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第35話 悲しい過去

初めてのお友だち~嬉しいな~(ノ^∇^)ノ


ちょっと悲しいけど、出来ることはきっとある!お友だちの力になれたらいいなー。


がんばれーマルエルミーサー……


とりあえずの報告会が終わったので、トムソンは執務室に戻った。

それでは解散となるはずだったが、タリルがナルコスと話があるとの事で、応接室には二人を残して皆が下がることになった。

トムソンの報告書とは別に父さんに伝えるべき事を話し合うそうだ。

後でまたアールと、ミーサーちゃんとも話したいとの事だった。


好都合だと言うことで、ミーサーちゃんを自室に招待した。


まずはリリスにミーサーちゃんを部屋に招待することを告げておかないといけない。

リリスにはマメに報告しておかないと後で大変な事になる気がする。

ので、ミーサーちゃんを連れてメイドたちのいる部屋に向かった。



──ねぇマル、ミーサーちゃんたちの話ってなんだと思う?


──さぁな?女の子だし、あそこの市場で一番かわいい服はあそこで売ってるよとか?ファッション関係か?


──違うでしょ。なんでタリル先生に秘密にするのよ?


──知らんがな。どうせすぐ分かるだろ?それよりモフはどこ行った?



メイド室は昼間はドアが開けられている。出入りが激しいのでいちいち開閉するのが面倒だし効率が悪くなるだめだった。

そちらの方からワイワイとなんだか楽しそうな声が聞こえた。

……何かしら?


「リリスー、いますかー?」

ひょいと中を覗いた。


「アール様!はい、ここにおりますよ!あら……もう報告会は終わりましたか。終わったらトムソンに呼びに来てくれるように頼んでおいたのですけれど……申し訳ありません……アール様にわざわざ足を運んでいただくなんて……」

リリスが悔しそうに小さく拳を握った。

……うわっこれって後でトムソンってば叱られるんじゃない?


「ぜんぜんいーですよー。リリスにおはなしが……ってあれ?モフ!ここにいたの?」

どうりで見当たらないはずだった。


メイド達に囲まれて、テーブルの上で何やら食べているグレーのモフモフを発見した。


「はいこちらにおられましたよ!」

「かわいいですね~。アール様のペットですか?」

「なんでも美味しいって食べてくれるんですよ~」

メイドさん達が、きゃいきゃいキャッキャッ言いながらモフを撫でていた。モフの前には良い匂いのするクッキーが山のように盛られていた。

いいなぁーモフモフって愛されるよね~。


「アール!終わった?」

と、手?を休めずモキュモキュ頬張りながら、ギュルンっと180度首を回転させこちらを見た。

怖っ!

周りのメイドさん達がビクゥッとなってしまった。ちょっとしたホラーだよね……。


「うん……モフ~ふとるよ?」

身体中クッキーのくずだらけだった。クッキーモンスターみたいだね。


「ん?太る?」

なにそれ美味しいの?って感じで聞かれてもね……。まぁ精霊だし?太ったりしない……のかな?



──なぁにぃ?モフってばナルコスやタリル先生には姿を見せるの渋ってたくせに。ミーサーちゃんやメイドさん達にはあっさり見せてるじゃない!


