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応援団

本日3回目の更新です!

 ティティとの談笑は、夕暮れ時に差し掛かった辺りでお開きとなった。


「じゃあね!」


 にこにこしながら、ティティが手を振ってくる。僕も手を振り返す。


「……」


 そして、すっかりとお互いの姿が見えなくなってから、僕はティティのとある発言を思い出していた。

 

 ――旗を作って応援したげるね!


 これ、本気なのだろうか?


 本気だとしたら、何気にかなり目立つ気がした。

 それも悪い意味で。


 ゴルドゴと話していた時の雰囲気だと、何か寮ごとに対抗意識がありそうに思える。

 とっていも、普段からだと学校生活にも支障が出そうなので、さすがに常時では無いと思うけれど……こういう対抗行事の場合は過熱しそうな気がするというか。

 いや、気がするというか実際に加熱するようだった。

 僕がそれに気づいたのは、東館に戻った時である。


「うん……?」


 入口のところに、沢山の人が集まっていることに、僕は気づいた。

 隊列を成して、何かをやっているようだ。

 ドン、と太鼓の音が鳴った。


「――新学期始まって最初の対抗行事だ! 死ぬ気で応援しろ!」


 なにやら、応援団なんてものがあるようだ。

 それにしても人数が多い。

 というかこれ何の応援団だろうか。


「――新入生対抗戦は我が弐番寮東館の勝利ィイイイイイ!」


 あっ、これ僕の……。


「――新入生諸君も気張って応援しろ! それと、壱番寮西館の代表が出てきたら盛大にヤジ飛ばせよ! 連中は金と権力をあぐらに我々のような下級貴族を舐め腐ってやがる! 殺せ! 殺せ! 卒業したらヤジ飛ばせば社会的に抹殺されるが、学生時代なら許される! 今のうちに存分にこき下ろしてやれ!」


 ゴルドゴもそんな感じがあったけれど、どうやら、東館は寮是として西館憎しがあるようだ。

 他寮憎し、というよりも、東館に限って言えば、西館に一点集中でヘイトを向けているような雰囲気である。

 応援団も強制参加では無さそうだけれど、これだけの人数が集まっているのを見るに、ほぼ確実に東館の共通認識っぽい。


 取り合えず、行事ごとで他寮を応援するのは、控えた方が良さそうな感じかも知れない。

 ティティの寮が同じであるとは限らないけれど、似たような感じである可能性はある。東館はまだ西館にだけヘイト向けているけど、ティティの寮は全方位な方針かも知れない。

 念のために、後でそれとなく「応援は嬉しいけれど、大変な事になるかも知れないから、しなくても大丈夫だよ」と伝えよう。

 ティティは、少し抜けている所がありそうな子だから、まだ気づいていないだけな可能性がある。


『絶対勝つって分かりきってるけど、わたしもジャンバ応援するよ?』


 どこからともなく、『ジャンバ』と書かれた小さなを旗を取り出すと、赤ずきんちゃんは「ふれっ! ふれっ!」と振り始めた。


「あ、ありがとう」

『ふれっ! ふれっ! ジャ・ン・バ!』

「……」


 自分自身の力が他者とは違うという認識はある。

 それが分からない程の鈍感ではない。

 けれども、万が一、ということも考えられなくもない。

 徐々に高まる周囲の熱気を見ていると、絶対に負けたくない、という純粋な思いが不思議と自分自身の胸の内に湧いてくる。


※※※※


 夜更け……。

 僕は、魔術の練習の為にこっそり外へと出る事にした。

 東館にある演習場は、寮生ならいつでも自由に使えるらしいけれど、僕の小太陽だと熱気が溜まったりするので長時間は使えない。

 他の人が使おうとして中に入った時に、冷え切っていなければ蒸風呂状態のままなわけで、さすがにそれは申し訳ないと思う。

 魔術を見せるだけとかの時なら構わないけれど、練習には向かない場所だ。


『あれ? ジャンバ、こんな夜遅くにどこ行くの?』

「ちょっと魔術の練習をしようと思って」

『うん……?』

「油断はしたくないからね」

『なるほど。……ジャンバなら、別に練習なんかなくても大丈夫だとは思うけど、それで納得するならやったらいいよ』


 赤ずきんちゃんは、軽く息を吐くと微笑した。

 なんだか、子ども扱いされたような気がする。

 まぁでも、”魔法”である赤ずきんちゃんからすれば、大体生きている人間なんてみんな子どもみたいな――あれ、そういえば、赤ずきんちゃんって何歳なんだろうか?

 見た目は僕と同じくらいの歳にしているようだけれど……。


『ん? そんなにじっと見つめてどうしたの? もしかして今日えっちしたいの? じゃあ、今日練習いっぱい頑張ったら……わたしとベッドの上で本番しよっか?』


 まぁ、そもそも人間ではないのだから、考えるだけ無駄かな。

 いずれにしろ、端的に言うなれば、愛が少し重い美少女なお姉さん的な存在ではある。

 それだけ分かっていれば十分かも知れない。


 それにしても、赤ずきんちゃんの提案と言うのは、どうにも僕の心をくすぐった。

 自分が少しだけ情けなく思える。

 けれども、そうは思っても、”練習終わったら気持ちいいことしよ?”という言葉には逆らえるわけもなく、気づいたら僕は頷いていた。

赤ずきんちゃん『ジャンバ攻略中……。よしよし、愛が重い→少し愛が重いに認識が軽減されてる。肉体依存度も徐々に上がって来てる。……完堕ちまで頑張らないと』

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