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戦争というもの

「まずは自己紹介からだな。俺はダイキ、ひょんな事からこの豪魔地帯の領主をさせてもらってる」


「妾はノルン、旦那様の妻じゃ♡」


「……俺は……ジャック、ジャックだよ。……? ってかダイキ? ダイキ……!! あ~っ! あんた討伐軍の壮行式で見たことある! えっ? でも……あれ? 召喚勇者のダイキって言ったら魔王と相討ちで死んだって……??」


「まぁ、そういう事になってるがな。見ての通り生きてる、足だってあるぞ?」


 上げて見せた足をノルンが眉根を寄せてパシンと叩く。席に着いた状態で足を上げるのはお行儀が悪いですよね、ごめんなさい。


「……なんで救国の英雄が魔族と結婚してるんだ? まさか裏切って魔族側に……!?」


「魔族側も人族側も無いな、とりあえず今の俺は中立だ。そもそも休戦に向かい舵は切られてるんだから俺みたいなのはどちらの陣営にも居ない方がいい」


「そんなこと信じられるかよ! どうせそこのちっこいのが魅了なりなんなりしてかどわかしてんだろ!?」


「妾が魅力的なのは否定せぬが魅了などはしておらぬよ、ただ旦那様が妾にメロメロなだけじゃ♡」


 あ~、うん、まぁそれでもいいけどさ。とりあえずそういう風に勘ぐるのも分かる、だが今の現状をどう説明すべきか……。

 公的には死んでるしその状態で魔族領で魔王の娘と領主やってます……って。

 あ……。仲間がすんなり受け入れてくれてるから麻痺してたけどこれどっからどう見ても俺魔族側に寝返ってるわ。


「う~ん、信じて貰えるかどうかは分からないが実際今俺達が平和を願って行動しているのは確かだ。それだけは神に誓って断言する」


「はっ! 神に誓ってねぇ……祈ろうがどうしようが父ちゃんが生きて帰って来なかった時点で神なんか俺は信じてねぇよ! 魔族なんか居なければよかったんだ! そうすりゃ……そうすりゃ……」


 投げつけるように放たれた言葉が重石を背負って胸に突き刺さる。ジャックのように親を失った子供は珍しくない、それが戦争というものだ。

 どちらも正義を抱え、どちらも家族のために国のために戦った結果、そう割り切るには彼等は余りにも幼い。


「ふむ……気の毒ではあるがの……。戦争に参加し相手に殺意を向けた時点で互いに殺し合うのは宿命さだめじゃ。そこにはどちらが正しいも無い、殺し殺され恨みっこ無しが前提じゃろ? それともお主は魔族には家族が居らず嬉々として戦争をしとるとでも言うのかえ?」


「違うのかよ? 元はといえばお前ら魔族が王国に攻めてきたのが原因だろうが!」


「確かに拳を振り上げたのは魔族が先じゃ、じゃが交易路の封鎖や高い関税など、生活を脅かし散々挑発を繰り返したのは王国側じゃ。……そもそも何百年も昔の開戦理由などカビが生えて風化して誰も真実は把握しておらぬよ」


「まぁそこら辺にしとけ。とりあえずジャック、君をここに連れて来た理由だ。王国内で戦争継続派と停戦派が争ってるのは知ってるな?」


「……あぁ、おかげで領主が留守だったから俺らは仕事がやりやすかったよ」


「今回の戦争に関して言えば互いの最高戦力を失った事が休戦の主要因、ここから先が消耗戦になることを見越しての休戦だ」


「なんでだよ? あんたが召喚される前から王国は戦争出来てたんだろ? ならあんたが居なくても大丈夫だろ?」


「まぁそう思うよな? だが召喚ってーのはノーリスクでほいほい出来るようなもんじゃない。召喚された人間の資質と等価になる犠牲が必要だ。俺の場合は王都にあった巨大な魔力スポット、防衛結界を維持していた魔力の泉が丸ごと消失している。その上召喚に関わった特級魔導師達が全員再起不能だ。俺を召喚したおかげで王国は国防の要が丸ごと消失しちまってんだよ」


 こいつが消失したおかげで王都は上を下への大騒ぎになったんだっけな……。あのお姫様の考え無しのおかげでとんだとばっちり、まぁ数百年国を守り続けた不可侵の結界が消失して裸城になっちまったんだ、戦争の終結を急いだのも無理は無い。

 ただ、その戦争終結への重荷を俺に丸ごと被せて来たのは頂けない。召喚直前まで平和な国でサラリーマンやってたんだぞ? いきなり国の命運托してくるとかアホかとバカかと……。


「なるほどのぅ……王国が焦ったように攻勢をかけてきておったのはそのせいか」


「んなっ……! そんな情報こいつに教えてっ……!」


「知ったからというて妾は誰にも話さぬよ、和平は父上の遺志であり最期の願いじゃ。折角それが叶おうとしておるのに水を差す謂われが無いの」


 ノルンの言葉にジャックがぐっと口ごもる。が、再び口を開きまくし立てる。


「だっ……だけどお前の仲間の魔族をこいつは沢山殺して来たんだぞ? 悔しくないのかよ? 憎くないのかよ?」


「愚問じゃな、先程言った通り戦争というものはそういうものじゃ。そこに恨みや復讐など持ち込むものではない。互いに大切なもののために戦い結果として命を落とした、ならばその尊き犠牲を平和な未来に繋ぐのが残された者の務めじゃ。恨みに身を任せ復讐の連鎖を呼ぶならば争いはいつまでも終わらぬよ」


 理想論、ではそうなんだろうな……。だが簡単には割り切れないのも確かな話、戦争というものは失うものが多すぎる。誰も彼もが皆割り切れる程強くない、頭で分かってはいてもそうはいかないのが人の常だ。……ってか十歳でそこまで達観してるノルンの方が異常っちゃ異常だな。


「納得いかないのも恨みたいのも分かる、だが今が互いに繰り返してきた愚かな争いに終止符を打つチャンスなんだ。君をここに連れてこなければならなかった理由は俺の存在がバレるといけないから。俺が生きていると知ったら継戦派が確実に俺を旗頭にしようと勢い付く。民意にそれが波及したらもうそのうねりは止められない、俺が戦争に参加しようとしまいと待っているのはどちらかが滅びるまで続く泥沼の闘争だ。そして俺に動く気が無い以上滅びるのは……」


「……」


「そうならぬ為に考えねばならぬ事もあるじゃろうのぅ。まぁ仮にバレたとして、王国内の継戦派も旦那様が戦争に参加せぬと分かればおいそれとは動けぬであろう?」


 確かにそうだが……。たかが数年と短い間とは言え関わった人々を人質に取られてるようなもんだからなぁ……。流石に自国民をそのように扱うほどバカじゃないとは思うが……。


「さて、納得いかぬ部分もあるかも知れぬがお主にはしばらくここで逗留して貰うほか無さそうじゃ。腹も減ったし食事にするかの? じゃがまずは……風呂じゃな、何日入っておらぬか知れぬがとりあえず溜まった汚れを落として参れ」

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