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第21話 ヒーリング?いえいえキュアリング!

広場はあっさり?修復できました。

あとはね、帰るだけなんだけどね。

馬車がなぁ……揺れるんだよねぇ……


がんばれーマルエルー


水谷のおばあちゃん、ありがとう~(エル)


*ちょっとだけ痛い(グロい)です

帰りも馬車かぁ……。


馬車というのは見た目はいかにもって感じでわくわくするけど、乗り心地がなぁ……。

どうにかならないものだろうか?

こちらの世界の人間はコレが当たり前って思い込んでるんじゃなかろうか?


「あのー、かえりはうまにのってもいいですか?」

モフを馬に乗せた。トテトテと馬の頭の方に行き、馬を覗き込んでいる。

嫌がられるかと思いきや、馬は全然嫌がってない。


「え?この馬車の馬にですか?……それはちょっと……少し難しいかと……」

トムソンが少し考えてから、そうこたえた。


「そうなんですか?」

馬なんだから同じじゃないのか?

アールは体重軽いぞ?


「うーん、二頭立て馬車なので、元々二頭呼吸を合わせて馬車を引く訳だから、難しいんですよ。それに更に上に人が乗るとなると、馬が混乱してしまうでしょう?危険だと思います」

トムソンが諭すように言った。



──なるほど、そこまで考えてなかったな。そうか、そうだよな。一頭なら良かったかもな


──あ、でもモフなら馬と話せるんじゃない?今もお話してるみたいだよ?乗せてくれるよう言い聞かせてもらって……


──うーんまぁそうかもだけど、そこまでして乗るのは馬がかわいそうだよな……


──そうかー。あ、そうだ。ねぇ、マルはさぁ、ヒーリング出来るんじゃないの?犬神様に頼んでたよね?“治れ~”って考えたら出来る気がする


──あ、そうだった。それ、俺も考えてたのにな……うし、やってみるか。でもその前に……



「タリルせんせー、ヒーリングってどうやるんですか?」

確かに“治れ~”で出来る気がするが、いきなり出来たら、また変な目で見られるかもしれない。


「……試したいのですか?」

馬車でヒーリングをかけてくれたのだから教えられるよな?そういえばこの人ってほんと魔術師としては万能だよな。


「はい、またきぶんがわるくなったらいやなので、ジブンでジブンにヒーリングできたらなとおもいます」

ふんっと胸を張った。


「分かりました。アール様なら出来るかも知れませんね。ヒーリングは直接触れる方が効果的なのですよ。……アール様、では今から特別授業です!」

サッとタクトを取り出した。



──ん?これ、エルの方がいいんじゃないか?エル、交代!


──オッケー



「アール様は魔術はどうやって使用していますか?」

タクトで手のひらをポンポンッと叩いている。


「はい!じぶんのマリョクをめぐらせて、それをそとにだすかんじです!」

身振り手振りで説明した。教科書通りの答えだろう。


「はい、大変よく出来ました。ですが、ヒーリングはそうではありません」

チッチッチッとタクトを振った。


「え?ちがうんですか!?」

え?どうすんの?


「はい、使い方が違います。まず、他人に、ヒーリングをかける場合、ダメージを受けている相手の魔力を取り入れます。それを自分の魔力で塗り替えます、浄化するイメージですね。そしてそれをもう一度相手に戻していくのですよ」


「……なるほど……」



──へぇ──そうだったんだ。濾過する感じかしら?


──なるほどなー。だから相手のダメージが大きいほど、自分もダメージを受けちゃうってことか。死にそうなやつだと自分の魔力も侵されて、浄化する前に一緒に死んじまうんだな……こわっ!ヒーリングこわっ!!


──確かに魔力が少ないと怖いことになりそうね


──でも、ナルコスみたいなヤツにはどうするんだ?魔力持ってないだろ?


──うん、でも魔力は生命力みたいなものだから、それを取り入れる感じじゃない?それもなんだか怖いわね。下手したら干渉し過ぎて逆に殺しちゃいそう。そう考えると……



「……ヒーリングってこわいですね……」


「……どうしてそう思うのですか?」

タリルの目が光った気がした。


「……えーと……そうですね……マリョクカンショウしすぎたら、ともだおれになるか、あいてをしなせてしまいませんか?じぶんのマリョクとあいてのマリョクがうまくあわないこともあるんじゃないかとおもいました」

肘を持ち、顎に手を当てて考える。



──今の話しだとさ、私のイメージでは管で繋いだだけの輸血みたいな感じなのよね~。変に交ざっちゃったり、合わなかったら死んじゃう!みたいな。まぁ小さい傷だったら、えい、お薬注入!って感じなんだけど……


──あーなるほど分かりやすいな。ちょっとアールの頭がこんがらがってたからな!あ、オレはちゃんと理解してたぞ?


