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第3話 5歳になったよ

久々の更新です。

毎週更新を目指しています。

だんだん大きくなるマルエルを暖かい目で見守ってやっていただけるとありがたいです。


がんばれーマルエルー

この世界は一見地球によく似ていた。

ひと月はだいたい30日だし、1年は12ヶ月だ。季節もあるし、受ける風景の印象は違うものの、海や川、山や砂漠もある。



──俺たちが転生してもう5年かぁ。なんかあっという間だったよなぁ


──そうよねー。エルフってさ、長生きじゃない?だからいちいち誕生日のお祝いなんてしないと思ってたよ



先日アールの5歳の誕生日会が盛大に開かれたのだ。


ノールは来るわ、トレントは踊るわ、何故かは分からないが花が降ってくるし、虹はかかるしで、もうお祭り騒ぎってやつだった!いろいろな方面からお祝いの挨拶があり、いろいろな種族の者たちが来ていた。


なんでも5歳と15歳の誕生日はお祝いするらしい。

5歳までは存在が曖昧で突然死んでしまったりするらしい。

5歳を迎える頃には安定するため、そこではじめて人になる。

まぁ戸籍ってやつか。

そして15歳までは人族と同じように成長する。

で、ここからエルフの本領発揮で突然成長がとまる。というか、見た目が変わらなくなる。

成長しないわけではないが人族に比べるとすごーくゆーっくりになるのだ。

なので、その急な成長が止まる15歳でもう一度お祝いするって事だな。



──すごかったよね~!私たち愛されてるんだよねぇ~。お酒飲めなかったのが残念だったけどさ


──おうよ!早く飲めるようになりたいよな……マジで……あと10年か


全然知らない人ばかりで、何がなんだかわからなかったのが正直なところだったけど、あれだけの人が集まってくれたのだ。アールの誕生日を喜んでいるのは間違いないだろう。


夜は大人たちだけの酒盛りになってた。そして、最後は月にお祈りして終わりというスタイルだった。


そう、こっちは月が信仰の対象のようだ。


月はちょっと面白い。

金色の月の年と銀色の月の年が、一年おきに変わる。金色から一年かけて徐々に銀色になり、一年たつと今度は銀色から金色に変化していく、なんとも不思議な光景だ。



──月に魔力の秘密があるのかな?あんなにはっきり色が変わるって面白いよねー


──ああ、アールの目の色もさ、金と銀じゃん?なんか魔力と関係あんのかな?って思うんだけど……お前研究してみたら?


──そうね……


そう、ここには魔力と呼ばれる目に見えないエネルギーがある。

地球のオーラってやつと同じ感じかなぁ?


それで魔物と呼ばれる野生動物がいるのよね……。

こういうところって地球とは全然違うな。

魔力って、オーラの濃いバージョンって感じよねー。

誰でも感じるオーラ的な?



──おーい!エルさんやー。またなんか考え込んでるだろ?ラボに戻っとく?


──んーん。今日は勉強の日だもん。ちゃんと話を聴きたいし。交代交代!


──はいはい



そう、今日は家庭教師が来る日だ。

前世の知識と、私の探究心(主にどうスローライフを満喫するかについて)で本を読み漁り、家庭教師までつけてもった。


「アール様、今日も先に準備しておられるのですね!さすがです!」

家庭教師のタリルがうんうんと頷きながらニコニコ笑顔で部屋に入ってきた。今日で2回目の授業になる。


「こんにちはタリルせんせー!よろしくおねがいします」

ペコリと頭を下げて、挨拶した。

挨拶、これ、大事よね!


「はい、こんにちは。ご挨拶もちゃんとできて、アール様は本当に聡いお方でいらっしいますね。5歳になったばかりとは思えませんね」

大げさに誉められた。


「タリルせんせーのおはなしはとてもおもしろいです。ボクはせんせーのおはなし、ダイスキです!」

実際面白いんだよね~さすがエルフだわ。だてに長生きしてないよ。


「そうですかそうですか、アール様は教えがいがありますね。では今日は魔力についてお教えいたしましょう!」

どどーんときた!!


