第4話 なんか出た
ちょこっと更新。
日曜日更新のつもりでしたが、ちょこっと更新してみました。
なんか出た。ナンダコレ?
o(・ω・)o
ガサガサ、ガサガサ。
近づくにつれ、何かがいるのは明らかだった。
ん?
ふと下を見ると、広場に来るときに見つけた石とよく似た石が落ちている。
お!?あれも丸いな
拾おうと手を出した。
ガササッ!
草陰からバサバサっと何かが飛び出した!!
「うわっ!!」
「ジャマしてやる!ジャマしてやる!」
グレーの塊だ!
なんだ!?しゃべってる!?
へ?でっかいモフモフ!?
──エル!!何かでた──!!
──ナニコレ───!?
「拾うのをジャマしてやる!」
ドーン!!と飛び出したソレは、一見鳥のようだった!!
グレーのまん丸な身体に、ちんまりとした羽?黄色い嘴に、世をすねたようなこれまたまん丸な目。頭にトサカがある。あれ?なんか肩(?)からかけてる……。
──ほんと、ナニコレ?
──う、うん?なんだろ?…何かの鳥じゃないかなぁ?羽、あるし……
「ジャマしてやる!ジャマしてやる!」
言いながら、バサバサ、バタバタ羽を動かして何かを拾おうとしていた。
「これ?これがほしいの?」
丸い石をひょいと拾って、その奇妙な生き物に手渡した。
「……ジャマして……ジャマ?」
じーっと俺を見てから、くるっとまわり、トテトテっとまた草陰に戻って行った。
ハッとして追いかけて、ガサっと草を分けて探したが、もうそこには何もいなかった。
──なんだったんだ、アレ?
「アール様?どうかされましたか?」
タリル先生が戻ってきた。
「えーと、なにか、いたような、いないような?……とり?がいました……」
一瞬の出来事でうまく説明が出来ないな。
「ふむ、今日はもう遅いですが……気になるようであれば、明日その鳥を探してみますか?」
馬から降りて、茂みを眺めながら言った。
「…………いえ、だいじょーぶです」
アレは何だったのか?
鳥のような、そうでないような……よくわからない生き物だった。
でも、何故か探さなくてもまた会える気がした。
「……そうですか。では帰りましょうか。寒くなってきましたのでコートを着ましょうね」
「はい」
リリスが渡してくれたコートをはおり、また馬に乗った。
カッポカッポとのんびり家路に向かった。
いつの間にか日が傾き、月がうっすら空に浮かんでいた。
今年は金の月の年だ。ほとんどが金色だが下の方に少しだけ銀色が混じっている。
馬をポクポク歩かせながら、空を見上げた。
──不思議だなぁ。なんであんな色なんだろな?
──ねぇーファンタジーよねぇ。いつか解明してやるわ!
──お前さぁ、スローライフ希望って言ってた割には積極的だよな?
──そういえばそうね。周りの環境のせいかしら?まぁもともとオタクだし?興味のあることには積極的だったよ?そういうマルこそ、ハーレムライフはどうすんの?
──へっ!!この身体でどうしろってーんだよ?お前、いるし?俺は露出狂じゃねぇぞ?出来るかっつーの!!第一まだ5歳じゃねぇか!物理的にも無理だな。ああ、くそ、ほんっともったいない!こんだけ美形なのになぁ!俺、絶対モテモテなはずだぞ?
──それを言うなら私だって!こんなに美少女よ?周りが放っておくわけないわね!
