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第34話 リューリュー?

アールの世界はのほほんと進行中。

何にも進んでないようで、実は進んでるんだよぉ!

今回はほんのちょっとだけ大人な会話が出てきます。苦手な方は回れ右。

( ̄▽ ̄)

「トムソン、他に聞きたいことはありますか?市場での出来事はだいたい今お話ししたことくらいです。あとは、ちょっとした噂話が広がったようですが、アール様の事を指しているかの確証はありません」

タリルがお茶を飲み、すました顔でそう言った。


「噂話ですか?もしかして、黒髪の女神云々のことでしょうか……?私も小耳に挟みました。なんでも豊穣の女神が舞い降りたとか……」

トムソンが馬車番をしている時、そんな話を聞いた。商売人がこぞって探しているとかなんとか……。


「ええ、その噂ですが……ナルコス先生、何かお心当たりはありますか?」

蚊帳の外だったナルコスに、タリルがいきなり話題をふった。


まさか自分に話がくるとは思わなかったのか、ナルコスが一瞬、は?何言ってんの?みたいな顔をしたが、思い出そうとしたのか、顎に手を当てて考えた。


「…………確証……はないが……思い当たる点が無いこともない……」


あるの!?まさか全く期待して無かったナルコスからそんな言葉が出るとは思わなかった。

え?女神って……何の話かしら。ナルコスはいったい何を知っているの?



──ねぇ、何の話してるのかな?あの人たち


──さぁ?わっかんねぇーな。黒髪って……アールしかいないだろう?女神ってのも……大袈裟だけど、まぁ分かるっちゃ分かる。アールは神秘的で綺麗だからな!でも豊穣ってのがいまいちピンとこない


──ええ、アールは何も育んでないわよ?あえて言うなら魔術は産み出したけどね。そんなのタリル先生とナルコス以外知る訳ないし……ねぇ……?



少し考えていたが、おもむろに顔をあげポツリと言った。

「アールがスライムレンクを買いに行ったあと、その店に人が押し寄せていた。だから……」

ナルコスが躊躇いがちにそう言った。


うーん、でもあのお店って最初から美味しいって評判の店だったよね?じゃあただの偶然じゃないの?

「よくわからないけど、ぐーぜんじゃないですか?はじめからおいしーおみせってうわさだったし」

ニコニコ笑いながら言った。


「──まぁ、オレも本当のところはわからんが……だから無いこともない程度だと言ったろう?……そういえばアール、お前あの店の売り子に何か貰ってなかったか?」

思い出したようにナルコスに言われた。


……そういえばサービス券を貰ったわね。

「あ、はい。……これ、ですね。あのスライムレンクやのしょーねんが“またきてね”ってくれました」

ポケットに入れていたせいでくしゃくしゃになってしまった手書きの紙をナルコスに渡した。

パッと見ただけだったけど……確かパスポートみたいなものだったよね?


ナルコスがちょっと嫌そうにぐしゃぐしゃになった紙を受け取り、書かれてある文字を見た。


【特別サービス:一杯買えば何杯でもどうぞ!】

と、書かれていた。

くるりと裏返してみた。


【女神限定!】

と、書かれていた。


「……やはりアール、お前のことで間違いないと思うぞ。そして噂の出所も分かった気がする」

ふーっと息を吐いてその紙をタリルに渡した。


「……なるほど、“黒髪の女神”とやらはアール様の事で間違いないようですね……」

タリルがふふふふと笑いながらヒラヒラとサービス券をふり、トムソンに渡した。


「へーそうかぁ……ボクは“くろかみのめがみ”なんですね?めがみって……てれますねぇ~えへへ。うーん……でも、ほーじょーのいみがわかりません」

黒髪の美少女通り越して“女神”……まぁアールは美しいから……でもちょっと恥ずかしいわね。


「“豊穣”というのは……ナルコス先生がおっしゃったように人が押し寄せていたのなら“人を呼び、富をもたらす”からでしょうか?農家にとっては豊作、漁師にとっては大漁、商売人にとっては集客……そう考えると、人をよぶアール様は確かに“豊穣の女神”ですかねぇ」


へー、なるほどねぇあの少年、うまいこと言うわね!顔はぼんやりしてて覚えてないけど、きっと商売上手なのね。


「オレは人寄せリューリューみたいなものだと思うがな……」

ナルコスガニヤリと笑いながらそんなことを言った。


「へ!?」

全然知らない単語出てきたぁ!!