──うん、そだな。モフはオスと見た!精霊に雌雄があるのか知らんけど、女に甘いっぽいからな。精神的にオスよりだよな



「モフー、いまからミーサーちゃんとあそぶんだ。モフもおいでよ!そうだ、リリス、あとでおちゃとおかしをへやにもってきてくれる?」


「畏まりました。ちょうどプリンを作っているところです。後でお持ちしますね」


「うん、ありがとーおねがいするね」


「じゃあミーサーちゃん、いこーか」


緊張した面持ちでミーサーちゃんが頷いた。



部屋に入り、向かい合うように椅子に座った。

モフを膝に乗せ、ぎゅっと抱きしめた。キュッと鳴いたが、とくに何もせずおとなしく抱かれていた。


変な緊張感をはらんだ空気が漂う……。


テーブルをはさんで向かい合うって……なんだか三者面談のようだわね…… 膝に変な生物が乗ってるけど……。


「えーと……」

……どうしよう?いざお話しするとなったら、何を話していいかわからないわ……そもそも私ってなっちゃんくらいしかお友達っていなかったのよね……。

どうしようか考えていると頭のなかに声が響いた。


『アール!今日は招待してくれてありがとう』

と、サーちゃんから電話がかかってきた。


『あ、うん、ボクもおはなししたかったし……ボク、おともだちをしょーたいしたのはじめてだから、へんにきんちょーしちゃった!』

へへへと照れ笑いをしながらモフの頭をモフモフした。


『アール~、かわいいー』

あ、これはみーちゃんだね。


『あのね、サーはね、はじめてアールを見かけた時から、普通じゃないなって思ってたの』

サーちゃんも照れながら話し出した。


『ふつーじゃない?ボクが?』

え、何が……髪の色?美しさが普通じゃないってこと?


『うん、魔力量がね、こう……エルフの域を越えてるっていうか……とにかくね、凄かったの!』


ああ、そっちか。

エルフの域を越えてるって……でも、アールってエルフの両親から産まれたんだし、正真正銘のエルフだよ?

『……そーなの?ボクはよくわからないけど』


『そーだねー。アールは凄いよー?なんだか色もいっぱいあって、境界線がないんだよー』

ミーちゃんがうんうん頷きながらそんな事を言った。


色……色とかあるんだ。ミーちゃんは色で魔力がわかるんだね。


『タリルさんも凄く魔力が高いんだよー。負けちゃうかと思っちゃったー。無事こうして三人でお話できて良かったよー』

ミーちゃんがホッとしたように言った。


負ける……って何に?

ハテナ?な顔をしていると、ミーちゃんがほわっと笑って言った。


『あのねーさっきタリルさんに聞かれないように魔力妨害してたの。ミーはそういうの得意なんだけど、タリルさん相手だとちょっとキツかったんだー』

ミーちゃんが肩をすくめて、はぁーっとため息をついた。


『あの人も何だか変わった色をしてるんだよねー。普段は魔力を抑えてるんだと思うよー?』

ミーちゃんが顎に手を当ててんーっと何かを考えながらそう言った。


『タリルせんせーはまじゅつしとして、トップのひとですから!ボクのじまんのかてーきょーしです!』

ふへへへ!凄いでしょ?

ここでは全く話題に出そうもないけど、ナルコスだって剣士としては超一流なんだよ?


『家庭教師か……アールは凄いね』

サーちゃんが羨ましそうに言った。


……あれ?サーちゃんも勉強したいのかしら?

『サーちゃんは、おべんきょーしたいんですか?』


『え!?あ…………うん……したいとは思うんだけど、生活するのでいっぱいいっぱいだから……』

ちょっと恥ずかしそうにはにかみながら言った。


『そっか……そうだよね……』

くりくりとモフの首筋を撫でた。気持ち良さそうにピヨピヨ鳴いている。



──そうよね……アールは贅沢だよね。二人も最高級の先生がいるんだもの


──まぁな……恵まれてるとは思う。そこは犬神様に感謝だけどな……そういやこの二人なんでここに来たんだ?地元にいれば生活に困ることも無いと思うけどな



『……ミーサーちゃんはどーしてこのまちにきたんですか?』

は!!言いたくない事だってあるはずとか言ったのに、私が聞いてどうするの!


『あ!いいたくなかったらいーですよ?ボク、ふたりのことよくしらないから、たんなるこーきしんなので……』

あわてて言い訳をした。


『……ううん、いいの。ちゃんと話そうと思ってたんだ。あのね……』


そして……

ミーちゃんサーちゃんがここに来た経緯をぽつぽつと話してくれた。


ミーサーちゃんたち姉妹は仲良しで、いつも大抵一緒に行動していた。

ある日二人が遊んでいるとサーちゃんが光る石を見つけた。翌日から、その綺麗な石を集めに高山に出掛けるようになった。


そんなある日、二人がいつものように高山で石を探していると、突然爆音が鳴り響き、村の方から煙があがったのが見えた。

何事かと慌てて村に戻ったら、何人ものハーピーが、リザードマン(蜥蜴(とかげ)のような亜人)が飼い慣らしているプテロノン(翼があるコウモリのような魔物)に捕まり縛られ集められていた。


