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第14話 隠密スキル

本日2話目の投稿です。

話は牛歩のごとき歩みです。

(,,・д・)


そろそろ広場に行かないとね。

アールはいつになったら行くのかな?

私が知りたい……。

木剣を持って1階に下りて行き、裏口から庭に出た。

まだ朝の早い時間なので、日差しもきつくない。爽やかな朝の光がやわらかくふりそそぎ、立っているだけでも気持ちがいい。



──あーきもちいいな。まさにこれから1日が始まるって感じだ。明日からラジオ体操も外でやろうかな?


──そうだね。部屋でするより、気持ちいいね



木陰のある、比較的涼しい場所を選んで素振りをすることにした。


モフも小さな小枝を途中で拾って隣に並んだ。一緒にやるつもりらしい。


「モフ、一緒にやるのか?」

え?鳥がやるの?面白そうに見えたのかな?


「ピヨ!やる!」

ぬん!っと決意の表情で小枝を構えた。


「ぶふっ!」

だから、なんでちょっと寄り目になるんだよ!ほんっと勘弁して欲しい!

すーはーと深呼吸をしてから構えた。


「わかった、じゃあやるよ?ふん!」

気合いを入れ直し、剣を構えた。


昨日と同じようにバッと振り上げ、ザッと振り下ろすぞ。


──フライパン……


振り上げる剣がフワッと下から押されるように軽くなった。

振り下ろす時にやり過ぎないように気を引き締めてブンっと振り下ろした!


サアッと風が流れ、剣筋上の葉が別れた。



──お?これ、いい感じじゃない?葉っぱが別れただけで切れてないし。剣の道が出来たみたいだな


──うん、これくらいなら素振りしても大丈夫そうだね



「よし、続けるぞ!」

同じ要領で素振りを続ける事にした。


「ピヨ!」

モフも頑張るらしい。


鳥なんかに負けてられない。

「よし!モフ!勝負だ!」


「ピヨ!?」

突然勝負を持ちかけられ、モフが慌てて小枝を持ち直した。


「はじめ!」

リズミカルなピュンピュンという小気味良い音が庭に響いた。


チラッとモフを見ると、ふよふよと小枝を振っていた。

今のところ邪魔する気は無いみたいだ。

よし、これで集中して稽古が出来るぞ!


1で振り上げ2で下ろす、1で振り上げ2で……


そして気づいた。

あれ?これって終わりなくない?



──あ、俺、何回素振りすんのか聞いてなかったわ


──あーそういえばそうだね。え?今何回くらい?


──100回くらい?


──はじめてにしてはやり過ぎじゃない?


──どうかな?



なんだかそんな気もする。

だいたい素振りって何回くらいするもの?100回?1000回?よくわからん。剣道なら100回くらいだった気がする。

だが……


「……モフさんや、そろそろ止めない?」


いい加減腕が疲れてきた。

ピタッと止めて、中段の構えで息を整えた。


勝負を仕掛けておいてなんだが、どうやったら勝ちなのかも決めてなかったよ?


「ピヨピヨ?止める?止める……やめる!アールはやめる!ピヨの勝ち!」

ピヨーっとバタバタっと足元をくるくる回った。


「ふうー」

額の汗を拭った。

なるほどそういう感じか。

先にやめた方が敗けってことになってたんだね。


うん。これ、俺が絶対負けじゃない?

モフのはあれ、素振りじゃないよね?

ふよふよ踊ってるだけだよね?



──精霊って身体鍛える意味あんの?


──さぁよくわからないわね、まぁ気分良さそうだしいいんじゃない?


──あとさ、もう一つ気づいたんだけど。風魔法使うと確かに楽なんだけどさ、楽じゃダメなんじゃないか?確か剣に慣れるのと体力作りの為の素振りだよな?やってから言うのもなんだけどな


──あー、そう言えばそうだね。風魔法の習得が素振りの目的じゃなかったね!あはは


──あはは、じゃねぇよ!お前が風魔法云々言うから根本を置き忘れてたじゃねぇか!はぁ……ちょっとベストなやり方考えないとなぁ 。今日はもういいや


──うん、そろそろ朝ごはんの時間じゃないかな?