──え!?リューリューって何?竜みたいなものかな!?人寄せリューリューって何か可愛くない?むにゅむにゅモフモフしたやつかな?


──ドラゴンじゃねぇ?いや、人寄せ……パンダじゃないか!?たぶん。こっちの世界の珍獣でパンダだなんだ!きっと


──あ~アールの黒髪が珍しいから、珍獣って部類……しっつれいね!ナルコスめ!



「なんですか?そのリューリューって!かわいいどーぶつかなにかでしょーか?」

アールに例えるならかわいいに決まってるわよね!?


ちょっと応接室が静かになった。

皆が、え?って顔でこっちを見ていた。

ん?あれ?なんでかな?変なこと言っちゃった?


「……アール」

「知らない?」

「リューリュー……」

ミーサーちゃんが不思議そうな顔で聞いてきた。


「……しりません……そんなにゆーめいなのですか?」

聞いたことないんですけど。


「まぁそうですね。子供の寝物語に出てくる有名な幽……精霊……ですかね」


あれぇ?今タリル先生言い直さなかった?幽霊って言おうとしなかったかな?


「リューリューは“リューリュー”と鳴くからリューリューと呼ばれています。その実態は定かではないのですが、お話では黒くぼんやり輝いているそうです……」

タリル先生がそのお伽噺を話してくれた。


──昔あるところに酷いいたずらばかりする少年がいた。

ある日少年が森を歩いているとどこからともなく“リューリュー”という何かの声がした。

声のする方に行ってみたが、何もいなかった。

気のせいかと思って帰ろうとしたら、今度はすぐ近くで“リューリュー”と声がした。バッと後ろを振り向いたがやはり何もいなかった。

少年は思い付いた。

村に帰り、森に“リューリュー”と鳴く精霊がいて、呼ばれて行くと見たこともないお宝が貰えると言いふらした。

そこで村の子供たちはこぞって森に向かった。

たくさんの罠を仕掛けていたずらしようと先回りしていた少年は今か今かと待ち構えていた。

すると後ろから“リューリュー”という声がした。バッと振り返ると何もいなかった。

また気のせいかと思って前を見ると───


「リューリュー」

真っ黒でぼんやり光るなナニカが大きく口を開けた……


騙された子供たちは次々に罠にはまり、抜けられず大人たちも集まり大騒ぎとなった。

怒った村人たちは少年を凝らしめようと探したが見つからなかった。

見つかったのは大きな木の側にあった少年の片方の靴だけだった──

その後その少年を見たものは誰もいなかった。


お前もいたずらばかりするとリューリューに呼ばれて喰われてしまうぞ、という教訓めいたお話だった。



──ナマハゲみたいなもんかね?『悪い事する子はいねぇーかー』って。ナマハゲって悪い子を食べるんだろ?


──ちょっと違うんじゃない?知らないけど


──うん、俺も知らんけど。イメージだよ、イメージ。なんか噛みつくんだろ?噛みつかれたら風邪引かないみたいな都市伝説


──え?それ獅子舞いだし実際お祭りあるし……マルってば色々混じってるよ!うろ覚え過ぎじゃない!?ウソんこ言わないでよね


──だからイメージだってば。下に※あくまでイメージです。実際とは何の関係もありませんって流れるやつな?まぁ世界中似たような昔話ってあるし、リューリューもその類いだろ?