その襲っている集団の中には人族もまじっており、その男がリーダーのようだった。

その人族の男の前に村長が連れ出されていた。

跪かされ、押さえつけられ、背中の翼が折られていた。


男が何か話しかけていたが、村長は大きな声を出し立ち上がろうとした途端、殴られ倒れてしまった。横にいた体格のいい護衛であろう男に鋭い剣で一突きにされ、それきり村長は動かなくなった。


そいつらはそのまま村に火を放ち、村人たちを連れて何処かに行ってしまったのだった……。


残された二人は勢いよく回る火の手から逃れるべくその場を離れ、山へと逃げ出した。

火がおさまり、焼き払われた村に戻り、生き残りがいないか探したが、誰もいなかった。


だが、あの時男達は村長以外を殺さず連れ去っていた。

何処かで生きているのじゃないか?

捕まった村人たちの中には自分たちの家族もいるんじゃないか?

自分たちはそれを見つけたい。その為に命からがらこの街に逃れてきた……


…………そう、静かに語った。



『あたしたちはあの時まだ小さくて、何も出来ず逃げ出したけど……でも、たぶんまだ生きてる仲間もいると思うの。だから……』


『それが、5年前なのー。ちょうどここの領主様が異民族でも受け入れてて、行くところが無かったから、この街に来たんだー』


『ほんと助かったよね、ミーちゃん!あの時はもう、死にそうだったもんね』


『ほんとだよー』

うんうんと二人が目を合わせて頷いている。


『それでね……!?ってアール?どうしたの!?』


『アールー!』

ガタンッと二人が立ち上がり、タタッと側に来た。


パタパタっとモフが膝から飛びだしベッドへと跳んでいった。



「ふえぇ━━━━━━ん!!」


ボロボロボロ──!っと涙が溢れてきた!

ぶわわーっと目の前が曇り、涙で二人の顔がよく見えなくなった……。


「っ━━サーちゃんっ!ミーちゃんっ!━━ボク……うぇぇぇ━━ん!!」


突然泣き出したアールに二人はオロオロしていた。


驚かせた?二人を驚かせてしまった!でも…………



──マルゥ~~~!止まらない!涙が止まんないよー!!


──うん、5年前ってまだ今の俺たちと変わらないくらいだろ?……どれだけショックだったか……


──うぅぅ~~絶対悲しくて、辛かったはずなのにっ……!なんで……こんなに淡々と話せるの!?私……思い出しちゃって……ふぇ~~~~ん!


──あぁ、そうだな。エル……俺も…………



「ミーちゃん、サーちゃん!ないて、いーですよ!?かなしーときは、ないていーんですよぉ!!」

ぎゅうっと二人を抱きしめた。


「アール……」

「アールー……」

戸惑いながら二人が背中に手を回してきた。

暖かくて、でもまだまだ小さくて、あどけない子どもの手だった。


「……がまんしなくていーんだよ……がんばって、がんばって……ふたりでいぎでぎだんでじょ……?」

もう、悲しくて切なくて、まともに話すこともできない。


……いったい、どれほど大変なことだったんだろう。

私は、親を無くし、足が動かなくなったあの事故に絶望し、世を拗ねて死のうかと思った。思い通りにならない身体に、遅々としてすすまないリハビリ……痛くて辛くて、犯人が憎くて、どうしてこんな目に合うのかと……。

でも、マルがいた。祖父母もいた。友達はできなかったけど、周りの人たちに救われた。


この二人はお互い以外、何もなかったのだ。

里も、守ってくれる大人もおらず、まだまだ保護が必要なほんの小さな二人だったのに……どれほど心細く辛かったのだろうか……


「……ありがとー」

「━━っアール!!」

二人がぎゅーっと抱きついてきてくれた。


なんだか心が苦しくて、痛いほど悲しくて……パスが繋がっているせいか、いったいどれが誰の感情なのかもうわからなくなってきた。


「「「ふっ…………うわ━━━━んん!!!」」」


荒れ狂う感情に翻弄され、三人で大泣きした…………


辛かったよね?悔しかったよね?何もかも許せなくて、復讐してやりたいよね!?

