03話 究極奥義そのニ
「かんぱ〜い!!!!」
「いやー!しかし良くあのイアンが許してくれたな!w」
「ああ!まぁ、なんとかなったよ!逆にカネくれたし!」
「え!?あのドケチのイアンが!?嘘だろ!?」
「いや、、まぁ、なんかユルシテクダイてうわ言の様に呟いててな」
「はぁー!なんでやろ?ま、なんにせよ大したもんだ!さすがリトアだぜ!w」
馴染みの店で果実酒を片手に俺達は普段しない様な贅沢をしていた。
「ねぇ!さっきの話…ほんと!?」
店のアイドル、メイヤンが声を掛けてきた。
「ん!?wおお!メイヤン!ああ!ほんとほんと!wリトアはすげー男なわけよ!w」
「いや…そんな…」
謙遜はサラリーマンの嗜みである。
営業であればもっと盛り上がる返しをしていただろう。
「あの…さ、ちょっとお願いがあるんだけど…」
「…イイカナ?」
「いいですとも!」
女性に弱いタイプである。
話の内容はこうだ。
なんでも田舎貴族のナルシストがメイヤンを気に入ってるらしく、しつこく付き纏ってくるらしい。
なんとか出来ないか?って事だった。
「お任せあれぇ!」
「おっ!?おっ!?よっ!リトア!ノッてきてやがるな!w」
店の閉店間際、例のド田舎貴族の腐れナルシスト ハワードが店を訪れた。
件の通りメイヤンを口説いていたが、メイヤンが俺を指差して話した辺りから雲行きが怪しくなってきた。
「…おい」
「ちょっと表に出て話そうや」
…俺の足はガクブルだった。
路地裏に行くまで生まれたての子鹿の様に震えて、ハワードに着いていくのがやっとだった。
着いた先に待ち構えていたのはハワードだけではない。
街のゴロツキ共がヒャッハーと言わんばかりにラリっていた。
「…ど、どうしました?ハワード様…」
「どうしたもこうしたもない」
「貴様…あのメイヤンと付き合ってると言うのは本当か?」
(ああ…そう言う流れなんだね…メイヤン)
「へ、へい、そ、そうです」
「貴様ァ…よもやこのハワード様がメイヤン嬢に好意を寄せているのを知らないわけではあるまい!」
「し、知りませんでした!すみません!」
「すみませんだぁ!?貴様ァァァ!とっとと手を引け!メイヤン嬢はこのハワード様の者なのだ!」
「ご、ごめんなさい…それは出来ません…」
「貴様っ!!おい!お前達!」
ス…ッ
ヒャッハーは群れをなしてゾロゾロと集まってきた。
「ヒィ!!!ご、ご勘弁を!ハワード様!」
「そう思うなら手を引け!」
「ご、ごめんなさい…!出来ません!」
「殺せぇ!」
ボフッ
いつの間にか横にいたヒャッハーに思い切りぶん殴られた。
「はがっ!…ぐふ…ぅぅ…」
殴られた俺はうずくまる態勢で必死にこの暴行を止めようと叫んだ!
「す、すみませんでした!ハワード様!許して下さい!」
「すみませんだぁ!?それが謝る姿勢か!?」
「誠意を見せろ!キチンと謝罪しろ!」
謝罪…だと!?
(いいのか?俺に…本気の謝罪…させちまって…)
「…みせて…やるよ…」
「ああ!?」
「…俺の!本気の!!!!謝罪ってやつをなぁ!!!」
バッ!!!
ビシッと背筋を伸ばした。
瞬間!!!
俺は大きく垂直飛んだ。
「…申し訳…っ!!!!」
そのまま地面に膝から落ちカエルの様に手を広げ着地した!
土下座究極奥義そのニ!!!!スタイリッシュジャンピングDOGEZA!!!!
「っございませんでした!!!!!」
膝に痛みなんて無い!何故なら本気の土下座には必死さこそが脳の痛覚を麻痺させてしまうからだ!
ズゴドォォォォォォォォォォォオンンン!!!!
辺り一面木っ端微塵に吹き飛んだ。
「グァァァァァァァァァァ!!!!」
断末魔が聞こえるがこれは″許し″にあらず!!
俺は微動だにしなかった。
この額を上げるのは″許し″をいただいてからだ!
「ハワード様ぁ!何卒!何卒!お許し下さいませぇ!!!」
ィンンンーーーーー…
ボフッ…パグドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!
「ガァァァァッッッッッッッ!!!!」
断末魔と共に降り出した雨…
否!それは血だった。
「…シィ…ユ…ユルシ…クルシ…タスケ…」
″許し″
それは顔を上げてもいいですよ、と言う合図。
俺はくしゃくしゃになった顔でこう言った。
「ありがとうございますっ…っ!!!!」