鶏皮炒め
「あ~、もうこんな時間か……作業してたら時間過ぎるのはえーな……」
視線の先にある時計水晶は闇の精霊の時、つまり地球時間の夜中0時を指している。昼間は狩りや畑の手入れ、ノルンの相手もしなければならないし食事の準備も……必然的に何か用事をしようとしたら日が沈んでからになるわけで……。
「あだだだだ……う~、肩が痛い……さて、寝るかな……っととぉ?」
立ち上がろうと足に力を入れると服の裾が何かに引っかかったのか? その場に尻餅をついてしまった。ってか周りに引っかかる物なんか……。
「あ~……寂しくてこっちに来ちゃったのか」
見ればいつの間に背後を取られたのか、ノルンが服の裾をがっちりと掴んで寝息を立てている。普段子供じゃないなんて言ってはいるがこういうとこを見るにまだまだ子供だな。
起こさないように慎重に指をはずし、抱き上げてベッドに寝かせ直す。一応寝室に扉はつけてるが姿が見えないのが不安になるなら外してもいいかもな……。
「ふわあ~あっと……寝るかって思ったけど流石に腹が減ったな……」
よくよく考えてみたら夕飯を摂ったのが夕方6時頃、かれこれ6時間経っているのだ、腹が減るのは仕方が無い。だから夜食を食べるのも仕方が無いことなのだ、そうなのだったらそうなのだ。
「っと……冷蔵庫内には……鳥肉ばっかだな……あとはご飯の残りと……満月葱の葉の部分か……よし!」
メニューが決まったら善は急げ! 手早くパパッと作りましょう!
「材料は……鶏皮、満月葱の葉、ご飯と鰹節、あとは昼間作っておいた鳥ガラ出汁を……っと」
まずはご飯をおにぎりに、それをフライパンで片面ずつ焼いて醤油を上に塗る……。う~ん、この醤油の焦げる匂いが堪らない! 鶏皮は一口大に切って別のフライパンで焦げ目がつくまで炒める、しっかり焼き目がついたらざく切りにした葱の葉を加えて塩コショウ、最後に醤油を鍋肌に回しかけて焦がし醤油の香りを付けて鶏皮のネギ炒め完成♪
「こっちもいい頃合いかな?」
こんがり香ばしい焼き目がついたおにぎりを器に移し、たっぷりと鰹節をかけた上から温めた鳥ガラスープを注げば……。
「よし、鶏皮炒めと焼きおにぎり茶漬け完成! さあ温かい内にいただきま~……」
「お前様! なにをしておるのじゃ!」
「あ……の……ノルン……起きちゃった?」
痛恨のミス、そういえばさっき寝室に連れてった時に扉を閉め忘れてた! そりゃこんないい匂いがしたら起きるよな……。
「なにやらごそごそいい匂いがすると思ったら! 妾に黙ってそんな美味しそうな物を! お前様ひどい! ひどすぎるのじゃ!」
「いっ……いやっ、これは……そう! ノルンが起きてくる予感がしたからな! 先んじて作って待ってたんだ! そう! ホントダヨ?」
「……さっき『いただきます』ってゆってたのじゃ」
「ぐうっ……ぐぬぬ……聞かれていたなら仕方ない! ……ごめんなさい!」
「うむぅ……許すのじゃ……さて、許すとは言ったがそれはそれ、妾の分も当然あるのであろうな?」
「わかったわかった、それ食べてていいよ、俺の分の焼きおにぎり茶漬けは作り直すから」
「わ~い! ……むむっ! お前様! このスープご飯美味いのじゃ! 焦げた醤油の香りに複雑な出汁の旨味が渾然一体となって……鶏皮も表面はカリッと香ばしく中はジューシー、葱の風味も相まって最高じゃ!」
「お気に召したなら嬉しいね、だけど食べた後はちゃんと歯を磨くんだぞ?」
「わかったのじゃ! う~ん、それにしても美味い!」
この後俺が自分の分の焼きおにぎり茶漬けを作るまでに鶏皮炒めがすっかり消えていたのはミステリー。容疑者は『こっちも新しく作るものとばかり……』としどろもどろに供述を繰り返すばかりでありましたとさ。……俺も鶏皮炒め食べたかったよ!
焼きおにぎり茶漬け
ご飯:100g
塩:少々
醤油:小匙半分~好みで
水:150ml
鶏ガラスープ(顆粒):小匙1
鰹節:一掴み
1:塩おにぎりを握る。水を沸かして鶏ガラスープを溶かしておく。
2:フライパンを弱火で熱し、片面ずつ醤油を塗ったおにぎりを軽く焦げ目がつくまで焼く。
3:丼におにぎりを入れ、上に鰹節を乗せて鶏ガラスープを注ぐ。
おにぎりにしらすや刻み大葉などを混ぜるとまた違った美味しさになります、鶏ガラスープの濃さは好みなので濃いめが好きなら小匙1.5位でもいいかもしれません(*´Д`*)
刻み大葉は最近はチューブの物が売ってあるので重宝しますねぇ、昔はなかった物が色々あるので料理の幅が広がります(*´ω`*)