第16話 デートだ!
まだ行かないの?
( ̄▽ ̄;)
広場にははまだ行かない。早く行こうよ!
挿し絵を入れてみました。
作者なりのイメージですが……
全然違った!ってなったらごめんなさい……
ダイニングに入った。
「アール様、お待ちしておりました。お腹が空きましたでしょう?すぐにご用意いたしますね」
リリスがささっとやって来て、いそいそと席まで連れて行ってくれた。
「うん!すいた!」
自分の席に着く。
それとほぼ同時に、さっと食事が用意される。
今日はコンソメスープと、目玉焼きとベーコンとトーストと、コーンのサラダにベリー入りのヨーグルトとオレンジジュースだ。
朝から豪勢だな。
いつもより多い。食べきれるだろうか?
「モフ、これがコンソメスープだよ」
モフには背の高い細長いコップを用意してもらった。これで嘴が突っ込めるだろう。
そう思い、モフにコップを渡した。
「コンソメスープ!」
くんくんと匂いを嗅ぎ、嘴を近づけペロッと舐めた!
「え!?」
一瞬目を疑った!
舌、なっがっ!何?今コップ一周回ったよね!?
びっくりしたわい!
え?キツツキ?モフはキツツキなの!?
モフはキツツキかもしれないとの衝撃の事実?が発覚した!
──そんなわけないでしょうがー!
──いや、でもあの舌の長さは普通の鳥ではないぞ?いや、もともと鳥じゃなかったか。
──精霊なんだから、何があってもおかしくないよ。存在自体が不思議ちゃんなんだから。もう!マルはいい加減だなぁ
──へへ、まぁね、本気で思ったわけじゃないさ。だったら面白いなって
──思考が子供!!
──だって5歳だもん
──うわぁ!限りなく心配になってきたよ!マル~~頼むわよ!?
──大丈夫だって、ちゃんと大人なマルも居るからさ。遊んでるだけ。身体は子ども!頭脳も子ども!ってな
──いやぁ~~!ちょっと、あんまりふざけるならこれから私がアールになるわよ!?剣術なんかわからないから、家庭教師はタリル先生一人にしちゃうからね!
──はい、スミマセン。キヲツケマス
「モフ~ボクまた怒られちゃったー」
コンソメスープをペロペロ夢中で舐めているモフをギュッと抱きしめた。
「ビヨッ!」
キュッとなったのか、変な声で鳴いた。
「?なんのことかわからない!」
邪魔ピヨなのに、俺に邪魔された。
それなのにコンソメスープをペロペロ舐めるのを止めない。
よほど気に入ったのだろう。
うん、モフのお気に入りリストに入れておこう。
お気に入りリストのトップはもちろんきれいな石だ。
さて、しょうもないやりとりをしている間にいつの間にか結構時間が過ぎていた。
そろそろ誰かしら来るかもしれない。
急いで朝食を食べることにした。
あともう少しで食べ終わるかというくらいの時に、リーンとベルが鳴り響いた。
誰かの訪問を告げるベルだ。
神経を集中し、誰がきたのか、耳を澄ませ、そばだたせた。玄関の様子が、何故か聞こえてきた。
バトラーがドアを開け迎え入れている。
「おはようございます、ナルコス様」
ナルコスだった。
挨拶を交わし、バトラーが応接室へナルコスを案内していた。
凄いなアールの耳ってすごくいいんだな。
小声の会話は聞こえないが、こんなに離れているのに普通に話す声が聞こえる。
──なんだか耳が良くなってる気がするわね
──お前もそう思うか?
──うん。不思議
ダイニングから玄関は遠く離れているのに、聞こえてきた。
何故だか、急に耳が良くなった?
とりあえずさっさと食べて応接室へ行こう。タリルが来る前に昨日の出来事に対しての意識のすり合わせだ。
あ!あと素振り何回すればいいのか聞かなくちゃな!
パクパクパクっと食べて、一気にオレンジジュースを飲み干し、とっくに飲み終わったコップをまだペロペロ舐めていたモフを抱えた。
「ごちそうさま!ボク、もうせんせーのところにいくね!」
パッと立って、急いで向かおうとした。
「アール様、お待ち下さい!領主のご子息様ともあろうお方が、歯も磨かずお客様にお会いになるのですか?」
にっこり笑って立ち塞がった。
首根っこを取っ捕まえられた猫のようにおとなしくリリスに従う。
「……はい、ソウデスネ。いってきます……あ、そうだ!マスクあるかな?きのうはしゃぎすぎてのどが……いちおーマスクしとこうかなっておもうんだけど」
もう少しで忘れるところだった。あぶないあぶない。
「それでしたらご用意いたしますが……アール様、本当に大丈夫なのですか?体調が優れないのでしたら、今日は取り止めていただいて……」
リリスが真剣な顔で心配しはじめた。
そうだった。リリスは超のつく過保護だった!
擦り傷で包帯巻く人だからね。
いつもなら母さんがヒーリングをかけるんだけど、今日はいないからな。余計に過保護になるのか……。
「だいじょーぶ!ほんとならマスクもひつよーないんだけど、せきとかでたらやだなっておもっただけだよ?よけーなしんぱいかけたくないしね?」
にこっと笑って大丈夫アピールをする。
いいからマスクください!
