第29話 謎に迫る
スライムレンクの謎解き、一緒にしてくださった方はいたのでしょうか?(o゜Д゜ノ)ノ
アールたちはやっと、答えにたどり着いた模様です。
がんばれーマルエルー!
「ありがとうございました!」
今日はやけに客が多いなぁ。
あの子が来た後からやけに人が買いに来るよ……。
あの子……黒髪ですごくキレイで……また、来てくれたらいい……の…に……えぇっ?
あ……あれは……あの遠くにチラッと見えた、あの黒髪の子は……!?
「はぅぁ──!!」
思わず変な声が出た!
うわ──!!また会えた、あ、こっちに来る!こっちに来てるよね!?
あ、どうしよう!?え?いや、別にスライムレンク屋さんなんだから、スライムレンクを売ればいいんだけどね!?
わ──でも、あ、どうしよう?
あぁあ!近づいてきた!
天使が降臨してきたよ!?
って、あ、さっきの変わった双子と一緒だ!
そうか、やっぱりお友達だったんだね。
連れてきてくれたんだ!
うわぁーどうしよう?これって運命?
あの子とお友達になれってこと?
そうだよね……僕ももう13歳だし、そろそろ……か、彼女とか?作ってもいいんだよね……うわぁ~どうしよう~声をかけるべきかなぁ……?
アールたちは、そんな少年の内心の葛藤も露知らず、のほほんと歩いていた。
「モフー、スライムレンクっておいしーの?」
モフに何気に聞いてみた。
「旨いぞ!」
ピヨピヨっと頭の上でパタパタしている。
“旨い”の意味がわからない。確かにジュースとしてはいいかもしれないけど、あれにスライムが入っている必要性ある?いや、あるから入れてるんだろうけど。
もう一度飲んでみたら分かるかもしれないとは思う。思うが……うごうごもそもその食感がなぁ……。
──お?あの少年のやってるスライムレンク屋、繁盛してるんだな
──ほんとだ。もうあんまりジュース残ってないじゃない。うわ青があとちょっとだわ。黄色と白は……まだ大丈夫ね。良かった
──なぁ、エル、お前も飲んでみろって!な?代わってやるからさ!
──丁重にお断りいたしまーす。生ぬるいスライムレンクはマルが堪能してね!
──あれさー、うごうごもそもそってなって……うーん……あれがなけりゃな……なんであんなんが旨いってなるんだろ?モフも旨いって言ってたしな。繁盛してるしな。意味わからん
──そこに答えがあるわね!ガンバ!マル!
──へいへい
「こんにちは。さっきはありがとーございました。またかいにきちゃいました」
先ほど買ったスライムレンク屋さんにたどり着き、売り子の少年を見て、にこっと笑って挨拶した。
「いぃらっしゃひまへ!」
変な挨拶出た!?
──噛んでるぞ?思いっきり噛んでるよ、この子!挙動不審だぞ!?どうした、少年!
──何かの呪文!?……こっち見てると思ったんだけど、何か他の事を考えてたのかな?脅かしちゃったかしら
まぁ、いいや。
「……えーと、キイロとシロと、あ、あとアオも、ひとつずつください。ぜんぶおおきいほうで」
ちょこんと大銅貨1枚を台に乗せた。
「あ、はい、ありがとうございます!少々おまちください!」
少年は真っ赤な顔をして慌ててコップを持ち出し、用意し始めた。
──この子、働きすぎなんじゃないか?繁盛してたみたいだし。熱でもあんのかね
──見た目はまだ小学生だよね。どうなんだろ?こっちの労働基準がわかんないからなぁー
ぼんやり作業を見ていると、
「あ、あの、今日2回も買いに来てくれて、ありがとうね!その、うちのスライムレンク気に入ってくれたの?」
と、少年が照れながらも話しかけてきた。
「あ、いえ!うちのペットをこのこたちがみつけてくれたから、おれいです!」
今回はミー、サーちゃんの分とついでにモフの分だ。生ぬるくなったスライムレンクはタリルに預けてきた。
「ピヨはペットじゃない!」
モフが頭の上でピヨピヨ足をバタバタしながら抗議しているが、無視した。
「……え?じゃあ君はあんまり好きじゃなかったの?」
ちょっとショックを受けたような顔をしてスライムレンクを注ぐ手が止まってしまった。
「あー……すきというか……まだちゃんとのんでないから……わからないかなぁ」
お試しに飲んだだけだからな。
「!!じゃあちゃんと飲んでみてね?もし不味かったらお代は返すよ!僕の腕が悪かったって事だから……」
傷ついたように悲しそうにそう言った。
あ、なんか悪いこと言ったか?
