第7話 あ、やらかした
本日中に2話目を投稿予定です。
だんだん関わる人が増えてきて、賑やかになってきました。
そうなるとね、トラブルもね、でてくるのね。
(-_-;)
がんばれーマルエルー
「落ち着いたのか?」
ナルコスの所に戻ったのは半時ほどたったころだった。
「はい!もうだいょーぶです」
たぶんな。
ジャマぴよは、ああ言っていたけど、おそらくジャマはしないだろう。
たぶん、きっと、熱烈希望!
「よし、では先程の続きだ。素振り、構え!はじめ!」
パンと手を叩いた。
木剣を中段に構え、集中する。
よし、やるぞ!
ブンッと振り上げ、シュッと振り下ろした!
ヒュン!と風切り音が鳴った!
よし、ジャマは入らない。
いい調子だ!このまま続けてやる!
ヒュン!ヒュン!という小気味良い風切り音が、広場に響いた。
これ、重力利用すると楽だな。
アールの身体は小さいから、力任せでは余計な負担がかかってダメだ。
うん……こう、勢いであげて、締めて、木剣の重力に乗せてシュッと……
そう考え剣を振った!
ビュン!!ビュン!!ビュン!!
と、先程よりも勢いと重さが加わったかのように音が変わった。
おお!?いいんじゃない?
これなら、魔物でもぶった切れるんじゃないか……?
「やめ!」
パンッと手を打たれ、ハッとした!
振るう手を止め、また、中段の構えに戻った。
はぁはぁはぁ……
いつの間にか息が切れていた。
木剣を持つ手も小刻みに震えていた。
「あれ?手が……?」
ぷるぷるする手をとめようとするが、うまく出来ない。
「いきなりその勢いで振るからだ。だが、まぁ悪くない。初心者であそこまでの風切り音を出せるやつは、そう多くはいないぞ」
うんうんと満足そうに頷いている。
お!ナルコスの俺を見る目が変わった?
先程までの残念アールは払拭されたかな?
「剣に慣れる為にも体力作りの為にも素振りは毎日欠かさずやるように」
毎朝やることリストが、ラジオ体操プラス素振りになった。
「わかりました。あのーせんせーためしたいことあるんですけど、やってみていいですか?」
「?何だ?」
「ボクまだちいさいので、チカラがなくて。なのでチカラがでないかなって」
うまく説明出来ないな。
アールの言葉で話そうとすると、うまく説明出来ない事が時々ある。やっぱり5歳児は5歳児だ。
「??よく、わからんが、やってみろ」
「はい!」
さっき魔力探知をした時思った。
この力、うまく剣に乗せたら、もっと力出せるんじゃね?
目を瞑り、中段に構える。
息を整え、自分の中に魔力を巡らせる。その魔力が手から剣に流れるようにイメージする……
ふわっと剣か軽くなった気がした。
辺りに風が舞った。
ぱっと目をあけ、フッと振り上げ、ヒュッと振り下ろした!
ゴオオオオォォォォォ!!!!
シュ────!!バキーン!!
轟音が辺りに轟いた!!
風の塊が剣から放たれた!!??
「うわ────!!!!」
ギギギギギィィィィィィ
前の巨木がグラァッと傾き、倒れそうになった!
ヒヒ──ンと馬が嘶く声がした!!
ヤバい!!!!潰される!!
──マル!どいて!!
「マッドドール!」
バッと右手をだし、唱えた!
ガガガガガガガ ゴォォォォォォ
という音と共に、土塊が立ち上がり、巨大な土人形が現れた!
「木を支えて!」
土人形が手を振り上げ、ガシッと倒れかかった木を抑えた。
「もどせ!」
土人形がゆっくり元の位置に木を戻し、まっすぐに、立て直した。
「マッドドール!」
左手を出し、唱えた!
もう一体土人形が現れた!
「支えて!」
反対側からもう一体が支えた。
「そのまま『ディダッチ』」
2体の土人形が倒れかかった巨木をしっかりと支え、そのままザァーっと土に戻った。
巨木は土山の中からニョキっと生えたみたいになった。
キノコみたいだな。
でも倒れなかったため、辺りの被害は最小限に抑えられた、はず。
「ふう──」
大きくため息をついて、額の汗を拭った。
──おお!サンキュー!エル!すげぇな、土魔法マスターしてるじゃん!
──まだ土人形しか出来ないけどね。あーん!宿題できなかったぁ!タリル先生に魔法使っちゃダメって言われてたのに!
──いやいや、それは俺のせいだから、俺が叱られてやるよ。ほんとフォローありがとな!
──お互いさまでしょ!マルはいつもフォローしてくれてるじゃない。ま、後はよろしくね~
あ、そうだった。ナルコス先生忘れてたわ。放り投げてあった木剣を拾い、後ろを振り返り、先生を見た。
巨大な土塊を見上げ、心ここに在らずといった体で、呆然と立ち尽くしていた!
広場をめちゃくちゃにしてしまった。
だけど、もし倒れていたら、馬も俺もナルコスも潰れていたかもしれない。
めちゃくちゃにはなったけど、よしとして欲しいところだが……。
でもさ、ナルコスも、俺が試したいって言った時、ちゃんとOKだしたしな!