もう!マルのいい加減知識で余計なこと考えちゃったよ。リューリューがナマハゲに思える……


「リューリューは相手が欲しがる物をエサにして人を集め、食べてしまうと言われている。“人寄せリューリュー”の由来だな」

と、ナルコスが説明してくれた。


「へ~ふーん……ボクはしらないひとにものはあげません」

なんで例えがお化けなのよ。ほんと失礼しちゃうわね!


「いや、誰もそこが似てると言った訳じゃない。人の気を惹きよせ、黒くてぼんやり光るところがお前みたいだと……もういい」

説明するのが面倒になったのかナルコスが途中でやめてしまった。


「ふふ、でもアール様ならそのうちたくさんの人を食べてしまいそうですがね……」

タリルがとんでもない大人な(しも)ネタをサラリと言ってくれた。



──ちょおっとぉ!それは5歳の子供にマズイんじゃないのぉ!?


──いやータリルも男だな!良くわかってんじゃん!男ってのはそういうもんだゾ?食って食って食いまく……


──ばぁ──か!!させるわけ無いでしょうがぁ!アホマル!!


──くすん……俺のハーレム…………



「なにをいっているのかわかりません!ボクはヒトクイじゃないです!」

反応しないわよ!

ピュアなアールは大人の事情なんか、なーんにも知らないんだからね?


「んん……おい、タリル……」

ナルコスがバツが悪そうに(たしな)めた。

すごーく貴重なシーンじゃない!?

ナルコスがタリルに注意するって……ウソみたい!


「失礼しました。そうですね、アール様は純真無垢な5歳児というお話でしたものね。確かにお身体の大きさは5歳児でした……」

ふふふふと笑いながら、なんとなく何を考えているのか分からない目で見られた。


「……はぁ……」

タリルにはアールがどう見えてるんだろう?何となく居心地の悪さを感じながら紅茶を飲んだ。



──なーんかやな感じよね。5歳のアールがセクシートークなんか出来るわけないでしょうが


──はは、まぁミーサーもいるしなぁ。てか、この部屋で純真無垢なのミーサーちゃんだけだろ?俺らの中身は大人だしな



チラッとミーサーちゃんを見たが、ハテナ?な顔をして紅茶を飲んでいた。



──かぁーわいい!やっぱりこれが子どもよね!うんうん、モフモフして撫で撫でしてぎゅーってしたい!


──お前なぁ、ミーサーちゃんはペットじゃないぞ?ぎゅーってすんのはモフだけにしとけよ?リリスあたりに誤解されるぞ?それともミーサーちゃんを俺のハーレムの一員に……


──するかぁ!バカマル!!



「『なんでやねーん!』するよ!?」

はっ!思わず声に出てしまったぁ!!

はっ!またもやビシッてやっちゃったぁ!


皆が突然変なことを口走ったアールを、バッと見た!

タリル先生が目を丸くしてこっちを見てる!

ふぉあぁぁぁ───!やらかしたぁ!!

ちょおっとぉ、マル!何とかして?マルのせい!



──ねぇ、マルってば!……おーい、マル……?


──▼返事がない……ただの屍のようだ……


──うそ……放置……?やだぁ……恥ずかしい……



かーっと顔が赤くなるのがわかった。

“なんでやねーん!”って、だからなんの効果があるんだってばぁ!私のバカバカバカ!


「……アール様……今のは確か、市場で開発されようとしていた新しい魔術では……?」

タリルが真剣な顔で聞いてきた。


うぅぅ、そうだけども!どうでもいい、ただの突っ込みだから!決して新しい魔法とかじゃないのにぃ!

「あー……そーですね……ちょっとおもいだして……」

いや、出来ることなら忘れたい……そうだ!


「おもいだしたり、わすれたりできるまほーはできないかなーっておもったんです」

そうよ、新しい魔術を考えてた振りをすればいいんだわ!

そうすればまた、“流石です、アール様”ってなるはず!


