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お洗濯

「お~、ダイキ、あんがとな。お前んち行ったときからこいつが羨ましくてよぉ」


「割と簡単な術式だからな、魔力注がなくても使えるから半永久的に水は綺麗なままだ」


 前にテリオスが遊びに来た際にうちの水源の浄化装置に気付いたらしい、今日の本来の目的はこいつの設置だったんだが……。


「ほれ、ジャクリーン、ちゃんと力を込めて洗うのじゃ」


「おお、ってかすげーな、ただの水なのに汚れがどんどん落ちる!」


『ぶべっ! ガボッ! ゴボゴボッ! た……ヒュー……ヒュー……助け……ゴボボ……』


「洗濯をしておると洗濯物と共に心も綺麗に晴れやかになる、どうじゃ? 気分が良いじゃろう」


「おぅ! やっぱ『汚れ』は念入りに落とさねーとな!」


『ガバッ! げぼっ! いや……だ……消えて……滅び……体が……崩れ……ゴボゴボ……』


 浄化された水の効果でみるみるうちにネクロスが浄化されていく……見ていて哀れではあるが自業自得だから仕方ない。この水があればネクロスももうここには寄りつかないだろう、諸々全て解決一件落着! さらばネクロス、願わくば二度と出て来るなよ。


『アガ……ひ……かり……あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛……光が……ひ……かり……が……』


「よし! 綺麗になった!」


「んじゃどこかに干すかの……おぉっとぉ、いたずらなかぜさんが~♪」


 にわかに吹いた強風がネクロスだった物体を遥か上空に巻き上げ運んでゆく……。さらばネクロス、グッバイフォーエバーネクロス、さっさと成仏して二度と戻ってくるなよ……。


「ちっとはスッキリしたか?」


「まーな! 久し振りに親父と母さんに会えたし、仇も討てたから今日は満足だよ」


 そう言うとジャクリーンが憑き物が落ちたように明るく笑う、今回ので一つケジメがついたって感じかな。子供は笑顔が一番! 間違っても牛達に襲わせて居たときのような表情はさせちゃいけない。


「よっし、そんじゃ帰るとするか」


「うぬ、テリオス達者での」


「おぅ、浄水装置あんがとな。土産を忘れずに持って帰れよ」


「帰り道気を付けて帰るんだぞ~」


「……??」


 ノルンを腕に抱き、背に荷物を背負い、見送るテリオスとジャクリーンに手を振る……? あれ?


「おい、ちょっと待て嬢ちゃん、何でこっち側に居る?? 嬢ちゃんはあっちだろう!?」


「私には分かるんだ! 憧れの人が生きていて尚且つ家族を解放してくれた恩人だったとか! もうこれは運命! この牧場に嫁ぐ為に私は産まれてきたんだって!」


 慌てるテリオスに夢見がちな瞳でうっとりとトリップしているジャクリーン。おぉ……マジか……なんつーか最近の子は大胆だな、うん。


「んなっ? 嫁っ……?? どういうこったこりゃあ!?」


「あ~、まぁ……運命?」


「テリオスよ、ハーレムに一人加わるだけじゃ、人族がそれに加入するのも乙なものじゃろう」


「おいおいおいおいちょっと待て! 俺様の気持ちは!? それにガキの扱いなんざ俺様は分かんねぇぞ! ってかダイキニヤニヤすんな! お前前にからかった意趣返しのつもりか!?」


「ガキ扱いは不本意! 自分のことは自分で出来るし今日みたいな事があればハナコ達と戦える! それに、ハナコ達、妊娠してるよな? 私は出産の補助が出来る! テリオスは出産の手伝いできるの?」


「うぐっ……そ、そりゃぁ……」


「諦めよテリオス、ジャクリーンは頑固じゃからの。なに、一緒に暮らしてみて育っていく愛もあるじゃろう、早速尻に敷かれておるが……なに、尻に敷かれるのはそれはそれでいいものじゃと父上も言っておった」


 元祖押しかけ嫁が言うと説得力あんなぁ……ってか魔王……嫁さんの尻に敷かれてたのか……。


「まあ、そういう事みたいだからテリオス頼んだ!」


「じゃあの! 二人ともお幸せになのじゃ!」


 テリオスが何か言いたげにしていたがまぁ気にしない、先達からのアドバイスは一つ『諦めて受け入れろ』だ。


「なっ……ダイっ……待っ……! 嘘だろ……行っちまった……」


「それじゃこれからよろしく頼むぜ、旦那様♡」


「……はぁ……ここでお前さんを追い出したら嫁達に一生恨まれかねんしな……。嫁ぐ云々は別として一応置いてやるよ」


「大丈夫! 何でも役に立つぜ! なんなら今日から夜の世話も……」


「ガキが調子に乗るな! ったく……ダイキの野郎もこんな感じだったのかねぇ……。っし……付いてこい、部屋の準備をしなきゃな」



……



「さて、ジャクリーンの部屋の片付けはこんなものかの。お前様、荷物を纏めておいたからまたあちらに届けてやってくれるかの?」


「おぅ、了解」


 短い間だったが意外と荷物はあるもので……家具やら服やら作ったけどあっちでも役立ててくれたらいいなぁ。なんだかんだうるさかったが居なけりゃ居ないで寂しいような……。

 ノルンがガランとした部屋を見て物憂げな表情を浮かべる、色々あってようやく打ち解けてきたとこだったしな、寂しさは俺より大きいだろう。


「……そんな顔すんなよ、またいつでも会いに行ける」


「べっ……別に寂しくなんかないぞ! じゃが……うむ……まぁ、将来子が巣立つ際の予行演習みたいなものかの?」


 そう言うとぐっと伸びをしてから溜息を一つ、そして駆け出したノルンが勢いよく抱き付いてくる。


「ノルン?」


「寂しくはない、ないのじゃが……そうじゃの、久し振りに二人きりなのじゃ、今日はギュッとして寝ても……よいかの?」


「おぅ、さ、夕飯にするか。ちっと作り過ぎちまったから一杯食べろよ」


「むぅ……お前様も癖が抜けて無いのぅ、よし! 一杯食べて次会うまでにないすばでぃになって驚かせてやるのじゃ!」


「……横に育たなきゃいいがな」


「ぬぬぅ! 一言多い!」


「ははは、ごめんごめん」


 ここに来てもう九カ月、周りに同年代の子が居るのは久し振りだっただろうしな……仕方ない、暫く甘やかして……っっっ!!


「ちょっ! 痛い痛い痛い! 尻尾で締め付けるのはやめろ!!」


「ぬふふ、さあこのままだっこで下まで降りるのじゃ♡」


「わかった! わかったから尻尾を緩めろ! 折れる! 折れるからっ!」

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