あーだこーだやりあってるうちに、いつの間にか町に戻っていた。
家の庭がぼんやり見えてきた。
村に入ると、村人たちがたくさんいた。丁度仕事を終えて家路に向かうところだったらしい。
帰宅時間帯と重なったな。
「こんにちはタリル様。アール様とお出かけですか?」
町の人が声をかけてくる。
「ええ、ちょっと森にね」
タリル先生がこたえた。
それがきっかけとなったのか、次々と挨拶をしてくる。
「キャー!こんにちは、アール様ぁ」
「こんにちはぁ!アール様!うふっ」
「アール様!ちは っす!」
矢継ぎ早に子どもたちに声をかけられた。
その勢いにちょっと圧倒されつつも、ニコニコと手を振って応えた。
数人の女の子たちがキャーキャー黄色い声をあげている。中には男の子も混じってるようだった。
まるでアイドルのように、格好いいだの可愛いだの素敵だのの称賛の声が聞こえてくる。
ふっ、まあね、正直俺もそう思うよ。
まぁ当然だな。この見た目だしな。
男女問わず憧れるのも仕方ない。
ガキんちょにモテてもちっとも嬉しくないが、まぁ悪い気はしない。
ふと誰かの視線を感じた。
キャーキャー言っている子どもたちとは群れずに、一人だけ木の幹に隠れるようにして、こちらを伺う少女がいた。
水色の髪に青い瞳の、なかなかの美少女だ。両サイドに一房だけ黄色い髪が混ざっている。
誰だろう?
知らない顔だ。
と、いってもほとんどの人の顔を知らない。深窓の令息&令嬢だったからな。
こうして外の人たちに会うのは誕生日以来だった。
水色の髪の少女の、こちらをじっと見る目が、他の子たちとは違う気がした。
なんだろうな?探るような目だ。
目があったので、ニコッと笑って手を振った。
途端にパッと幹の陰に隠れてしまい、もう二度と顔を出さなかった。照れたのか?
そんなこんなで、パレードのようになった村人の間を抜けて庭の中に入ると、今度は侍女や侍男など従業員の人たちから声をかけられた。
「おかえりなさいませ!タリル先生、アール様」
「おかえりなさいませ」
「おかえりなさいませ」
「ただいま」
こちらも次々と挨拶をしていく。
領主の子どもってのも大変だな。
いずれ俺たちがここを治めていくことになるのだろうか。
馬を預け、屋敷にもどった。
「おかえりなさいませ」
リリスが迎えてくれた。
「ただいま。リリスのおかげでさむくなかったよ。ありがとーリリス」
コートを渡し、お礼を言った。
リリスがうるうるニコニコの笑顔とともに受け取った。
「アール様!リリスはアール様にお仕え出来て本当に幸せですわ」
だよな!俺たちっていい子ちゃんだしね!
円満な人間関係には、お礼、これ、大事。
部屋に戻り、今日の授業をざっとおさらいをした。魔力の巡らせ方、調整の仕方、詠唱等をもう一度復唱した。
「アール様、今日は土魔法の基礎をお勉強されましたね。1日で基礎をマスターされるとは、私、感服いたしました。大変よろしいです」
「ありがとーございます」
「ですが、急ぎすぎました。次回までの宿題は、ゆっくり休んで体力と魔力を回復することです。勝手に魔法を使って、練習したりしてはいけませんよ?いいですね?」
こちらを見透かしたように見つめて言った。
「……どーしてダメなのですか?」
やろうとしてたのがバレた?
もうちょい練習するつもりだった。
エルは練習してたけど、俺は基本見てただけだしね。もちろん同じ身体なんだからやり方はわかる。でも、こう、細かいところがもどかしいんだよな。
「はい。いくら魔力と才能がおありでも、アール様はまだ5歳です。5歳の器にその膨大な魔力はアンバランスなのですよ。その歪みがアール様の身体を蝕むかもしれません」
真面目な顔で言われてしまった。
「わかりました!きょうはおとなしく休みます!」
マジか?蝕むって……何?俺ら病気にでもなんのか?こわっ!
そういえば、エルがずっと静かだ。寝ているっぽいな。
もしかしてこれが魔力の使いすぎってやつなのか。
「はい。大変よろしい。では今日はここまでです」
パンと手を打った。
タリル先生は通いのため、週に2日来る事になっている。
アールのスケジュールは、地球的に言うと、月:魔術・火:剣術・木:魔術・金:剣術と言う風に、週に4日は埋まっている。水曜日はお休みで、好きなことをしていい日だ。土日はアリステアの仕事場に行ったり、家の手伝いをしていたりする。
「明日は剣術のお稽古でしたね?ちょうど良いです。体力作りに励んでください。私の授業は3日後になりますから、その時またお会いしましょう。ではごきげんよう」
タリル先生が挨拶をした。
「はい!ありがとーございました」
そうだ!明日は待ちに待った剣術の稽古だった!
