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第52話 招待

ウルバスさん、じわりと侵略中。


強気なアールはカッコいい。

頑張れーアール!

デザートも食べ終わり、タリル達はそろそら帰ろうかと席を立とうとしたらこちらに向かってくる人族の四人組がいた。


「あの、すみません」

と、声をかけられた。


「──はい?」

タリルがにこやかながらも警戒した表情でその声をかけてきた人物を見た。



──うわ~ナルコス以外の人族だ。ナルコスももう純粋じゃないし、ちゃんとした人族って改めてはじめましてだな


──ふふ、なんかこの人達“冒険者”って感じよね。ファンタジーでさぁ、出てくるじゃない?


──ああ、分かる!“魔王を倒す旅に出ている”とかな!



「初めてお目にかかります。私は東カイロニア王国のシーロンという街で商売を営んでおりますウルバスと申します」

ペコリと頭を下げ、自己紹介した。


「──はい。ウルバスさん、それで?」


タリルはまだ相手の目的が分からないのか、名をあかす気はないようだ。


「はい。今回イリュン様のご紹介で、こちらの御領主様とお取り引きのお話をさせていただく事になっておりまして。あなた様が御領主様の片腕とお聞きしましたのでご挨拶に伺わせていただきました。以後お見知りおきを……」


「ああ、貴方が……。はい、イリュンから聞いております。ずいぶんお早いお着きですね。一月くらいかかるかと思っておりましたが……」


「え!?ヒトゾクのくにと、とりひきするんですか?」

驚いたようにアールが話に割って入った。


「──まだわかりませんよ。ウルバスさん、私はタリル・シルヴィオーラと申します。エルフリッド様の相談役をしております」

チラッとアールを見た。


アールがキラキラした目でタリルを見ていた。それは紹介されるのを今か今かと待っている期待の視線だった。


「………………こちらが、ご子息様のマルティネス・アール・エルフリッド様です」


「マルティネス・アール・エルフリッドです!アールとよんでください!ウルバスさんはどんなしょーばいをされているのですか?」


むいっと身をのりだし、きれいな瞳でウルバスにかぶりつくように質問した。


「っ!は、はい、私どもはゆりかごから墓場まで様々な品を取り扱っておりまして、売りたいものと買いたいものとの橋渡し役をさせていただいております」



──なるほど、商社マンか


──本!本が欲しいわ!小説とかないのかしら?


──俺は地図だな。観光案内とかの本は俺も欲しい。あ、あと武器も見てみたいし……うわぁ!取り扱いカタログとかないのか?



「はい!」

挙手!


「──アール様、今は授業中ではありませんよ。とりあえず、邸へ帰りましょう。ウルバスさん、あなたはどちらにお泊まりですか?連絡を差し上げますので……」


「それが、今日こちらに着いたばかりで、まだ宿は取っておらんのです。腹が空いてしまって……先に食事をしておりました。ハハッ」

ポンッとウルバスが自分の腹を叩いた。


「そうですか……では宿が決まったら」


「なら、ウチにとまればいーんじゃないですか?」

すかさず提案した。


「!?アール様?」


「「「「え!?」」」」

ウルバス一同が声を揃えて驚いている。


「どうせ、おとーさまとおはなしするんでしょう?だったらそのほうがはやいとおもいます。ボクもいろいろききたいし。ね?」



──カタログ見たい。車とかあんのかな?人族の魔道具はかなりのもんって聞いてるし、ぜひ見てみたい!


──うんうん、アイドルとかいるのかな?そういうファッション雑誌とかあったら見てみたい!


──それに……


──うん……一番知りたいこと……



「──アール様…………。ご自宅に初対面の者を招くなど……」

タリルが困ったようにその提案を拒否しようとした。


「だいじょーぶだとおもいます。まもりは、さいきょーですもん」

アールはにっこり笑ってそう言った。


金と銀の吸い込まれそうな美しい瞳を輝かせ、じっとタリルを見つめた。


「!?」

と、突然タリルが驚いたように目を見開き、アールを見つめた。


『……タリルせんせーはだいまどうし、ナルコスせんせーはいちりゅうのけんし、モフはこういせいれい、ミーサーちゃんはハーピーです。せんりょくてきに、だれにもまけないとおもいます』

タリルに強引にパスを繋ぎ、そう話しかけたのだ。


……この組み合わせ、めっちゃ強いと思う。たぶん無敵だろう。ウルバスの後ろの3人もかなり強そうだけど、負けるとは思えない。不思議とそれは分かる。


『──もし、なにかしようとしたら、だれかがきづきます。そのひとたちが、おうちのだれかをきずつけるようなことがあれば、ボクがゆるしません。だから、だいじょーぶです』


アールが5歳とは思えない、全てを見通しているかのような確信した笑顔でそう宣言した。



──タリルの心配は分かるけど、手広くやってる商人なら、捕まえられたハーピーの行方を知ってるかもしれないしな


──ええ。ミーサーちゃんの仲間達の事が聞けるかもしれないものね……



ハーピーの村を襲った連中……人族もいたと言っていた。すぐに見つけられるかどうかは分からないけど、少しでも手がかりになるようなら、ぜひツテを作っておきたい。


「──…………いーですよね?タリルせんせー」

今度は口に出して言った。


「………………はい…………アール様の思う通りに」

タリルがおもむろ胸に手を当て、アールに恭しく頭を下げた……。



「「「「???」」」」

ウルバス達にはいったい何が起こっているのか分からなかった。


ただ、微笑みを浮かべた美しいその少年が、いかにも高位のエルフ然としたタリルよりも、更に上の存在なのだと肌で感じたのだった……。



「と、いうわけで、ウルバスさんたちはボクのおうちにとまるといーですよ!」


「えっ?あ……そ、そう、なのですか?それは、ありがたいことです」

ウルバスがしどろもどろになりながら、後ろを振り返った。


「君らはどうする?ワシはもちろんお邪魔するが……」

小さい声で聞いた。

何故だかあまり声を出せなかった。


「俺らもお願いしてもいいですかね?こんなチャンス、二度とないと思いますんで……」

ベジーもコソコソと応えた。


「自分はリーダーについていきやす」

ケールがヒソヒソと言った。


「当たりじゃない。行くわよ、もちろん」

アニスも囁きのような声で応えた。


「分かった。こほん!あの、この3人もよろしいでしょうか?」

自分も一人でエルフリッド領主の家に乗り込むには心細かったのだ。

気を取り直し、気合いを入れ、尋ねた。


「その人たちはどなたですか?」

タリルが後ろの3人を見つめ、聞いた。


「あ、はい、俺はこの冒険者パーティー“風ノ旅ビト” のリーダーでベジーといいます。5年前に一度ここに来た事があって、ウルバスさんに道案内兼、護衛として雇われました……あの時とはずいぶん違って驚いてます……」

ベジーが感慨深気に言った。


「あたしはアニス。魔術師よ」

「ケールっす。自分、拳士をしてます」


タリルは黙って頷いた。

「では、そちらの冒険者さんたちもお越しいただいて結構です。ただし武器は預からせていただきますが」


「それはもちろん」

ベジーが頷いた。


「では参りましょうか」

タリルはにこりと笑い、皆を促した。

そういやナルコスって何族?

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