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第56話 ウルバスの話

色んな話を聞きたいのです。

「ウルバスさん、アールです」

ドアをノックして声をかけた。


「あ、はい!?ただいま参ります!」

と、何やらガタガタと片付けるような音が聞こえた。



──さーて、吉と出るか大吉と出るか


──いや、それ良い方しかなくない?吉と出るか凶と出るかじゃないの?


──なんでだよ。凶な訳ないじゃん。俺らにとってはいいか、すごくいいかしかないだろ


──んん、そうかなぁ?


──じゃなきゃ訪ねたりしない。まぁ任せろって



実は離れの部屋に入るのは始めてだった。

特に用事がないので訪れる機会がなかったのだ。

……なんか探検みたいで面白い。後で部屋の外もうろついてみようか。



カチャリとドアがあいて、ウルバスが出てきた。何やら汗をかいていた。


「ようこそ、アール様。わざわざお越しいただくなど恐悦至極にございますよ」


「おおげさですよ、ウルバスさん。はいっていいですか?」


「はい、どうぞ」


アールに続いてナルコスが入った。

一瞬ウルバスに緊張が走ったようだが、張り付いた笑顔は変わらなかった。



──ウルバスさん、妙に緊張してない?何かあったのかな?


──ああ……たぶん何かあったんだろな。まぁ、詮索しないでおこう。俺たちには関係ないって事で。とにかくカタログ見せてもらおうぜ



席に座ったとたんに、ウルバスがお茶を淹れてくれた。


それは、薔薇とミントのような爽やかな香りが混じった、不思議な香りだった。


「…………はじめてのかおりだ……」


「アール様は鋭いですね。こちらは新しい茶葉でして、まだまだ市場には出回っておらんのですよ。お試しに飲んでいただければと淹れてみました」


「へぇー。ではいただきます」

そっとカップを持ち、口に運んだ。

とたんにフワッと甘い香りがたちこめた。



──わぁ、甘い香り。蜂蜜?違うな……メイプルシロップ?……味はどうかな?


コクリと飲んだ。


──あ、思ったよりくどくない。爽やかな味だ


──うん、甘い匂いがほっこりするわ


──俺にはちょっと甘ったるいな



「──いかがですか?」


「そうですね……このみだとおもうけど、ボクならケーキにあわせようとは、おもわないかな……」


「ほう……なるほど。ナルコスさんはどうでしょうか?」


「匂いが気になる。女子供向けだ。味はまぁ、いいが……」


「なるほどなるほど、ではここのメイドさんたちにこちらをサンプルとして差し上げても問題ありませんでしょうか?」


「そうか!うん、リリスはよろこぶとおもいます。あ、ミーサーちゃんにもあげたいな……」


「それではこちらはアール様にもプレゼントさせていただきますよ」


「ありがとーございます」


「ところで……アール様はどのようなお話しがございましたのでしょう?」


「はい。ウルバスさんはおおきなまちの、しょーにんとききました。ボクはここからでたことがないので、まちのはなしをききたいのです」


「おお、そうでしたか。どのようなお話しをお望みですかな?」


「どんなものがはやってるとか、こんなヒトがいるよとか、なんでもいーです」


「アール様は、好奇心が旺盛なのですね、わかりました!このウルバスが知る限り、どんな事でもお話ししますよ」


そう言ってウルバスは面白おかしくシーロンの町の事を語りだした。

流行りの食べ物や、ファッション、人気のスポーツや観光地など、色んな分野にわたり話してくれた。

シーロンでは亜人は珍しくなく、数は少ないが混血もいるそうだ。


「では、ボクたちみたいなエルフなんかも、いっぱいいてるんですか?」


「いえ、あまりお見かけする事は無かったですね。直接お話させて頂いたのは、こちらのイリュン様が初めてです」


「そうなんだ……」


そうして知ったことは、人族中心の国にエルフはあまりいないという事。コボルトやドワーフはよく見かけるが、ハーピーに至ってはウルバスでさえ見たことはないという事。



──やっぱり、そう簡単にはいかないっぽいな


──うん、あんまり根掘り葉掘り聞くとナルコスからストップがかかりそうね



「ウルバスさんとおはなしするの、たのしーです。これからもおはなしききたいな……」


よし!久々に発動するぞ!


必殺かわいくおねだりポーズver.1!


首を傾かしげ、唇の前で手を合わせて相手の目をみつめるゾ!



