第26話 糸電話
またまた新しい発見しました!
マルエルは日々進化しているのです。
ミーちゃんとサーちゃんって不思議ちゃん……いったい何者なんだろう?
?(´- `*)
今日もがんばるマルエルです。
「はい!あの、せんせーがた、モフがいません!」
手を挙げて報告した。
──何処に行ったのかはわからないけど、キレイな石でも探しにいったのかもしれないな
──そうね。てっきり馬に乗って遊んでると思ってたのに。気まぐれな精霊だもんね、何か興味深いものでもあったのかしら?
「居ないのですか?見えてないだけかと思いましたが……まぁ精霊さんですからねぇ」
タリルも精霊が気まぐれなことは知っている。だが、あのモフという石の精霊は、ずいぶんアールの事を気に入っているように見えた。
「……そのうち戻って来るのではないですか」
何も言わずに姿を消してしまうとは思えなかった。
「はい!ボクもそーおもいます!もしかして、まいごになってしまったんじゃないかなーって……まさかとはおもうんだけど……」
──モフって精霊なのか何なのかわからないもんな。ポシェットだって穴が開いたまんまだったし。抜けてるっていうか……絶対どこかで道草食っててはぐれたんだ
──だよね。コンソメスープとクッキーをおいて、消えるなんて考えられないもの。どうしよう?探しに行くべきかな?
「さがしにいったほーがいいのかなぁ?」
あ、口に出てた。
ほんとアールは5歳ね。考えたと同時に口からポロっと出ちゃうんだもん。
「探しに行かれるのでしたらナルコス先生と一緒に行かれますか?私は私で探してみますが」
──二手に別れた方が早いかしら?でももしかして向こうから探してたら入れ違いになっちゃわない?
──んーだよな……どうするべ?……そうだ!スマホだ、スマホ!
──あん?
──いや、そんな“バカじゃない?”感出すなよ!つまり、通信出来るようにしようって事だ。二手に別れるんなら、 連絡手段がいるだろ?
──なるほど、そういうことね!……タリル先生と通信出来ればいいんだものね……うん、そういう魔法、あるんじゃない?
「はい!せんせー!」
毎度お馴染みの挙手だ!
「はい、アール様」
もう先生もすっかり慣れっこだね!
「とおくのヒトとでも、おはなしできるまほーはありますか?」
単刀直入に聞いてみる。
「はい、事前にパスを繋いでおけば出来ますよ。パスを繋ぐというのは、魔力の波長を合わせることです」
タリル先生特別授業が開始された。
「はい!では、まりょくがすくないナルコスせんせーとはおはなしできないのですか?」
波長ったって、そもそも魔力がほとんど無い人族はどうするの?
「そういう魔道具がある。イヤリング型で、同時に3人まで登録できる。……まあ魔力登録ではなく、血を登録するんだがな」
ナルコスが説明してくれた。
「ちをとーろく……」
なんか痛そうな話ね……
「そうだ。魔力が無い者が魔道具を使う時は、魔力の代わりに血を使う。大型の魔道具なんかは大量の血が必要になるから、罪人などの処刑の際に稼働させたりするぞ」
ナルコスがとんでもない事をさらっと言った!
「ふええええぇぇぇ!?」
衝撃的告白なんですけど!!
──こわっ!魔道具こわっ!!
──ヒーリングも怖かったけど、魔道具も怖いな!やっぱりリスクなしで便利な物なんて無いってことか……
──そう考えると普通の道具の方がいいわね。まぁね“魔”ってつく訳だし、良いことばかりじゃないか
「まどーぐってこわいですね……ヒーリングもこわいなっておもったけど……あ、そうか!マリョクはせーめーりょくってそういうことなんですね!」
うんうん、と納得しながらうなずいた。
──血なんて生命力そのものだもんね!魔力と似たようなものだわ
──そういやそんな事言ってたな。じゃあさ、血だって鍛えたら増えるのと一緒で、魔力だって増やせるんじゃないか?タリルは生まれたときから決まってるとか言ってたけどさ。ナルコスだって増やせるかもよ?
──それはどうなのかな?成長期だったら出来そうだけど、成人のナルコスが増やすのは難しいんじゃない?
──いや、不可能じゃないはずだ。ナルコスだって魔力が0って訳じゃない。俺だってレスキューやりだしてから体質変わったからな。成人でもやり方しだいだと思うぞ。よし、特訓してやろう!