言質とってるし?
わざとじゃないし?
結局倒れなかったし?
うん!結果やっぱりチャラじゃないか?
「あのーせんせー?ごめんなさい……」
そんな悪びれた内面はおくびにも出さず、下を向き、殊勝な態度で謝った。
「…………驚いたな」
ぼそりと呟いた。
まだ呆けているようだったが、魂は戻ってきたようだ。
「はい、ボクもびっくりしました」
まさかこんなことになるなんて。
剣が軽くなったらいいなって思っただけなんだけどな?
風が吹いた気がしたけど、俺、風魔法なんて………………
あ!そういや犬神様に頼んだ!
なんか、便利なやつが欲しいって!
もしかして、これかぁ──??
確かに便利っちゃ便利だけど。
コントロール難しいぞ!
ふむ……コントロールできたら面白いかも。一振りで全部ぶっ飛んじゃうのもファンタジーっぽくていいんじゃないか?
エルの研究じゃないけど、俺も練習してみるかな。
「あの~ボク、どーしたらいーですか?」
ここでぼーっとしてても仕方ないしな。
「ああ、そうだな」
こほんと、気を取り直したように咳払いした。
「想定外の事が起こった。お前は魔術も使えるんだったな。だが、今はその段階じゃない。魔術のコントロールも出来てないんだろう?」
大きな土塊を見上げながら聞いてきた。
土魔術はほぼできてるような気がする。エルがな。
でも、俺は?
剣すらまともに振れなかった。
風のコントロールもできていない。
何もかも中途半端だった。
生兵法は怪我のもとって諺もあるしな!
「……はい。できてないとおもいます」
「そうか。今回は確かめもせず試していいと言った俺の責任だ。後はなんとかしよう。お前は気にしなくていい」
言い切ったな。
そうだな、その通りだ。
なんてったってアールはまだ5歳だぞ?
責任とか普通ないだろう。
俺がナルコスの立場だったとしても、5歳の子に責任を押し付けるような事はしない。
うん、近藤さん1号はちゃんとした大人だ。
「今日はこれで終わりだ。次回は基礎からもう一度始める」
「はい」
「素振りと基礎体力作りを忘れないように。では、今日はここまで!」
背中に手を回し、終わりの宣言をした。
「ありがとーございました!」
ペコリと頭を下げた。
ふー終わったー
馬のところに行き、繋いでいた縄をほどき、ひらりと乗った。
ナルコスもひらっと乗って前を行く。
何か考え込んでいるかのようだった。
そのためか、帰りは散歩のようにゆっくりだった。
──なんか全然上手く出来なかった。ちょっと素振りしただけで終わっちまったな
──疲れてないの?
──全然。なんなら走って帰れるぞ?あ、そうだ!さっき無意識で剣に風乗せたみたいなんだよな。お前あれ、解析できるか?
──あーあれね。魔力が巡ったのはわかったよ。でもなんで風だったのかはわかんないな。マルが軽くなれーって思ったから下から風が吹いたのかな?
──確かに軽くなった。便利そうだしちゃんとコントロールしたいんだよな。
──じゃあ、マルも魔術教室に参加だね。
──んー、お前が完成したらそれを教えてもらうわ。試行錯誤の過程は任せた!
──ずっるくない!?大変なんですけど?
──お?じゃお前も基礎練と素振りやるか?お?
──うんうん、適材適所だよね!わかった!任せて?
──手の平くるっくるだな!
あ、町が見えてきた。
今日は昨日より早い時間のためか、2、3人歩く人がいるだけだった。
ちらほら見える住人たちに挨拶をして、邸の方へ帰っていった。
昨日見た水色の髪の少女は今日はいないようだ。
あまり人の顔を覚えるのは苦手な方だが、何故かあの少女が気になった。不思議と印象に残っている。
──何?一目惚れ?
──違うやい!そんなんじゃありませんよーだ。俺、ロリコンじゃねーし!ボンキュッポンの永遠の悪女・峰不◯子ちゃんが理想だし!
──趣味悪っ!あんなのただの悪女じゃん!いつもルパン騙してさ。どこがいいのか全くわかんない
──ふっ、お子ちゃまには、あの良さはわからねぇか
──おっさん……
──はぁ!?誰がおっさんだよ!?男ってのはな…
などと馬鹿な言いあいをしてるうちに屋敷に着いた。
「アール、今日は親御さんはご在宅か?」
ナルコスが神妙な顔をして聞いてきた。
「……いえ、ふたりとも、あと2じかんほどは、かえってきません」
今日やらかした事の報告だろうか?広場の修繕の話だろうか?
「そうか、悪いが待たせてもらえるか?」
「だいじょーぶだとおもいます。バトラーにきいてみます」
今日はどうやら報告会になりそうだ。
まあ、面倒な事は大人同士で話し合ってくれ。
こういう時は子供で良かったとつくづく思う俺たちだった。
ナルコスさんは前世の丸留・恵留と同い年くらい。アラサーですね。
ルパン三世知らない人いたらスミマセン。
ググってみてくださいね♪