一無二の存在、かな」

「唯一無二の存在……?」

「ラステアは龍の国と言われているけれど、大昔龍は人になれた、と言われている。で、龍と人の間に子供が生まれて……その血の影響ともいわれてるね」

「龍は番を見つける生き物なんですね?」

「そうそう。龍は一度伴侶に選んだ相手を絶対に変えない。本能的に選び出すらしくて、それを俺達ラステアの民も受け継いでいる。ただまあ、今はだいぶ血も薄れているからねぇ」

「見つけるのが難しい、ということですか?」

「そうなるね」


 ということは見つけられた時は喜びもひとしお、というわけか。ウィズ殿下にとってはサリュー様がその相手。確かにようやく見つけられた唯一無二の相手に、オマケがくっついていたら嫌だろう。たとえ同性でも。


「うーん……でもどうして、治らなかったのかな?」

「ウィズの時は治せてたし、呪い自体にルティア姫の力が有効なのは確かなんだろうけど。確かに不思議な話だね」

「ウィズ殿下はとても痛いと言っていたけど、サリュー様は顔色こそ悪かったけど痛みはないって言ってましたよね。でもこのままだと衰弱しそうな怖さはあります」

「そうだね。力が入らない、と言っていたし……」


 常に聖属性の魔術式を展開できていれば、日常生活に不自由することはないはず。その間に犯人を見つけてもらえれば、と思ったけど前回と同じで死なれてしまったら解く方法はない。


「なんだかグルグル回ってわからなくなってきました」

「そうだねえ。ま、ひとまず食事にしよう。カーバニル殿にも意見を聞いて、その上でどうするか考えればいいさ。ウィズよりも進行は遅いようだしね」

「はい……」


 直ぐに治して不安を払拭してあげたいけれど、私の力ではまだまだ役不足なのだろう。コンラッド様のいうとおり、食事と後着替え!をしたら先生に相談しなくては……!!

ご覧いただきありがとうございます!

本日はニコニコ漫画さんでもポンコツ王太子の6話目が配信となりました!よろしくお願いします!!

アマンダさん回ですよ!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読ませていただいてます。ありがとうございます! [一言] 誤字報告です。 呪い事態 は 呪い自体 の間違いではないでしょうか
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