どうして!?なんで!?悪いことしてない!!

それでもどうしようもない現実に嫌気がさして死にたくなるよね?

わかる!わかるよぉ─────!



『うあ────ん!あん!会いたいよぉ──お母さーん!』

『なんで殺されちゃったのぉ───お父さーん!!』


ミーサーちゃんの心の声が響き渡り、胸が締め付けられた……




どれくらい時間が経ったのかわからない。

さんざん泣きはらした後、サーちゃんがポツリポツリと話し出した。


『…………ここに来た時、ハーピーとばれるのが怖かったんだ。また狙われるんじゃないかって思って……』


『うん……二人で相談して、入領審査でウソついちゃったの……』


『だからね、アールに領主様にちゃんと本当の事をお話できるようにお願いしたかったんだ。ハーピーだって事はもうさっき皆にも言っちゃったし……』


『それを頼みたかったのー』

こしこしと涙を拭きながらミーちゃんが言った。


「いーですよ、それくらい!とーさまがそんなことでふたりをおいだすなら、ボクがペンペンします!」

種族を偽りこの領に入ったからって、なんだというんだろう?どうせどの種族でも受け入れていいとなってたはずなんだから!


「ありがとー……」

「……助かる」


泣きはらした顔は三人共、酷い顔だった。

お互いを見ていると、なんだか大喧嘩でもしたみたいにぐちゃぐちゃだった。


「アール、顔……」

「ぐちょぐちょ」

ミーサーちゃんにフフっと笑われた。


涙と鼻水にまみれ、美しかったアールの髪も乱れて、リリスが見たら、飛んできてぶつくさ言いながら梳いてくれるのだろう。


「ミーサーちゃんも……ぐちょぐちょだよ?」

二人ともアールに負けず劣らず、涙と鼻水まみれだった。


なんだか可笑しくなってきた。


三人で目を合わせてクスクスと笑いだした。

お互いの顔は、でろでろで、汚くて、それでも何故だかスッキリして綺麗な気がした。


「「「あはははは────!!」」」



──過去は変えられない。でも、これから出来ることはあると思うぞ


──うん、そうだよね。私たちが出来ることをしていこう


──ああ、この二人、双子ってだけじゃなくて親近感あるものな。俺たちはせっかく領主の子どもに産まれたんだ。立場をつかわなきゃな


──ええ、初めて出来た大切なお友だちなんだもの……



よし!気合いを入れて立ち上がった。

「ミーちゃんサーちゃん、よくここまでふたりでがんばって、きましたね!たいへんよくできました!おおきなおおきな、はなまるをあげます!」


パッと右手をあげて、沸き上がる感情のまま、唱えた。

「“フロール!!”」


バアーッと空中に霧が出来、それが大きな塊となり、カァーッと眩しくて目も開けられないほど光り、輝いた!

強く風が吹いたかと思うと


ポンッ、ポポポポポ、ポンッ!


ブワ────ッと辺り一面がお花畑になった!!


「うわ────!」

「すごーい─────!!」


空中には無数の花びらが舞い、キラキラと輝いて二人に優しく降り注いだ。

芳しい花の香りが部屋中を満たし、まるで桃源郷のようだった!


『アール!スゴイよ!凄くきれい!こんなの初めて見た!』

サーちゃんがとても嬉しそうにニコニコーっと満面の笑顔で言ってくれた。


『……アール、ありがとう……ほんとに綺麗……』

ミーちゃんも笑顔で、言ってくれた。

その笑った目から一筋の涙がツーっと流れ落ちた。


それは、嬉しいのか、悲しいのか、おかしいのか……何の涙かはわからないが、とてもキレイだと思った……


「どういたしまして……」

小さく呟いた。


願わくば、せめて今は嬉しい涙であって欲しいと、心から祈ったアールだった……。



過去を変えると未来も変わる。

でもその未来は望む未来になるかはわからないよね。


今できることをやっていこうー


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― 新着の感想 ―
[一言] 今回のお話し凄く感動しました。 ミーサーちゃんの過去が、とても辛かった筈なのにアールに言われるまで泣かなかった所が凄いと思いました。
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