王女殿下
更新に関してなのですが、ひとまず毎日更新を続けます。
時間に関してなのですが、夜の8時頃、つまり20時頃に必ず一話を更新するように決めました。一日複数話の投稿する時はそれ以外の時間にも更新しますが、取り合えずは夜の8時頃に来て頂ければ話は進んでおります。
改築作業はおよそ一週間ほど続いた。
そして、寮は確かに設備が良くなった。
外観はあまり変わったように見えないけれど、具体的には中身が結構変わったようだ。
まず地下が出来た。
なんでもモールまで繋がっているらしく、ビアガーデンも入ったらしい。
次に演習場が変わった。
以前よりも頑丈になって、より高度な魔術の練習や実験を行えるようになったそうだ。
大きな点はこの二つ。
他にも色々と小さな変化がそれなりにあったけれど……大きく変わったわけではないから、その点は伝えなくても良いのかも知れない。
女子棟はもう少し目に見える変化があったらしいけれど、男子棟に限って言えばこのぐらいと言った所。
「サンキュー」
「”様”づけで呼ぶわ。アルドード様」
改築がよっぽど嬉しかったのか、上級生からはめちゃくちゃ感謝された。
特にビアガーデンが嬉しかったそうで。
僕はあまりお酒飲まないから、わりとどうでも良いんだけれど、上級生たちは結構嗜むようだ。
「ビアガーデン→部屋 って感じに女連れ込めそう」
「言い方が悪いなぁ。ビアガーデンで酔った女を介抱する為に仕方なく部屋に連れて行くんだ。な?」
「そうだな。仕方ないんだ。決して寮則に違反しているわけではない。仕方ないんだから」
なんか変なこと考えてるなぁ……とは思うものの、寮則違反に関しては、赤ずきんちゃんを部屋に入れている僕がどうこう言えることではない。
完全に破ってる状況だからね……。
※※※※
さてはて。
何日か経ったころ、僕は演習場に赴いていた。
基本の魔術式を幾つか学んだこともあり、それを改変して自分専用の魔術に昇華しようと思い、こうして来たのだ。
対抗戦の特典で演習場も多少頑丈になっている。
以前の小太陽の時のように、壁が溶けるみたいな事態も避けられそうだし。
何を改変しようかな。と、少し考えて――僕は、小規模の帯電の魔術の改変を行うことに決めた。
この魔術は、”魔術を扱う”、という事に慣れる目的で作られた簡易な魔術式だ。規模も威力も低く、使用の用途はほとんど無いともされている。
けれども。
改変が行える僕からすれば、大事な種である。
「さて……」
早速魔術を構築していく。
すると、以前の小太陽の時と同じように、この式の効率化や規模の拡張等についても、自然と理解が及んだ。
僕がどういう風に変えたいかによって、このように変えるべき、というのが勝手に分かる。
帯電をどう作り変えるか。
僕は色々と考えた結果、電気を発生させる、という一点以外の全てを置き換えることにした。
そして出来た魔術を使ってみると――
「……やっぱり規模がおかしい」
――部屋中に格子のように連なる雷が満ちる。
まるで雷の中に来てしまったかのような、そんな錯覚さえ覚える結果となった。
景色が歪んで見え、この演習場内の空間全てに雷が行き渡っているのだ。
これに触れたらどうなるのだろうか? そんなことが気になった僕は、近くに落ちていた木片を放り投げて見た。
次の瞬間。音もなく塵になった。
「やばい……」
小太陽の時と負けず劣らずだ。
ただ、空間を満たすこの使い方は、一歩間違えば自分自身も危ない。
威力があるにしても、放雷とかそちらの使い方も考えた方が良いかも知れない。
※※※※
「ねー、ジャンバ」
「なに赤ずきんちゃん」
「最近ずっと勉強してない?」
部屋で勉強をしていると、赤ずきんちゃんがそんなことを言い出して来る。
どうやら、僕がずっと勉強しているのが、気に入らないらしい。
「他にももっと色々あるでしょ」
「例えば?」
「わたしとお話するとか」
「お話は今朝しなかった?」
「夜の分してない」
「そっか」
「そう」
どうやら、夜の分のお話をしないと納得しないらしい。
勉強を続けたい所ではあるものの、赤ずきんちゃんの気持ちも分からないでもなかった。
僕は昼間は学校があるから、赤ずきんちゃんは、その間は一人で寂しい思いもしているのだ。
というわけで、勉強をキリの良い所で切り上げ、赤ずきんちゃんの相手をし始める。
まぁ、途中からはいちゃいちゃになるんだけれども……と、そんな時である。
誰かが来たらしく、部屋の扉がノックされた。
赤ずきんちゃんには透明になって貰いつつ、扉を開けてみると、そこにはゴルドゴが立っていた。困ったような表情で、頬を引っ掻いている。
「……どうかしましたか?」
「いや、どうかしたというかなんというか」
「……?」
「王女殿下が、お前に会いたいらしくて、な。訪ねて来たんだよ」
ゴルドゴの後ろから、すぅっと一人の女の子が現れた。
そこにいたのは、見間違えようもなく王女殿下であった。
対抗戦の時に戦った王女殿下であった。
「ご機嫌よろしゅうございますか?」
……。
え、どうしよう。
もしかして、白濁液まみれにしたこと怒ってた?
僕の額にじんわりと冷や汗と油汗が混じって噴出する。
しかし。
どうやら話は違うようだ。
王女殿下は改めるように一度咳払いをすると、
「突然の申し出にはなるのですが、ぜひとも、あなたのお力を貸して欲しいのです」
そんなことを言い出した。
赤ずきんちゃん『そういえば卵白と練乳すっかり忘れてた……。あとで手に入れないと』