「モフの勝ちでいいよ!お腹すいてきたし戻ろうか?」

初日はこんなもんだろう。


「わかったピヨ!ピヨの勝ちピヨ!」

ご機嫌さんで小枝をぴょいっとポシェットにしまった。


あ、あれ、石じゃなくても入るんだ。

ほんとに不思議ポシェットだな。



──どこまで何が入るんだろう?


──家が埋まるくらいの石が入っているのは確かなのよね。今度貸してほしいわね……



新しい発見にエルの目が光った、気がした。


すーはーと深呼吸をして、構えをとき、剣を下ろした。ふーと一息ついた途端に、


「アール様」


うお!リリスだ!

ハッと振り返るとリリスがにこにことカゴを持って立っていた。え?いつからいたのかな?

さっきまでいなかったよね?


毎度ながらタイミング良すぎじゃないだろうか?

もしかしてリリスはアールに盗聴器か何か仕込んでるのだろうか?

ハッ!まさかこのパンツのボタンとか?

ちょっと後ろのポッケのボタンを触ってみた。良かった。ただのボタンだ。特に変な魔力は感じなかった。


「リリス、びっくりしたよ?ボクいまからシャワーあびるからね」

いつの間にか忍者のように忍び寄っている。

もしかしたら本気で隠れみの術のスキルでもあるのかもしれない。


「はい。ではお着替えをご用意させていただきますね。そのあとは朝ごはんですね。その前にこちらをどうぞ」

そう言って、カゴから冷たいお茶を出し、渡してくれた。


「あ、ありがとう!」

ごくごく飲んだ。

喉が渇いていた事に、飲んでから気づいた。

うまーーーぷはーーっとしていると、今度は

ハイと冷たいタオルを渡してくれた。

これまた礼を言い受け取った。


さすがリリス!ほんとに気が利くよなぁ!

絶対いいお嫁さんになるよ!

ちょっと何するかわからない怖さはあるけど!



──これはぜひともナルコスとくっついて欲しい。リリスもまんざらじゃなさそうだったよな?


──ええ。リリスはストーカーの()があるけど、男なんて放っといたら浮気するかもだし?ちょうどいいかもね。まぁあの(ひと)はそんな事しなさそうだけど



顔を拭いた。冷たくて気持ち良かった。

ついでにモフの顔も拭き、タオルを渡した。


「はい。そちらもお預かりいたしますね」

スッと手を出し木剣を持ってくれた。

なんとも、身軽になった。

普通に持っていると、木剣でもだんだん重たく感じるものだ。


「ありがとーリリス!」

やはり、5歳は5歳だな。腕がだるいや。


「はい。今朝はアール様のお好きなコンソメスープですよ。お待ちしておりますね」

ニコニコ笑顔で教えてくれた。


「やったー!モフ、楽しみだね」


「ピヨ?」

モフを頭に乗せ、リリスと連れだって庭を後にした。

邸に戻る途中でエルが話しかけたきた。



──マル、リリスに聞いてみようよ


──何を??


──決まってるじゃない。私聞いてみるね



「ねぇリリス!リリスって、すきなひとっているのかな?あ、ボクがスキはなしね!」

先に釘を刺しておく。アール教信者なのは百も承知だ。


「まぁまぁ何です?またそのようなお話ですか?」

お!?ちょっとお姉さん!頬が赤いよ?


「うん、だって、リリスはボクのおせわばかりで、いままですきなヒトをつくることもできなかったんじゃないかなーって。でもボクもひとりでできることふえたでしょ?」

じっとリリスを見つめた。


「そろそろコイビトつくってほしいなっておもったんだ。シアワセになってほしい。リリスはぜったい、いいおよめさんになるよ!」

にこっと笑ってきゅっと手を握った。


「━━━━!!アール様…………!」

はぁ──んって感じでふるふるしている。



──あれ?私エフェクトかけてないよね?