──わぁ、この爽やか少年、まだまだ子どもに見えるのに、仕事にプライド持ってやってるのね。偉いわね
──ああ、こっちじゃやっぱり早い段階で就職するっぽいな。学校とかないんかね~?成人は15歳って事だけど……ミー、サーちゃんも10歳位だしな……もしかしてアールも頑張らないといけない感じなのか?
──え~?スローにいきたいんだけどなぁ~。エルフ人生長いんだからさぁー
「あ……でも、みんなおいしいっていってたし、きっとおいしーんだとおもいます!まだのんでないだけなので……」
言い訳がましいが本当の事だ。
「そっか、そう言ってもらえると嬉しいんだけど……はい!青と黄色と白。ソーダとラモンとヌークの大きいサイズです」
少年の声にハッと我にかえり、お礼を言い、一つずつ受けっとった。
「はい、サーちゃん、ミーちゃん、どうぞ!」
サーちゃんにラモンを、ミーちゃんにヌークを渡した。
二人はありがとーと言って受け取った。
青のスライムレンクを今モフに渡したらすぐに飲んじゃいそうなので、自分で持とうとしたら、横からひょいとナルコスがとっていった。
「はい、これ、お釣だよ」
と少年が中銅貨7枚を渡してきた。
「ありがとーございました、あの、ちゃんとのんでみますね」
そう言ってお釣りを受け取った。
「あ、うん、よろしくね!あの、それで、全然関係ないんだけども……あの!」
と、突然台から降りて、こちらにダッと近寄ってきた。
「はい?」
なんだなんだ?
ちょっとビックリした。
ナルコスがピクッとなったが、害は無いと思ったのか特に動かなかった。
よく考えたらアールって自分から人に近寄る事はあっても、人が急に近づくことはあまりなかったような……?
……そうか、それでビックリしたのか、やっぱりアールは子どもだな……
「……その……えーと……」
なんだかもじもじしている。
……顔も赤い?
何か言いたそうな雰囲気だけど……まさか愛の告白とかしないだろうな?
「はい……」
コクられても困るけど……。
「……また来てね……これ、サービス券あげる!」
またも深々と頭を下げてきた!
“僕の気持ちを受け取ってください”ver.2だな。
ただのサービス券だけどな!
「どうも、ありがとーございます。じゃあ」
ひょっとサービス券を受け取り、ペコッと頭を下げ、その場を立ち去った。
少年がなんとなく名残惜しそうにこちらを見て、ぶんぶん手を振っていた。
君の気持ちには応えられないけど、ちゃんと飲むから心配すんなよ!少年!
そう思い、バイバイと軽く手を振り返した。
「はうっ!手を……振ってくれた……」
キュンと胸が痛くなり、甘い余韻に浸っていると
「ねぇ兄ちゃん、さっきの子たちってさ、常連さん?」
と、いつの間にか集まっていたギャラリーの一人に声をかけられた。
「え?あぁ……これからそうなるといいなぁって思ってます……」
僕の希望だけど……出来れば常連さんになって欲しいな!
「へーじゃあまた来るかもってことか?」
「たぶん来てくれるんじゃないかな?特別サービス券も渡したし……」
黒髪の女神に渡した券は、1杯買うとその日何杯でも飲めるという、利益度外視の出血大サービス券だった。もちろんあの子専用として咄嗟に作ったものだった。
「ふーん、そんなに旨いのか……じゃあおれもココを贔屓にするかなぁ。あ、青の大きいの一つちょうだい」
「ありがとうございます!」
またお客さんが増えた!
やっぱりあの子は女神様だ。きっと福をもたらす豊穣の女神の化身なんだな!
本気でそう思う少年であった……。
アールたちご一行は、それぞれのスライムレンクを持ってタリルの待つ広場に戻っていった。
道すがら、マルはスライムレンクの謎について考えてみた。
──うし、ちゃんと飲んで謎解きするか!
