003 幕間
時は少し遡り、日本の天つ神が集う高天原で、ある一柱の神が怒りに燃えていた。その名も天照大神。皇室の祖先とされ、太陽を司ると言われる恐らく日本で最も信仰されている尊き神。その天照大神が怒りに怒っていた。
自分の国の民が三人も異世界に誰の許可もなく唐突に予告なく誘拐されたのである。現代日本の文化に理解がある天照大神といえど、怒髪天を抜く勢いで怒った。異世界に転生する、転移する。そういった創作物が流行るのは別に構わない。けれど、それが現実に起こることは絶対に認められない。
他の世界の神から召喚の申請があって、召喚の条件に一致する本人がそれに了承し、かつこの日本へ帰ってくることが保証されるのであれば許可してもいいかもしれない。そんなことをつい先日話し合ったところであった。
「我が子等の創作物がよもや現実になるとは思ってもいなかった。さて、攫われた子等をどうするか。誘拐された先はなんとか突き止める事が出来た。しかし、神が人の世に干渉出来る時代は疾うに過ぎた。それも此度は異世界の事。どうすればいいか。」
呟く天照大神。誰も言の葉を紡ぐ物はいなかった。
「人の世に干渉することは難しい。が、神が神に干渉することは出来よう。
我が怒り、我が悲しみ、我が痛み異界の神へぶつけようと思う。これいかに。」
賛同する天つ神たちの声があたりに響く。
「よろしい、では戦の準備を。
そして、我が子らへ神託を下そうではないか。それぐらいの事はまだ出来るであろう。」
「我が子等よ、誠に遺憾ながら異世界に我が子等が三人も誘拐された。
我らは我が子等の為に戦を仕掛けようと思う。何、太陽神は他にもおる。
世界が暗闇に閉ざされることはない。ただ戦の間、ちと日の本から目が離れる。
そして確実に勝利を得るために我らに祈りを捧げて欲しい。」
その声は日本に住む者全てに届いた。ある者は呆然とし、ある者は泣き出した。
日本中に衝撃が走った。
「オラに元気を分けてくれ!」
再度衝撃が走った。
「こほん、まぁ、そういう、そういうイメージで祈りを捧げてくれると助かる。
・・・・・・わかりやすい良い例えだと思った、反省してる。」