──うむ、リリスは何をしてもこんな感じだからなぁ。なんともいえないけど……でもこれ、逆効果だったんじゃないか?妙に喜んじゃってるぞ?


──アールのお嫁さんになるとか言い出さないわよね?


──いや、さすがに赤ん坊のころから醜態晒した相手を、そういう対象には見られないなぁ。俺には母親にしか思えん



「あー……まぁかんがえてみてね!ボクはナルコスせんせーなんかいいとおもうんだけどなぁー」

ちらっと見つつ反応をうかがった。


「そうなのですか?アール様のお眼鏡にかなうなんて、ナルコス様も幸せ者ですね」

にこにこと笑いそう言うものの、リリスの真意は読めなかった。

うまくかわされた気がする。



──だめね。恋愛に関してはいまいち素人なのよね。リリスの気持ちが読めないわ……


──まぁ昨日今日会ったばかりのやつを好きになれってのもな。それとなく推していけばいいんじゃね?



「……そうじゃなくて……リリスとナルコスせんせー、いいとおもったんだけどなぁ」

そう言ってちらっとリリスを見ても、ニコニコ笑うだけでこの話題は打ち切られた。

まぁいいか、これからに期待だね。


邸に着くとモフと一緒に足早にお風呂場に向かった。

リリスは着替えを用意しに行った。


メインの風呂場は1階にある。

1つはアールたちエルフリッド一族が使う大きくて(ひのき)みたいなのでできたバスタブがあり、シャワーもある豪勢なものだ。

2つめは主に従業員が使うもの。浴室は少し広めだがシャワーだけの簡素なものだ。


サブとして2階に水場があり、そこにもシャワーがついている。こちらは人が一人入れるくらいのスポーツジムみたいな浴室だ。


本当はささっと洗いたいので2階のサブの浴室を使いたいのだが、いつも結局は1階の大浴場に行かされる。

あそこは広いからなんとなく怖いのだ。

一人で入るとなんか、出てきそうで……。

まさか昼間からは大丈夫だろうけど。

精霊がいる時点で幽霊がいてもおかしくないんじゃない?

そう気づいてから特に風呂場とか、井戸とか水場が怖い。さだ○が出てきそうで……。

うわぁ!考えたら怖くなってきた!


「アール!」

頭の上から声がして、ハッとした。

そうだ!俺たちにはモフがいるじゃないか!よく分からない鳥みたいな石の精霊が!


何か出てきても、きっとモフがよく分からない力を使って、よく分からないうちに退治してくれるにちがいない!

よくワカラナイが多分大丈夫!


その何の根拠もない安心感で急に風呂場が怖くなくなった。

「モフ!ささっと洗ってささっと食べに行こ!」

すぽんっと服を脱ぎ、ダッと浴室に入った。

ジャーっとモフと一緒にシャワーを浴びる。

運動の後のシャワーは気持ちがいい。


少し離れたシャワーの届かない場所で、モフがピヨピヨ鳴いて石鹸で泡を作って遊んでいる。

モフモフが白いモコモコのアワアワになった!


「羊みたいだよ!モフ」

どこが前なのか後ろなのか、顔が何処にあるのかもわからないモコモコだった。


「ピヨーピヨピヨ」

ご機嫌さんだな。

あぁ、モフをボディブラシにして体を洗ったら、気持ち良さそうだよなぁ。

ついそんな事を思ってしまう。


よし、捕まえちゃえ!

はふんっとモコモコを捕まえた。

何の逃げる気配もなく、あっさり捕まった。

ふっふっふっ。コレで洗っちゃう?


「モフー、モフで洗っていい?」

絶対ふわふわの泡が気持ちいいと思うんだ。

ふっふっふっ。

モフをみる目がちょっと危ない目になってるかもしれない。


「ダメピヨ!モフはタオルじゃないピヨ」

ピヨピヨと文句を言った。


あ、嘴が見えた。


あ、また丸くなった。大きな雪玉みたいだ。


「そっかぁ~残念!」

嫌と言うならしょうがない、残念だけど洗い流すか。


「モフのお顔はどーこかな~?」

歌いながらジャーっとシャワーをかけ、泡を洗い流していく。


「ここピヨー!」

っと、いないいないばぁのように、翼で顔を隠していたモフが飛び出してきた。

良かった、珍しく変顔じゃなかった!


