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ベイリッジ侯爵

「お~い、ダーリン! なんか結界の外にゾロゾロお客さん来てるぜ?」


「っ! ジャクリーン! そのダーリンってのは止めろって言ってんだろが! んで、客ぅ? ダイキやマリー以外にここまで来る奴居るかぁ?」


 こんなとこに客ぅ? しかも団体さんだぁ? あるとしちゃぁ魚人族の奴等だ……だが水路以外からあいつらが来たこたぁねぇはずだが……。そもそも危険だから普段はダイキに宅配頼んでる訳で……。


「? ありゃあ王国の旗だな……、マリーが言ってた和平交渉はもうちっと先のはずだが何で王国の連中がこんなとこまで来てんだ?」


「ハナコ達も興奮しちまってる、臨月だから落ち着かせなきゃいけないのに……」


 なんにせよ目的が何か探らなきゃなんねーなぁ……ダイキの結界は魔獣は弾いても人は通しちまう、害をなす相手じゃなけりゃいいが……。

 っと、ありゃ軍隊か? 数は数千……俺を追っての捕り物にゃぁ豪華すぎるが……。


「テリオス、あの旗……」


「あ~あ……見付かっちまったってとこかぁ?」


 王国旗に紛れてチラホラ見える趣味のわりぃ旗……ベイリッジ侯爵の旗……。何を隠そう俺様がハナコ達を解放(強奪)してきたのはこのベイリッジ侯爵の牧場、つまるところジャクリーンの親から牧場を掠め取ったのもこいつだ。

 整然と並んだ兵達が道を空けるとその隙間から豪奢な鎧に身を包んだアホ面が一人……、もうこいつのツラぁ拝むことはねぇと思ってたんだが……。


「おぉ、知らせには聞いておったがよもやこのような場所まで逃げて居ようとはな」


「ベイリッジか……こんな辺境まで何の用でぇ?」


「何の用? と申したか? 貴様には心当たる事象があるのではないか?」


 まぁそりゃそーだな、貴族が面子潰された以上は報復しなきゃぁ恥になる、しかも潰されたツラぁ一年笑われっぱなしだ。さぞかし怒り心頭に来てんだろうなぁ。


「心当たりはねぇなぁ、ってか何のつもりかは知らねぇがその兵達下げてくんな、嫁達が興奮しちまうからよ」


「嫁? 嫁と申したか? プッ……クハハハハハ! じゅっ……獣人とは畜生と変わらぬとは知っておったが……ハハハハハ! まさか家畜をその様に……ククク」


「なっ! 笑ってんじゃねーぞ! ハナコ達はそんじゃそこらの女よりよっぽど器量よしなんだかんな!」


「あ~、ジャクリーン、ちっと今は黙っててくれな? んで、ベイリッジの旦那は結局なにしにここに来たんでぇ?」


「ふんっ知れたことよ、罪人テリオス、貴様の誅殺にこのベイリッジがわざわざ参ったのだ、神妙に大人しく我が刃にかかるがよい」


 かかれと言われてはい了解てかかる奴はいるめぇよ、屠殺場の家畜でもちったぁ抵抗するわ! 相手は数千っつっても数だけの雑兵は怖くねぇ。ジャクリーン達を避難させて適当に全滅させっか……。


「っつーこった、ジャクリーン、ちいっとハナコ達連れて避難を……」


「あぁ!? 避難?」


「はっ? いや、危ねぇからよぉ?」


「するわけねーよ! あいつは間接的にだが親父の仇! しかも可愛いハナコ達を奪って虐げてた張本人! 鴨が葱どころか鍋に豆腐に火の魔石まで持って来てんだ! 食っちまうしかねーだろ!」


 ……いや、待て……っついたいとこだが……完っ全に目が目が据わっちまってるジャクリーンに臨戦状態のハナコ達、駄目だなこりゃぁ……せめて手加減を考えるだけの理性がジャクリーンにあるのを祈ろう。相手にする王国兵がいっそ哀れだあな……。




「テリオス殿!」


「ん? あぁ、おめぇはマリーんとこの……どうしたんでぇ?」


「いや、ダイキ様からテリオス殿の所へ敵襲の可能性ありとの伝令を頼まれまして……ですが……」


「あぁ、もう終わるんじゃねーか? ……ああも一方的だと敵ながら泣けてくんなぁ……」


 見つめる先にはベイリッジを囲む兵達、そこに突っ込むハナコに騎乗したジャクリーン……あっ……。あれだ、こういう纏めて吹っ飛ばした時ダイキはなんつってたかなぁ……? そうだ、すとらーいく! なんか知らんがこの響き気に入ってんだよなぁ。


「んで、なんでまたダイキが使いなんかよこしたんだぁ?」


「それが……」





「う~っし! 大勝利大勝利っとお、ダーリン惚れ直したろ? ……んん? そっちのエルフは誰だ? 見ない顔だけど……」


「ジャクリーン、ちいっと俺様は出掛けてくる。こいつらと一緒にそこのバカ共を縛り上げとけ」


「? 何しに出るんだ? ってか縛り上げねーでも全員ボッコボコで動けないって……っつーかあの数だぜ? テリオスも手伝って……」


「ノルンの嬢ちゃんが攫われた、ダイキがそいつらを追ってる」


 ジャクリーンが一瞬呆気にとられた表情をし、そして歯を食いしばり決意に満ちた視線を送る。


「俺も行……」


「駄目だ、お前はここに居ろ」


「だって! ノルンが攫われたんだろ!? なら私だって一緒に!」


「駄目だ、悪ぃがこっから先は血生臭い大人の時間だ。ガキはお呼びじゃねぇ」


「んなっ……! 私だってもうガキじゃ無い! ハナコ達が居れば軍隊にだって勝てる! さっきだって……!」


 詰め寄るジャクリーンをエルフの隊長さんが制する、俺ぁ説得には向いてねぇからなぁ……上手いことジャクリーンを説得してくれりゃぁ……。


「ジャクリーンさん、でしたね?」


「あんだよ? 止めるんじゃねーよ! 部外者のくせに!」


「いえいえ、止めさせていただきますとも。ジャクリーンさん、テリオス殿の真意を察して差し上げて下さい」


「「真意?」」


 思わずセリフがハモっちまって慌てて目を逸らす、真意? 真意ってなんだ? 戦場にガキが居たら邪魔っての以外になんかあるか?


「テリオス殿は愛する奥方様に危険が及ばぬよう気遣っておいでなのです、先程の戦闘の際にもそれはそれは……ねぇ?」


「えっ? テリオス……そんな……ええぇ?」


 顔を赤らめてこちらを見るジャクリーン、ちょっと待てやクソエルフ! さっき話してたのも手前ぇの報告受けてただけだろ!? とんでもねぇ捏造すんな!!


「ま、まぁ? 愛ゆえのそういうのなんだったらやぶさかじゃないっつーか? 妻の仕事は家を守る内助の功っていうか? そっかぁ、テリオス……えへへ……そっかぁ!」


「んがっ……!? ぬぐぐ……わーったわーったそれでいい! だから! しっかり留守番しておくんだぜ!?」


「うぃ! ダーリン頑張って来てな!」


「だからダーリンは止めろっつってんだろ! んじゃぁ隊長さんよ、ウチの奴等を頼んだぞ」


「畏まりました、御武運を!」


 不味いことになった……最近のダイキの嬢ちゃんへの入れ上げよう……満身創痍で自制の効かない頭……。妙な暴走しなきゃいいが……、セラスの姐さんとマリーの危惧が現実になるってか? 笑えねぇ……全く……笑えねぇなぁおい……。

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