謎の少女と怪しいお薬(微エロ
……? 夢を……見ているのだろうか? 何やらフワフワと定まらない意識、すぐ側でごそごそと物音がする中、天窓に切り取られた星空がやけに鮮明に美しく見える……。
……体が……動かない……? !? 何で? 徐々に輪郭を取り戻してゆく意識の中、寝返りをうとうとするも身じろぎ一つ出来ない、これは……? 力が……入らない? それに何かで縛られているような……?
「……う……ぐっ……にゃ……にが……うぬぅ……!」
横で寝ているであろうノルンに声をかけようにも舌がもつれたように言葉が出ない、夢だとしてもこれは参った……いや……まさか侵入者が? 一服盛られた? ならノルンが危ない……!
……どうにか動こうと藻掻く中、視界の端に何かが映る。……裸の……女の子? ……ノルン? いや、違う! わずかな星明かりに映し出されたそのシルエットから見るに年の頃は二十歳前後だろうか? 豊かな膨らみも、くびれたウエストも、一糸纏わぬその全てを隠そうともせず、そのままそっと俺の上に身を重ね、ヒヤリとした感触と共に押し当てられた柔らかな双丘から鼓動と共にゆっくりと体温が伝わってくる。
何が何だか分からない、目の前に居るこの女は一体誰で何の目的でこうしている? 夢? やっぱこれ夢? 何でこんなエロ夢を? 考えてみれば都合一年近く息子は封印状態、こういう夢を見ても仕方が無い?
……似ている……そう考えて観察してみれば俺の上に身を重ねているこの女、セラスさんにそっくり? ってかセラスさんが若い頃はこんな感じだったのかな? っていう……。
いや、こんな夢を見ちゃうとか余程昼間のラッキースケベが効いてるのか? だからといってこんな……って、うおぉ!?
暫く俺を抱き締めるようにして顔を伏せていた女がゆっくりと頭を上げ、俺と目が合うと優しい笑みを浮かべてまた顔を伏せる、と、生温い何かが体を這う感触が背筋を貫き脳を痺れさせる。
「ぐっ……ちょ……なに……を……」
抵抗しようにも何故か身動き一つ取ることが出来ない、力の入らぬ体に意識を集中したためか? 体を這う舌の感触がやけに鋭敏に脳を灼いてくる。わき腹から胸へ、胸から首筋へ、時折甘噛みを交えるたどたどしい舌使いが逆に劣情を誘う……。
……俺、疲れてたのかな? こんな夢まで見て、好みドンピシャドストライクの女の子が迫ってくる? ご都合主義にも程があるわな……もう、このまま身を委ねて……。
ゆっくりと首筋から耳を伝い頬に口づけをし、荒い息遣いが近づいてくる、重なり合う胸に感じる鼓動は相手のものか、それとも俺のものか? ゆっくり、ゆっくり熱い吐息が俺の口元に……。
「……て……く……れ……」
女がびっくりしたように体を震わせ身を起こす、これじゃ……いけない……、昼間ノルンの信頼に足る男になろうと誓ったはずだろう? 声を出せ! 腹の底から!
「っ……! や……め……やめ……てくれ! 俺にはノルンが! 妻がいるんだ!!」
女が身を起こしたままその場にへたり込み、上気し火照った頬を耳まで赤く染めて大粒の涙を流し始める。えっ? 泣いて……? いや、なんで? 拒否されたのがショックだった? いや、でも誰? 赤い髪に金の瞳……あれ? もしかして……?