やったね!待ってました!


「はい!」

元気にお返事した。


「大変よろしい!では実際に使ってみましょう。お庭に出て……そうですね森に行ってみましょうか」

天気もいいですし、とタリル先生が窓から外を覗きながら言った。


「モリですか?はじめていきます」

行ってみたかったけど、今まで駄目だと言われてきたのだ。


「はい。森は魔力に満ちていますからね。危険も伴います。一人で行っては行けませんよ?」

タリル先生が、ダメですよと言う風に、胸の位置でXを作った。


話には聞いていた。本でも読んでいた。

行ってみたいと思っていた。


「はい!」

家の敷地以外で外に出るのは初めてだ!

なんだかドキドキしてきた。


「大変よろしい。では参りましょう」

くるっと背を向け、ついてくるように促された。

部屋を出てタリル先生と一緒に階段を下り、庭に出るために裏に回ると、リリスが裏口のところで上着を持って待っていた。


「リリス!ボクはいまからせんせーとモリにいってきます!」

リリスはアールの乳母で、侍女頭だ。エリザベートが臥せっていた間、本当の母親のように接してくれていた。


「はい。森はとても寒い所がありますから、こちらをお忘れなく。お気をつけていってらっしゃいませ、アール様」

と、上着を渡してくれた。


裏口から庭に出ると、そこには大きいのと、少しこぶりの馬が2頭準備され、柵に繋がれていた。


「アール様、馬に乗ったことはありますか?」

先生が馬を撫でながら聞いてきた。


「おとーさまにのせてもらったことはあります。でも、じぶんでのったことはありません」

前世ではマルが乗った事がある。

マルは運動神経が発達していて、色々なスポーツを浅くだがかじってる。スキューバやスカイダイビングもしていた。乗馬もしばらく通っていた。

競馬場にも時々行っていたみたいだ。


「では馬の乗り方からお教えしましょう。まず、慣れるまでは馬の尻尾を見るように横に並び、手綱を持って、足をここの(あぶみ)にかけます。そして背をまたぐようにこう、くるっと前を向くのですよ!」


先生がヒラリと乗る様は格好良かった。

「さあ、やってごらんなさい」


そう言われ、馬に近づいた。

「はい!」

お返事は完璧にね!


後ろをむいて、足を掛けて、くるっと回る。

うん、一気に上まで上らないといけないわけだ。

うわっ高っか!足上げるのも大変そうだわ。

なるほどなるほど、もう完全に理解した!

いや~馬の背中って高いのね~!

うんうん、やるよ?よーし!



──マル!交代!


──へいへい。だと思ったよ!


アールが小さな身体をひょいと上げ、ヒラリと馬に飛び乗った。


「素晴らしいです!アール様はお利口なだけでなく、運動神経もよろしいのですね!」

もう、べた褒めだな。


「ありがとーございます!」

お礼、これ、大事。


「では出発しましょう。ああ、馬を進めるときには足でポンと腹をけって合図するんですよ。右に曲がる時は右の手綱を引き、左の時は左を引く。止まるときは両方一度に軽く引いて合図します。わかりましたか?」

タリル先生が実演してくれた。


──へー意外と簡単じゃない。楽勝楽勝!じゃあよろしくね、マル!馬から降りるまではお任せするね!


──お前な、少しは運動しろや


──えー?マルがした方がいいに決まってるじゃん。どうせアールの身体は覚えるんだから、鍛えてよ。マルに丸投げ、まるっとお任せするよ!……マルなだけに。くくくっ


──つまんねぇよ!


