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第59話 アオハル~

あまずっぺえ!

ヒトを好きになるきっかけって、ちょっとした事だったりするよね。


まぁ、だいたいはじめから好意があるからなんだろうけど……。


「……うん……よし、この話はおしまい!カタログの続き見よう」



──ちょっと、いつの間にかまたマルアールになってるよ


──ん?ああ、そうだな。ま、いいじゃん、細かい事は


──ちゃんと装飾品とか、インテリアコーナーも見てよね?


──わかったわかった



考え出すときりがないので、頭を切り替え、今は目の前のカタログに専念することにした。



モフを膝に乗せ、じっくり見ながらページをめくっていく。

色鮮やかで精密な絵は、見ているだけでも楽しかった。

また、ウルバスが自慢していたように、品数の種類も豊富だった。



「へぇ~折り畳み式ナイフか……“色んな機能がついてます。纏められて持ち歩きに便利!”だって」



──これ十徳ナイフじゃん


──ハサミついてる


──見たことない金属片もついてるな。どうやって使うんだろ……


──こっちは、ワラ?あ、違ったわ……虫……げぇ!?虫だって!何でこんなワラみたいな虫が生活雑貨コーナーにあるのよ!?


──虫取する虫とか……ハエ取りみたいな……


──ああ、ハエトリリボンみたいな?……モソモソ(うごめ)くハエトリリボン……気持ち悪っ!



「ねぇモフ、これ何に使うか知ってる?」


「ん?これは……食べる?」


「いや、食べないだろ!あ、鳥だから虫は食べる?いやでもこれ生活雑貨コーナーだよ。ほんと意味わかんないな」

クスクス笑いながら次々とページをめくっていく。


モフは飽きたのか、窓辺に置いてある製作途中の泥団子を見に行ってしまった。


「モフ~もう見ないのー?」

ダイエットリング、ランプ、これってソーラー時計?


何のための道具なのか想像のつかない商品もあり、興味が尽きない。


「あ……これいいな」


それはA4くらいの小さな黒板だった。

アナログタブレットみたいで勝手が良さそうだ。字は読めるけど、書くのはいまいちなのだ。これがあれば何度も練習出来そうだった。高い紙を無駄にしなくてすむ。


……この黒板が中銅貨12枚……チョークが12本セットで中銅貨5枚、合わせて1700円くらいか。


「……高いのか安いのかよくわからない……」



──スライムレンク大が一杯100円で、スースが一串300円、ワッカが1000円だったから……


──ワッカ食って、スースの串焼き2本食って、スライムレンク大を飲む……うん、食い過ぎだな。腹が破裂するわい。やっぱ高い気がしてきた


──アールはお金持ってないんもんねぇ。勉強に使うって言えば父さんが買ってくれるだろうけど……自分で自由に買いたいなぁ。親からもらったお金でプレゼントって何か違うでしょ?


──まぁ、な……ん~……じゃあ、バイトでもするか?


──え……そんなの出来る?


──スライムレンク屋で売り子の手伝いとか。あれってレモネードみたいなもんだろ?で、売り上げ金の半分もらう


──いや、それは暴利でしょ!


──そうか?あの少年だったら7割請求してもOKしそうだけどなぁ。アールの呼びこみだけで人は集まると思うし


──そんな、少年の恋心に突け込むような事をへろっと……でも……そうね、確かに。あの子はアールと一緒に働けてハッピー、アールは稼げてラッキーか……


──だろ?ま、他にありゃそれでもいいけど



「モフ~なんかいいバイトとか知らない?」

カタログの文房具コーナーを見ながら、モフに相談してみた。


「????美味しいものなら知ってる!」


「あ、ごめん、相談相手間違えた。リリスに……いや、ナルコスか……タリル先生はどうだろう?それともバトラー?」

ぶつぶつと独り言を呟いた。



──バイトとかってどうなのか聞きたいだけだから……変にストップかかんのやだよな……バトラーとかリリスやメイドさんは無し


──うーん、やっぱりナルコスかタリル先生かな?


──ナルコスは人族だから事情が違うか?タリルは……年寄りすぎる気がする。もっとこう若者で……軽く話せる…………そういえば、他にも誰か若いのがいたよな?……記録係で……名前なんだっけなぁ……?


──いたような気がする……こう……うすぼんやりした……名前なんだっけ?