プリーズ ギブミー フェイスマスク!
「マスクくれる?」
必殺かわいくおねだりポーズver.1!
首を傾げ、唇の前で手を合わせて相手の目をみつめるゾ!
最近乱発しているゾ!
乱発すると効果が半減するゾ!
「はうっ、さ……すがですわ!アール様のその気づかい!すぐにお持ちいたしますね!」
だが、やはり効果はバツグンだった!
「ありがとー。さきにハミガキしてくるねー」
──うん、リリス相手に不発はないわね。わかってたけど
──そうだったな。でもさ、チョロ過ぎないか?リリス……
──仕方ないわよ、アールはかわいいもの。鏡に向かってver.1やってみなさい。なんでもしてあげたくなるから
──お前、やったのか?
──そりゃね、どの角度が一番かわいくて自然か、ちゃんと把握しとかないと
──えー……女って怖い
浴室の隣にある洗面台で歯を磨いていると、早速リリスがマスクを持ってきてくれた。
白の、いかにもなマスクなのだが、左下に“A”の文字が刺繍されている。
礼を言って受け取り、歯磨きの続きをした。
うがいをしていると、応接室へ行くリリスの気配を感じた。
ナルコスの所へ朝のコーヒーでも持っていったのかな?ふっふっふっ。
あー、ちょっとね、ゆっくり歯を磨こうかな?あー、うがいもね、大事だしね?
歯磨きは大切だよねー、リリス!
リリスが出ていってから応接室へ向かうことにした。
そうだ!マスクを忘れずにつけないとね。
鏡に向かってマスクをつけてみた。
──かわいーっ!何これ?天使かな?お目々がキラキラして見えるよ!マスクが白いからレフ板効果かしら?
──これなら先生たちもごまかされるかもな
──そうね。ほんと、アールって何してもかわいいわ
──自画自賛……
──ふっ!紛れもない事実でしょ?いい?かわいい子が“そんな事ないですよーかわいくないですー”とか言ったらただのイヤミだからね?
──え?だってホントにそう思ってるかも知れないじゃん
──何言ってるの?かわいい子が自分がかわいいという事実を知らない訳ないでしょ?自信があるからそんな事言うの。女はそんなものよ
──えー……女ってほんと怖いんですけど
リリスが出ていったのを見計らって応接室へ行った。
応接室では予定通り、先に来たナルコスが待っていた。
「おはようございます!きょうはありがとーございます。よろしくおねがいします!」
ソファーに座り、リリスのいれたコーヒーを飲んでいた。
「ああ、おはよう。少し早いかと思ったが……なんだ?体調が悪いのか?」
アールがマスクをしていることを早速不審がられてしまった。
「いえ、きのーおとーさまとはしゃぎすぎちゃって、のどがすこしカラカラするので。よーじんのためです!」
よしよし、なかなか良い言い訳じゃないか?
昨日の事を知っているナルコスは納得したようだった。
面白いことに、父さんはどうやらエルフのタリルより、人族のナルコスを信用しているふしがある。
事が起こったのが剣術の稽古中だったからかもしれないが、それだけではない気がする。
そう言えば、人柄も含め気に入ったと言っていたな。
確かにナルコスは人に誠実な印象をあたえる。見た目は全然違うのに、近藤さんの気配を感じるのも、何か筋の通った実直な雰囲気が似ているからかもしれない。
「そうか、ならいいが……お前は既に準備が出来てるようだな」
そう言って残りのコーヒーを飲み干した。
「はい。もうすぶりもしました!せんせー、すぶりはなんかいすればよかったですか?」
「ああ、そうか、言ってなかったな。そうだな……慣れるまでは50……いや、お前ならすぐできそうだ……ちなみに今日は何回した?」
「えーとちょっとかぞえてなかったけど、100かいくらい?かな?」
おそらくもっとやっているとは思うが。
「よし、では100回だ」
え?俺もしかして自分でハードルあげた?今50回って言おうとしてなかった?
「はい、わかりました」
まぁいいか。
「あと、走り込み10周と腕立て50はやったのか?」
うっわ!忘れてたわ。ラジオ体操はやったぞ!