一緒に玄関まで見送ってから、自分の部屋にもどった。
──ふう~~!疲れたぁ──!楽しかったけど、疲れたぁ──
──お前、寝てただろうが
──ん?寝てた?のかな?家が見えたなーって思ったら急に疲れがでてさ。そういえば意識なかったわ。何かあった?
──ん?そうだな、一つはアールはモテモテだと言うことが明らかになった。町に入ったとたんパレード状態になってさ。アイドル並みだったな
──まぁ、当然よね!神様の加護付きでカリスマまであるしね。ふふん
──あと、こっちのはちょっと心に止めておかなきゃ。今のアールの身体だと、魔力使いすぎたらぶっ壊れるかもしらんらしい。
──は!?何それ?こわっ!!
──どんな壊れかたするかはわからんけどさ。でも確かにお前、寝ちゃったろ?気をつけた方がいい。魔力と器がアンバランスで歪らしいから
──わかった。帰ったらまた土魔法の練習しようと思ったんだけどな
──やっばりな。そう思ったけど、ヤバくなったらヤバイから、次のタリル先生の授業までは魔力使うのは禁止された
──そっか。じゃあ、本だけ読もうかな
──ああ、そうしろ。で、だ。体力つけるといいらしいから、明日剣術だし、ガンガン攻めて行こうかと思ってるだけど、エルもやってみるか?
──魔力使うのに体力いるなんてね。そっか、わかった。もちろんやらないよ?
──また丸投げかい!
──あったり前でしょ?何のためのマルよ?剣術なんて脳筋なこと、私がやる訳ないでしょうが!
──いや、お前バカにしたな?俺はちゃんと考えて動いてるぞ?
──ふーん
──ったく!まぁいいや。じゃあ明日は俺が受け持つけど、エルもちょっとくらいは参加しろよ?
──へいへい
コンコンコンとドアを叩く音した。
「アール様、ご夕飯の支度が出来ました」
リリスが呼びに来てくれた。
「はい。いまいきます」
そういえば腹へったなぁ!
急いで食卓へ向かった。
夕飯はアールの好きなハンバーグだった!ラッキー!
「いただきます!」
頑張ったご褒美だ!ほくほくしながら食べていると、エリザベート母さんが今日の授業について聞いてきた。
「アールちゃん、今日はどうでしたか?タリル先生は厳しくなかったですか?」
おっとりと言うエリザベートは、相変わらずの過保護ぶりだ。
「はい!ぜんぜんきびしくなかったですよ、かーさま!とてもわかかりやすくて、マジュツのせんせーが、タリルせんせーでとってもうれしいです。とーさま、いいせんせーをつけてくれて、ありがとーございました!」
お礼、これ、大事。
次に繋げてもらわないとね!ニヒヒ!
「あ、ああ、どういたしま」
「んまぁぁぁぁぁ!アールちゃぁぁぁん!なぁ──んて、お利口さんなんでしょぉぉぉ───!!」
キラッキラッに目を輝かせ、どど──んと抱きつかれた!!
──ぬぉぉぉ━━!でたぁ━━!!母さんラブラブパワァ~~~!!今被ったぞ!めっちゃ父さんが話してるのと被った!!
──ふぉ━━!相変わらずだ━━!ちょっ、お母様!くるしい!!ちょっ!苦しい!!
「……かぁ……さま……ぐるじぃ……です」
「エリザベート!アールが苦しがってる!落ち着きなさい!」
あわてて父さんが間に入り、母さんをべりっと剥がしてくれた。
「んまぁ!だって、アリステア!アールちゃんったら厳しくて有名な、あのタリル様の事を厳しくないだなんてっ……!やっぱりアールちゃんは天才よぉ━━━」
母さんがそう言いながら、ぐりっぐり頬擦りしてきた。
──え!?厳しいの!?あれで?めっちゃ誉めてたけど?『大変よろしい』って口癖じゃないの!?
