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第62話 備えあれば

生きてます!ちゃんと書いてます。


間近に迫る謁見に緊張するよね?

対策は出来るだけしておこう!

「あれ?」


ミーサーちゃんの部屋を出ると、いつの間にか廊下にナルコスが立って居た。

チラッとこちらを見たが、特に何も言われなかった。



──そうか、一応見張りとして残ってたんだもんな


──そうだったわね



「おしごと、ごくろーさまです」

前を通りすぎつつ、そう声をかけた。


「……ミーサーの部屋で悪企みか?」

確認のように聞かれた。


「ちがいます~あしたのたいさくです~」


全く人をなんだと思ってるんだろう?

ナルコスの中で、アールはすっかりイタズラ小僧に成り下がってる気がする。


「やっぱり悪企みだな」

済ました顔で言われた。


「──ナルコスせんせーも、おねがいしたこと、ちゃんとまもってくださいよ?」


まぁ、(たくら)みっちゃ企みだけども。けして“悪”ではない。

ナルコスの煽り文句は無視して、それだけ伝えた。


「分かってる。一度引き受けた仕事はする」

一呼吸息を吸い、真っ直ぐこちらを見て言った。


「……はい。よろしくおねがいします」

ペコリと頭を下げた。


「ああ。過酷な環境を克服したミーサー達だ。出来ればここにいさせてやりたいのは、皆同じだろう」

サラリとそう言った。


「…………ナルコスせんせー……」



──ナルコスってばよく分かってるじゃん。そうだよね、ミーサーちゃんを追い出したい訳じゃないんだよね


──おう……何だかんだ言ってもナルコスも頼りになる男だしな



「お前も……程々にな」

念を押すようにそう言った。


「はい!ぜったいふたりをまもってみせるよ」

胸に手を当て、そう誓った。



──じっちゃんの名に懸けて!じっちゃんいないけどな!


──また……せっかくカッコいいアールだったのに……



ナルコスはじっとアールを見つめ、コクリと頷き、また衛兵のように無表情に見張り役に戻った。



──真剣な気持ちは伝わったみたいね


──ああ、部屋に行くなとは言われなかったな



本当だったら、被疑者?のミーサーちゃんの部屋に行って対策を練るなんて事は、監視役のナルコス的には形だけでも止めないといけないはずだった。



──ナルコス以外のやつが監視役だったら、こうスムーズにはいかなかったかもな


──うん。タリル先生の命だからね。ミーサーちゃんに悪意が無いことが分かっていても、どんなにバカらしくっても、従うんだろうね……


──ほんとめんどくさいけど、ナルコスで助かったぜ



急いで部屋に戻り、紙とペンを探し、小脇に抱えた。

そして一番はじめに作って磨いておいた小ぶりの泥だんご2つを手に取った。


「そうだ……」

ついでとばかりにカタログも持っていく。


結構な荷物を抱え、監視役のナルコスの足元を通りすぎ、急ぎ足でミーサーちゃんの部屋にひきかえした。


***


「ミーサーちゃん、おまたせ」


「アールー」

「それ何?」


「へへ、ウルバスさんからもらったカタログみせてあげようとおもって。こういうの、みたことある?キレイだし、たのしいよ」

ドサッと荷物をテーブルに置き、カタログの表紙だけ見せた。

中を見せたらまた話が逸れてしまうのは目に見えている。


「さくせんかいぎがおわったら、みようね」


「わかった」

「何を話す?」


「──あのね……」



話し合いでおそらく話されるであろう内容を書いた紙を見せた。箇条書きでいくつかある。


①虚偽の申告について

(これがもちろんメインの話)


②滅んだハーピーの里について

(これも調査すると言っていた)


③これからどうするかについて

(もちろんミーサーちゃんはこれからもエルフリッド領で住んでもらう)


④新しく開発した魔法について

(これは、アールに対してだ。聞かれるかもしれないが聞かれないかもしれない)


「この①~④がはなしあいになるのかなって。でも④はいまかんけーないか……」


他にもあるかもしれないけど……主にはこれくらいだと思うのだ。


まずは①。これはもうどうしようもない。素直に認める。


次に②。これはもう一度父さんにきちんと話さないといけないだろう。覚えてる範囲で詳しく話せるといいが……。


そして③。……これが、①と関連しての説得どころだ。



複雑になるのでパスで話す事にした。



『まず①について。5年前は、ミーサーちゃんは5歳で、まだ小さな子供だったでしょ?里が滅ぼされてこわかったし、敵もエルフリッド領にいるかもしれないって思っちゃって……ただそれだけで、悪いことしようとしたんじゃないって伝えよう』


