最終話:日常
今回が最終話となります。
まもなくして、魔専学校の休校も終わり、講義が再開し始めた。
いつも通りにティティやミアと……そして、肌を重ねた以降に、なぜか王女殿下も混じるようなりつつも、日常を取り戻し始めた。
王女殿下が混じり始めたことで、ティティやミアも色々と戸惑ってはいた。
しかし、徐々に慣れていった。
「お二人は、すでに、殿方と肌を重ねたことがございまして?」
「えっ……その言い方まさか……」
「あら失礼。私としたことが、つい」
「一体どこの誰と……」
「とても有望な殿方、と言っておきましょう」
ちらり、と王女殿下が僕を見る。
こっちを見ないで欲しい。
と、思っていると、ティティも僕を物憂げな目で見て来た。
「私も……男性とは肌を重ねたことがありますけど」
「あら、それはどういう状況でだったのかしら?」
「お酒の力を借りて、自分から襲っちゃいました」
「なんとまぁ……」
あれ、その言い方、もしかしてティティは僕を襲った事を覚えている……?
い、いや考えるのはよそう。
僕は首を横に振る。
と、ミアと目が合った。
「……っ」
ミアは、頬を染めながらすぐさまに目を逸らした。
泣き止むまで背中を撫でて以降、ミアは僕と視線が合う度にすぐに横を向くようになっていた。
恥ずかしい所を見せてしまったと、そう思っているのかも知れない。
しかし、その点については安心して貰いたい。
僕は、人にべらべらと他人の恥部を言うほど性格が悪い男ではないのだ。
ミアとは、あとでそれとなく、二人きりで話し合う機会を作りたいと思う。
僕が肉体関係を持っていない子だから、一緒にいると、変に慌てたりせずに済む唯一の子なのだ。
もっと仲良くなっておきたい。
『ふぁぁぁ……』
外を出歩く時に限らず、学校の講義にもついてくるようになった赤ずきんちゃんが、欠伸をした。浮気認定するに至る事件が起きるか、僕の命の危機が訪れでもしない限り、基本的にいつも通りのこういう感じだ。
※※※※
「ジャンバ、お前に手紙が来ているぞ」
寮に帰ると、僕宛に手紙が届いていたらしく、ゴルドゴから渡された。
父上からだった。
しばらくは来ないものと思っていたので、僕は慌てて自室に入ると封を切り、書かれた文字を追った。
――ジャンバへ。……まず、返事をすぐに書けなかったことを謝ろう。すまなかった。色々とあったのだ。だが、仕事が落ち着き始めた。お陰でこうして文をしたためる暇が出来た。
きな臭かった国境付近から、相手の兵が引き始めた。機密にはなるので具体的には言えないが、色々と向こうの内情で予想外のことが起きたらしい。お前のいる学校都市で起きた大事件とも繋がっている事のようだ。
……まぁ、返事が出来なかった言い訳はこれぐらいにして。ともあれ、祝いの言葉が遅れたが、新入生対抗戦の獅子奮迅おめでとう。俺も鼻が高いというものだ。
学校の長期休暇に入ったら、家に戻ってこい。俺も待っている。
そう、書かれていた。
僕はホッとした。
どうやら、学校都市での”使徒”騒ぎの影響で、相手国にも変化があったようだ。
もしかすると、僕のしたことは遠まわしに父上を守ることに繋がっていたのかも知れない。
それを考えると、そう悪いことばかりでは無かったのかも、と思えた。
『ねぇジャンバ……』
僕が手紙を机の引き出しにしまうと、赤ずきんちゃんが、少しな憂いを帯びた雰囲気を出し始める。
夜のお誘いだ。
父上からの手紙で、色々と安堵出来た事もあって、僕は軽く笑んで応じることにした。
『そういえば』
「赤ずきんちゃんどうしたの?」
『……ジャンバと愛し合ったって証拠が欲しいのよね』
「う、うん……?」
『赤ちゃん欲しい』
僕の目が点になった。
魔法と人間の間に、子どもって出来るのだろうか。
と、そんなことを考え始めていると、赤ずきんちゃんが僕を押し倒した。
『絶対作って見せるんだから』
……頑張ったところで、子どもが出来るのかどうかは分からない。けれども、赤ずきんちゃんのこのやる気を見る限り、取り合えず朝までコースは確定かな、と僕は思った。