「森には魔力が満ちています。魔力とはなんなのか未だに解明はされておりません。ですが、私はそれは生命エネルギーの一つではないかと捉えております」


馬を進めながら講義が始まった。


「せいめいエネルギー」

やっぱりエルの言うオーラみたいなものか。


「はい。ですから森に強い魔力が満ちているのは、この星そのもののエネルギーである大地のエネルギーが満ちているからではないでしょうか?アール様は何か感じることはございませんか?」

にこりと笑い、そんなことを聞いてきた。


森の中をこうして歩いていると、確かにエネルギーを感じる。地面から、木々から、そこかしこから、生命の息吹のようなものを感じる。

家で籠っている時よりもそれはずっと大きいものだ。

そういったものを言葉にすると何というのか……


「そーですねー」



──エル!任せた!


──はいな!



「ボクもにたようにかんじるときがありました。ふつーのどーぶつもいるのに、どーしてマモノがいるのかなーっておもって。それでマリョクがつよいのがマモノになるのかなーって」


それを聞いて、先生がピタリと歩みを止めた。


「……アール様はどうしてそう思われたのですか?」

今までにない、真剣な目でこちらを見てきた。


「……ネズミとウォーンバッドはとってもにています。でもウォーンバッドはマモノですよね?ネズミはおうちでみれるのに、ウォーンバッドはモリにしかいません。だから、もともとはおなじネズミなのだけど、マリョクのおおいモリにいたから、ウォーンバッドになったのかなーっておもいました」

そうなのよ。元が同じでも、環境で姿を変えるのよ。

菌を育てる時も苦労したわー。

ちょっと温度が違っただけで全滅したりね。

そう考えると魔力が強いこの森に強い魔物がでるのは当たり前な気がするのよね。


「……アール様は本当に神童様かもしれません。わずか5歳のお子が、誰にも教わらずにそのようなお考えに至れるなど……」

感服しました、と頭を下げられた。


「そんなことはありません!ただのおくそくです!せんせーのほうが、ずーとなんでもごぞんじです!」

ふるふる首をふった。


いやいや、ズルしてるだけなんだよね。記憶、あるからね?私研究者だったし。オタクだし?神童は言い過ぎじゃない?


「謙遜までご存知とは……。これはご領主様が私に家庭教師をして欲しいと頼まれる訳ですね……わかりました。そういう事にしておきましょう」

にこりと笑ってうなずきつつ、何かを納得したようだった。


「ではもう少し奥に行ってみましょうか」

そう言ってまた歩みを進めた



──じゃあ後はよろしくね


と言ってまたエルと交代した。


カポカポとなんとなく静かに黙ったまま景色を見ながら歩みを進めた。少し上り坂になった道をゆっくり進んで行く。


そのまま周囲を観察しながら奥に歩を進めるていると、草の陰からカサカサと音がした気がした。


「ん?」

そちらの方を見たが、何も居なかった。

でもその草葉の陰に、きれいな丸い石が落ちているのを発見した。


へー珍しい。丸い石なんてあまり見ないよな……。


「せんせー!ちょっと、とまってください!」

ひょいと降りて、石を拾いに行った。


それは、2センチほどの丸い石だった。表面は磨かれたように滑らかだった。


ほんとに角がないな……まん丸で…親近感がわくぜ。


にやりとしてポケットにしまいこんだ。

急いで馬に戻り、ひょいと飛び乗った。


「何かいいものをみつけましたか?」

先生に聞かれたので素直にこたえた。


「はい!きれーなイシです!」

ポケットから丸くて磨いたようなキレイな石を取り出し、先生に見せた。


「ほお、きれいな丸い石ですね。アール様は石がお好きなのですか?」


「なんとなく、まるかったのできになりました!」

深い意味はない。特別石が好きなわけでもないが、初めての森に入った記念にしておこう。

ポケットにしまいながら思った。


「そうですか。さあ、もうすぐ目的地ですよ」

そう言いながら、少し先の開けた場所をさした。

あれが先生が言う目的地なのだろう。


ほどなくしてその目的地に着いた。

そこはプールくらいありそうな広場だった。

その広場は木漏れ日が射し込んで静謐な空気が漂わせる、不思議な感じのする広場だった。真ん中に見上げるほどの大きな木が、立っていて、まるで広場を守っている御神木のようだった。


タリル先生が馬から降りて、広場の柵に馬を繋いだ。

おいでおいでをしているタリル先生の側まで行き、そっと馬から降りて自分も柵に馬を繋ぎ、辺りを見回した。


「きれいなトコロですね。なにかいてそうです」

その澄んだ空気のせいか、時間が止まっているような不思議な感覚がした。


「ん?」

誰かが見ている?