──あ、やる気になったじゃない
──まぁな、あんな10歳そこそこの子どもでも真面目に働いてるんだ、俺も負けてられない。旨いってのには理由があるはずだしな 。真面目に考えてみる
──いや、別に勝ち負けは無いと思うけどね?でも、頑張って。私も考えるよ
今のところ分かっている事実を頭の中のメモ(マルメモ)に書いて並べてみる。
①生きたままの小さなスライムが入ったジュースをスライムレンクって言う。
②ここの町ではスライムレンクは普通に皆飲むものだ。
「ねぇ、サーちゃんもミーちゃんもスライムレンクすきなの?」
「好き」
「ちょっと」
「スッキリ」
「する」
サーちゃんとミーちゃんが交代交代で話した。
──ふむふむ、なるほど、スッキリするから好きって事だな……スッキリ?何が?もっちゃりの間違いじゃないか?
──いやいや、ちゃんとスッキリって言ったわよ?スッキリ……スッキリなんだ……
「ナルコスせんせーはすきじゃないのはなぜですか?」
俺と同じで、あのうごうご感が嫌なのか?
「……甘いのが嫌なのと、第一、魔物を生で食べる習慣は人族には無いからな」
「なまでたべる……」
これって大ヒントじゃないか?
──一つ目、ナルコス個人の問題じゃなくて、人族はそもそもスライムレンクを飲む習慣がないんじゃないか?つまり魔物を食べる習慣は人族には無いって事だな
──二つ目は、飲んだらスッキリするって言ってたわ。これはどういう意味?後味スッキリ?身体がスッキリ?
──三つ目は、ミー、サーちゃんもモフもスライムレンクを旨いと思うって事か
──これらをマルメモと合わせて考えると……何となくわかった気がするな。後は実践あるのみだな
「……はやくタリルせんせーのところにいきましょう!」
なんだか早く飲んでみたくなった。
気持ち的には駆け足で広場を目指すぞ!
スライムレンク屋さんが流行っていたのには訳があった。
アールたちは気づいていないようだったが、マスクをつけた美しい黒髪の少女と、大柄な人族と、そっくりな双子の少女の四人組は、否応なく目立っていた。
数刻前、黒髪の美少女がスライムレンク屋さんで美味しさのあまり佇んでいたという噂が広がった。
その矢先、またその少女が、今度は人族とかわいい双子姉妹を連れて現れた!
注目されない訳がなかったのだ。
それはまさしくタリルの思惑通り、アールの存在は町に一石を投じたようだった。
アールたちご一行様は、ちらちらと道行く人の視線を集めながら広場に戻って行った……
「タリルせんせーただいまもどりましたー」
「お帰りなさいませ。無事に買えたようですね」
ニコニコ笑いながら出迎えてくれたそこには、土魔法で作ったのだろう、きちんとテーブルと人数分の椅子とコップとお皿が出来ていた。
ちゃんとミー、サーちゃんの分もあった。
ミーサーちゃんは遠慮したようにあせあせしていたが、ニコニコとタリルが席を勧めていた。
そしてテーブルの上には、スースが1本はそのままだが、残りの2本は串が取られた状態でおかれていた。そしてそれは温かく湯気がたっていたのだ。出来たてのようなスースと、氷の浮かんだスライムレンクが並べられていた!
「わぁ!おいしそうです!スースあたためたんですか?スライムレンクにこおりがうかんでる!」
さすがタリルだ。生活魔法もばっちりだな!
生ぬるいスライムレンクじゃなくて良かった!
「ふふ、喜んでいただけて何よりです。さぁ席にお着きください」
促され席に着いた途端にタリルがタクトを振り、何かを呟いた。
フワッと光が降り注いだかと思うとその光は一瞬で消えてしまった。
「……あのーなにか、まほーつかったんですか?」
「ええ、食事をする時はゆっくりしたいでしょう?ですので認識阻害魔法をかけました。攻撃では無いので、何となく影が薄くなる程度ですがね」
──へー便利なものがあるんだな。あ、わかった!リリスはこの魔法を使ってるのかも!だから今一認識できないんじゃないか?
──なるほどぉって、また勝手な事を……いいからこっちに集中よ!
──へいへい
「アール様は何色になさいますか?」
3色のスライムレンクから選べと言うことだろうけど、どれも一緒の気がする。でもまぁ、ここはオーソドックスに
「アオで!」
モフと一緒だ!
