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魔封じの宝玉

 体が……重い。まずい……想像していたよりもガタが来ちまってるみたいだ……。だが、戦争の間はこんなのは日常だった……。

 研ぎ澄ませ……もう一度……失わないために。





「よう、遅かったじゃねぇか。待ちくたびれたぜぇ」


「野郎と待ち合わせる趣味はこっちにゃねーがな……てめーの趣味は置いておいてだ、ノルンはどこだ? そして村の連中をどうした?」


 俺の問いに対しハリマウが愉快そうに顔を歪める……。燃える家々、破壊された水路、大地に染みこんだ血液……魚人族の村をいくさの匂いが満たしていた。

 壊した家を使用したバリケードの裏には多数の蠢く気配、野戦築城とでも言うのだろうか? 簡易とはいえ視界を塞がれた中では人質の有無の確認も出来ない。


「依頼人の手前もあっからよ、お前をなますに切り刻んで意識が落ちる手前で教えてやるよ」


「……ったく、相変わらず趣味悪ぃ……依頼人の意向を汲むなら無傷で通してくれよ……っとぉ!」


 悪態をつく間もなく夕立の如くに矢が降り注ぐ。出来るだけ情報を引き出したかったが……仕方ない、御守りの反応はここいらで間違いない。あとは何処に捕らえられているかだが……。


「『暴嵐(テンペスト)!』不意討ちとは気が利いてるな! お陰で目が覚めたじゃねーか!」


「なに、ちょっとした挨拶よ! っにしても詠唱破棄ってのは厄介じゃねぇか、あのガキといいてめぇら流石に卑怯だろ?」


「卑怯ってのはまぁ心当たるがてめーだけには言われたくねぇよ!」


 踏み込みと共に振り下ろした大剣がハリマウの構えた大鉈に阻まれギャリギャリと不快な音を立てながら火花を振り撒く。

 っち、万全の状態なら鉈ごと両断できたものを……だが……!


「『聖結界(ホーリーフィールド)!』んじゃあ邪魔の入らねぇとこでたっぷり殺りあおうか!」


「グハハハハハ! 個室に一名様ご案内ってか? だがそうはいかんなぁ!」


 俺とハリマウを隔離する為の結界が硝子を砕くような音を立てて崩れ去る。自慢じゃないが結界術には自信がある、簡易とは言えど並の相手じゃ傷一つつけられないであろうその結界が指一つ触れずに砕け散る? 冗談にしては笑えねぇ。


「っ! 何しやがった!」


「なに、ちぃっとしたタネも仕掛けもある手品ってやつよぉ」


 得意気に鼻を鳴らすハリマウをじっと観察する……腰に見慣れぬ宝玉……? こいつあんなもん持ってたか?


「そのピカピカ光る石が原因か?」


「ぬぐっ!? ば……バレたならば仕方ない! 何を隠そうこれこそが魔封じの宝玉よぉ! 局所的な反魔結界を展開できる王国の秘宝! あの魔道士のガキと姫さんは気に食わねぇがこいつが手に入っただけでも利用価値はあったってもんよ!」


 あぁ……やっぱこいつバカなんだ……物の出所から前回ははぐらかしてた(出来てはなかったが)背後関係までペラペラと……。いや……喋っても消しちまうから問題ないってことか? ほんと、見くびられたもんだな……。


「まぁいいさ、誰が立ちはだかろうと誰が背後にいようと全部潰せば解決だ!」


「グハハハハハ! この局面でそこまで吠えれりゃ上等上等! 精々無様に踊り狂って死んでくれや!」


 ハリマウが跳び下がると同時に四方八方から顔を隠した兵達が飛びかかってくる、こいつらの中にも王国兵か……だが魚人村ここは俺の領内! そう簡単にやられはしない!


「『転移(テレポート)!』『転移(テレポート)!』『転移(テレポート)!』」


「おぅおぅ、やるじゃねーか、だが全員飛ばすにゃ魔力が足りんのかぁ?」


 分かってる、イナゴのように湧いて出るこいつらを全員飛ばすって訳にはいかない、早晩魔力が尽きてなます斬り……。活路を探しつつ時間を稼ぐ!


「人の心配する前にてめーの首の心配しやがれ! 『風精刃シルフエッジ!』」


「っとぉ! 危ねぇ危ねぇ、まだ活きがいいじゃねぇか、こっちも手負いの獣に手ぇ出すほど間抜けじゃねぇ。まぁゆっくりぼろ雑巾になってくれや」


 ニヤニヤと嫌らしい笑いを浮かべつつハリマウが砂塵の先へと身を隠す、止めだけ美味しくいただこうってか? っとに頭悪ぃ癖にこういう時だきゃ悪知恵が回る……。


「『転移(テレポート)!』『転移(テレポート)!』ハァ……ハァ……っとにキリがねぇなぁ!」


 一体何百人飛ばした? 残りは何人だ? ハリマウは……くそっ、頭が回らねぇ……。


「『転移(テレポート)!』……っ!? ぐぁっ! がぁっ!?」


 転移……させたはずの一団がこちらに襲い掛かってくる、なぜ? どうして? と考える間もなく横凪ぎに斬り払い、降り注ぐ血飛沫に合わせるように全身に激痛が襲い掛かる。


「ぐぅっ……! ゲホッ! ガハッ!?」


 ……そうか……そういう事か……転移の呪文を宝玉の力で打ち消した……。だが転移の反応は一瞬、恐らくずっと試行し続けて今偶然タイミングがかち合った……と。っち……自分の運の無さが恨めしい……。

 間髪入れず畳みかけるように兵達が襲い掛かってくる、躱す、受ける、躱す、躱す、受ける、斬る、斬る、斬る。


「ぐぁあっ!! ゴボッ! ガハッ! ゲホッ! ゲホッ!」


 降り注ぐのは両断された敵の血液か……それとも己が振り撒く血反吐か……。視界が……歪む……意識が……遠のく……暗い……なんで? もう……夜?

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