──ふーん


──いや、ほんと、マジで


──ソーナンダー



「……その通りでございますよ、アール様。ですから重症な者は訓練された者でしか治せません。高位の聖職者と言われる者たちは魔力も豊富で訓練しておりますからね」

タクトをを立てて、指差し確認してそう言った。


「…………そう……ですね……」

確かにそれはそうなんだろうけど……。でも、ちょっと何かひっかかるのよね。何かしら……?



──んーでもさ、もうちょっと簡単に出来そうな気がするんだけどなぁ。このやり方だと外科手術みたいじゃない?


──そうだな、悪い部分を取り出して戻すみたいなもんだろ?


──うん西洋医学だよね?私的には東洋医学の方が負担が少なくて好きだったのよね。時間はかかるけど……水谷のおばぁちゃんが良く漢方薬飲んでてね、こう、体質改善の為とかって言って……ああ!そうよ!免疫力よ!


──お、おう



ポン!と手をうち思い付いた!


そうよ!そんな無理やり傷口広げるようなことしなくていいじゃない!


「タリルせんせー!」

ハイ!と手を挙げた。


「はい、アール様、どうぞ」

突然の挙手に驚きながらも先を促した。


「あの、とりだすんじゃなくて、かっせいかするのはどーでしょうか?」

そうよ、無理なく出来るじゃない!


「“かっせいか”ですか?どういう意味でしょうか?」

活性化なんだけどね。元気にする?でいいかな。


「こう、いきものには、けがしたり、びょうきになっても、なおろうとするきのーがありますよね?」

働く細胞さんたちのおかげね!


「ええ、自然治癒能力ですね」


「はい、それをマリョクでげんきにするんです。それだと、もともとそのひとのちからだから、むりしないでなおるんじゃないでしょうか?」

お薬じゃなくて点滴みたいなものね!


「じゅーしょーだとジコカイフクリョクがよわいかもですけど……けいしょーだったらそれでなおりませんか?」


重傷者にはタリル先生のやり方が必要かもしれない。癌とか、内臓破裂とか……でもそこまでじゃなければ本人の身体に任せる方がいいよね?



──どう?穏やかじゃない?時間はかかるかもだけど、リスクが少ないよね?少ない魔力で治せるし、何より術者の負担が全然違うもん


──ああ、お互い気が楽だな。それじゃ、やっぱり“治れ~”でOKなんじゃないか?


──うんうん、自分にも“治れ~”でいい気がするわ


──よし、じゃ帰りの馬車で気分悪くなったらやってみるか



アールが一人(二人?)でうなずいて納得していると、ふと、その場がシーンとしていることに気づいた。


タリルがじっとアールを見ていた。

ナルコスも、なんと、記録係兼御者のトムソンまでもがこちらを見ていた!



──あれ?何かしら?ワタクシ何かやらかしてしまいましたでしょうか?


──ん?いや、別に何もしてなくないか?最初に思った“治れ~”でいいじゃん!って結論になっただけだろ?


──そうなんだけど……何故かしら?視線が痛いわ



「あの?どうかしましたか?」

かわいく小首を(かし)げてみた。


タリルが一つ深呼吸をし、おもむろに話し出した。

「私は……私たち魔術師は、最初にヒーリングを教わる時、まず始めに実際の教会に足を運び、聖職者がヒーリングで重傷者を治すところを目の当たりにします。その効果は絶大で、それはまるで奇跡のようなのです。自分の目でその効果を確かめてから、先程の説明から教わるのですが……それ故に、そのやり方に疑問を持つ者はおりませんでした……私もその内の一人です……」

そこでいったん言葉を切った。


そしてまたゆっくり息を吸ったかと思うと、スッと突然目の前に(ひざまづ)き、右手を下から(すく)うようにとった。


「アール様、私はあなたに敬意を表します。その柔軟な考えはこの先、魔術の発展に多いに貢献(こうけん)する事でしょう」


とられた右手の甲にキスをせんばかりに顔を近づけ、まっすぐに熱い視線で見つめられた。



──え!?何!この人、まさか、プロポーズでもする気なの!?


──いやいやいや?いやいやいやいや!アールはまだ5歳!それはナイ、と思いたい!



「アール様、私の弟子になっていただけませんか?お教えしたいことが沢山あるのです」


グッと手を握られ、熱意のこもった視線で勧誘されてしまった!

あ、そっちか、だよね!