『うん……本当の事だもの』『そうだねー』


ミーサーちゃんがうんうんと強く頷いた。

サーちゃんが今言ったことを①の紙に書き起こしていく。


『②については……思い出すの、辛いよね……話すの出来る?』


『大丈夫。二人で話してたんだけど、あの時の奴らの種族とか、人数とか、詳しいこと伝えた方がいいよねってなったんだ。すっごく覚えてるもん!ね、ミーちゃん』

サーちゃんがふんすと拳を握り、悔しそうに言った。


『うん、あいつら見つかって欲しいしー。だからもう泣いたりしないよー?ありがとーね、アールー』

ミーちゃんがそう言ってヨシヨシとアールの頭を撫でた。


『……無理しないでね?』


『ふふ、アールーかわいい。後で特徴書いておくから、紙を何枚かもらえる?』

サーちゃんもそう言ってヨシヨシとアールの頭を撫でた。


『分かった。10枚くらいわたしておくね。他にも何か思い出したり、気になったこととかあったら書いておいて』


『うん』『わかったー』


10枚の紙を取り出し、②と記入し、渡した。


それにしても、なでなでヨシヨシされて、ペットな気分だ……。

ほわんとなりかけてハッと我に返った。


『えーごほん。で、①の結果しだいだと思うんだけど……次の③について。③はさぁ、5年前から領で生活するようになってからのことを伝えようって思ってるんだ』


『……この5年間での事ー?』『さっきも言ってたよね?意味あるの?』


『あるよ!だって、ちゃんと問題なく生活してたよね?泥棒したり、悪いことして捕まったりしてないでしょ?』


『もちろんしないよ!』

『そうだよーそんなのする訳無いー……あ、そういえば……サーちゃん、ほら、カゴ探してた時ー……』

『ああ、あれか。ゴミ漁ってて、警らの人に注意された事一回だけある』


『え!?』


『「危ないから手袋しなさい」って……』

てへっと笑いながらサーちゃんが言った。



『なんだ~びっくりさせないでよ!』

焦った。なんか捕まったのかと思った。


『他は覚えてないな』

『うん、私もー。普段はあんまり他人と接触しないようにしてたからー。住処も森の奥だしー。特に何も無いよねー?』


『うん、じゃあちゃんと生活してて“誰にも迷惑かけてない”で大丈夫だね』


『わかんないけど……』『たぶんー』


③の紙に“キュアノエイデスの二人は領律を守っています”と書いた。


『あと、もう1つ』


『うん』『なにー?』


『領に納めるお金ってどうしてたの?商売してたら納めるんだよね?』


『ああーそれねー』

『ちゃんとやってるよ!』


『そうなの!?てっきりやってないかと』


『と言っても、よくわからなくて、一度だけ納めに行こうとしただけなんだけど』

『うん、最低金額まで売上無かったんだよねー結局納めようとした分、返ってきたしー』


『あ、そうか……そうだよね。カツカツの生活してたんだもんね……』



──へぇ~最低金額とかあるんだ


──ああ、ほんとちゃんとした領律あるんだな!この世界レベルの文明水準だと税の返還とか、なかなかやらないもんじゃないか?父さん、凄いな……


──そうだね……うん……やっぱり色んな種族が入り交じるからこそ、そういうところ、はっきりさせてるのかな


──だな。うわぁ……攻略難易度上がった気がする……


──でも5年前まではそんなこと無かったんじゃない?ここ最近の話でしょ


──あーまぁそうか。よし、じゃそこら辺はあんま考えないでおこう



③の紙に“売上で領の税金を納めるつもりでしたが、最低金額に達しませんでした“”と、追記した。


『うん、じゃ後はナルコスせんせーがどれだけやってくれるかだなぁ』


『ナルコスさんに何を頼んだの?』

サーちゃんが不思議そうな顔をした。


『あのね、二人に関わったことのある人たちからしょーげんをもらってきてって頼んだんだ』

客観的証拠ってやつだな。


『証言?』


『そう!二人はこんな子だよ、だから大丈夫でしょ?って父様に思ってもらえるように』


『えー……何だか不思議……ナルコスさんってアールの事以外関わらないのかと思ってた』


『……そう?』

まぁ強面の人族だもんな。




「よし!おはなしはここまで!カタログみよう」

パンと手を叩き、話を打ち切った。



後片付けをして、テーブルに置いてあるカタログを持って、絨毯の上に直接座った。


「いっしょにみようー」


二人を手招きし、カタログを開いた。


「うん」「きれいー」


キャッキャッと3人でカタログを見ながら色んな話をした……。



もうすぐ領主夫妻は帰ってくるだろう。


こんな穏やかな時間は今限りかもそれない。


アールもミーちゃんもサーちゃんも、本当は不安な気持ちを押し隠し、楽しそうに語らうのだった…………。

次はお久しぶりに夫妻に会えるよ!



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