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第36話 花冠の妖精たち

お花畑♪お花畑♪~(´ε` )

最近ほんとに行ってないなぁ……公園すら行かなくなっちゃいました……。


がんばれーマルエルミーサー!

アールの部屋は色とりどりの花で飾られていた。

今や何処の国のお姫様かと思うほど贅沢にあちこちに花が飾ってある。


“フロール”で咲かせたお花畑で3人と一匹でお花摘みをした。たくさん摘めたので、部屋中を花で飾ったのだ。


テーブルには花束が置かれ、壁にはリースが飾られ、ベッドには周りを囲う額縁のように花が散らばっている。

部屋を彩る美しい花たちは、摘まれても萎れる事もなく瑞々しく咲き誇っていた。


「ねぇ、おはなはまだまだいっぱいあるし、はなかんむりをたくさんつろうよ!」

まだまだ花はあるので花冠を作って遊ぶことにした。


「たくさん」

「作る」

コクコクと頷き、真剣な顔で花を吟味(ぎんみ)し、好みの花を摘みだした。

自分も花冠を作るべく、作りやすそうな花を見繕った。



──ねぇ、マルは作ったことある?花冠……


──はは!そんなのあるわけないだろ。作り方なんか知らないし。ハナ提灯(ちょうちん)ならあるけどな。風邪引いた時、ぷうーってなって


──汚ったな!ほんっと、下品!ハナ違いだよ!もう~マルは男子だなぁ~


──当たり前だろ?俺が女子だったらアールは普通に女の子になってたろ?


──そんな話してないから。あーもう、マルと話してるとせっかくテンション上がったのに、どーんと落とされる気がするわ


──だから俺は女子じゃねーし……5歳児男子です!ピカピカの泥団子作りたい!


──黙らっしゃい!今は私がアールなの!



花冠を作っている二人は、なんだかおとぎ話に出てくるお花の国の妖精さんみたいだった。

ほんわ~としていると、モフが寄ってきた。


「アール、これ旨いぞ」

と言って、モシャモシャ食べていた花を渡してくれた。



──まぁね、精霊だしね!もう何を食べてても驚かないよ?


──へーこの花って食べられるんだな。菜の花みたいなものか?お前食ってみろよ


──ええ?……生で食べて大丈夫なの?


──知らんけど。食べたらわかるだろ



まぁ、ツツジとかセージとか蜜を舐めたりしてたけどね……少しの毒は平気かな……


パクっと食べてみた。

あ、甘いわこれ。ちょっとピリッてするけど確かに美味しいかも。

生でも食べられる花ってあるのね。

へー新たな発見ね。


「!?アール!」

「それ、麻薬!」

ミーサーちゃんが慌ててピュルーっと飛んできた!


「なんですと!?」

ひぎゃ──っ!

モフってばなんて物を食べさせるのよ!!

食べちゃったじゃない!

あ……なんかクラクラしてきた……



──エル!喉に指突っ込んで吐け!いや、水だ!水を飲んで薄めるんだ!そのあと吐け!



「み……みずを……おぼぉ~~…………」

あたふたとサーちゃんが水を取りに行ってくれた。おろおろとミーちゃんが背中を擦ってくれた。


ピョンと諸悪の根源が肩に乗り、宣った。

「アール、何してる?タトヒールすればいいぞ」


あ、そうだった。

自分にタトヒールをかけた。


「はぁーおちついた……」

まさか自分の出した花で死ぬ目に合うとは思わなかったわ……。こういう役回りはさぁ~私じゃなくない?マルのお仕事よね……。


水を持ってきてくれたサーちゃんにお礼をいいつつ、ほっと一息ついた。

「アール!」

「食べる」

「ダメ」

二人に大きくⅩをされてしまった……。


「はーい……モフもダメだよ?」

ムシャムシャと懲りずに食べているモフから麻薬を取りあげ、ポイっと捨てた。


「びよ~……」

残念そうな顔で捨てられた花を見ていた。


「……あとでプリンあげるからね」

精霊だから麻薬だろうがなんだろうが関係ないかもしれないけど、薬物ダメ!絶対!