バッとナルコスを見た!


一瞬しまった!って顔をしたが、サッと目を逸らされてしまった!?



──ちょぉっとぉぉぉ!ナルコスってば何やってんのよぉぉぉ!こういう事態を招かない為にあんたがいたんでしょおがぁぁ!!!


──おいおいおいおい!目ぇ逸らしちゃってるし。はぁ~まぁ不意を突かれた感はあるけどな。あ~どーする?エル?


──どうするって……いや、教わりたいのはやまやまだけどね?魔術師になる気はないんだよ?それでもいいんならいいけど


──まぁな、俺も魔術師になるってことだもんな。それは困るぜ


──だよね。じゃあ、やっぱり



「タリルせんせー」

ハイ!と、握られていない方の手を挙げた。


「……はい……アール様、どうぞ」

またしても突然の挙手に、タリルが驚いた顔で目をパチパチさせながら言った。


「ボクはまじゅつしになるかはわかりません!なにになりたいかは、ただいまもさくちゅーです!もっといろんなことをしてあそびたいとおもいます!ボクはのんびりしあわせにくらしたいです!」



──だよね、マル!


──おう、まだまだアールの世界は狭いからな。この世には俺たちの知らない事がありすぎなくらいある


──そうそう、ゆったりのんびり、やりたい事をやりたいんだよね


──タリルといいナルコスといい、焦らせ過ぎだよな!まだ5歳だってーの!



チラッとナルコスを見たら、あ、やっぱりねって顔をしてた。

なんだ、こうなる事が分かってたのか。

まぁ、そうね、ナルコスにも同じような事を言ってたものね。



「──────そう、なのですね…………」

タリルが拍子抜けした顔で呆然としてしまった。


「あの、まじゅつしになるかはわかりませんが、ボクはこれからもタリルせんせーからまじゅつしをおしえてもらいたいです!」


ぎゅっと手を握り返した。

ナルコスみたいに辞めるとか言い出さないよね?それは嫌だな。


どうする?必殺技を使う?



──ズルはダメよね。ちゃんとタリル先生の意思で教師を続けてもらいたいもの。


──え?そんな事しなくても大丈夫じゃね?タリルはアール大好きだろ?


──ん?そうなの?


──いや、見てたらわかるだろう?それに興味深いって言ってたし……辞める気なんてさらさらないと思うぞ



「……アール様、ありがとうございます」

ぎゅっと両手で握り返してくれた。

一度目を瞑り、再び開けた時には、いつもの茶目っ気のあるタリル先生に戻っていた。


「もちろんですよ、これからもお教えさせていただきたいと思っております。そうですね、私も急ぎすぎました。これからアール様に弟子になりたい!と思っていただけるよう精進させていただきます」

ニコニコ笑ってそう言った。


「よかったです!ありがとーございます、タリルせんせー」

あー良かった。


ナルコスに辞められそうになって不安になってたマルの気持ちが分かったわ。


サッとタリルが立ち上がった。

にこりともう一度こちらを見て、


「お話が逸れてしまいましたね!私の知っているヒーリングのやり方は先程お教えした通りです。どうされます?やってみますか?」

と言ってきた。


そうね、実践よね!


「はい!……でも、いまヒーリングをかけるたいしょうがいないような……?」


「大丈夫ですよ。これで……」

タリルがフッとタクトを振ったかと思うと次の瞬間それが鋭利な刃物に変わった。

そのままスパッと自分の手を切った!?

パタパタっと血が滴り落ちた!


「うぇ!?タ、タリルせんせー!ちが……ちが!」


ぎゃー!!何すんのよ、この人!


「はい。ではアール様、先程お教えした通り、ここに触れて私の魔力を探ってください。それをアール様の魔力でダメージ部分を取り除き、私に戻していただけますか?」

そう言って、結構深く切れている手を差し出してきた。


──痛いんですけど!中身が……見てるだけで痛い!いや~~ん!


──エル、交代するか。こういうのは俺の方が慣れてる。お前は血生臭いのは苦手だろ?


──お願いしますぅ~~



さっと交代し、マルがアールになった。

「では、いきます」

傷口に手を当ててタリルの魔力の流れを探した。


──なるほど、川の流れのように絶えず流れている気のようなものを感じる。おそらくこれがタリルの魔力だろう。


ん……あれ?なんだろう、もやっとしたものが見えてきた?薄暗い雲のような……なんだこれ?

その雲が掌に集まって黒っぽい色になってぐるぐるしている。

ふーん、おそらくこれが不具合だな。

これを俺の魔力で濾してタリルに戻すのか……よし。


じわりじわりと自分の魔力で取り囲むようにその黒っぽい雲を包み込んだ。

浄化のイメージで塗り替えるんだよな?

