続:世界樹の迷宮
「あ~っ……っ疲れたぁ! なんだかんだで昼まで寝ちまってたな」
「うぬぅ、顔がヒリヒリ痛いのじゃ……」
魚人族の宴は結局夜中まで続き、寝落ちして起きたらすっかり昼。二日酔いで痛む頭を叱咤し結界石を作っていたら随分帰宅が遅くなってしまった……。
「お~、これが新しい住処かぁ。前より滅茶苦茶立派になってんじゃねーか! すげぇなぁ……」
玄関をくぐったテリオスが感嘆の声を上げる、確かに前の掘っ建て小屋とは雲泥の差だから驚くのも無理は無い。あっちはあっちで愛着はあったんだけどな。
「マリーのおかげで作るときに死にかけたがな。テリオスも疲れたろ? なんか飲んでけよ」
「おぉ、ありがてぇ。丁度喉渇いてたんだよ」
「? そういえばマリーの姿が見えんの?」
「あいつは用事があるとかで帰ったよ、うるさいのが居ないから落ち着けるな」
「ハハハ、違いねぇな」
あいつが居たらのんびりする暇も無いからな。さて、珈琲でも淹れるか……っと? あれ? 珈琲豆はまだ残ってたはずだが……。
「ノルン? 珈琲豆知らないか? 戸棚に置いておいたんだが……」
「妾は飲まぬからのぅ……台所の引き出しに間違えて仕舞ったのではないかの?」
「おぅ、あったあった! 料理してる最中に間違えたかな?」
「おっちょこちょいじゃのう。さて、妾は茶菓子でも探すかの……? お前様、マドレーヌの残りはどこじゃったかの?」
「水屋棚の開きに入れてたけど? 食べたっけか?」
「むうぅ……まだ残っておったはずじゃが……。まぁよいか、テリオス、ナッツとドライフルーツでもよいかの?」
「おぅ、俺様は何でもいいぜ。……そういやよぉ? マリーから聞いたんだが……」
そわそわと落ち着かない様子でこちらを窺うテリオス、マリーから? なんかテリオスに伝言とか頼んでたっけ? まさかまたマリーの奴が俺らのこと面白おかしく吹き込んだ??
「なんじゃ? マリーがどうかしたのかの?」
「いや、あいつに聞いたんだがお前のこの新居、迷宮化してんだって? そんで興味あるっつーか……頼む! 見学させてくれ!」
牛頭人は迷宮のような住居に好んで住む民族だが、その性かどうかは知らないが迷宮や迷路の様な物に対して好奇心が人一倍あるという風に知られている。
そういやテリオスもあちこちダンジョン潜ったときも建築様式や特徴について熱く語ってくれてたっけなぁ……。
「別にそれは構わないが……ってかそうだ! テリオス! うちの迷宮攻略するの手伝ってくれよ!」
「? なんだぁ? 自分の家なのに内部の把握してねぇのか?」
「建築中にほぼ暴走状態だったからなぁ。ってか広すぎてまだ四階部分の迷路までしか把握できてないんだよ。あと頂上にちょっと用があってな、頼む!」
テリオスが珈琲を啜りつつ呆れたように溜息をつくが流石にこの家の規模を考えて発言してほしい。ましてや中層には罠たっぷりの迷宮付きときたもんだ。
そして前回の探索後に罠の解除は出来たものの迷路自体はセキュリティの一環らしく解除不能。前回で学習したらしく脅せば下階への階段は出るものの、上階への階段は未だ見つける事が出来ていないんだよなぁ……。
「今のままでも生活には困らないんだがなぁ、でも家に自分の知らない空間があるとなるとやっぱ気味が悪いんだよ」
「そんなもんかねぇ……家ってーのは住んでりゃ勝手に誰かが掘って間取りが変わってくもんじゃねぇか?」
当たり前のことのように言うがそんな奇妙奇天烈な家に住むのはお前ら牛頭人位しか居ない。いや……あっちの世界でも武器商人かなんかの嫁さんが死ぬまで増築し続けた家とかあったか……。まさか牛頭人があっちに転生したとか? ……流石に無いか。
「よっしゃ、そんじゃちっと内見させて貰うぜぇ? さてさてどんな事になってんのかねぇ♪」
「お前様といいテリオスといい、こういった物が好きなんじゃのぅ」
まぁそこは男子として当然の習性というか何というか……。冒険に心が燃えない男は男じゃないっつーかね、うん。少年の心は大切なのである。




