誘拐事件
「ふぅ……何とか逃げられたのう」
「はぁ……荷物も持ち出せたしマリー様々だな」
「ほんに町をあのように破壊するとは……マリーもとんでもないことをしよるのう」
……早速記憶改変しやがってるな……。まぁ暴れ回ったことに対してのお仕置きは追々考えるとして、必要物資は手に入れたからさっさと帰るかっと……!?
「んなっ……!? 変身が解けてる!?」
「ぬおっ? なんでじゃ??」
見れば偽装魔法が解けて二人とも本来の姿に戻っている、これは……逃走防止用の魔法解除結界か! さっきマリーが何か言いかけたのはこれだったんだな……。
「ノルン、とりあえず俺の上着を被ってろ。転移は……あまり町中ではやりたくないからな……。とりあえず魔法をかけ直して……」
「おぉ……お前様の上着! くんくん……はふぅ……お前様に包まれている感じで最高じゃ……」
俺の匂い? 体臭には気を遣ってるはずだが……。汗臭い? まさか加齢臭?? いやいやそんなはずは……!
「っ! 魔族!? なんで魔族が町中に!」
っ!? 見られた?? ってかさっきの子供! どうする? 騒がれたら……っこのままだと人が集まって……くそっ!
「うわっ! なにすんだよ!」
「ノルン! 掴まれ!」
「わっ! わかったのじゃ!」
「なんだよ! 離せよ!」
俺の顔も見られちまってる! どうするかは後で考える! まあなんとか……なるよね? なると言ってくれ!
『転移!』
……
「……はぁっ!? えっ? さっきまで町に? えっ? はああぁぁぁぁあ!?」
「……お前様、これはどうするのじゃ? 誘拐は流石にいかんじゃろう?」
分かってます! 完全無欠に事案で事件! でもあの状況じゃこれしか無かったんだから仕方ない! 記憶を消す魔法なんて便利なもんは存在しないしなぁ……。
「連れて来ちまったもんは仕方ない、どうにか交渉と説得だな」
「おまえら一体何なんだよ! 俺をどうする気だ!」
「どうするもこうするも……のう? 妾としてはさっさと出て行って欲しいのじゃが……」
過ぎたことを悔やんでも仕方ない、とりあえず対話は大切だ。納得して貰えないならその時はその時……とはいえ納得して貰えなかったらどうしたらいいんだ?
「とりあえず落ち着いてくれ、俺達は君に危害を加えるつもりは無い。ただ成り行きでこうなっちまってな……って痛っ!?」
落ち着かせようと近づいた所を脛を思い切り蹴り付けられる。おまっ……ご丁寧に爪先に鉄板付き!? 横を走り抜ける少年を止めることも出来ず蹲るしか出来ない。
「こら! 待つのじゃ!」
「知るかよ! お前らが何企んでるかは知らねぇけど黙って捕まってなんかやるもんか!」
「っ! 仕方ないのぅ! 『昏き闇の帳の中……主を失いし糸車は廻る……狂繰る狂繰る狂繰る……』」
「っつつ……待て、ノルン。そんな魔法で拘束したら余計に警戒しちまう」
「じゃがこのままじゃと結界を抜けて……」
「まぁ状況把握ついでだ、一旦外を見て貰おう」
勝手に連れて来ちまった手前気は引けるが監視の目の届かない隙に逃げられたら困るしな。ノルンの財布を掏ったちょっとしたお仕置きだ。
「はぁはぁ……あいつら追ってこないな……。ってかここ何処だよ、見たことねぇ木は生えてるし。ってかあれっ!? さっきまであったドデカい樹が無い!? えっ? 森があったはずだよな??」
ズズ……ズズズ……
「え? 俺……夢でも見てた? ……痛え、ほっぺた抓ったら痛い……ってことは夢じゃ無い?」
シュー……シュー……ズズズ……
「なんだよ、俺が何したってんだよ……っつーかさっきからなんか引きずるみたいな音やら……うるっさいな~……!!」
フシュルルルル……シャー!!
「……っ! ……何これ? でっかい……蛇いぃ!?」
ズザザザザザザザ!
「なんっ……何なんだよこれ! なんでこんな魔物が!? いっ……嫌だっ! もう! もう蛇をいじめたりいたずらしたりしないからっ! だから……だから……っ! ……助けて父ちゃん!」
ザクッ! ズズン……フシュ……シュルル……
「お前の父ちゃんじゃないのは悪いがな、見ての通りここら一帯は凶暴な魔物や魔獣がウヨウヨ居る。あんま無茶したら命がいくらあっても足りねーぞ?」
腰を抜かした様子の少年が千切れんばかりに首を縦に振る。余程怖かったのだろうか? 涙も言葉も出ない様子、少し灸を据えすぎたかな? 可哀想なことをしてしまった気がする……。
「まぁとりあえずこのままここに居たら血の臭いで魔獣が寄ってくる。一旦うちで話をしようか」




