第47話 魔法の杖
お父さんお母さん、早く帰って来ないかなー♪
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「人生勝ち組の乙女ゲーに憑依した俺!~」も同時執筆中!短編コメディになります(予定)読んでみてね!
朝食を終え、部屋でミーサーちゃんと話していると、リーンと訪問を告げるベルが鳴った。
「おとーさまたちかな!?」
立ち上がり、耳を澄ませると、突然音が大きく聞こえだした。
──やっぱりモフの石を食べてから耳が妙に鋭いのよね
──ああ、集中すると感覚が広がる感じだよな
──うん……あ、タリル先生だった。でも、まだ早くない?
──ああ、たぶんミーサーちゃんの事、気になったんだろうな
「……ミーサーちゃん、おとーさまたちじゃなくて、タリルせんせーがきたよ。じゅぎょーのじゅんびをしましょー」
昨日の今日だ。
ナルコスと話があるのだろう。リリスが呼びに来るまで待っていればいい。
そう思い、姿勢を正しながらミーサーちゃんにタリルの訪問を告げた。
『うん、分かった。私たちは部屋に戻ろ』
サーちゃんが立ち上がりそう言った。
『うん、そうだね~あ、そうだ、魔法の授業だから杖を使うんだよねー?ちょっとだけ、杖、見せてもらっていい~?』
ミーちゃんが聞いてきた。
「ミーちゃん、つえにきょーみあるの?」
『うんー。ちゃんと魔術って教わったことなくって。なんとなく分かるんだけど、独学だから~。杖とか持ってないし、見てみたいなーって』
てへへ~と笑いながら顎をポリポリした。
「そっか、5さいから2人だけで、エルフリッドにすんでたんだもんね……」
ミーサーちゃんは片言の移民の双子だ。
誰がわざわざ魔法の使い方を教えてくれるだろうか?
町に出てわかった。生活魔法で杖は使わない。そこまで正確な魔法は必要無いからだろう。エルフは特にそんな事しなくても結構使えるんだろう。
……他人に杖の使い方とか、そんな面倒くさいこと、頼まれもしないのに誰も教えるわけ無いわよね……
「……うん!わかりました!じゃあせっかくなので、2りとも、いっしょにじゅぎょーをうけましょう!」
『え!?』
『授業を受けるの?』
「はい!ナルコスせんせーのしどう(しごき?)もうけたんだし、タリルせんせーのもいっしょにやろうよ」
いいアイディアよね?特にミーちゃんは魔法の才能あるって言ってたし。
ちゃんと教えてもらったら、もっと上手に扱えるんじゃないかな?
『それって、大丈夫かなぁ。私たちが受けるの、許してくれるかなー?』
ミーちゃんが遠慮がちに言った。
『ダメって言わない?私たち、一応監視対象だし。タリルさん、ちょっと怖いんだよね。サーはナルコスさんの方が怖くなくていいかな。言ってることも分かりやすいし』
『うーん、タリルさんは怖いけど……魔力高いし魔術扱うの凄く上手だし……ミーは、いいと思うなー』
──おお?意見が別れたぞ。はじめてじゃないか?てか、タリルって謎にミーちゃんから高評価だな
──そうよね。嫌われても仕方ないと思うのに……。でも、確かに先生としては一流だもんね。なるほど、サーちゃんはマルより、ミーちゃんは私よりって感じか!じゃあ……
「だいじょーぶだとおもいますよ。タリルせんせーも、2りがそばにいるほうがあんしんだとおもうし」
『そうかー。じゃあ、ミーは受けてみたいな~タリル先生の授業~』
『ミーちゃんが受けたいならいいよ。付き合う』
『わーい。じゃあ、良いって言ってくれたら一緒に受けよう~。ありがとう、アール~』
ミーちゃんがきゅっと手を握ってきた。
「うふふふ、ボクもべんきょーなかまができて、うれしーよ」
きゅっと握り返した。
『サーも!』
サーちゃんもきゅっと手を握ってきた。
ああ、なんか幸せーーー!!
