第60話 明日のこと
トムソンのことなんて、どーでもよい!と言われた。
興味ない人が大半って知ってたけど、かわいそうなトムソン……彼は意外と重要なんだよ!影うっすいけど、応援してあげて!
ミーサーちゃん……可愛すぎ……
──テレテレ坊主トムソン……
──ぷぷっ!照れますねぇ~照れますねぇ~テレテレテレテレテレますねぇ~!だ
「ふふ……ううん、ちがくて。ボクね、プレゼントしたいんだ。で、ジブンでかせぎたいなって……スライムレンクやさんってどうかな?」
「えっアール様が、稼ぐ!?」
「そう。マチにはボクくらいのねんれーのコたちも、はたらいてたから……へんじゃないよね?」
「それは……無くはないですけど。えぇ?アール様がですか?いや~~どうかなぁ~~」
「モンダイある?」
「うーん……スライムレンク屋は一般的には妥当ですよ。でも……」
「なに?」
「だって……自分でスライムを狩りに行くんですよ?あの大きさのスライムを生きたまま手に入れるのは慣れが必要だし、温室育ちのアール様には……不向きなんじゃないかな~と」
くすりと笑いながらそう言った。
「むっ」
──あっれぇ~~?トムソンってば、なーんか俺のこと馬鹿にしてるぅ?
──ちょっと、すぐ煽られないの!本当のこと言っただけじゃない?実際、魔物狩りなんてしたことないもの
──スライムだぞ?しかも生まれたてみたいな。あんなぷるぷるしたのに負けるわけないだろ
「そういうトムソンはスライムレンクをうったことあるの?」
「ありますよ?近所の悪ガキ共とよく森の湖に行ってました。スライムのたまり場知ってるヤツがいて、大量ゲットですよ。適当なジュースに入れて売ってたなぁ……なつかしいや」
「へぇ~~~スライムってみずうみにいるんだ!」
知らなかった!
やっぱあの半透明な体は水性生物かなんかなのか。
「いえ、何処でも居ます」
居んのかい!
「……じゃあかんたんじゃん。ボクだってできるよ」
「それはどうですかね?ふふ」
──あ、また馬鹿にしやがったな?何?俺に喧嘩売ってる?痛い目みるぞ?
──だから、煽られない。ん~見つけるのが難しいんじゃないみたいね。わかったわ、じゃあスライム狩りする際はトムソンについてきてもらいましょ
──ナイス
「そぅか~じゃあ、トムソン、こんどいっしょにスライムがりにいきましょー、そうしましょー。やくそくね!」
にこりと笑い、トムソンの手を取り、小指に小指を絡ませた。
「え!?」
急に手を握られ、トムソンがポッと赤くなった。
「ゆーびきーりげんまん、ウソついたらハリせんぼんのーます!ゆびきった!」
──これさぁ~昔“針千本”じゃなくて“ハリセンボン(魚)”だと思ってた
──どっちにしろ痛いわね
「は、針千本?なんですかそれ?」
「ん?ウソついたら、ハリを1000ぼんのんでもらうよ?ってやくそくしたの。ヨロシク」
「は?そんな理不尽な……アール様が勝手に約束……」
「よろしくね、トムソン!」
そのまま握手して、手をブンブン振った……
*****
(※二人の会話はハーピー語です)
その頃ミーサーちゃんは……
与えられた心地よい部屋で、二人は並んでベッドに座って話していた。
「ねぇサーちゃん、とうとう、領主さん、帰ってくるねー」
ミーちゃんが前を向いたまま、サーちゃんに話しかけた。
先ほどリリスが、今日遅くには領主夫妻が帰宅するとの連絡があったと、知らせに来てくれたのだ。
「うん、そうだね」
とうとうきたかと思うとやはり緊張する
「……やっぱり怖いねー……」
「うん……」
ふうーっとサーちゃんが大きなため息を吐いた。
「もし、追放になったらどうしよう?」
「追放になったら……そうだね、アールはああ言ってくれたけど、もしそうなったら……悲しいけど……迷惑、かけたくないかなー」