その時、ドアがコンコンコンと鳴った。

「アール様、リリスです。よろしいですか?」


「リリス、どーぞ」

パタンとカタログを閉じ、ドアに向かい、迎え入れた。


「先ほどご領主様からご連絡があり、今夜遅くにはお戻りになられるとの事です。明日はちゃんと会えますよ。良かったですねアール様」

ニコニコ笑顔でそう報告した。


「おとーさまから!?」


おお、今度こそ本当に帰ってくるのか!やったね。でも……


「……おかーさまも、ごいっしょ?」

心配そうにリリスを見つめ、問うた。


「──っアール様……なんて(つぶ)らな瞳で……こほん!ええ、もちろんでございます。二人揃ってお帰りになられますよ」


「やった!おかーさまにおあいするの、ひさしぶりなきがする」


頭のモフを腕にとり、ぎゅむっと抱きしめ、んーっとスリスリした。


「くぇ!」

ベロっとモフの舌が飛び出し、変な顔になったが気にしない。


ほんとに良かった、明日には会えるんだ。

でも……嬉しいと不安が9:1ってとこか。

ミーサーちゃんと話さないとな……。



「ふふ、アール様……ではご夕飯までしばらくお待ちくださいね」


「うん、あ、そうだ。ボクについてきて、いろいろきろくしてたオトコのひと……こう……かげのうすい…………だれだっけ?」


「──トムソンでございますか?」


「そう!トムソン!そうだ、そんななまえだったね」


良かったぁ思い出せた。

いや、思い出してはいないか。


「あのひとって、トシはいくつ?コイビトいるの?」


「トムソンですか?18歳になります。恋人は……どうでしょう。あまりそういうお話は聞いた事はございませんが……」


「え!?18さいなんだ!すっごくわかいんだね~おどろいた。ふーん、じゃあ、よんでほしいんだけど」


「トムソンをですか?……あの、彼が何かしでかしました?」


「ちがうよ?ちょっときいてみたいコトがあるだけ。18さいなら、ちょうどいいかんじだなぁって」


「……お若い方がよろしいのですか?」


「うん!これからのこともあるし……あ、トムソンよりわかいヒトいる?」


「若い……ふぐぅ!……いえ……トムソンが、一番の若手になります。畏まりました……すぐ、こちらに来るように……申しつけます」


リリスが何やらショックを受けたように胸を押さえている。どうしたんだろ?


「よろしくね!」

ま、いいか!


「はい、では失礼します」


なんとなく釈然としてないようだが、そう言って部屋から出ていった。なんとなくリリスの背中が哀愁を帯びている気がしたけど気のせいだろう。



「よーし」



──うん、意外な若者トムソンね、覚えたよ。18歳って……まだ高校生じゃん


──エルフの年齢ってわっかんないもんだな~タリルだっていくつだよ?父さんの家庭教もやってたって言ってるし……マジ分からん。てか、父さんもいくつなんだ?母さんだって……。100年戦争の話してたし……100歳以上なのは確かだよな……聞くの怖っ


──まぁ、いいんじゃない?本人も途中で正確な年齢は分からなくなりそうだし。見た目年齢=年齢で


──少なくともスライムレンク屋の少年はどうみても若い。やっぱトムソンだよな。他にも色々聞いてみたいぜ


──うーん、私はやっぱ恋バナとか聞きたいなぁ~トムソンって好きな子いるのかな?そもそも一般エルフっていくつくらいで結婚するんだろ?


──さぁーなー……アールはもしかして婚約の話とか出んのかね……


──いや~無理でしょ。男女どっちと婚約するのよ?だいたい、婚約の前に恋愛でしょ


──えー…………でも俺、恋愛対象って女子なんですけど……


──知ってるよ!あ~~やだぁ~、丸留(まる)時代を思い出しちゃった。言っとくけど、二股とか無しですから!


──……ハーレム……


──何か言った?


──いえ、なんでもゴザイマセン



「……自分の恋バナは……うん、深く考えない事にしよう……」


思考を停止し、カタログを見ながらトムソンを待つことにした。



*****



「トムソン、アール様がお呼びよ。すぐにお部屋に行ってちょうだい」


メイド長のリリスが執務室にやって来てそう言った。


「アール様がオレに?何の用ですか?」


「さぁ?聞いてないわ。ただ……若い子と話したいみたいね。この館でアール様の次に若い従業員はあなただからじゃないかしら」


リリスがジトっと羨ましそうな目でトムソンを見た。


「……分かりました。なんか、緊張するな……」


「後で詳しく何の話をしたのか教えてちょうだい。乳母としてちゃんと知っておかないとね」


「…………はぁ」


アール様がオレに用事?