「!アール様……それはその……ワシこそ光栄ですぞ」

うっすら頬を赤くしてウルバスが潤んだ瞳で照れながら言った。


どうやら効果はバツグンのようだ!


「お、お茶を淹れなおしますね!あ、そうだ……いい茶菓子が……」

と、嬉しそうに、いそいそと用意をしに行った。



──おうおう、ウルバスのおっちゃん、顔が赤いぞ。ナルコスに効きが悪いから、人族には効果が薄いのかと思ったけど、そうじゃないみたいだ。やっぱりアールの魅力に逆らうのは至難の技って事か……?


──そうね、効果が薄いのって、ナルコスぐらいなのかも?やっぱり元から変なのよ、あの人



チラッとナルコスを見た。

あれ?こっちを見てないけど……。


視線を追いかけると、ウルバスの黒いショルダーバックを見ていた。

そのショルダーバックは一見普通のバックに見えたのだが……あれ?なんか動いてる……?


バックの口が開いていたのか、何やら蠢いていた。生き物が入っていたのか?


と、ヒョイっと中からグレーのモフモフが現れた!


「モフ!」

思わず小さく叫んでしまい、あわてて口をおさえた。



──ちょっと!なんでモフがあんな所から出てくるの!?


──いや、俺が知る訳無いだろ?あ、ナルコスは何か知ってそうだぞ。さっきからバックを凝視してたみたいだし


──ていうか、あれってウルバスさんの物じゃない!勝手に人のものを触っちゃダメだよ!早く回収しなきゃ!



さっと立ち上がり、モフの所に行こうとした。

ガシッと肩を押さえられた。


振り向くとナルコスが肩を押さえたまま、無言で首を横に振った。


……何!?どういう意味?あーくそ!こいつとはパスが繋がってないんだよな!何を考えてんのか意味わからん!



──エル、ナルコスにパス繋げられるか?


──ええ!?同意なしだとちょっと無理じゃない?第一魔力が……ああ!そうか、新種だから……


──ああ、どうせまだ魔力の取り扱いなんか上手く出来るわけないだろ?今ならこっちの思い通りに出来ないか?何言いたいのかわからんから不便で仕方ない


──なるほど……ふふ……やってみる?


──おう!物は試しってな!



肩に置いてあるナルコスの手を両手で握り、ニコリと笑った。


ナルコスが何事かと驚いた顔でアールを見つめ返した。


「ファーリー」

ズッと侵食するように合わさった手から魔力を流していく。


「!!」

ナルコスがビクッとして手を剥がそうとしたが、もう遅いぜ!



──よわっ!何この魔力。簡単に捕まえられたよ?


──ああ、不思議な感覚だな。こう……くっくっくっく……面白い…………


──ねぇ……ふっふっふっふ。よし、繋いだよ



悪の組織の幹部のような黒い笑顔で話しかける。


『ナルコス先生、うまく繋がりましたね』

おお!滑らかに話せる。やっぱりパスは便利だ。


『お前!?何を勝手なことを……!くそ、解除出来ん!』


何やら微弱な抵抗を感じたが、こんなのは何の意味もなさなかった。


『ムリですよー。ナルコス先生は弱いもん』

圧倒的にアールの方が強い。蟻と象くらいかな?いや、もっとありそうだ。


『……オレが、弱いだと?』


『あ、魔力がですよ!?ヘロヘロの細い糸みたい』


『当たり前だ。魔力があるだけ珍しい……って、そんな事はどうでもいい。何故急にパスを繋いだ?』


『あ、そうだ。どうしてモフを回収するのを止めたんですか?それを聞きたかったんです』


『ウルバスのバックは魔道具だ。生き物は入らないと言っていたが、モフが入れるなら嘘をついたことになる。様子を見ようと思ったんだ』


『なるほど。でも、モフを生き物と断定するのは、早くないですか?モフは高位精霊でアストラル体みたいなものでしょ?』


『……お前、本当に5歳か?なんでそんな言葉を……そういえば妙に滑らかに話すな……』


『そうなんですよ。パスだと何故だか上手に話せるんです!えへへへへ』


『まぁ、いい。とにかく様子を見る。いいな?』


『わかりました』



「……アール様、ナルコス様。お二人ともどうかなさいましたか?」


ウルバスが新しいお茶と、何やら見たことのないお菓子を盆に乗せ、こちらを見ながら不審そうな顔で尋ねた。

モフってなんだかよく分からない……

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