表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/33

改築

 振替休日のほとんどを、僕はゆっくり――と言っても、赤ずきんちゃんとだいぶイチャイチャはしたけれど、そんな感じに過ごした。


 まぁともあれ。

 そして翌日になって、学校の講義が再び始まることになった。

 僕は、いつも通りに学校生活を送る気をして、普通に登校した。


 のだけれども、ティティとミアの二人と合流し、ティティの顔を見た瞬間に、ついあの夜のことを思い出してしまった。


 対抗戦後のお祭りの夜のことだ。


 その時に当事者であったティティが、僕のことをどう認識しているのか、というのが気になりだしたのだ。

 ついては、ひとまず、一日ティティの様子を注意深く窺う事とした。

 すると、


「うん? どうしたの……?」


 ティティが僕の視線に気づいて、疑問符を頭上に乗せて、そんな事を言った。

 どうやら、あの夜の事は覚えていないようだ。

 お酒も入っていたし、恐らくは忘れてしまったのだろう。


 あの一件については、僕的には事故みたいなものと思っているから、無かった事にはしたかった。

 本人が覚えていないのは、僥倖である。

 なんだかホッとした。

 肩の荷が降りたような気分と言えば良いのか……。


「……変なジャンバ」


 首を傾げながら、ティティが肩を竦める。

 そして、事情を知らないミアも、それについては賛同するかのように頷いた。

 まぁ確かに、人の様子をちらちら窺うのは、傍から見れば怪しさが満点ではある。

 本人も覚えていなさそうだし、ここらで、様子を窺うのは止めた方が良いだろう。


「……もしかして、あの夜のこと、思い出しちゃってたのかな? ふふっ」


 ティティが、ぼそっと何かを呟いた。

 あまりに小声だったから、僕の耳では捉え切れなかった。

 なんと言ったんだろうか?

 まぁ、あまり深刻な様子はないから、大したことを呟いたワケでは無いのだろうけれど。


※※※※



 滞りなく本日取る予定の講義を聞き終えた。

 学校の勉強が少しずつ進んでいる。

 そんな実感がある。


「じゃあ、今日はもう学校も終わったし」

「うん」

「また明日です」


 ティティとミアとも分かれ、僕は自寮へと戻ることにした。

 色々と街を練り歩いたりする生徒もいるようだけれど、取り合えず、今のところは僕にその気はないので直帰である。


 寄り道は誘われれば行くくらいで、率先して自らやろうとは今のところは思っていない。

 理由は、入学してから最初のテストが一カ月後にはあるからだ。

 今のうちから対策をやりたいのである。


 今からもうテストに備えるの? という風に考える人も多いだろうけれど、個人的な考え方として、こういったことは毎日の積み重ねが大事だと思っている。

 

「ただいま……」


 自室に入ると、すぴーすぴーと寝息を立てる赤ずきんちゃんがいた。お腹を出していたので、そっとシーツをかけてあげてから、僕は勉強を始めることにした。


「さて……」


 僕が最初に開いた教科書は、魔術式学のものである。


 結構配点が大きい教科である、というのも理由だけれど、それ以上に僕自身の実になる教科だから、というのもあった。


 僕は魔術式の改変を行える。

 つまり、既存の式を覚えれば覚えるほど、改変の出典のレパートリーや幅が広がって行くのである。

 まぁ僕自身が原典の式を開発をする、という手もあるんだけれど……でも、既存のものをイジる方が基本的に楽そうだった。

 オリジナルの研究に没頭するのは、学校の勉強がある程度進んでからでも遅くはない。


「えっと、この式は……」


 ぺらぺらと頁をめくりながら、試験範囲の場所を一つずつ学んで行く。

 対抗戦でだいぶ結果を残せた気はするけれど、それ以外にもこういった地道な所での評価もきちんと上げていきたいから、真面目に取り組む。


 と、そんな事を考えていると、ふと起きた赤ずきんちゃんが目を覚まし、僕の腕を引っ張ってベッドに倒れこんだ。


「どうしたの赤ずきんちゃん」

「……寝起きのちゅっちゅっ」


 勉強したいのだけれど……物憂げな赤ずきんちゃんの表情を見ると、僕も我慢が出来なくなって来る。

 勉強は情事が終わるまでお預けになった。



※※※※



 ――がががが。

 

 そんな変な音がしたのは、学生寮で出される夕食を食べている最中だった。

 がががが、という音が寮に響き渡ったのだ。

 一体なんだろう、と怪訝な顔をしていると、夕食の乗ったプレートを持ったゴルドゴが隣に座った。


「隣座るぜ。……にしても音が響くな。もう改築始まったのか。早いな」

「改築……?」


 そんな話は聞いていないのだけど……。


「いつ決まったことなんですか?」

「二日前」

「対抗戦の日……?」

「そうだ。1位になったからな。その特典なんだ」


 特典……そういえば、そんな話があった気する。


「寮の設備やらが少しグレードアップするんだよ」


 なるほど……。

 しかし、改築の理由は分かったけれど、それにしても施工が早すぎないだろうか?

 いやまぁ、寮が良くなるのならそれに越したことはないので、別に構いはしないけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