「ひぐっ……ふぇっ……うわああぁぁぁあん! おっ、お前様ああぁぁぁ! ごめんなさいなのじゃああぁぁあ!」
「うぇ? いや、は? ノルン??」
理解と現実の剥離に脳がショートしそうになる俺の前で魔力の粒子が煙のようにノルンの体から抜け出し、徐々に徐々にノルンの体が見知ったぺったんこに変化してゆく。
俺は尻尾が解け、自由になった腕で泣きじゃくるノルンの頭を撫でることにより、どうにか平静を保って見せるのが精一杯だった。
……
「……まぁ、今回の事態に関しては煮え切らない態度で不安にさせた俺にも非がある、だがな……」
「ぐすっ……へへへ……ひぐっ、うへへ……」
どうにか落ち着いたノルンを座らせ深夜のお説教大会、頭に出来たコブをさすりながらもなぜか頬を染めてご機嫌なノルンは果たして反省しているのかいないのか……。
「とりあえず今回の愚行に至った訳はなんとなく分かるが一体さっきの姿は何だったんだ? それに寝起きとはいえあそこまで体の自由が効かないのはおかしい、お前は俺に何をしたんだ?」
「うぬぅ……、先程の姿はじゃな……以前マリーに貰った薬で……」
……やっぱ出たよあんにゃろう、毎回毎回どっかにいらん地雷を仕掛けていきやがる……。
「体を一時的に成長させる薬で……ユニコーンを狩ってきた事があったじゃろ? あのユニコーンの血液を素材に作ってくれて、ここぞというときに使えと……」
「ここぞって……」
「じゃって、お前様の様子を見る限り絶対いけるって母上も……」
「はぁ!? セラスさんも関わってんの!?」
「うぬ、じゃから今日の夕飯にこっそり母上に貰った薬をじゃな……」
……この世界の貞操観念どうなってんだよ……マリーはともかくとして母親が娘をけしかけるか? ……なんか俺に不能の呪いをかけた先代魔王がまともな人に感じてきた。色々酷いこと言ってごめんなさいお義父さん、今、俺は反省しています。
「ってかセラスさんに貰ったとはいえいきなり薬を盛るとかさぁ?」
「あっ! 副作用とかは大丈夫じゃぞ? 母上が父上によばい? をする際に使って副作用が無いのも確認済みじゃと言っておったぞ?」
前言撤回、セラスさんから夜這いだぁ? うらやまけしからん!! 万死に値する! いや、もう死んでいるんだけどさ。ってかあのおっさん意外とモテてたのかねぇ? そういや魔界じゃ強い奴がモテるんだっけか……あの強さだしさぞかしモテてたんだろうなぁ……。
……どうせなら魔界に召喚されたかった、人界じゃ同行してたイケメン賢者様にそういった黄色い歓声とやらは全部もってかれてたからなぁ……。あいつ今どうしてんだろ? やっぱ英雄扱いで今まで以上にモテて……いや、別に現状に不満はないし満足はしているけどさ、でもなんつーかもやもやと……ねぇ?
「お前様? どうしたんじゃ? さっきから顔をしかめて……やはり、怒っておるのかの?」
不安そうな声にハッと目を開けると、心配そうな表情でノルンが俺の顔を見上げている。怒って……いる? いや、ノルンの短慮にも呆れてはいるが……実際腹立たしいのはノルンにそうまでさせてしまった自分自身に対して……か。だがそれはそれ、これはこれ、流石にこんなちびっ子に手を出すような鬼畜な趣味は無い、が、誰かにノルンをくれてやる気も毛頭無い。
「はぁ……、怒ってはないよ、だが……こういう短慮な行動は慎んでくれ。焦る気持ちも分からないでもないが俺はずっとお前の隣に居るから、だからせめてそういうのは成人するまで待ってくれ、な?」
俺の言葉に不安そうだったノルンの表情がぱあっと明るくなる。
「本当にじゃな! 成人したら良いのじゃな? 男に二言は無しじゃぞ!?」
「ああ、二言は無い、だから……」
「うぬ! 来年の誕生日が楽しみじゃ! 指折り数えて待たねばの♪」
……?? 来年? ……?? んん? 来年何かあるの??
「?? いや、ノルン? 来年って?」
「うぬ? じゃから成人の儀じゃよ、せ~い~じ~ん!」
「えっ? はっ? いや、来年って……来年十二歳だよな?」
「?? 十二と言えば成人、立派な大人じゃろ? 何を言っておるのじゃお前様、呆けるには早いぞ?」
……んなっ!? なっ……! 何ですとおぉぉぉお!? いや、成人って普通二十歳……いや、それは地球での常識……? ああぁぁぁぁああ! 文化の違いについて昼間再確認したはずだろ! 俺!!
「男に二言は無い……じゃの? お前様♡」
「うぐっ……う……うぃ……」
来年の誕生日までに何かいい言い訳とか考えねば……ああ……異文化交流って……ほんと難しいなぁ……。




