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第50話 ブルーオーシャンがいい

はたから見たアール一行。

中身を知らなければ、アールの美しさは10倍だね!

皆で町を満喫中。


美味しいステーキ食べに行きたい。

神戸牛のシャトーブリアン食べたい。

「なかなか賑わってるな……」

町を歩きながらウルバスが誰ともなく呟いた。


「おお、俺らが来た5年前とはえらい違いだ。まぁあの時は町をうろつくって事は無かったが……」

冒険者“風ノ旅ビト”のベジーが応えるようにそう言った。


「……ほんとびっくり。エルフの里っていうから、こう、こじんまりした町でエルフばっかり居るんだと思ってたわ。まさかこんなに亜人がいるなんてね」

魔術師のアニスが感心したように呟いた。


「ああ、自分もこんな町は初めてっすよ」

拳士ケールも目を見張り観察するように町を眺めた。


入領の際、厳密な審査が行われた。

身分証を求められ、書類に記入させられ、血判を押させられた上に水晶で審議されるのだ。

そして首飾り型の通行手形を渡され、首からかけておくように言われた。領を出るときに返却するらしい。

もちろんウルバスたちに後ろぐらい所はないので滞りなくそれは済んだが……。


なかなか厳しいと思ったが、中にはいるとうってかわって自由だった。町には活気が溢れ、自分のイメージしていたエルフたちとは大違いだった。


「あ、スライムレンク屋がありやすよ。へ~子供も働くんだ。スースも売ってら……結構並んでんな……」

ケールが物珍しそうに言った。


そう言われて見ると12・3歳の子供たちがちらほら働いていた。


後ろに大衆食堂を構え、スライムレンクの店は屋台のような移動式出店になっていた。

少年が一人で切り盛りしているようだった。


なるほど、飲み物だけ単体で売ってる訳か……。

人族の多いシーロンで売ってるラモンネードのような物だな。

亜人が多く、魔力を持つものが多いこの領ではそれがスライムレンクになる訳だ。


エルフの生活というのはあまり他に知られていない。

目に写る何もかもが新鮮で、ウルバスは興奮していた。


「なんか、スースの匂い嗅いでたら、腹へってきたなぁ~ウルバスの旦那、どっかで食べやせんか?」


「ああ、そうだな。ワシも減ってきたが……そうだな、はてさて、何処がいいのやら」


キョロキョロ辺りを見回していると、ふと毛色の変わった四人組が目に入った。


いかにもエルフという感じの薄い紫の長い髪をした男が馬を連れて店の前に立っていた。

その男は、青色の髪をした双子の少女と、そして、見たこともないような闇夜の月のように輝く真っ黒な髪をした少女を連れていた。


──あの黒髪の少女は、五歳くらいか?エルフ……なのか?あんな髪色……エルフに存在したのか……?あ、耳が……やはりエルフか。いや、しかし……なんとも……美しい…………。


幼い子供に“美しい”という表現が相応しいかはわからないが、ウルバスの中で、それが一番しっくりくる言葉だった。


エルフは美しい者が多いが、その少女は異質なほど輝いて見えたのだ。

瞳が金と銀とのオッドアイで、人形かと思うほど整った顔をしている。

生きて動いているのが不思議なくらいだった。


その馬を連れた一行が、何やら店の前で話していた。どうやら彼らも食事に来ているようだ。

何とはなしにぼんやりと眺めていたが、馬を停め、そのまま中に入っていった。


「──あそこの店にするか。ベジーあそこにしよう」

何となく彼らが入るくらいの店なら、きっと旨いんじゃないかと思ってしまい、その店に向かった。


「ま、何処がいいかなんて俺らにわからんからな。行くぞお前ら」

ベータがケールとアニスに声をかけ、ウルバスの跡を追った。


「あーもう何でもいいっすよ。腹へった~」

ケールの腹の虫がこっちまで聞こえてきそうだった……。



店内は八割方埋まっていた。

店員に案内された席は窓際で眺めのいい席だった。

アールは初めての本格的な外食にキラキラと目を輝かせていた。ついでに頭の上のモフの目も、ギラギラとギラついていた。


──ねぇ、いい匂いがするぅ~。んはぁ~これ、何だろう?


──ああ、食欲をそそるよな!うぉーめちゃ肉食いてぇ!俺、肉食うぞ!いいよな?


──いいよ、でもデザートも食べたいからパンパンにはしないでよ?


──おう、分かってる



「タリルせんせー、いいにおいがします!」


「ええ、これはワッカを焼いてますね。おそらくステーキでしょう。アール様も食べてみますか?」



──ああ!ワッカって、あのゲームセンターにあったリズムゲームよね!