浄化……浄化ねぇ……濾過機みたいな感じか?こう、上から流すみたいに……この黒いのをフィルターに通して……。

スーっと黒いぐるぐるが俺の魔力で作ったフィルターを通ってタリルに戻っていった。

よし!出来た気がする。


じっとタリルの手を見た。

少し手が光った気がした。パアッと傷が(ふさ)がり、もともとそんな怪我などなかったかのように元に戻った。


「おお、さすがアール様です!一度で成功ですね。大変よろしい」

タリルが手を握ったり閉じたりしながら感嘆の声をもらした。


おお!俺も誉められた!これは気持ちいいな。エルがタリル推しなのもわかる気がする。


「ありがとーござ……いま……す…………?」


……あれ?もう1つ小さいもやっとしたぐるぐるが見える。

胃の辺りか?え?いや、あれ?ここにもぐるぐるが……ちょっと待て、これなんだ?



──エル、このぐるぐるあちこちに見えるんだけど。黒くはない……グレーって感じだな……でも、これも不具合ってやつか?


──うん、見えるね……え?タリル先生何かの病気なの?特にお腹の辺りが……


──うーん……エル、お前の言ってた体質改善って、免疫力高めるって事だろう?小さな病気だったら徐々に自力で治すこと、出来るんじゃないか?


──うん、多分ね



「……タリルせんせー。ボクのやりかた、ためしていいでしょうか?」

じっと真剣な目で見つめた。


断られてもやるけどな!


今のうちなら、治せるかもしれない。この小さいあちこちにあるぐるぐるは、リンパ腫の初期を連想させるのだ。レスキュー時代いろいろな死を見てきたから、なんとなく分かる。

助けられそうな者を見捨てるのは、丸留(まる)時代の記憶として見過ごせない。


「……何か、見えるのですか?」

タリルにも心当たりがあるのだろうか?少し(かげ)りのある顔で見つめ返した。


コレがなんなのか、本当のところはわからない。ただの嫌な感じがするだけだが……


「……わかりません!でも……ためしたいです」

何でもなければそれに越したことはない。ただ元気になるだけだろう。


「わかりました。実験体になりましょう!よろしくお願いします」

ペコリと優雅に礼をした。


「はい!まかされました!」

元気よく返事をした。


とは言うものの、どうやってすればいいのかな?



──エル、直接触れた方がいいらしいが、全身だとどうするんだ?


──うーん、そうね、抱きついたらどうかな?アールはかわいいし、こんなに愛らしい私たちに抱きつかれて嫌な気になる人はいないと思う。むしろ喜んじゃって、それだけでも相乗効果で元気になるんじゃないかしら?


──えーマジかよ……しゃあねーな



「……タリルせんせー、しゃがんでください」

抱きつくには背が高すぎる。

ちょいちょいと手招きした。


「?はい、これでいいですか?」

しゃがみこんだタリルの首にきゅっと抱きついた。


「……アール様?」


「ちょっとまってくださいね」

説明は後だ。

全身を包み込むイメージで、タリルの魔力の流れにほんの少し、自分の魔力を乗せた。


目を閉じ、魔力を感じながらその流れを追った。

大きな流れの本流があったので、それに乗りこみ、何処に向かうのか、逆らわず巡らせてみた。


おお、なんだこれ……わかった!

この魔力の本流は、心臓だ!心臓から大動脈を通り、全身に流れる血管に沿っているんだ!



──なるほどな!つまり血液の流れに沿って“治れ~”って魔力を流せば、動脈を通って、静脈から心臓に戻ってきて、循環するわけだ!


──そうだよ!マルってば天才!さすが私のお兄ちゃんだね!


──そうなると、“治れ~”を心臓に置いておけば、勝手に巡って体質改善されるんじゃないか?あんまり多いと逆に悪くなるだろうから、少量からって感じで……


──そうだね、定期的に見てあげるといいのかも。わぉ!ほんとに漢方薬みたい!


──へっまぁな!でもこれって根本治療可能じゃないか?俺ってばすごくない?


──すごいすごい!(パチパチパチパチ)



正体がわかったので、早速やってみるか。

ヒーリングとはちょっと違うやり方なので、ネーミングを変えたい。

“ヒーリング”と似た意味で……。


──“キュアリング“でどうだ?


──なんか、優しい感じよね。いいんじゃない?


──ヒーリングは即効性、キュアリングは遅効性って感じね!