「リリスが言ってた!プリンって旨いのか?」

急に元気になってピヨピヨ鳴いている。


「プルんってしてて、あまくておいしーよ」


“ピヨ~”と嬉しそうに鳴くモフの頭に、ポッとミーちゃんが花冠を乗せた。

「ん?似合うか?」

モフがご機嫌さんで頭の上の花冠を揺らした。


「ふふ」

「かわいー」


そう言うミーサーちゃんの頭の上にもキレイな花冠が乗せてある。


「モフもカワイイけど、ふたりともかわいーよ!」



──あーんカワイイ!モフもカワイイけど、ミーサーちゃんもかわいいよぉ~花の妖精みたい!


──ああ、ザ・女子って感じだよな~……花冠って……俺は泥団子作りたい。ドッヂボールしたり、落とし穴掘って鬼ごっこしたい


──何そのサバイバルゲーム……やめてよ?そういうのは男子たちでやってね。なんでそんなに泥団子に(こだわ)るのよ……



「出来た!」

サーちゃんが黄色い花を中心に作られた一際豪勢な花冠を掲げた。


「こっちもー」

ミーちゃんはレイのように長いネックレスを作っていたようだ。


「アール」

「来てー」


側に行くとミーちゃんがふわっとレイをかけてきた。

ちょこんとサーちゃんが花冠を被せてくれた。


「キレイ!!」

「かわいい!」

二人が、パチパチパチッ!と手を叩いて大喜びしている。


「似合う!」

「花の女神!」

キャーキャーととても嬉しそうにアールの髪を編み、花をさして着飾っていく。

ふふ、なんだかラプンツェルになった気分だわ。


「えへへ……ありがと」

アールは完全にお人形だね~。



──二人が楽しそうで良かったな……


──うん。お花畑にしたかいがあったよ。何故花びらだけじゃないのかはわかんないけど……



三人でテーブルを囲うようにさらに大きな花冠を作って遊んでいると、コンコンコンとドアが鳴った。


「あ、きっとリリスだ。はーい、ちょっとまってねー」

リリスが見たらビックリするかな?

ふふふ、でもきっと喜ぶよね?

タタタっとドアにかけより、ガチャッと開けた。


「リリスー!これミーサーちゃんがつくって……」

ドアの前に立っていたのはリリスではなかった。

え!?目の前に立っていたのは……


「アール様……おやおや、ずいぶんお可愛らしいですね。よくお似合いですよ。……入ってもよろしいですか?」

タリルだった。


「タリルせんせー…………」

え?リリスは?リリスは何処に行ったのかな?


タリルは不思議な、何とも言えない神妙な顔をしていた。

ふとタリルの後ろを見ると、何故だかナルコスもいた。なんだかナルコスも微妙な顔で静かにアールを見つめている。


…………何故二人してアールの部屋におしかけてるの?嫌な予感しかしないんですけど。


「……あのー……」

振り返り、チラッと部屋の中を見た。

部屋中を満開のお花畑にしてしまっている。

何故“フロール”でお花畑になってしまったのかわからない。そして何故いつまでたっても消えないのかもわからない。

よくわからないが、キレイなのでそのまま遊んでいたのだけど……


「いま……あそんでるんですけど……なんのごよーですか?あ、おはなしのつづき……?」

部屋には入れたくない。何を言われるか……

せっかく3人で仲良く遊んでいるのに……


「アール様に……いえ、お三人様にお話があってきました。アール様たちも私たちに話さなければならないお話があるんじゃないでしょうか?」

タリルがにこりと口の端だけで笑った。



──このアルカイックスマイル、怖いわ……


──なーんか全部知ってますって顔だよな……ええ……俺も怖いぞ……何を知ってるんだ?この男は……?違う……俺は何もやってない!


──いや、何かの犯人なの!?何もしてないの知ってるから!もう、ふざけないでよね。はぁ……まったく……マルのおかげで気が抜けたわ



「いま、ミーサーちゃんとおはなのかんむりつくってて、おへやがちらかってますけど、いーですか?」


「はい、大丈夫ですよ。アール様のお優しいお気持ちの結果ですから」


??ええ……?

部屋が散らかってるのがアールの優しい気持ちって……意味不明なんですけど?

この人はいったい何を言ってるのかしら?

全くわかんないわね。


「……どーぞ、おはいりください」

二人を部屋に招き入れた。


こうして改めて部屋を見渡してみると、絶対言い訳が無理なくらい、お部屋が普通にお花畑だった。

部屋一面これでもかと花が咲き乱れていた。

不思議なことに花を摘んでもまたすぐ新しく花を咲かせるのだ。


「……これは……なんなんだ?」

ナルコスが目を丸くしてぼそりと言った。


「──えーと……“フロール”したら、なぜかこーなりました。ミーサーちゃんにみせてあげたいなーっておもってがんばりすぎました!なぜこーなったのかはわかりません!」

胸を張ってこたえた。

ほんとの事だよ。嘘じゃないよ?