タリルが青のスライムレンクをコップに注いでくれた。
ナルコスには黄色を自分には白を注いだ。
スースは、アールが串で食べてみたそうだったので1本残しておいてくれたようだが、多すぎるので1つだけ残し、後はバラけさせた。タリルがテキパキとそれぞれのお皿にスースを乗せていった。
その間、じっとスライムレンクを観察した。
青い海の中を泳ぐクラゲみたいだな……。
お試しで飲んだ時、うごうごもそもその衝撃で忘れてたけど、最後に噛んだときパシュッとなったのだ。
もしかしたらスッキリはあのパシュッかもしれない……?
よし!飲んでみるか!
「いただきます!」
「それ」
「なに?」
ミーサーちゃんが聞いてきた。
こちらではない習慣なのだろうが、アールは物心ついた時から食事の時には、いただきます、ご馳走さまを言っている。
「”いただきます”はかんしゃのキモチです!しょくざいや、つくってくれたヒトや、そんないろいろなものにたいして“いただきます”です!いただきます!」
パクっと湯気のたつ良い匂いのするスースを丸かじりした!
──うまっ!これ旨いぞ!これあれだ!ほら、豚だよ、豚!エルも感覚繋いで食ってみ!
──って!スライムレンクじゃないんかい!もうちょっとで“なんでやねーん”魔法が飛び出すとこだったよ!?あれだけ前フリしといてどうしてスースから食べるかなぁ?もう、全く!
──まぁまぁ。スライムレンクは甘すぎだから薄まって後の方がちょうどいいだろ。せっかく温かいお肉なんだからさ、いいからスース食ってみろって!
──どれどれ?あ、ほんとだ。豚だね~!塩コショウでシンプルだけど、美味しい。なんだかBBQで食べる豚肉だわ
「スース、おいしーです!じゅわーってなって」
うまく食レポ出来ないけど旨いぞ!
「それは良かったです。ふふ、アール様と串焼きは見た目てきに合わないと思いましたが、案外その意外性が親しみやすくて良いかもしれませんね」
とタリルがなんだかちょっとズレた発言をしている。この人はアールにどんなイメージを持っているのだろうか?
ハハっと笑ってまたモグモグ食べた。
「旨い!スース旨いぞ!」
と、モフも旨そうに食べている。
──精霊ってこんな肉々しい肉も食うんだ……なんか精霊のイメージがどんどん俗物になっていく……まぁな、多分食べると思ってたけどな!
──モフはやっぱり梟なのよ!首もぐりっと回るし!
──嘴の形が違うぞ?うーん本当にモフって変な鳥だよな
あ、ミーちゃんがスライムレンクを飲んだ。
あれ?咀嚼している?
もきゅもきゅって感じでスライムを食べるように飲んでいた!
──やっぱり!コレってタピオカなんだよ!“飲む”んじゃなくて“食べる”んだ、ってか“噛む”んだな!あの、パシュッ!がスライムレンクの秘密だった!
──うんうん、マル!飲んで!
──よっしゃ!
ちょうどスースも食べ終わり、海のような青いスライムレンクをじっと見つめ、スライムが口に入るようにくっと飲んだ。
よし、噛むぞ!
グッとうごうごを噛んだ!
パシュッ、パシュッ、と口の中で弾けた!
瞬間シュワッと溶けて無くなった。
おお?なんか……炭酸みたいだった。
弾けて溶ける……溶ける?
なんだろう?身体が何かを吸収したような…
あれ?なんだか美味しい?お試しで飲んだ時は全然美味しく無かったのに……今は何故かスッキリするって言った意味がわかる気がする。
──なぁ、エル、今何かを吸収しなかったか?
──うん、極少々1nmくらいのほんっとに微量だけど……魔力……?
──はは!なるほどぉ、こういう訳かぁー!
──うん!だからエルフの里では普通に飲まれるんだね!
「ふはははははは!」
思わず笑いが込み上げた!
「わかりました!スライムレンクのヒミツが!」
カタンと席を立ち、くるっと皆の顔を見渡した。タリルとナルコスはニヤニヤしながらこちらを見ている。
ミー、サーちゃんはきょとんとしている。
モフはガツガツスースを食べていた。
「ふふ、ではスライムレンクが何故この町で飲まれ、ナルコス先生に必要ないのか教えていただけますか?」
タリルが先生っぽく聞いてきた。
ふふん!答えは簡単だったぞ!
「はい、それは……」
つまりはそう言うことです!何が?
アールが今回飲んだ時に美味しく感じたのは、糸電話したから!
スライムにはほんの1nmくらいしか無いけどね!
まだまだ続くよ~(-_-)/




