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02話 究極奥義その一

「…リトア!おい!聞いてんか!?リトア!」


そうだ!俺は…この体の俺はラトゥール村の村人、名前はリトア。17歳だ。

と、突然前世の記憶が蘇ったかの様な感覚でさっきまでの出来事を思い出した。


「リトア!この薬草3チリンでいーんだよな?」


「あ!ああ!ごめん、オラウ。そうそう!3チリンだ!」


「ったく!どうしたんだ?ぼーっとしてw」


「ごめんごめんw」


「それより大丈夫なのか!?さっきはあんな事言って…」


「…え、何が…あっ」


(そうだ!思い出した!ろくでもない領主のイアンがオラウの店で揉めたんだった。幼なじみのオラウを助けようと間に入ったのが運の尽き。今度は俺に絡んできて結局俺の在庫の薬草を全部タダで寄越せって言ってきたんだった)


(生活費の為の薬草をいつもオラウの店で買い取って貰ってたけど…参ったな…今日と明日の分の飯代はなんとかなったけど在庫を全部渡したら生活出来なくなっちゃうよ)


「リトアがわかりましたなんとかします!なんて言うからイアンも引き下がったけど…なんとかなるのかぁ!?」


「はははっ…はぁ…ま、なんとかするよ!笑」


「任せとけって笑」


(とは言ったものの…どうしたもんか…)


(いや、待てよ?そうだ!俺にとってははこんな取引先とのやり取りも既に経験済みだ!!!はははっ笑 バカだなぁ笑 何を心配してたんだ笑 俺の土下座で領主だろうが国王だろうがなんでも解決してやるっての!笑)


コンコン


「…入れ」


ガチャ


「…失礼します…」


扉を開けると偉そうにふんぞり返ったイアンが汚物を見る様にこちらを見ていた。


「ふん、リトアか。それで?薬草は持ってきたんだろうな?」


「そ、それが…」


バサっと出したのは精々10束程度の薬草だった。イアンが欲していたのは100束程だったからこれには先方も顔を真っ赤にしてお怒りだ。


「なっ!き、貴様!俺を侮辱しているのかっ!!!」


「ヒィ!」


咄嗟に頭を押さえた。やはり根っからのビビリ体質は変わっていない。


「す、すみません!やはりどうしても今ある在庫でお渡し出来るのはこのくらいでしてっ!」


「ええいっ!言い訳はいい!ふざけおって!!!」


チリ…シャッ…


怒りがピークに達したイアンは事もあろうに貴族の嗜みであろう剣を抜いた。


「ひいいいい!!!ご、ご勘弁を!!!」


「ならば貴様!明日までに90用意しろ!!!」


「そ、そんな!それは出来ません!!」


「おのれ!リトア!!!舐めくさりおって!!!」


イアンはガタッと立ち上がった。


(まずい!こ、殺される!…いや!今だ!転生前に磨きに磨いた渾身の土下座でこの窮地を乗り切ってやる!!)


「イアン様っっ!!!」


「なんだ!?」


「たいへんっっ!!!!」


バッ!バッバッ!!!


「もぉぉおしわけ!!!」


ザッ!!!


「ございませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!!」


ズザザー!!!!


ゴンッ!!


地面に頭突きを繰り出すように打ちつける土下座究極奥義その一!ヘッドストッピング土下座!!!!


これは地面に打ちつけた音と共に額から流れ出る血で相手の精神を揺さぶる究極の一撃!!!


まさに!今まさに床をぶち破らんとする渾身の一撃が決まったのだ!


瞬間ー


ィィィィ…


「…ん?」


動揺したイアンはおかしな声をあげた、そして


ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!!!


爆発した。


「グァぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


えっ!?と思って見上げるとそこには吹っ飛ばされ血まみれになったイアンが口から煙を吐き白目を剥いていた。


「い、イアン様!!!!」


い、いかん!まだ謝罪は終わっていない!頭を下げろ!こうべを垂れろ!媚び諂え!!!


「イアン様!!!どうか!!!!どうか剣を納め下さい!!!何卒!何卒、ご勘弁を!!!!」


ィィィィン


ドォォォォォォォォォォォオンンン!!!!


「ギィヤァぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


遠くでイアンの叫び声が聞こえた。しかしまだ許しをもらっていない。


(何故だ!イアン!!!俺の土下座の何が不満だと言うんだ!!くそっくそっくそっ!クソがっ!!!おのれイアン!まだ足りないと言うのか!!!欲深な男め!!!)


「イアン様っっっ!!!!何卒!!!!こ・の・と・お・り!!!お許し下さい!!!イアンさまぁぁぁぁ!!!!」


キンー


ピシュ…バァァァァァァァァァァァァァァン!!!!


何かが破裂した様な音と共に大きな爆発が起こった。イアンの声は聞こえなかった。


…。


「…や、ヤメ…ゆるし…ユルシテ…」


イアンから微かな呻き声が聞こえた。


(はっ!!今のは!?お許しをいただいた!!!?)


顔を上げた俺は今年一番の笑顔で答えた。


「お許しいただき!ありがとうございます!!!!」


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