──そうそう、こう光ったところを叩いて……って!違うわ!んな訳ないだろが!あんなんどうやって食うんじゃい!


──それしか思い浮かばないもん



「せんせーワッカってなんですか?」


「おや、ご存知ないとは意外です。アール様は魔獣のブーバルスは知ってますね?」


「はい、ツノがあって、グモーってなくやつです。すぐとっしんしてくる、ちからのつよいまじゅーです。もりでもポピュラーですよね」


「はい、アレを長年かけて無害化し、肉質を柔らかくして人の手で繁殖させた家畜ですよ」


「へー!そうだったんですね。おいしいのですか?」


「生産場によりますが、ここが取り扱っているものは美味しいですよ。柔らかく噛むとじゅわっと甘いです」


「へぇ……たべてみたいです」



──なんか、俺の中で和牛が思い浮かんだぞ


──うん、これは期待ができそうね。でも、家でワッカって出てこなかったよね?


──材料としては使ってたのかもな。スースと同じで。そのままってのは出てなかっただけじゃないか?


──そっか、ハンバーグとかで使われてたのかもね



「ピヨはそれでいいぴよ!あ、あとプリンが食べたいぴよ!」

と、らんらんと光る目でペロペロと嘴を舐めているモフは全然可愛くなかった。


「……モフ……なんかコワイ……ミーサーちゃんはなににしますか?」


真剣にメニューを見ているミーサーちゃんに聞いた。


「……これ」

「煮込みシチュー」

「食べたい」


「ふたりともおなじでいーの?」


二人がコクリと頷いた。

相変わらずのシンクロだなぁ。


「きまりました。ボクとモフはワッカのステーキ。ミーサーちゃんはにこみシチューで。デザートにプリンを4つおねがいします」


「はい。飲み物はどうされますか?」


「うーん……ボクは」



──はいはいはい!クリームソーダーがいいです!



「……クリームソーダーで……」

甘いプリンに甘いクリームソーダーって……俺としてはあり得ないんだけどな……。


「ローズヒップ」

「ミンティアーナ」


あ、分かれた。


「では、頼みましょう。アール様、注文してみたいですか?」

と、タリルがにこっと笑い、そう言った。


「!はい。やってみたいです」


「ではお願いします。私もアール様と同じもので。サラダを一つ追加でお願いします。飲み物はコーヒーをブラックで。デザートは結構です」


「はい!……えーと……」

呼び出しベルは無いみたいだった。


「店員と目を合わせる、手を挙げる等、注文しますよアピールをしてみてください」


「はい」

なるほど、向こうと同じだな。


スッと顔をあげ、立っている店員に視線を送った。

こちらを見ていたのか、直ぐに気づいたので、にこっと笑い、ほんの少し頷いた。


店員はダーッと走らんばかりの勢いで飛んできた。

慌てすぎじゃない?


「お決まりですか!」

と、これまた勢い込んで聞いてきた。

何故にそんなに慌ててるんだろう?


「……あ、はい。これと……」

メニューを指し示し、注文した。人数とメインの数が合わないがそこは突っ込まれなかった。

食いしん坊と思われたかもしれない。


滞りなく注文も終わり、ふとタリルを見た。

タリルがじっとこちらを見ていた。


……え?なんだろう?


「……アール様は本当はどなたかとお店に入った事があるのですか?」


「いえ、はじめてです。……まわりのひとをみて、まねしてちゅうもんしてみました」


「…………そうですか」

ふと口の端をあげ、微笑みを浮かべたものの、そのまま黙ってしまった。



──タリル先生、何を考えてるのかしら?


──さぁ。華麗なるアールの注文さばきに感心したとか?


──だといいんだけど



なんとなく不安を残したものの、ただようワッカを焼く匂いに食欲が沸き上がる。


俺がファンタジーでイメージしていたエルフと今の自分とを比べると、ずいぶんかけ離れているなと改めて思った。

エルフって草とか水とか太陽の光とかを糧としてて、もっと妖精っぽいもんだと思ってた。


普通だよな。人間と対して変わんねーもん。

肉とか食うし排泄もする。

恋もして、年をとって、病気にだってなるし、死んでしまう。


例えどんな種族だって、食って寝て生きてる生臭いものなんだ。


父さんの目指すものって、結局はそういうことを分かってるから始まったんだよな。

うん、俺もわかりあえると思いたい。


俺は旨いもん食って楽しいことして、時には争ったりするだろうけど、そのうち誰かを好きになって結婚して……そういう、普通の生活をしたい。

ハードモードはいらない。


ふんふんと鼻唄を歌いながらモフを膝に乗せ、手遊びしながらなんとなくそんな事を思った。


ウルバスは丸っとした30代のおじさんです。

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