01話 おお、社畜よ。死んでしまうとは情けない
俺の名前は天童良ノ介。黒穴有限会社で働くサラリーマンだ。
何を隠そう俺の特技は土下座だ。取引先にも我慢を知らない理不尽な悪質クレーマーにもパワハラ上司にも、家族経営ワンマン社長にもこの土下座で事なきを得てきた。
そんな俺が部屋で転んで机の角で頭をぶつけて死んだのはついさっきの事。
輪廻の女神はこう言った。
「うははwこの死に方はw流石に…w」
「やかましい!」
「ごめんごめんw」
(なんなんだ!コイツは!女神と言うからどれほど高貴な者かと思ったら!ふざけ倒しやがって!!)
「…ぷっwww怒ってる怒ってるwww」
「おいっ!言わせておけば好き勝手言いやがって!ふざけるのも大概にしろ!」
「はぁ!?今何つった!?あ!?今何つったよ!?お前!おいっ!」
(えっ!ちょっ!あっ!え!?怖っ!!嘘!?何!?沸点ひっっっくぅぅ!!!)
「ひいいいいい!!!ごめんなさいごめんなさい!調子に乗りました!」
元々臆病な性格なのにも関わらず、女神のあまりの太々しさについ調子に乗って普段思っても決して口にした事ない事を口にした。(Twitterではめちゃくちゃ書くが)
女神はさっきまでとは別人の様な形相になり胸倉を掴みかかってきてブン殴られるかと思った。
「す、すみませんでしたっ!言いすぎました!ごめんなさい!」
「それが謝る態度か!?あ!?おい!」
謝る!?そうか!!!!
「申し訳っっっっ!!!!」
バッ!バッッ!!!
「ございませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ビシッ!!!!
…決まった。俺の渾身の土下座!どうだっ!女神様もこれでお許しになってくれるだろう!!!
キレのある背筋を張った直立から手首の角度、土下座までのスタイリッシュな入り!まさに!まさに!!!これこそが天童良ノ介の特技!Japanese DOGEZAだ!!!
パァぁぁぁ!!!!
「えっ!?えっ!?な、何!?」
女神の足元が突如光り始めた。今までに感じたことの無いエネルギーが集まり…
ドォォォォォォォォォォォオン!!!!
大爆発。
女神は黒焦げになった。
「えっ!?一体何が!?」
俺は目を疑った。女神が爆発したのだ。もちろん生きてはいるがドリフの様に女神は口から煙を吐いていた。
「ちょ、ちょっとぉ!なんなのよぉ!」
さっきまでの女神とは別人の様に変わり果てた姿で、涙目で俺を睨んだ。
「ひぃ!!!!申し訳!!!!!」
「ございませんっっっ!!!!!」
ィィ…ン…
ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!!!
「ぎゃぁぁぁぁ!!!!!」
「うおっ!!!!」
爆風に包まれ吹き飛ばされそうになった。
「…も、もしかしてぇ…あんたっ!!!」
「は、はい!!!」
「土下座!やめなさいよ!!!」
「え!?いや!でもまだ許しをいただいてないようなので!」
俺は吹き飛ばさそうになって解いてしまった土下座をもう一度心から…心を込めて!全身の力を振り絞り最後のチャンスとばかりに勢いよく土下座した!
「この通り!!!!!」
「誠に誠に!!!!申し訳ございませんでした!!!!!」
ドォゴァァァァァァァァァン!!!
「ギィィャァァァァァァ!!!!」
…。
静まり返ってしまったので薄目を開けて女神の方を見た。
…辛うじて生きてはいるようだった。
「うっ…ケホッ…」
「なんなのよぉ…もう…許して…」
俺は土下座を解かなかった。
「分かった!分かったからぁ!許すから土下座やめなさいっ!」
良かった!お許しをいただいた!俺は泣きながら笑っていた。これが俺の土下座だ!!
「はぁ…はぁ…ったく!なんなのよぉ…ケホッ…ケホッ」
「あんた…そう…そう言うこと…」
「あんたが土下座するとなんでか知らないけど相手が爆発するみたいね…」
「え!?な、なんですか!?それぇ!?」
「知らないわよっ!ったく!」
「いい!?これからあんたは異世界に転生するけど」
「く・れ・ぐ・れ・も!」
「土下座しないでよねっ!」
「え!?ちょ、ちょっと待ってくださいよ!わけがわからな…」
「うるっさいわね!もう時間なのよっ!サ・ヨ・ウ・ナ・ラ!!!!」
カッ!!!!
「え!?ちょ!!!」
「女神様!?女神さまぁぁぁ!?」
渦巻く時空に飲み込まれ、俺は意識を失った。