何かの視線を感じてそちらを見たが、別に何も居なかった。

なんだろうか。さっきからなんとなく見られている気がするんだけど……


タリル先生が木の前に行き、コホンと咳払いをした。

「さあ、ここまで来て、魔力がなんなのかなんとなくわかりましたね?今日はそれを感じる為に森にきたのですが、もうアール様は分かっていらっしゃるようですので、次の段階にいきたいと思います」

講義がはじまった。


パチパチぱちと手を叩いた。

待ってました!



──マル!


──ああ、交代な。でも俺もここにいるぞ。これは俺にも必要だからな。


──うん。わかった。



「この豊富な魔力を使って、詠唱を通して様々な事をするのが魔術となります。詠唱とは式みたいなものです。1+1=2みたいにね。詠唱は覚えればいいだけですが、人によって持っている魔力の量が違います。ですので、魔力量が多い人は出来ることは多く、少ない人はそれなりに、人それぞれになる訳です」


「はい!しつもんです」

元気よく手をあげた。


「はい、どうぞ」


「そのマリョクリョーは、うまれたときからきまってるのですか?」


「いい質問ですね。一般にはそう言われています。もって生まれた生命力のようなものですからね。あと、種族によっても魔力量のもともとの量が違います。魔力量が豊富な種族としてエルフ族や魔族などが代表です。あと魔力そのものが意思を持ったものとして精霊がいますね」


──きたー!ファンタジー!!


「せいれい!」


「はい。目に見えたり見えないかったりしますが、確かに居ますよ」


「みてみたいです!せんせーはみえますか?」


「会ったことがありますよ。森の奥で急に雨が降って来たとき、大きな木の下で雨宿りしました。その時、雨の中を5センチくらいの光の粒が踊るようにピョンピョン跳ねていました」


「ヒカリのつぶ!」


「はい。こう、ピョンピョンとね」

先生がおどけたように跳ねた。


「すごいです!みたいです!」


「アール様ならいつか会えるかも知れませんね。さぁ、では講義をはじめます」


「まず、魔術には大まかに光・闇・火・水・土の5種類あります。氷、熱など派生したものもありますが、これはおいおいやっていきましょう。アール様はどれが得意でしょうね?気になるものから始めたいと思いますが……」



──何がいい?


──土かな。俺たちが死んだのって、俺が土石流でお前が土砂だろ?土魔術使えたら助かってたかもな


──なるほどね。



「はい!ツチからはじめたいです!ここにはだいちのエネルギーがいっぱいあるので!」


「はい、大変よろしい。ではそこに立ってください」

先生がいつの間にか手に細い杖を持っていた。

その杖をスッと軽く上げた。


「まずはお手本です『大地からなる余多の(略)』マッドドール!」


バッと目の前の土に向かって杖を振りかざした。


モコモコモコと土が持ち上がり、一つの塊になり、人の形を作った!

そしてピョコピョコと、こちらに歩きだした!


「わー!!すごいです!うごいてます!」



──おお、すげぇ!


──うわ!ファンタスティック!!やりたい!人形作りたい!



「ディダッチ」

ポンっと音をたてて土人形が元の土くれに戻った。


「はい。こちらがアール様のタクトです」

先生が枝を磨いたようなタクトを渡してくれた。


「ありがーございます!……せんせーのとはちがいますね?」

先生のタクトは白っぽく輝いている。自分のは茶色でいかにも“杖”って感じだ。


「そうですね。このタクトは初心者用にになります。魔力を集めるのが目的ですのでしばらくはこちらを使いましょう。集めるのに慣れてくればまたその時考えましょう」

できる事によってタクトも変えるわけだ。ふーん。え?そもそもタクトってなんでいるんだろう?