ほんとに一体何が何やらわからないのよね。


「いつもおはなばたけなんじゃないですよ?ちゃんときれーにかたづけたおへやなんですけど……どーしたのかな?」


「はは……これは……。聞くと見るとは大違いと言いますが……想像以上でしたね」

お花畑を歩きながら椅子を用意して二人に座るようにすすめた。



──いやーメルヘンだな~。お花畑で花冠を前に佇む男二人……全然似合わねーな!シュール過ぎるだろ!特にナルコス!お前は面白すぎる!うはははは!


──ちょっと!マル、止めてよ!こっちまで笑えてくるでしょうがっ!……うっ……ぐくくく



ピョイっとモフが自分の花冠をナルコスの頭に乗せた。

ああ!そんな難しい顔で花冠を被らないで!

違和感が半端ない!!

モフがニヤリとドヤ顔で笑った!?



──ぎゃはははは!モフ、グッジョブ!


──いや~~~!!



「……ナ……ルコスせんせー……それ……あはははは!」

もうだめ!我慢できない!


「あはははははは!!ひゃ──ぁはははは!!」

お腹を抱えて大笑いしてしまった!



──死ぬ!笑い死ぬ!


──に……似合わねー!!花より剣だろ!



ミーサーちゃんがその笑いが移ったのか、うずくまり、口を抑えてプルプルと笑いをこらえて震えていた……。


「……はぁ……はぁ……はぁ……」

ああ……疲れた……まさかこんなふんわりした空間で笑い死にそうになるとは思わなかったわ!短時間に2度も死ぬ目にあうなんて……


「……アール、モフ……お前らコンビは……ほんとに……」

ナルコスがスッと左手を頭にやり、花冠をテーブルに置いた。

と、同時に右手でナルコスの肩にとまっていたモフをむんずと掴み、バシュッ!とアールに投げつけた!


「ビョエ~~~~!」

びろーんと舌を出しながらこちらへ飛んできたー!


「モフ~~~~~!」

両手を広げて迎え入れた!


ぎゅ──っと抱きしめてよしよしと撫でた。


「モフ、グッジョブだったよ……ミーサーちゃんも喜んでた……ふふふ」

こそこそと囁いた。


「任せろ!ピヨはじゃまピヨ!」

こそこそとキラリん顔をした。


「……アール様、お話よろしいですか?ミーサーちゃんも……席にお座りください……」

タリルがアルカイックスマイルのままそう言い、何か呪文を唱えた。

たちまち小さめの椅子がニョキニョキと三脚現れ、テーブルを囲んだ。


なんとなく不穏な空気を感じながら、大人しく席に座った。



……?わざわざ部屋まで押し掛けてきたのになかなか話を切り出そうとしないタリルにしびれを切らしてきた。


「あのーなんのおはなしでしょーか?」


タリル先生がゆっくり瞬きをし、大きく深呼吸をしてから、ニコッと笑った。


「先ほど報告会が終わってから……私としたことがうっかりパスを切り忘れてしまいましてね……気づいた時には声が聞こえ、激しい感情の渦に巻き込まれていました……」


……えっ?


「このままではまずいと思い、切ろうとしたのですが……お三人の魔力は凄まじく、引きずられてしまいましたよ……」

タリルが遠い目をして、フッとニヒルに笑った。


えええええ────!?


どうやら電話の内容は全部タリルに筒抜けだったようだ!



──うわーこれって、ミーサーちゃんの過去も大泣きしたことも、全部知られたってことよね!?


──って、事だよな……あちゃー……タリルに秘密にしてた意味無いじゃん!



ミーちゃんもサーちゃんも呆然としていた。


そういえば大泣きした時、誰がどういう感情で、その感情が自分なのか違うのか、何がなんだか分からなくなった。

あの混沌としたぐちゃぐちゃの思いをタリルも味わったって事なのか……。


凄く悲しくてわんわん泣いたけど……タリル先生も泣いたのかな……?


「……ミーちゃんさん、サーちゃんさん、入領審査での嘘はいけませんね。事情があるにせよ……ね」


タリルが静かに二人を見つめた。



子ども世界に土足で踏み込む大人って嫌よね!

来なくて良かったのにね!

ぶーぶー(´д`)

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