──おう、よし、やってみるぞ



「キュアリング」

そう言ってイメージを固める。

ゆるっとした魔力を心臓に置く感じで……ゆっくり溶け出すように全身を治療していくイメージだ。

自分に戻すわけではないので、置いたら終了だ。



──こんなものかな?


──最適がわかんないから少しでいいと思う。継続して見ていく必要があるし


──よし、じゃあコレで終わろう



「おわりました!」

パッと離れ、ニコッと笑った。

ほとんど魔力を使ってないのでこちらとしても疲れない。タリルはどうなんだろう?


「タリルせんせー、ぐあいはどうですか?」

熱を測るように額に手を当てた。熱はない。

頸動脈に手を当てる。脈も正常。

呼吸も問題ない。

バイタルは安定している。


「……よくわかりませんね……ただ、なんとなく心が暖かい気がします。ありがとうございました、アール様」

面白そうに俺を見ていたタリルが、胸に手を当てて礼をした。


「ボクのキュアリングはどうなるかわかりません。なので、またつぎのしゅぎょーのとき、たいちょーをみせてください!」

主治医にでもなった気分だな。



──よく考えたらタリルってお爺ちゃんだよな。見た目がいくら若かろうと、年寄りは年寄りだ。いつポックリ逝くかわからん


──ちょっとぉマル!不謹慎だよ!


──本当の事だぞ?まぁ今すぐどうこうって訳じゃなさそうだけどな



「はい、畏まりました。小さな先生様」

おどけたように、だが、しっかりと頭を下げてそう言った。



──ふふ、先生様だって


──ああ。ほんとこの人ってふざけてんのか本気なのか、よくわからないな。でもまぁ



「はい!」

と元気に返事をした。


これでタリルの件は片付いた。

あとは帰るだけだ。



うーんと伸びをし、す──はぁ──と深呼吸をした。



──うん、特に大したこともなく、無事に済んで良かったな!


──そだね。帰ったらリリスの作ったおやつが食べたいわ。クッキーはモフに取られちゃったしさ



くるっと勢いよく後ろを向いたら、ナルコスとトムソンがいた。


あ、モフがナルコスの頭に乗ってる……。


いつの間にかトムソンは、片手に分厚いノートを持って一心不乱にガリガリと何かをメモっていた。そういえば視界の端でずっとメモってた気がする。



──え?あれって報告書かな?分厚いよ!?めっちゃ書いてるんだけど。そんなに報告することってあった?


──さあ?あるとしたらキュアリングの事だろうけど……“アールがキュアリングを開発しました”じゃ駄目なんかね


──だね。読むの大変そう



ナルコスは腕を組んで、何か言いたげな、真剣な顔をしてじっとこちらを見ている。

頭の上のモフに気づいているのだろうか?


モフ……馬とお話してたんじゃなかったのか。


ナルコスのちょっと怖い顔と、頭の上のモフのぼけーっとした顔のコントラストがシュールすぎるんですが!

ぶふっ!


「ナルコスせんせー!ぶじにすみました!あたまのうえのモフをください!」

と言って、笑いをこらえつつ、手をさしのべた。


ナルコスが、何を言ってる?みたいな顔で、無言で頭に手をやった。

ちょっと目を見開いた。

あ、やっぱり気づいてなかったみたいだ。


おもむろに、むんずとモフを持ち、ひょいと剥がした。

じっと見てたと思ったら、さながら野球選手のように、華麗なフォームでぶん!っと投げてきた!!


「びょえ~~~~~~!!」

っとボールさながら飛んできた!?

豪速球だな!


「モフ────!!」

いや、お前もちゃんと飛べよ!一応翼あるんだから!


パスン!と受けとめ、よしよしした。

「ナルコスせんせー!らんぼーしないでください!モフ~だいじょーぶか?」


ベローンと舌を出し、目を回している。


精霊ってさ、馬車に酔ったり、ボールにされて目を回したりするものなんだろうか?

モフって本当に普通の精霊なのかな?

くてっとなっているので、そのまま抱っこして馬車に向かった。


「行くぞ」

ナルコスがふんっと鼻をならし、馬車に乗り込んだ。


「はーい」

後に続いて乗り込んだ。


「はい。お待たせしました」

タリルが広場をもう一度一望し、修復したことを確認してから馬車に乗り込んだ。


「では出発します」

トムソンがパシッと馬に合図を送り、広場を後にした。



新しい魔術を開発しました!

頭を使うのは基本エルちゃんのお仕事なんだけど、今回はマルくんも頑張りました。

レスキュー隊だからね!


ゆるゆる続くよ

(*゜∀゜)3

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