「はい!」

質問、挙手、これ分かりやすい。


「どうぞ」

先生も慣れたものだ。


「どーしてタクトがいるのですか?おれたりしたらどーすればいいのですか?」


「はい。タクトは集中を可視化する為のものです。実際に目に見えている物をここに集めると念じる方が分かりやすいでしょう?」


……なるほど。確かに想像だけより、具体的にあった方がやりやすいわね。


「そして、折れたらどうするかと言うことですが、そういう意味では折れたら何か代わりになるものを見つけてもいいですし、手をタクトの代わりにしてもいいですよ」


……なら最初からタクトって要らなくない?


「ですが、なかなか力が霧散してしまってうまくいかないことの方が多いのです。ですから効率よく魔術を使う為にはタクトがあった方がいいですね。ものを切る時、手でも切れますが、ハサミがあった方がキレイに切れるでしょう?」



──なるほど、効率化か


──用は使い勝手のいい道具がタクトってことね。確かに杖の先から魔法をかけるって想像した方がやりやすいわね



「さあ!やってみましょう。まず身体を巡る魔力を感じてください」


目を閉じ、自分の身体に集中する。身体を巡る魔力を感じて……



──わかる?


──いや、俺もさっぱりわからん



「……せんせーわかりません……」

しゅーんとなった。


「ふむ、では手を出してください」

先生が、両手の平を上にして差し出した。


「こうですか?」

その上に自分の手をのせた。


「今から私が魔力を流します。アール様はそれを感じたら教えてくださいね」

途端に温かい何かが手を伝わって流れてきた。



──ねぇこれが魔力かな?


──たぶん、そうじゃないか?明らかに自分の熱じゃないな



「はい!なんか、ながれてきました!こう……ぱーっと、あつくなりました!」

興奮して言った。


「早いですね!大変よろしい。では今の感覚で、自分の中を巡る魔力を感じてください」


今の熱が自分の中にもある。

集中して身体を探る。

ん?なんか、お腹が温かい?



──お腹あったかいんだけど……


──ああ、変な感じだな。これが魔力ってやつか?二人で集中して巡らせてみるか?


──うん!やろう!



お腹に集中し、それを全身に流すように意識を持っていった。


途端に堰が切ったようにぶわ──っと何かが身体中を巡った!


電気が流れるような、それ自体が質量を持つかのような圧倒的な力がみなぎった!!



──うわっ!!! ──きゃあ!!



「うきゃぁ──!!マッドドールゥ───!!!」



バリバリバリバリ───!!!!


辺り一面に土煙が立ち込めた!!



「!!あっつい!!あっつい!!」

何が起こったの!?

手の平が真っ赤になっていた!


「アール様!!」

慌ててタリル先生が駆け寄ってきた!


「ヒール!」

アールの手を取り、回復魔法をかけた。


「せんせー何があったんでしょうか?」

呆然として先生を見上げた。


「…………おそらくアレでしょう」

先生がアールの後ろを見るように、目で促した。


どーん!と巨大土人形がいた!!!!

なんだこれ──!?



──うおおお!!でっっけぇ───!!すげ───!!ガ◯ダム!ガ◯ダム!!いや、ゴーレム?


──うわーん!ぜんっぜんカワイクないじゃーん!!



