腐れ縁
やれやれ……ノルンの姿が見えなくて肝を冷やしたが無事見付かって良かった……。まぁ、町のあちこちで悲鳴と共に砂塵が舞っているのを見たときは肝が冷えるどころか心臓が止まりそうになったが……。
「ある程度の事情は察したよ。この男や外の奴等はスラムに巣くってる犯罪者。んで君らはこいつらに拾われた戦災孤児ってとこか?」
「……あぁ、生きてく術を教えてやるって……」
「その様子だと見舞金や保護施設についても知らないみたいだな……。大方途方に暮れてたとこを言葉巧みに連れてこられて……って感じだろ?」
「しかたねーよ、俺達だって生きてくのに必死だったんだ。戦争が終わったって聞いて、広場に貼り出された死者名簿見て、なんも分からずぼーぜんとしてたらいつの間にかこれだよ。……そんな制度知ってたらこんな事なんかなってねーよ」
この子らも戦争の被害者、か……。なんとかしてはやりたいが余り表立って動くのはなぁ……道中の惨状の説明まで求められたら最悪正体がバレかねない……。どうしたもんか……都合良く動ける知り合いでも居れば……。
「……全員手を見えるように上げて口を閉じなさい! 動いたら無事は保証しないわよ!」
悩む最中に乱暴に開け放たれる扉、役所の人間かはたまた自警団か……。思ったより追い付いて来るのが早いな、町がでかいだけあって優秀な人材が揃って……って。
「げっ!?」
「そこの! ちゃんと手を上げて口を閉じ……」
「なんじゃ、マリーではないか。ここで何をしておるんじゃ?」
「そっちの子供も……って何で私の名前を?? ……?? その声、その口調……あれ? もしかしてノルンちゃん?」
「久しぶりじゃの、とは言え十日も経っておらぬか」
「ってことは……きみはダイ……っもがもが!?」
「姿変えて来てんだから名前を漏らすなよ、どっからか話が通じてバレたらどーする!」
何がどうしてマリーがここで警察の真似事をしてるかは分からんがこれは渡りに船、犯罪集団の引き渡しついでにこの子らの保護も頼むか。
「もごもご! ……ぷはっ! ってか何しに町まで……ってあぁ、その大荷物は買い出しか。……でもノルンちゃんを連れてくるのは不用心でしょ? 何かあったら……って、『何か』起きてるわね……」
「っ……、仕方ねーだろ、ノルンが『人族』の町を見てみたいっつーんだから」
「きみねぇ? あれこれ言う割には自覚が無いのは自分の方じゃないのかな?」
うぐっ……確かに仰るとおり……。油断が過ぎたか……ノルンに甘いのかな……俺。
「まぁそれはもう仕方ないとして、状況を教えて欲しいな? 何が起きたのか分からないと報告書も書けないわよ」
「簡潔に言えばそこと外に転がってんのが元凶、そこの子ども等はそいつらに利用されてた戦災孤児で被害者兼加害者。んで、ノルンが財布を掏られてこの現状ってとこだ。ってかマリーはこんなとこで何やってんだ?」
「私はここの役所の手伝いよ、王都の問屋に商品卸して帰りに寄ったら捕まっちゃってね。なんでも戦争継続派と停戦派の争いが激しくなっててね~、ここの領主様が長期間お留守で色々困ってんだってさ。んでさ~? 聞いてよ! ギルドに行ってみたら『どうせお前暇だから手伝っていけよ』って! 私だって暇ばっかしてるわけじゃないのにさ~!」
嘘つけ、お前女王の仕事丸投げして外交を盾に悠々自適の放蕩生活してんじゃないか。
ってか気安く手伝い頼まれるのはお前が身分隠してこっそりギルドに冒険者登録してるからだろ。『なんか正体隠して影から色々やるって格好良くない?』じゃね~よ、格好良いに決まってんだろ羨ましい!
「まぁそんなこったろうとは思ったけどな。んで丁度いいから頼みがあるんだが」
「きみのことだから『この子供たちの面倒見てくれ』でしょ? 心配しないでも孤児院とかへの交渉とかは責任持ってやってあげるわよ。なんだったらこの町が駄目ならウチの国で面倒見るし」
「おぉ、流石マリー、太っ腹じゃのう! して、ついでと言ってはなんじゃが妾からも一つ頼み事がのう……」
「……? ノルンちゃんから頼み事? それって……」
「あ~! マリーさん居た! 外に転がってる男達は何なんです? それに町が滅茶苦茶なんですけど? まさかマリーさんが……」
騒ぎを聞きつけての応援だろうか? 狭い室内にザワザワと人が押し寄せる。
あ、あいつ見たことあるな……確かギルドの古株の……。死亡説を流して無ければ近況報告に花を咲かせるとこだがそうもいかない。というかマリーが何たるかを知った人間が居るのは好都合!
いいか? ノルン?
分かっておるぞ、お前様!
交わす視線が互いの意思を伝え合い、放つ言葉が息を揃えて同時に紡がれる。
「「そうです、こいつがやりました!」」
「はへっ!? え? ……うええぇぇえ!? ちょっ! えっ? わっ……私ぃ!?」
「マリーさんどうするんですか! これ始末書だけじゃ済みませんよ!」
「お前毎回毎回無茶ばっかやりやがって!」
「あ~……領主様居ないのにこんな……胃が痛い……」
「えっ! いやっ! 私は……ってちょっ! あ~っ!! 待っ……! そっちはっ!」
皆の視線が一極集中している隙にさっさとトンズラ! 悪いな、マリー、世界の平和の為に犠牲になってくれ。お前の献身は忘れないよ……。