「いたー!見つけたー!」

「ピヨー!」

捕まらないようにとてとて逃げていった。

モフと遊んでいると、楽しくてついつい長湯になってしまう。

一人でシャワーを浴びてたらものの数分なのに。


モフがさっきの石鹸を床においた。何をするのかと見ていたら、石鹸に乗って、その場でくるくる回った。


駒みたい。楽しそうだな。

俺もやりたい。


弟がいたらこんな感じなんだろうか?


昨日に引き続き、誰かと風呂に入るのはなんだか楽しい!



──あ~私、温泉行きたいなー!あるのかな?温泉?


──ここは地球と似てるし、あるんじゃないか?温泉いいな。俺も行きたい!スーパー銭湯でもいいな。あるのかね?そういう、娯楽施設っぽいものって……


──そういう点ではこっちは遅れてる気がするよね


──だよな。そうだ、こっちだったら温泉でも泳いでもいいんじゃないか?バチャバチャって!


──いや、ダメだよ!?マル、何言ってるの?ちょっと!?あなた幼児化してない?


──は?いや、まさかぁ、エルさんってばご冗談を…………


──………………


──え?あれ?そうなの?俺もしかして残念な感じになってる?


──うん、かなり。丸留(まる)は猪突猛進なとこあったけど、ヒトサマにご迷惑かけるような事はしなかったよ……もっと頼りになる男だった


──そ、そう……だよな……


──最近よくやらかすし、思考回路が子供みたいなとこあるよね……もしかして、アールにひっぱられてるのかな?


──それは考えられるかも。身体も脳ミソも5歳だしな。最近活発に動いてるし、余計に同調するようになってるのかも……


──アールは5歳なんだからそれでもいいとは思うんだけどね


──いや、良くないな。俺のアイデンティティーが崩壊する


──ふっ


──あ、失笑された……


──とにかくヒトサマのご迷惑になることは子どもだろうとダメ!強制退去させるからね?


──あ、はい、スミマセン



「モフ~ボク怒られちゃったー」

べちゃべちゃモフをぎゅっとした。

ちょっとベタベタして気持ち悪い。


「?なんのことかわからない!」

するっと抜け出し、ブルブルブルっと身体を震わせバタバタバタッと羽を高速で羽ばたかせ、

「ピヨ──!」

と、水を飛ばし、乾かした!

いや、風魔法とか使うんじゃないんかい!


「モフ、モフって完全に鳥だよね?精霊じゃなくない?」


モフがハッと驚きの顔をした!


「ピ……ピヨは鳥じゃないピヨ……ピヨはジャマぴよ!石の…………精霊……」

にゅーんとじわじわと寄り目になっていく!


「石の……精霊……ピヨ?」

寄り目な上に白目になってきた!

え?もしかしてモフは自分のアイデンティティーを見失っている!?

だから悩んで……なやんで……その顔かっ!?

ぶふふっ!


「かはっ!」

ぐうぅ……大丈夫!まだ大丈夫!そろそろ慣れたはず!


「ぐうっ……モフ……やるな……。大丈夫、モフはちゃんと精霊だよ。ごめんね、変なこと言って」

すーはーすーはー息を整えて、吹き出しそうになった気分を落ち着けた。


「そうピヨ!ピヨは精霊!まちがいない!」

モフが自分を取り戻した!

なんという単純な生き物?だろうか。


「うんうん、モフはかわいいな。ボクも洗ったし、そろそろ出ようか?」


少し怖かった浴室もモフのおかげで克服できた気がする。

サンキューモフ。モフがいて良かったよ。

心の中でお礼を言った。

モフはもうただのペットだね。

ペットには、かわいさ以外求めない!

そこにいるだけで癒されるんだよね~。もふもふもふもふ……


リリスはストーカー……?(・・;)


がんばれーマルエルー


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[一言] これ、思春期になったらお風呂どうなるんだろう?
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