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異世界ラブストーリー

「まず俺の生存が王国で知れ渡るってのが最初の問題か……継戦派が確実に調子付く、不味い流れだな……」


「それに関してはそろそろ公表するはずだったんだけどね……」


「?? はっ? 公表? 何で??」


 いや、公表しちゃうとか、これまで魔境(ここ)に隠れ住んできた意味は? 生存を秘匿した理由は!? 安全を確保できる算段が立ったってこと?


「三日前に主要国会談が魔王城で行われてたのよ、そこでの王国と魔王国の二国間密談の中で王国の国王陛下はあなたの生存とその後の筋書きについて同意、私が立会人として二国間の密約が交わされたの」


 ……当事者不在でなんか色々進んでるのね……、密約って一体何? 筋書きとかなんか今も俺はレールに乗せられてんの? 初耳なんですが……?


「なんかよからぬ企みに巻き込まれてる気がしないでもないが……、その筋書きってのの内容は? ろくでもねーもんじゃねーだろうな? ってかそんな重要会議になんでお前が居るんだ? 密談の立会人とかまた重要な……」


「……いや、私ぃ、一応エルフの国の女王様よ? 流石のキミでも不敬極まりなくない? ねぇ?」


「あっ……」


「普段の行動が行動じゃからの、仕方あるまいに」


「ちょっ……ノルンちゃんまで……」


 いや、うっかり忘れてたのは悪いけどさ? まぁそれだけ普段の行動がね……。定食屋感覚で人んちに飯たかりにくる女王様って居る? 俺はこいつ以外に知らない、そんな女王。


「まぁいいわ、今後の展望ね。まず終戦と講和、これは今回の会議で大筋の道が立った、後は各国それぞれ貴族や議会を纏めて調印したらオーケー」


「戦争始めるのは簡単なのにやめるってなると時間がかかんのなぁ」


「賠償に復興に、決めなきゃいけない事が山積みだからね。特に国境付近の町々は酷い有様、森人の国(うち)は幸い戦禍に巻き込まれてないから従軍した兵達への補償位だけど……関わってる以上は全体の決め事にも参加しないとなのよね……」


 眉根を寄せて天を仰ぐマリー、陽気に振る舞ってはいるが相当疲労しているのだろう。いや、疲労の裏返しでハイになっちまってたのか? 思えば戦争中も追い詰められりゃ追い詰められるほどハイテンションで突っ込んでってたなぁ……。


「まぁ、なんだ、お疲れさん……あれだ、ケーキあるけど食うか?」


「おぉっ! 食べる食べる~! ……ってかなんか優しすぎない? なんか裏でもあるんじゃ……」


「疲れてるのかって気遣ってやった俺が間違ってたよ……要らないってことでいいな?」


「うわ~っ! ごめんごめんごめんってば! 食べさせて下さいっ!」


 ったく……大体いつもこいつは一言多いんだ……いや、そりゃお互い様か……。


「マリー、茶番はよいから話の続きはどうなのじゃ?」


「ぬぐぐ……厳しい……。ま、まあそれでこの後の展望ね、んでこれからは人界魔界の融和交流を始めて行かなきゃいけないんだけど……」


「うぬぅ……それは難しいのぅ、ジャクリーンの時もそうじゃったが……敵対していた者同士が分かり合うには時間がかかる」


「そういやあの子居ないわね、どうしたの?」


「ん? あぁ、テリオスんとこに置いてきた、憧れ云々っての言ってただろ? その相手がテリオスだったんだよ、んで押し掛け嫁で居座っちまった」


「ぷっ……あはははは! マジで? ほんとに? ちょっとちょっとなんでそんな面白いこと知らせてくれなかったのよ!」


「マリー、続きを」


 興奮状態で目を輝かせるマリーを眼光鋭くノルンが制する、どっちが大人か分かったもんじゃないなこりゃ。


「も~、分かったわよ~。んで! パンパカパーン! あなた達は人魔融和の旗印に大抜擢されました~♪」


「人魔融和の?」


「旗印じゃと?」


 頭に疑問符の浮かんだ俺達に向かいマリーがチッチと口元で指を振り、演技がかった仕草で天を仰ぐ。


「こういうわだかまりを溶かすのにはやはり感動のドラマってのが必要かつ手っ取り早いっ!」


「ドラマぁ?」


「台本はこうよ! 魔王と相討ち満身創痍で倒れた英雄、そこに現れたるは魔王の娘! 親の敵たる英雄、だがその戦いぶり、挫けぬ心に胸打たれ瀕死の英雄を娘は匿い看病する。『なぜ……俺を助けた……? 君の父親の仇だぞ……』『さぁ……なぜかは……ですが、私には戦うあなたが……泣いているように見えたのです……』すれ違い、戸惑いながらもやがて惹かれ合う二人……。種族の垣根も、出会いの歪さも、親の死をも超えて二人の恋は燃え上がるっ!!」


 わぁお……めっちゃ早口……ってか……。


「……何だその台本……俺瀕死になんかなってねーぞ?」


「妾は初めから旦那様にぞっこんじゃぞ?」


「細かい事はい~のよ! 演出演出! 物語ってのは多少の紆余曲折がある方が受けがい~んだから!」


 ……嫌な予感がする、旗印? ドラマ? 演出? まさかだよ? まさか……。


「マリー……まさか……お前……」


「ドラマチックな禁断の恋っ!! こういう恋愛小説は女子の大好物だからね~、大作家マルグリットの最新作! 初版二百万部で既に印刷済み! あなたの生存の発表と同時に発売! 世界中がこの恋物語に心躍らせる……今年のベストセラー大賞は頂きよっ!!」


 ……はっ!? 余りのことに意識を失ってた……うぇっ? マジで? 嘘だろ!? 旗印って……そういう!?


「妾達が主人公の恋愛小説……ほぅ……」


「小説だけじゃないわよ? 舞台演劇に歌ももう完成しているわ! あなた達の恋物語が世界を変えるのよ!」


 恋物語が世界を変える……? なっ……! なんだその羞恥プレイは!! ちょっと待てちょっと待てちょおおぉぉぉおっとむわぁてええぇぇぇええい!! 何本人達に許諾無くそんな話世界ぐるみでやってんの!? は? 旗印どころか生贄じゃね~かっ!!


「待て! そんなの俺は聞いてな……」


「それはいの! 妾達夫婦の愛の軌跡……世界公認のカップルなど誉れ高い事この上ない!」


「でしょでしょ? 色々片付いた暁には舞台はアリーナ席でご招待するわよ~♪」


「それは楽しみじゃ! な! お前様♡」


「……あ……はい……」


 駄目だ、これ話がもう通じないやつだ……正直話聞いただけで顔から火が出そうだが……。あれだ、外に出なければ目に入る事は無い。俺は一生をこの領内で過ごす……嗚呼……貝になりたい……。

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