第41話 父様と母様
やっと領主の影が見えてきました。
無事に再開できますように……( ̄▽ ̄)
色々解決しないといけない問題が山積みなんだよね~。でも、アールは楽しんでやってます!
謎解きはエルに任せた~。
ひと悶着あったものの、一息付いたところでリリスがプリンを持ってきてくれた 。
俺たちが風呂に入っている間にエイナは部屋を片付けてくれていたようだ。
テーブルにもきれいに花が飾られ、セッティングもすんでいた。
思ったよりエイナも優秀なのかもしれない。
「リリスーおいしーよ」
用意してくれたプリンはそれほど甘くなく、とても食べやすかった。
甘いものはそんなに好きではないのだが、このプリンは好きだ。
あとゼリーとかヨーグルトなんかも。
モフに分けてあげようと思っていたのだが、流石リリス、モフの分もちゃんと新しく用意してくれていた。
モフもご機嫌さんで食べている。
ミーサーちゃんも嬉しそうだな。
「……アール様、少しお話よろしいですか?」
リリスがニコニコしながら、でも、何処か真剣な顔でそう言った。
「はい。なんですか?」
「ご領主様から連絡がありました。ご用事がお済みになられたので2・3日中にはお帰りになられるそうです。良かったですね、アール様」
「!!とーさまと、かーさまがかえられるのですか!?やったー!」
やった!早く帰って来て欲しかったんだ!
ミーサーちゃんの事もあるけど、単純に会いたい。やっぱりアールは子どもだよな。寂しんぼうだ。
良い報せだぜ。
でも……だったら何故リリスがいつもと違うんだ?
「……リリス、まだなにかあるの?」
「え?どうしてそう思われるのですか?」
「どうして……?そうだね……なんとなく……?」
自分でもわからないが、リリスが微妙にいつもと違う態度な気がするからか?
「アール様には敵いませんね……はい。お知らせすべきか迷ったのですけれど……実は奥さまが少しご無理をなされたようでして……」
少し目を伏せて、申し訳なさそうにそう言った。
「かーさまが?……そっか……かーさまは、おからだがよわいもんね……」
──大丈夫かしら?心配だわ
──ああ、そうだよな……あの人昔から……そうだ!キュアリング、もう少し研究しないか?母さんにも効くんじゃないか?
──!!そうよ!ホント、いいところに目をつけたわね、マル!うんうん……ぜひやりましょう……そうだ、ナルコスで実験してみようよ!あの人ならモフの石にだって耐えられたんだもの、いい被験者だわ!
──ああ!どうせアイツもしばらく泊まるんだし、絶好の機会じゃん。まずは強いやつで実践だな。モフにも協力してもらおうぜ!
「だいじょーぶ!かえってきたら、ボクがうーんとかんびょーするよ。きっとすぐよくなるとおもうんだ」
うんうん頷き、申し訳なさそうなリリスにそう言った。
そうだよ、何ためのキュアリングだ。
キュアリングは時間がかかっても根治できるかもしれないんだ。元々身体の弱い母さんにはぴったりの治療じゃないか。
「!アール様……なんてお優しい……ええ、ええ!そうですね!アール様にお会いになられたら、奥さまもすぐ良くなりますね!」
リリスがぷるぷると震えながら涙ぐんでいる?
なんだ、感動してるのか?
……アールのこと好きすぎじゃない?知ってたけど。
「リリスーだいじょーぶ?」
全くこの乳母は……ほんとアールが何してもぷるぷるするんだからな。涙脆いこった。でも……。
ぴょんと椅子から降り、とてとてとリリスの所に行き、きゅっと手をとった。
リリスがきょとんとした顔をして見ている。
この心配性でアール大好きリリスのおかげで、身体の弱い母に会えない時でも寂しい思いはしなかった。リリスは本当の母さんと同じくらいアールにとって“母さん”なのだ。
「リリスがぐあいがわるいときも、ボクがちゃんとかんびょーするからね。あんしんしてね!」
ニコッと笑ってぶんぶんと握った手をふった。
「────っアール……様──!!」
かぁーっとリリスの顔が真っ赤になった!?
とたんにぶわわわっと泣き出してしまった!!
──えええ!?ちょっと!いくらなんでも……うわわ!どうすりゃいい!?エル!
