スラム街
「うおっ!? 気を付けろ! ガキ共! ったく……浮浪児共がウロチョロしやがって……ぬおぉっ!?」
「『大地壁!』『水弾!』ええい! ちょこまか逃げおって……っ!」
「ちょっ……あいつマジでやばいよ!」
「なんで振り切れないんだよ! ここらじゃ見たこと無いし観光客だろ!?」
「旦那様から見せて貰った地図がこうでこちらに……ぬう、スラム街じゃと言っておった場所に行っておるの……。治安が余りよろしくないと聞くがどうしたものか……」
旦那様には近づくなと言われたが奴等を捕まえぬ事には話にならぬ、それにしても地図に無い道が多いのぅ……入り組んでいる上に住人達には覇気も無し。
……これが人界屈指の都市の暗部……。殺伐として血で血を洗う魔界のスラムとは趣きが違うのぅ……。力無き者の行く末はどこでもこのような物か。
「うぬっ、考え事をしとる間に撒かれてしまったか……。じゃがこの先は地図上は行き止まり、上から道筋を確認したら終いじゃの」
……
「あ~っ! 危なかった!」
「ただのガキかと思ったら魔術師かよ……町を滅茶苦茶にしながら追ってくるとか狂ってるだろ……」
「よっぽど大金が入ってんだろうな……って、こんだけぽっち? たったこんだけであそこまで追ってくるとかマジかよ……」
「随分な言い様じゃのぅ、金額の多寡の問題ではない。金ならくれてやるわ、……ただし財布は返すのじゃ、旦那様が手ずから縫ってくれた唯一無二の品じゃ、傷の一つもつけたら命は無いと思え?」
「!!」
まったく、ようやく見つけたと思えば随分な言われようじゃ……。町を破壊したのは……うむ、まぁ緊急避難として仕方ないとして。一応怪我人も死人も出しておらぬぞ? そもそもの話、!童共が逃げねばこのような事には……。
「うるっせぇぞガキ共ぉ! 何騒いでやがるんだ!?」
突如奥から響いた怒声に童共がビクリと肩をすくませる、大人の男の声? 親じゃろうか? 子が子なら親も親じゃのぅ……、声に気品の一つも感じえぬ。もうちょっと旦那様の様な涼やかな声を見習ってじゃな……。
「てめぇら何してやがる? 仕事に出たんじゃねぇのか? まさか手ぶらで戻ってきたとか言うんじゃねぇぞ?」
「ひっ……い、いや、仕事は……」
「あっ……こっ、こいつが邪魔をして!」
「仕事ぉ? 邪魔じゃぁ? お主この童共の親か? このような子供にスリをさせるとはそれでも保護者か? 人の道を外れぬようしっかりと教育するのが親の努めであろうに?」
「親ぁ? ぐっ……ぐはっ、グハハハハハハハハハハ!」
一瞬呆気に取られたような表情をした男が下卑た笑い声を上げる。
? 何がおかしいのじゃ? それにしても歯のまばらな口中から漂う酒臭い悪臭といい余り関わり合いになりたくない人種じゃの……。濁った瞳といい……豚人がコスプレをしとると言われても信じそうじゃの。
「何がおかしいのじゃ?」
「俺が親だぁ? そんなわけねーだろ! 俺ぁなあ、この可哀想な親無し共にここでの生き方を教えてやってるのよ! 人の道ぃ? んなもんくそ食らえだ! こういうゴミ溜めにはゴミ溜めのルールがあんだよ! 説教垂れる暇があんなら自分の心配をするんだな!」
男が剣を構えるのが合図のように周囲から人の気配が近付いてくる、童共の怯えようを見るになにやら良くない存在のようじゃの……。
荒事は構わぬが町中で余り大きい魔法を使うわけにもいかぬしどうしたものか……? 何じゃ? 懐が何やらむずむずと……?
「よく見りゃガキだが中々の上玉じゃねえか? 嬢ちゃんにも俺が良い仕事を紹介してやるよ、おめ~みて~な怖い物知らずな顔した生意気なガキは貴族様に高く売れんだよ!」
「怖い物知らず……のぅ……」
「ああん? なんだメスガキ、なんかいいてえのか?」
「いや、妾にも愛しいながらにも怖い物があってじゃな……今正にそれがじゃのぅ……」