コンコンコンとドアを叩く音がした。
「アール様、タリル先生がおみえです。時間になったら中庭に来るようにとの事です」
「わかりました!」
中庭か。じゃあまた広場に行くのかしら?あそこは魔術の練習にはもってこいだものね。
モフともあそこで知り合ったんだし。
今日は新しい魔法を教わるんだ!ふふ、楽しみね!
アールはミーサーちゃんに杖を見せ、先日タリルから習った魔法の原理を教えた。
もちろんミーサーちゃんは本能と経験で体得していたが、嬉しそうにアールの談義を聞いていたのだった。
*****
アールの予想通り皆で広場でに行き、そこで魔術の練習をすることになった。
今日は先日も使えた風魔法についての講義のあと、もっと効率よく大きくしたり、小さくしたりするコツを教わった。
そのまま剣で応用出来るようにと、途中でマルと交代した。剣があれば良かったが、杖を剣代わりにし、器用に風魔法を習得していった。
──それにしてもタリル先生があんなにあっさり二人に教えるのを承諾してくれるなんて、ちょっと驚いたわ
──タリルの、教えを請うのは、難しいって言ってたもんな
──そうなんだよね。まぁ、いいことではあるんだけど……
ミーサーちゃんの方を見た。
二人とも真剣にタリルの言うことを聞いている。
ミーちゃんは既に尊敬の眼差しでタリルを見ているのが分かる。
タリルの方も熱心に教えていた。
良かったね、ミーちゃん。
なんだかほっこりしながら見ていると、
「アール、あっちから変な匂いがするぴよ」
と、突然モフが何処からともなく降ってきて、アールの頭に乗りながらペシペシと叩いてきた。
「ん?モフ、石探してたんじゃないの?」
「そう。でもあんまりいいの無かった。アール、あの若木の所に行ってみるぴよ」
「──あれ?あの木の横の?」
似たような若木がたくさん生えているのに、何故だかソレが目についた。
「そう。あれ、普通の若木じゃないぴよ」
「え?それは……じゃあタリル先生に言わないと」
「ん?どうして……ああ、お前エルだな?」
「あれ、分かっちゃった?そうだよ。でも今は授業中だし、また変なトラブル起こせないでしょ?」
「いいから行くぴよ!」
と、半ば強引にアールを若木の所に連れていった。
その若木をみていると、確かに変な感じがした。特にどうとではないのだが、モヤモヤした膜みたいな物がみえる気がする。
「……なんか……タリル先生の体にあったモヤに似てる気がする……」
──マル、これ何か分かる?
──いや、でも……気持ち悪いな
──だよね。パッと見はただの若木なんだけど……
──…………ああ、なんか嫌だな……よし!抜くか!!
──へ?抜いちゃうの?
──ああ、気持ち悪いものは取ってしまえばいいだろ。俺がやってやろうか?
──え、じゃあ、お願い
──よしきた!
「モフ、これ抜いたって問題ないよね?」
「ん、抜くのか?あ、お前マルだな」
「当たり。なんか、気持ち悪いから抜いて燃やそうかなって思うんだけど」
「…………気持ち悪い……アールは気持ち悪いのか……ふむ、アールが抜きたいなら抜くといいぴよ!」
「よし、じゃあ抜くぞ」
むんずとその若木を握り、強引に引っ張った。
だが、全然抜ける気配がない。
「……何これ、こんな小さいくせにガッツリ大地に根を張ってんの?」
ビクともしないその若木に、呆れたように呟いた。
「アールの力が弱いだけぴよ」
けけけとモフが笑った。
「言ったな!ボク、まだ本気だしてないだけだから」
グッと力を入れると同時に魔力を流した。
根がどこまで張っているのか確かめるために。
そう、他意は無かった。
ただ大きさの確認のために魔力を流した、ただそれだけだったのだ。
気持ち悪い若木の正体は?