──だよな?あれで厳しいって…こっちの先生ってどんだけ甘いんだよ?俺レスキューの試験前って死ぬほどビッシビシやられたぜ?何回かマジで意識とんだ
「いえ、ほんとーにやさしかったですよ?いっぱいほめてもらえました」
ほんと、ずっと誉めっぱなしだったんだけどな。
「ほらぁぁぁ!!!やっぱりアールちゃんは天才なのよぉ━━━━!!」
ガシッとまたまたぎゅ───っと抱きつかれた!
……だから苦しいって━━!!
……ちょぉ━━━!!!!
「エリザベート!!アールがっ!!!」
またまたべりっと剥がしてくれた。今度は素早かった!
「かーさま!ボクまだゴハンのとちゅーです!ぎゅーっされたら、くちからなにかがでちゃいます!」
ぐぐーっと押して、圧迫から逃れた。あー苦し!
「んまぁぁぁぁ!ごめんなさい!アールちゃん!私ったら、あんまり嬉しくって……」
反省してしゅんとなった。
ほんとかわいいお母さんだ。
この親バカっぷりには呆れるが、けして悪いものじゃない。
心がほんわかして癒される。
俺たちは小学四年生の時に交通事故で両親ともに亡くした。
じーさんばーさんに引き取られたけど、厳しい人たちだったので、こんな風に愛された記憶はない。
「かーさま、だいじょーぶですよ。かーさまは、ボクをダイスキなだけですよね?ボクもダイスキです」
ほんとにね。ありがたい事だ。
「アールちゃん…………」
うるうるして見つめられた。
「あーこほん。アール、タリル先生は魔術に関しては第一人者でね、手厳しい事でも有名なんだよ。はじめ先生に君の家庭教師を頼んだ時には、剣もほろろに断られたんだ。でもね、君の5歳の誕生日で君と話してから興味をもたれてね。引き受けてくれた」
アリステア父さんが手を組みながら言い聞かせるように語った。
「でもやっぱり君は5歳になったばかりだしね。いくら君が利発だといっても、タリル先生の師事を仰ぐ事が、吉とでるか、凶とでるかは正直カケだったんだ」
感慨深げに目を閉じた。
「だからね、その先生に誉められるということは、とても素晴らしい事なんだよ?あの、タリル先生が、君を誉めたと聞いて、そして、次の授業の約束をしてくれた……僕はとても嬉しいよ。誇りに思う」
にっこり笑って嬉しそうにアールを見た。
「とーさま……ありがとーございます」
胸がジーンとした。
──エル、俺ここに転生できて、ほんとに良かったって思うよ
──うん、私もそう思う。まぁマルと一緒の身体ってのは納得いかないけどさっ!犬神様のうっかりさんには、ほんと参っちゃうけどね!
──それな
「アリステア……私もあなたを誇りに思いますわ。素晴らしいお父様です。アールちゃんの為にいつも尽力してくれて……私本当に嬉しく思います。愛していますわアリステア……」
目がハートになっている。
お母さん、ちょっと!食事中だよ!?
「エリザベート……僕もだよ」
あんたもかい!
まだ腹減ってるんですけど!?食べれんくなるじゃないか!
──おいおいおい!ハートがとびまくってるんですけど?子どもの前でイチャイチャしないで欲しいぜ!全く……
──まぁまぁまぁまぁ、仲良き事は美しきかなって言うしさぁ~。いいんじゃない?夫婦仲良好ってさ!私は嬉しい!
ラブラブな二人は放っておいて、さっさと夕飯を平らげた。
「ごちそうさまでした!ボクはへやにもどりますね?ごゆっくり」
それだけ言って、とっとと部屋に退散したのだった。
がんばれーマルエルー
のんびり更新中です。
しばらくは、ゆるゆるだらだら更新予定。
広い心でお付き合いいただけると嬉しいです。