──ええ!?どうするって……泣いてるんだからヨシヨシしたらいいんじゃないかな!?
「リ……リリス……ヨシヨシ、だいじょーぶ、だいじょーぶ」
よしよし、とリリスの頭をそっと撫でた。
「──────あーる……ざまっっ…………!!」
途端にどば────っと洪水のように泣き出したよ!?
あわわわ!
慌ててバッとエイナを見た!
「アール様~お優しすぎですぅ~~」
ズズっと鼻をすすった。
ポロポロっと……エイナも泣いている!?
ババッとミーサーちゃんを見た!
「アール……」
「感動……」
うそだろ?ミーサーちゃんまでウルウルしている。
こっちもかよ!?なんなん!?女子ってこんなんで泣くの!?涙腺、弱すぎんか!?
──おい、エル!なんとかしろ!!
──バカマル~私も感動したわよ!マルって時々やらかすわよね!
──はぁ!?お前がやれって言ったんだろうが!ああ、もう……俺は女に泣かれんの、苦手なんだよ……
そうだ、こんな時こそ!
「モフ!ほら、変顔してくれよ!」
パッとモフを見た。
「ん?」
何?って感じでチラッとこちらを見た。
両の翼で皿を抱え、ペローンベロベロベロベローっと皿をなめ回していた。
舌が顔の周りでビューンってなってる……既に変顔だったよ……。
「グッジョブだぞ、モフ!そのままお皿舐めてるんだよ!」
モフにそっと囁き、むんずと掴み、リリスの前に持っていった。
「リリス、ほら、せんぷうき!」
えい!どうだ!?
モフがドヤ顔で、ブーンっと音がしそうな勢いで皿を舐めている。
リリスが、ビックリしたみたいに目が点になった。
そして、ビュンビュン皿をなめ回すモフを見て、スンっとなった。
「…………アール様……“せんぷうき”とは、お皿を舐め回す舌の長い鳥の事ですか?」
リリスがぽそりと呟いた。
ああ!!そうか、不覚だ!
こっちには扇風機とか無いのか。
「えーと、すずしくなるように……こーそくかいてんしてかぜをおこす……いた?」
「…………モフちゃんは板ではないと思いますが……」
「……そーだね……」
………………。
……その場がシーンと静まった。
──誰にも受けなかったね……
──そだな……
うん、まぁ皆泣き止んだし、良しとしよう。
パンっとエイナが空気を変えるように手を叩いた。
「アール様、では私たちはそろそろ失礼させていただきますぅ。お夕飯のお時間になりましたら、またお声をかけさせていただきますねぇ」
そう言って、ぼんやりしているリリスをあれよあれよと言うまに、強引に引っ張り連れて行ってしまった……
なんとなく白けた空気を変えるように、コホンと咳払いをしてミーサーちゃんの方を向いた。
「……ミーサーちゃん、ぼくのせいでごめんね!おふろいっしょにはいろっていったら、こまってたのに」
最初は乗り気じゃなかったもんな。
まさか子どもなのに、婚約云々なんて話が出てくるとは思わなかった……面倒くさいな……。
“ううん、私たちも知らなくて。里を出たのが今のアールくらいで……そういう世間体みたいのって教わってないんだよね。それにアールの事、女の子にしか思えないし……”
サーちゃんが、てへへと笑いながら頭をかいた。
“うん、そうだよねー。アールってば可愛すぎだもん、女の子に見えるよー?一緒にお風呂入ってても……それでも女の子に見えて……あれ?どうしてかな~?思い返しても、アールは女の子……な気がする……??”
ミーちゃんが不思議そうな顔をしている。
──へー……面白いな。中身は俺なんだから、男の子の身体だったはずなんだけど
──そうよね……不思議……。犬神様の加護かな?性別不詳補正でもかかるのかしら……見る人によって女の子に見えたり、男の子に見えたりする……とか?
──アールだったらあり得るな。スライムレンク屋の少年も勝手に思い込んで、女の子だって全く疑ってなさそうだったしな。あれは多分、裸で“ばぁーっ”てやっても信じないタイプだ
──……やらないでよ?
──ふっ……やる訳ないだろ?