──いや、別にナルコス望んでないよ!?全然そんな話してないから!今は止めてね?
「……アール様はどうやら、何かしらの真理にたどり着いたようですね……ほんとに……素晴らしいです……」
タリル先生がなんとも言えない微妙な目でこちらを見ている。
何となく、こう……居心地悪いな!
おーい、ナルコスさーん!出番かもしれないよぉー?
ぱっと救いを求める目でナルコスを見た。
と、突然タリルがニコッと笑い、空気を変えるようにパンっと軽く手を叩いた。
「ではアール様、連絡がとれるようにする為にも、早速パスを繋ぎましょうか?手を置いていただけますか?」
タリルが両方の掌を上にして、はじめて魔力を巡らせた時と同じように、差し出してきた。
なるほど、あの時と同じようにその上にアールの両手を置いた。
「“ファーリー”」
と、唱えたと同時にタリルから魔力が流れ、自分からも魔力が流れ、それが合わさり、糸のように繋がった。
「わぁ!つながりました!」
面白い、糸電話みたいなものね!
『タリルせんせー!きこえますか?』
早速話しかけてみた。
『はい、聞こえますよ。話したい時は、話そうという意識を持って話してくださいね。でないと繋がりません。まず話したい相手の事を思い浮かべ呼び掛けて……いえ、余計な説明でしたね。もう出来ていらっしゃいますから』
「はい!せんせー!」
挙手!
「はい、アール様」
許可!
「おもいうかべたこころのこえが、つながったりしないですか?」
もしそうだったのなら、このパスは早々に解除しなければならない。エルとマルとの会話がタリルに駄々もれになってしまうだろう。それは二人とも望んでいない。
「先ほど申しました通り、相手に話しかける意識がないと繋がりません。心を読むパスではありませんからね」
ニコッと笑い、教えてくれた。
良かった。まだバラすのは早いものね。
「かいじょはできますか?」
電話を切る要領かしら?
「はい、どちらかが意識的にパスを切ればいいだけですよ。ずっと繋げているのも魔力を使いますからね。用事が済んだら解除するのが一般的ですね。ただ、魔力の差があまりにもあると、強い魔力の方に引きずられ、解除が出来ない場合があります」
──またかよ!魔法ってほんとにリスク高いな!こっち立てればあっちが立たずって感じだ。魔力が高いからってバカスカ使ってたら何かしら大事なものを失いそうだな
──ほんとにね。パスを繋ぐ相手も吟味しないとだね。まぁアールの魔力だと引きずられる事は無いと思うけど、逆に引きずっちゃうかもしれないものね!
「はい、わかりました!じゃあモフをさがしにいきたいとおもいます!」
ピッと手を挙げて宣言した。
「はい。では私は私で探してみますね。ナルコス先生、アール様を頼みますよ」
「ああ」
任せとけという風にうなずきながら剣に手をやった。
うん、やっぱりこの二人って正反対のようだけど、アールを守ろうとする姿勢だけは一緒なのよね。頼りになるわ~~!
「では、いきましょー!レッツゴー!」
右手を振り上げ、意気揚々と歩きだす。
「?なんだそれは?」
ナルコスが不思議そうな顔をした。
「“さあ、いくぞ!”のかけごえです!レッツゴー!」
モフ!待っててね!