「───忘却魔法と想起魔法ですか……?それはまた───危険な事ですね」

キラッとタリル先生の目が光った。


「人の精神や記憶に関する魔術は禁忌に値します」

タリルの雰囲気がガラリとかわり、鋭い目付きでそう言われた。


「──え……?」

……思ってたのと違う……。



──マジか!?そうか……確かに他人の記憶や精神に影響与えるって……下手すりゃ人格破壊するかもしれないもんな!


──え~~?そんな事する気なんかさらさら無いわよ?恥ずかしい事忘れられたらいーなーってだけなのに……


──だろうな、小心者のエルだもんな~そんなこったろうと思ったよ


──駄目なんて今聞いたし……でもタリル先生の目が怖い……



「──そうだったんですね。ごめんなさい……ボク……しらなくて…………」

しゅーんと項垂れた。


口から出任せも大概にしないと怖い目に合うってことよね。

やっぱり何でも新しい事を口に出すのは、ちゃんと検証してからだわね。キュアリングも下手に教えなくて良かったのよ。うんうん。


「──アール様……いえ、私が悪いのです。きちんと禁忌の呪文についてお教えして無かったのですものね、申し訳ありません。アール様がまさかそのような魔術を思い付くとは夢にも思わず……」

タリル先生が申し訳無さそうに頭を下げた。


「トムソン、この対話は記録しなくても結構です。私が直接ご領主様にお話ししますので」

ガリガリと必死でメモをとっていたトムソンにタリルが鋭く言い放った。


言われたトムソンがビクッとして筆を止めた。

「……はい……畏まりました……」


トムソン!いたの?

そっか、いたわね……またもや存在を忘れていたわ。……ふふ……なんでやねーんかけるまでも無いわね……普通に忘れちゃうもの


「タリルせんせー、ぼーきゃくまほーのかいはつはもうしません!ほかにだめなのあったらおしえてください」

はい!と元気よく手を挙げて、タリルに聞いた。


「そうですね、時間を遡る逆行魔法等、時をねじ曲げる魔術等は禁忌とされています」


「どーしてですか?」


「どんな影響があるかわからないからですよ。時間に歪みが生まれ、全てが破壊されるかもしれません」


「──ほぇ~~」

でもドラ◯もんではタイムマシンあったよね?

……そうか、タイムパトロール的な何かが自然摂理的に働くってこと?……バタフライエフェクトって訳ね……。


「わかりました!きをつけます」

そんな恐ろしいモノに手を出す気は無いわね!


「───ご理解いただけて恐縮です……アール様……」

タリルが複雑な顔をして口の端で笑った。


『アール』

サーちゃんから突然電話がかかってきた。


『サーちゃん、どーしたの?』

今まで黙って様子を見ていたミーサーちゃんだったけど……何だか思い詰めたような感じだわ。


『……アールに話したいことがあるんだけど……タリルさんには内緒で』

サーちゃんがそう言った。けど……この会話って既にタリル先生に聞かれてるのでは?だってグループトークよね?


『え……?でもタリルせんせーとパスつながってるから……すでにきかれてるんじゃ?』


『大丈夫。ミーちゃんが妨害してくれてるから。タリルさんには気づかれてないよ』


!そんな事出来るの!?え?ジャミングかけてるって事?……ミーちゃんすごくない?


『……わかった。あとでボクのおへやにしょーたいするよ』



──マル、良いよね?


──ああ、タリルに秘密にする意味がわからんけど、この家でアールに何かするとは思えないし……モフもいるし……ってモフどこ行った?



ハッとモフが見当たらない事に気づいた。

……まぁモフだし、何処かにいるでしょう。夕飯の頃にはきっと出てくるわよね。


そんなこんなで何となく気まずい空気のまま、トムソンの事情聴取は終わった……



ミーサーちゃんは天使ちゃん。かわいいんだよ。エルちゃんのぎゅうぎゅう攻撃に気をつけて!

でもきっとぎゅうぎゅうされる運命のお二人さんですね!( ´∀`)


そのうちまたイラスト描きたい……

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