「とにかくきをつけるね!こんどからは、みずぎをきてはいろうね~!」
──って、やっぱり一緒に入る気なの!?
──え?だって楽しいじゃん。ほんとはエルだったら問題ないんだろうけど、リリスが言ったみたいに一応アールは男の子って事になってるからな。まぁ水着になったらどっちでもいいだろ?エルだって遊びたいんじゃ?
──そりゃ……楽しそうではあるけど……確かに一人でお風呂に入るのは怖かったもんね。まぁ今はモフがいるから大丈夫だけど……
「アール……」
「……こりてない」
ミーサーちゃんがちょっと呆れたように、そう呟いた……。
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その頃アリステアたち領主一行は、ナジールの街を出発し、帰途に向かっていた。
「……ずいぶん遅くなってしまったわね……アールちゃん、心配してるでしょうねぇ~」
ほうーっとエリザベートがため息をはきながら言った。
誰にでも得意不得意とする事柄はあるものだが、エリザベートの得意とするのは回復、防御などのいわゆる守護の魔法だった。ナジールで魔獣に襲われた負傷者の回復にあたっていたのだが……。
目的はそれだけでは無かった。
「今日中に帰れると良かったんだが……怪しい動きがあるからね……」
魔獣の襲撃は結界近くの街では今までも度々起こっていた。
だが、今回は前回の結界のメンテナンスから、まだ一年も経っていなかったのだ。
自然に結界の力が弱まったとは考えにくく、作為的な何かが行われた可能性があるとして、結界の張り直しと慰問を名目に、ナジールの調査団とは別に、エリザベートが自身で調査をしていたのだ。
「君は重要な役目を果たしてくれていたんだから仕方いよ。おかげで最悪の事態は免れた」
討伐隊により鎮圧された魔獣の中に、何者かによる魔術を施された魔道具を埋められたものが見つかった。
それは巧妙に隠されており、エリザベートでなければ探すことも難しかっただろう。
回収できたのは行幸だった。
だが、結局実行犯はわからずじまいだ。
「だといいのだけれど……ああ、早くアールちゃんに会いたいわ~~!」
今回はその魔道具を持ち帰り、魔術師たちに追跡と研究を任せるつもりだ。
誰かに預けるには危険な代物だったため、アリステアが直接取りに来た。
魔道具を埋められていた魔獣は傷を負っても息絶えるまで狂ったように暴れまわっていたそうだ。
そのため負傷者を多く出し、エリザベートはその者たちの回復に努めていた。
あまりにも魔力を注ぎすぎて、エリザベートが体調を崩したのは本当だ。
だが、それほど重いものではない。
領主を呼ぶのに名目が必要だったため、利用したに過ぎなかった。
「ふふ、アールも君に会いたがっていたよ。 ……でも、君がナジールにいる間に、彼はずいぶん成長してるんだよ?それはもう、目を見張るくらいにね」
馬車に揺られながら先日の出来事に思いを馳せていた。
バトラーから広場での出来事の簡易報告があったが、それを聞く限りですら、日増しに、いや、数時間単位でどんどん成長しているのが分かる。
我が子ながら、普通ではないと思っていたが、ここまで異彩を放つとは……。
世間に出た途端にこの成長ぶり、将来が楽しみだった。
「そんなに?……なんだか寂しいわぁー。私のかわいいかわいいアールちゃんが、どんどん独り立ちしちゃうみたいで」
「……そうだね。だけど、とても子どもらしいところもまだまだあるよ!よし、どうせ馬車の中では暇だ。アールの事を話してあげよう。君も聞きたいだろ?二人でゆっくり話す時間もなかったしね」
そう言い、エリザベートの隣に席を移し、その手をとった。
「……疲れたら言いたまえ。それまではアールの話をしよう。あの子の武勇伝を……驚くぞ?」
その細い指に口付け、ニヤリと笑った。
「まぁ!ふふ、楽しみだわ……」
頬に手を当て、ニコリと笑った。
とられた手を握り返し、指先から伝わる温もりを感じた。
二人きりだと言うのに睦事を交わすわけでもなく、子どもの話で盛り上がるとは……自分たちも本当に親らしくなったものだと、なんだか不思議な気がした……。
そろそろ動き出すかぁー
がんばれーマルエルー