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〈アールってどんな子なのー?〉
ピュローっとミーちゃんが聞いた。
探すに当たっての情報が必要だった。
「アールは変なヤツだぞ!」
〈うん、その情報は要らないかな。外見を教えてくれる?〉
ピュロローとサーちゃんが聞いた。
「外見……髪は黒だ!目が金色と銀色だ!今日は白いマスクをしてるぞ!」
〈黒い髪で金と銀の瞳って……まさか、アールって領主の息子のマルティネス・アール・エルフリッドの事?〉
サーちゃんがピタッと歩みを止めた。
「知ってるのか?」
〈知ってるって言うか……前、馬に乗ってるのを見かけただけなんだけど……そっか、モフちゃんのお友達はあの子なんだね。なるほどねぇ……〉
何かしら感じるものがあったのか、納得したようだった。
〈黒髪って珍しいから、すぐにみつけられるかもー〉
ピュルルルーとミーちゃんが言った。
そろそろ人がチラホラ見え始めた。秘密の会話を止め、アールを探すことにした。
「こっち」
「ジュース」
「売ってた」
この市場にいたという事は何か買っているかもしれない。店の店主に聞くのが一番早いだろう。さっきのスライムレンクの店にも来てるかもしれない。あそこは他のスライムレンクより旨いと評判だ。
「いらっしゃい!……あれ?君たち、さっきの……また買いに来てくれたの?」
さっき交代交代で話していた双子の女の子たちだ。ちょっと変わった子たちだったので、強く印象に残っていた。
「黒髪」
「金銀の瞳」
「マスク」
「来た?」
またまた交代交代で話し出した。
今二人が自分に聞いてきた事には心当たりがとってもある。
「え?それって……来たよ!すっごくキレイな子だったなぁ!君たち友だちなの?」
そんな外見の子はあの子以外に考えられない。人違いではないだろう。
「ちがう」
「でも」
「探してる」
「どこ?」
「あっちの……木の方に行ったよ。ほんのさっきの話だよ。まだいると思うけどな」
スライムレンクを運んだのでよく覚えている。大人二人と一緒だった。一人は人族だった。
「わかった」
「ありがと」
ちょこんと頭を下げた。
ぶっきらぼうだけど礼儀を知らない訳じゃないらしい。
「目立つからすぐ見つかるよ!あの子に会ったらよろしく言っといてねー!」
さぁーっと走って探しに行った二人の背に手を振った。
モフを抱っこしたまま飛ぶような急いで木の側まで行き、キョロキョロと辺りを探したが見つからない。何処かで入れ違いになったのか……。
〈ねぇミーちゃん、あの子たちに聞いてみる?〉
サーちゃんが木の上にいる小鳥に視線を送り、小さくピロローと鳴いて聞いてきた。
〈そうだねー聞いてみようかー〉
ミーちゃんが、遠くの人を呼ぶ時のように両手を口に当てて、ピュロロローと小鳥に話しかけた。
ピチュチュチュチュと小鳥が鳴いた。
〈もう一人の人と別れて、人族の男と二人で何処かに行ったんだってー〉
「アールたち、ピヨ探しに行った!入れ違い!」
〈そうみたいだねー。モフちゃん、ここで待つー?それとも探すー?〉
モフがみょーんと寄り目になって、何かを考え悩み始めた!?
「ここで待つ…………探す…………待つ……?探す……?」
どんどん寄り目になっていく!
その何とも言えないお間抜けな顔を見て、ケラケラケラと二人が笑い出した。
〈モフちゃん、その顔、面白すぎだよー〉
〈そうそう、かわいいけどね!よし、決めた!〉
〈うん、そうだねー。二手に別れよー〉
ミーちゃんがモフを抱いたままこの場で残り、アールを見た事のあるサーちゃんが探しに行くことにした。
「行く」
サーちゃんがパッと翻り、たーっとスライムレンク屋と反対の方向に走っていった。
上から見られれば簡単に見つかると思うのだが、人が多いので見られるのは困る。
ここの領主は異種族でも悪さをしない限り黙認してくれているが、町の人はわからない。
……アールってあの領主の子なんだ……そしてモフちゃんの友達……だったら……
そんな事を考えながらも視野を広げた。
時々立ち止まり、アールを探し、また走ってを繰り返しているうちに、
「あ」
キキーッと止まった。
少し先に大きな男と一緒に歩いている黒髪の子を発見した!
キレイな、流れるように艶々の黒い髪だった。あんな髪の子が二人といるとは思えない。
顔は見えないが、あの時馬上にいた子で間違いない。
きっとあの子がアールだ。
……見つけた
走って駆け寄ろうとした。
と、途端に横にいた男がパッとこちらを見た。
その目と目が合った。
ビクッと身体が硬直した。
怖い!あの射るような目が怖い!
狩人のような、恐ろしい、突き刺すような視線だった。
……近寄りたくない!
……でも、モフちゃんと約束した!
モフちゃんは夜目の効く貴重な石をくれた、大切な友達!
すーっと息を吸い、大声で叫んだ!
「──っっア━━━ル━━━!!」
「え!?」
黒髪の子がふわっとこちらを振り向いた。
白いマスクの上に、驚いたように大きく開かれた金と銀のキレイな瞳が輝いていた。
……間違いない。あの時見た、領主の子どもだ。
「……アール」
ゆっくり近づいて行った。
大丈夫……この子なら……きっと……
アール発見!
サーちゃん、何処かで会ってたみたいね。
さて、いつ会ったのかな?
ミーちゃんサイドはどうなってるのかな?
頑張れーマルエルー!