「…………うん、せっかくアールとお友だちになれたのに。私たちのせいで、お父さんと喧嘩とか、してほしくないよね」
「そうー、たった一人のお父さんだもんねー。私たちにはもういないけど……アールには、仲違いして欲しくないー。大事にしてもらいたいなー」
ミーちゃんが足をぷらぷらさせ、天井を見上げながらそう言った。
「ねぇ、ミーちゃん。私たちもさ、5年前とは違って、強くなったよね?」
サーちゃんが、指差し確認するように人差し指を立てた。
「うん、装飾品作る腕もあがったー」
「魔物を狩るのもうまくなった!」
中指も立て、ピースサインようにした。
「それに夜目が効くようになったー」
ミーちゃんが自分の目を指し、嬉しそうに言った。
「うん!夜もそんなに怖くない。モフに感謝!」
「変な鳥みたいだけど、ほんとに感謝ー」
ふふふと、二人で笑いあった。
「美味しいもの食べたよね?」
「うん、贅沢したよー」
「シチュー美味しかった。プリンも」
「モフちゃん、大好きプリンー」
モフのプリンへの執着は相当なものだった。お皿をぐるんぐるんなめ回す姿はちょっと怖い。
「あ、アールの作った泥団子、一つもらっていいか聞いとかないとー」
「ピカピカになるんでしょ?楽しみだね」
「花冠も作ったねー、アール可愛かったー」
摘んでも摘んでもなくならない不思議な花畑
を思い出す。
「モフがナルコスさんに花冠被せた時、面白くってお腹がよじれそうだった」
あははははと、笑いあった。
「お風呂で怒られて…… 」
「リリス、怖かったねー」
シーッと唇に手をやり、声を潜めた。
「…………ここに居たいね……」
「居れると……いいねー……」
ごろんと二人でベッドに転がった。
天井を見ながら、明日のことに思いを馳せた。
「アール、いい子ー」「……うん、優しい子」
タリルにくってかかっていったアールを鮮明に思い出す。
二人の為に、泣きながら抗議してくれたアールは、今でも二人の脳裏に焼き付いている。
里を出て、あんな風に自分たちの事で泣いて怒ってくれた人は初めてだった。
世間を欺き、いつばれるかとビクビクしながら生きてきた5年間が、アールの優しさに触れた事で、きれいに浄化されていく気がしたのだ。
故郷を思い出させるような綺麗な花畑を作りあげてくれ、なんの気兼ねもなく一緒に遊んだ。
渇いた大地に慈雨が染み込むように、じんわり
じんわりと、二人の心を癒してくれた……。
「………………大丈夫だよね……ここを追い出されても……生きていけるよね……」
サーちゃんがきゅっと震える手でミーちゃんの手を握った。
「うん、二人で……きっと……頑張れるー」
握り返すミーちゃんの手も、小さく震えていた。
「覚悟は、出来てるー」
「私も」
よいしょっと起き上がり、握りしめた手を確かめるように、握手のように、軽く振った。
「……アールは大切なお友だち。モフも……。もし、追放だったら、黙って出ていこうねー」
「うん、その時は……アールに見つからないように、こっそり出ていかせてもらえるよう、領主様にお願いしよう。見つかったら……きっと止められる。そしたら」
「「きっと、お父さんと喧嘩になる」」
「アールだもんね」
「うん、優しいからー…………」
お互いの指を絡め、ぎゅうっとしっかりと手を握りあった。
「……ここを出たら、お母さん探しに行こうー」
「うん、きっと……いつかは見つけられる」
「今まで二人でこれたから……」
「これからも、大丈夫ー」
ふっと、お互い確かめるように、目を合わせて静かに笑った。
色んな思いが込み上げてくる。
顔をあげ、天井を見た。
溢れそうな思いで涙が溢れないように、まばたきもせずに、天井を見つめ続けたのだった……。
子供だって頑張って、意地を張るんです!ふんす!