「……わすれてました!ラジオたいそうはやりました!」
「……ラジオ体操は知らんが、基礎体力作りは必ずやっておけ。明日は忘れるなよ?」
「はい!」
あ、不問らしい。
そうだよ、昨日は大変だったんだもんな。
うんうん。
「明日は今日の分も足してやれ」
あ、違ったわ。
やっぱりスパルタじゃねーか。
「はい」
仕方ない。忘れてたんだから。
モフとやれば基礎練だって楽しいだろう。
「……ところで、その頭の上のヤツは連れていくのか?」
ナルコスが戸惑った顔をして、頭の上でキョロキョロしてるモフを見た。
「ヤツじゃない!モフだ!」
モフが頭の上でフンッとふんぞり返り、パタパタ文句を言った。
「その頭の上のモフは連れていくのか?タリルに報告しなければいけないことが、また増えそうだな」
ふぅと小さくため息をはいた。
「え……と、モフがボクからはなれたくないみたいで……」
「ピヨ!?アールが……モガモガっ!?」
あわててヒョイっとモフを抱き、口をふさいだ。
『モフ、内緒でね。一人じゃ行けないと思われたら恥ずかしいから。ね?』
こそこそっと耳打ちした。
キラキラ光る目で見つめつつ、お願いした。
『仕方ない、黙っといてやる!』
アールの眼力はやはりモフにも効果はあった。
「精霊というやつは何をしでかすかよくわからんからな。せいぜい気を付けろよ」
あ、早速モフを警戒している。
何かをしでかすのは多分確実な気がしてるよね。
さすがナルコス、鋭いな!
「そうですね。モフ、みえなくなることできる?」
その方が今はいいような気がするな。
「できる!」
言うや否や一瞬モフの姿が揺らいだ。
「これで見えない!」
え?普通に見えてますけど?
あ、俺はいつでも見えるんだったな。ということはナルコスには見えなくなった?
「ナルコスせんせー。モフがみえますか?」
ヒョイとモフを掲げた。
「いや、お前が手を挙げてるようにしか見えん」
おお!本当に見えなくなったんだ!
よし、じゃあモフは影から手伝ってもらう事にしよう。タリル先生には……落ち着いてからの紹介でいいよな。
「じゃあ、このままでひろばにいきます」
モフを頭の上に、帽子感覚でおいた。
「さっきの鳥はまだいるのか?」
探しているようだがやはり見えないらしい。頭の上に乗ってるんですけど。
「鳥じゃないピヨ!石の精霊ピヨ!」
ふんふん!とピヨピヨ鳴いて抗議している。聞こえてないと思う。
それにどう見てもしゃべる鳥にしか見えないよ?モフ。
「はい。ボクのアタマの上でピヨピヨないてます。タリルせんせーには……しばらくはナイショで」
邪魔してもらわないといけないしね。
ナルコスが無言で頷いた。
さてと、今日の打ち合わせもしないとな。
でも……その前に聞きたい事がある。
「ところで、ナルコスせんせー、せんせーはコイビトいますか?」
全然何の脈絡もなく、突然聞いてみた!
だって気になるし。
「話が変わりすぎだろう!なんだ!?いきなり」
ガチャっと机が揺れた。
面白いくらい焦っている。
「だって……せんせーはとしはいくつですか?ボクは5さいです」
まずは自己紹介からか?
いやアールがお見合いする訳じゃないんだけどな。
「いや、そんな事は知ってる!オレは……あー何でそんな話をするんだ?今関係ないだろう?」
めっちゃ胡散臭そうに言われた。
「ボクのなかではあります!きになってしかたありません!ごしゅみは?ボクはいまさがしちゅうです」
いや、だからアールの事を言っても仕方ないんだけどな?
分かってるけど、相手の事を聞くにはまず自分からだしな。
「……なぜそんな事が気になるのかわからんが……年は26だ。趣味は……博物館巡りだ」
おぉ!意外な趣味だ!
ってか、26だと!?年下じゃないか!?
おいおいおい~何だよ~年下かよぉ~?
よーし、よし!マルさんに任せとけ!
「そうだったんですね!じゃあこんどいっしょにはくぶつかんにいきましょう!ね?」
アールが行くとなったらリリスもきっとついてくるだろう。
やった!デートだ。博物館デートだ!
「……いや……なんでお前と行くんだ……?」
引き潮のように遥か遠くに行こうとしてるな?
逃がさないゾ!
「せんせーといきたいからです!」
こんなにかわいい生徒が、こんなに一緒に行きたいアピールしてるんだよ?
NOは無いよね?
まあアールと言うより、リリスと行って欲しいからだけどな!
「………………考えとく」
完全に引いているが、NOとは言わなかった。
むむ!アールの頼みに対してすぐにYesと言わないなんて、なかなか手強いな。
おねだりポーズver.1やってみるか?
「ぜったいですよ!」
まぁいい、とりあえずデートの糸口はこぎつけた。
よし、あとはリリスだね!
──やるじゃない、マル!リリスも美術館とか好きだもんね。それにしてもナルコスが年下だとは思わなかったわ。26歳なんて、まだまだ若造じゃない!
──ああ、何か見る目がかわるよな。まぁ現世では、遥かに年上なんだけどな。近藤さん1号あらため、近藤さんJr.にするか……?
──何だっていいわよ!どうせマルの中のお話なんでしょ?
──まぁな。年下を軽く見るのは日本人の悪い癖だから、ナルコスが年下だったからって名誉ある近藤さんの称号はとりあげないぞ?
──だから意味わかんないし、何でもいいわよ?
「ふふん~」
なんだか楽しくなってきた。モフをなでなでしながら、博物館デートの事を考えた。
そのうちお父さんとお母さんも描きたいなとか思ってます。
そんなヒマあったら、続き書けば?て言われそう……
がんばれ~マルエルー