全く可愛くない、ぬぼーっとした土人形が立っていた。

うん、いらない。


「せんせー、これ、できました!でいいんでしょうかぁ?」

ぼーっと、ただでっかいだけの土人形を見上げながら、ぼそっと呟いた。


「……はい。大変よろしい」

ぼーっと、ただでっかいだけの土人形を見上げながら、誉めてくれた。


「……アール様は莫大な魔力をお持ちのようですね。まだ土魔法しかお教えしていませんが、土に適正があるのは間違いありませんね。詠唱もせずに土人形を作れるのは確かに素晴らしいのです。ですが、莫大な力にはそれを操れるだけの、制御する力が必要になります。一緒に頑張っていきましょうね?」

ポンと頭に手を乗せ、撫ででくれた。


「…………はい」


タリル先生は本当に優秀な先生だ。


明らかに失敗してても、けしてそれを責めたりせず、出来た事を誉めてくれる。



──私、前世でもこんな人が先生だったら良かったなー。そしたらオタクにならなかった気がするよ


──ああ、ほんとにな。アリステア父さんに感謝だな。いい先生を見つけてくれた。



「他にも適正があるかもしれません。今日は土魔法だけにしますが、順番に全属性を試してみましょう」

にっこり笑って、そう言った。


「まずはこの土人形を元に戻しましょう。『ディダッチ』と言いながら土に返るように命じます」


「ディダッチ!」


ドサドサドサっと土煙をあげながら元の土くれに戻ってしまった。


「はい、良くできました。大変よろしい」


それから土魔法の訓練をひたすら頑張った。

土人形を作っては壊し、作っては壊し、を何度もやっている内になんとなく適正な魔力を込める量がわかってきた。


「せんせー」

手をあげた。


「はい、アール様」


「つかれましたー」

疲れた。もうしんどい。



──もう疲れたわ。私……


──お前はな~オタクだしな~


──いや、そうじゃなくてね、なんかね、だるいんだよ……土人形あきた……全然かわいくないし……



「申し訳ありませんでした。アール様」

タリル先生が頭を下げて謝った。



──へ?なに?なんであやまんの?


──さあ?わからん



「私は、アール様が初めての魔術の練習だったことを失念していました。そしてあなたが、まだわずか5歳だということも」

真剣な顔で語った。


「膨大な魔力をお持ちでも、器はまだまだこんなに小さいのですものね……」

申し訳無さそうに、また頭を下げた。


「はい!せんじつ5さいになりました!もうあかちゃんではありません!」

ふんっと胸を張ってどや顔をする。

ちょっとね、疲れただけよ?


「はい……そうですね……アール様は赤ちゃんではありませんね」

よしよしと頭を撫でられた。


「今日はここまで!本日の授業は終了です」

パンっと手を叩いて終わりの合図をした。


「アール様。今日の授業の評価です。大きな花丸をあげましょう!『フロール』」


バッと先生がタクトを振り上げた!


キラキラっと辺りが光り、花びらが舞った!広場の花が色づき、一気にパァーーッと咲いたのだ!


「すご──い!!きれ───!!」

キラッキラッしてるぅー!!



──すごーーい!!!


──おお!



「喜んでいただけて良かったです」

ニコニコ笑いながらタクトをもう一度ふった。


舞った花が地面に着くと同時に光の粒になり消えていった。咲いていた花もキラキラ光りながら逆再生のように元の姿に戻っていった。

それもまた幻想的で夢の中のようだった。


「では、帰りましょうか」



──マル……代わって


──ああ、お疲れ様。あとは任せろ



ひらりと馬に乗った。もう馬に乗ることも慣れた。

前世で伊達(だて)に何年も地獄のような訓練をしてきた訳じゃないからな。

身体を動かす事に関しては何でもござれだ。

ふんふーんと鼻歌を歌いながら、馬を進めようとした。


ん?


ガサガサっと草陰から音がした、気がした。


パッとそちらを見たが、何もいない。

おかしいな?今日はなんだか視線を感じる。


じーっと目を凝らして草陰を見る。

一瞬だが、何かが見えた気がした。


ガサガサっとまた音がした!

今度は間違いない!


先生の方を見たが何も気づいてないようだ。


どうしよう?確かめたい。

アールはそっと馬から降り、草陰に近づいた。


ガサガサガサガサ……何がでるかな?何がでるかな?

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