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夫婦で行く異世界






 気がつくと白い何もない空間に俺は居た。

 そうだ、正月休みを夫婦揃って勝ち取って嫁さん手作りのおせち料理を食べながら珍しく二人で酒を飲んでいたんだった。そう、二人で飲んでいたはず・・・・・・


 俺の身の回りには何もなく、ただ白い空間が広がっているだけ。あまりの白さに目がおかしくなりそうだと何度か瞬きをしていると目の前にゲームのようなウィンドウが現れた。


『職業を選んでください。』


 目をこすって見るが、何度見ても書いてある言葉は変わらない。最近の科学技術の進歩は凄まじいとは聞くけれどこれはいくら何でもないだろう。ありえないことが起きているということは、そう、つまり夢か、夢だな? よし、そう思うことにしよう。夢から覚めたら嫁さんにゲームの世界に入る夢見たって自慢してやろう。驚かれるか呆れられるか、羨ましがられるかわからないところだけど。まぁ、話のネタにはなるだろ、きっと。


 さて、これはきっと夢に違いないからいつもゲームしているときみたいな選択をするかな。先ず職業の候補は・・・・・・剣士に魔法使い、賢者、治療術師、大魔道士、死霊術士、錬金術士、踊り子、占い師、吟遊詩人etc、いろんな職業があるけれど、ネトゲする時いつも後衛系の職業を選んでたからその中から選ぶかな。


 で、魔法使い、治療術師、賢者、大賢者、大魔道士・・・・・・っと、ゲームでは賢者は魔法使いとか僧侶の上位互換になってることが多いけれど、最初から選べるということは何かありそうだな。


 試しに魔法使いという文字に触ると、スキル選択という文字がその下に現れた。ふむふむ、じゃあ大賢者はっと、成る程、スキル選択という文字すら浮かばずに


職業は大賢者でよろしいですか?


と出た。成る程、選べるスキルがなくなるのか。で、大賢者についての詳細はどこかに書いてあるのかなと色々目の前のウィンドウを触るが何も出てこなかった。あ、もしかして地雷パターンだったりするのかな。必要なスキルが大賢者に含まれていなくて何も出来ないとか。魔法系のスキルはあるけれど、他が壊滅的でしかも燃費の悪い魔法しか使えないからとか。レベルが冗談のように上がらないとか。


 うん、そう考えると選ぶのは恐らく下位の職業にあたる見習い治療術師かな。回復アイテムがべらぼうに高いゲームとかたまにあるし。その一方で回復系の職業自体地雷ってこともあるんだけど。それはないと自分を信じよう。信じるっていったってこれ、夢だろうけど。


 見習い治療術師を選択して次はスキルか、お、結構数を選べるのね。下位職業の特権かな。んー、え、攻撃系の魔法とれるのか、ふーん、あ、しかも色々選べる。うーん、ここは召喚魔法にしておこうかな。


 こう、さ、さっきから夢だと思いたいんだけど、夢にしては色々複雑で凝った夢すぎるし、自分の頬を試しに抓ってみたら・・・・・・痛いし、夢でなかったらと思うと、帰還にわずかな望みを託して召喚魔法を選んでおくべき、選んでいた方がいい気がする。


 説明しづらいけど昔からなんとなくそうした方が良いという予感がした時、それに従って悪いことになったことはないけれど、逆らうといつも碌な目に合わないからここは素直に従っておこう。今感じている予感に逆らうと嫁さんと親兄弟、それにペットの猫ずや友人と二度と逢えないかもしれないし。これがただの夢だったなら、それはそれでいいかな。帰れないなら、召喚魔法で嫁さんを召喚すればいいだけの話だし。出来るならだけど。


 さて、気を取り直して他にスキルを選べるのかな? ぉ、まだスキルは選べるみたいだね。なら選択するべきは定番の鑑定・・・なかった。えー、ないのか。じゃあアイテムボックスは? あ、召喚魔法で重複するの? え、うーん、中途半端な情報開示だなぁ、これ。色々とつつき回したらわかることも多いだろうけれど、俺、あまり頭よくないしな。


 うーん、召喚というのは詰まるところ他所から召喚する対象を呼び出すという行為。x点にいるAをy点に移動させる・・・・・・つまり、空間を移動させるわけだから、空間を操るというか繋げる能力があるということで、よくあるアイテムボックスというのは異空間に物を収納する能力で、あぁ、成る程重複するわけだ。


 あー、でも、どうなんだろう、召喚魔法にデフォルトでアイテムボックスが付随しているとは思えないんだよね、なんせ上級職っぽいのを選んだとき、スキル何も選べなかったわけだし。うーん・・・・・・まぁ、習得出来ますよってことだと思っておこう。頑張ればいいか。


 じゃあアイテムボックスは除外して、頑強とか身体を丈夫にしてくれそうなのを選んで、精神に対する守りのスキルは・・・いや、そういうのを選ぶと俺の人格に影響してきそうだしやめておこう。何が地雷かわからないし。不動の精神とか鋼の精神とか憧れるけれど、そういうのに憧れているからこその俺であって、そんなものを得た俺は俺じゃない気がする。


 まだスキル選べるのか。なら、武器に関するスキルは・・・・・・やっぱり多いね。定番の剣術や刀術もあるってことは、刀あるのか。夢が膨らむね。選ばないけど。にしても剣術と刀術が別扱いなのか。なら、大剣、短剣はどうかな? あ、やっぱり別だね。剣術は剣術全般で刀術は刀の扱いに特化ということかな。広く浅く補正がかかるスキルと狭く深く補正がかかるスキルって考えたら、選ぶべきは・・・・・・いや、まって、そもそも武器って簡単に手に入る物? いや、絶対そんなことはない。これが夢なら簡単に手に入るんだろうけど、ここまでくると、もう、これが何故か夢ではない現実であるという予感がだんだん強くなってきた。


 簡単に武器が手に入らなくて、手に入ったとしても自分が選んだスキルに合った武器とは限らない、そうなったら俺は、たたかえ・・・・・・いや、生き残れる? いや、不器用な俺のことだ。まず、無理だろう。なら全体的に武器の扱いに補正のかかるスキルは? 器用貧乏って、武器系のスキルが並んでる中にあるってことはこれがそうなんだろうけど・・・・・・いや、達人になることが目的じゃあない。生き残ること、どんな物も武器として抗うことを目的にするならこれがいいか。


『以上でお間違いないですか?』


あ、もうこれ以上スキルを選べないのか。索敵とか、隠形とかも欲しかったけれど・・・・・・スキル構成を見直した方が良いという予感はしない。なら、その直感を信じて俺は『はい』を選んだ。






「気がついたら白い空間に居て、ゲームみたいな選択肢が出てきて選んでたら、気がついたらこんなとこに一人で放り出されて怖かった!」


 嫁さんが目の前でギャン泣きしていた。

おぅふ、このパターンは想像してなかった。

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