いったいなんだろう?……大変な予感しかしないけど……。


書いていた書類を閉じ、机の上を整理した。


……アール様ってはじめに思ってたのと全然違うんだよなぁ……まさか、あんなにやんちゃ坊……げほっ!活発なお子さまだとは思わなかった。

見た目はなぁ~、ほんっと天使みたいなんだけどなぁ~。

いや、仕事なんだから文句は言えないけど……でもなぁ~もっとこう、ふわふわした感じだと思ってたんだよなぁ~。

……人は見かけによらないって事か……。


スーッと息を吸った。


「よし……では行って参ります。バトラーさん」


「ああ、失礼のないようにな」


「はい。あ、やっぱりこれも書類におこしたりします?」


「……うむ。公務では無いが……アール様の事は気になさるだろう。とりあえず練習も兼ねて報告書にまとめてみてくれ」


「はい。分かりました」


ペンと速記用のノートを持ち、アールの部屋へと向かった……。



*****



コンコンコンとドアが鳴った。

おそらくトムソンだろう。


「はーい、ちょっとまってね~」


カチャリとドアを開けると、中肉中背の特に特徴のない、影の薄いぼんやりした顔の男が立っていた。



──うーん……あんま覚えてないけど、トムソンって、多分こんな感じだったと思う……


──うん……印象、薄いな……



「……まぁ、はいってよ。トムソン」


「は、はい!失礼します」

ペコリと頭を下げ、部屋に入った。


緊張しているのか、手と足が同時にでている。



──ぷぷ、カワイイ!アールの部屋に入るなんてはじめてだものね


──なあ、これってナンバってやつじゃないか?ん……?もしかして、この影の薄さといい……トムソンは忍者なのかもしれないぞ


──ええ?リリスの隠密スキルもだけど……なるほどぉエルフリッド家は、忍者の大親分だったりして



などとバカなやり取りをしつつトムソンに座るように促した。


ウルバスからもらったインスタントの紅茶を淹れた。お湯を注ぐだけの簡単な物だが、なかなか美味しかった。


……ティーパックより簡単だよな。ごみも袋だけだし、旅のお供にぴったりだ。



「あ、あの、リリスさんからアール様が私にご用があるとお伺いしたのですが……いったいどの様な……?」

カップを置き、おそるおそるといった調子でトムソンが聞いた。


「あーうん、たいしたことじゃないんだけど……トムソンってさぁスキナヒトいる?」

と、単刀直入で聞いた。


「は?す、好きな人、ですか!?」


トムソンは予想もしなかった質問に、面食らったような声をあげた。



──マルってば……いきなり好きな人とか聞いたらビックリするわよ


──そうか……俺たちにとっては繋がってる話でも、トムソンにとっては急な質問だったか……?



しばらく床を見つめていたトムソンだったが、何か決心したように顔をあげ、ちょっと頬を染め話し出した。


「────あの……好き……かどうか……分かりませんが……気になる方なら……おります…………」


おお、マジか!


「えっいるんだ!?そっかぁ~~え?だれ?ボクのしってるヒト?」

どん!っと押され、エルアールになった!



──お前!何いきなり乗っ取ってんだよ


──シャラップ!この手の話はエルさんでしょうが。うわ~恋する18歳なんて、キュンキュンするぅ~~


──……たいした経験も無いくせに……


──シャーラッープ!!



「その…………誰にも言わないで下さいよ?」


「もちろん!いうわけないよ。そんなたいせつなこと……」

くぅ~~ワクワクするぅーー!



「…………メイドの……エイナさんです…………」

恥ずかしそうに告白した。


「エイナって、あの、のほほーん……げふん!おだやかなかんじの、かわいいヒト!」



──へぇ~~トムソンはああいうタイプが好きなんだ。なるほどなぁ~


──なんか、意味深な言い方ね


──エイナってさ…………いや、お子ちゃまには分からんから言わない。いいんじゃないか?向こうがトムソンを相手にするかが問題だけど


──ちょっと、マルってば辛辣よ?


──そりゃ普通にかわいい子だし。チェリーボーイトムソンに太刀打ちできるかね?



「……トムソンはエイナのどこがいいの?」


「私がエルフリッド家に来たばかりの頃、気負いすぎて失敗ばかりしてたんです。で、同じく日の浅いエイナと色々話をして……彼女と話してると悩むのがバカらしくなるんですよね~心が軽くなるっていうか…………なんか、いいなぁって……」

照れながら語るトムソンは恋する少年だった!


「そうなんだ~そういうのたいせつなコトだよね!ありがとう、はなしてくれて……ボクもおうえんするからね!」


「ええ?……それは、別に……あの、お話ってそれだけですか?」


モジモジしながらトムソンが聞いた。

平和だなぁ

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