怪しい罠にご用心
螺旋状の階段を登ってゆくと先程のフロアとは打って変わり先が段々と薄暗くなってゆく。内部の壁自体が薄く発光しているので視界は良好だがそれでも少々不気味に思える。
「むむぅ……三階と違って暗いのぅ……。じゃが、壁が発光しておるのはどういう事かの? 便利じゃが不思議じゃ……」
「内部まで万遍なく魔力が通っている証拠だな、魔法を使うときにも魔方陣が発光したりするだろ? あれと同じ原理で溢れた魔力が発光してるんだ」
「ほぅ……! つまりはこれは全部お前様の魔力……!! この家におる限り常にお前様に包まれておるも同然という事か! なんと素晴らしい……」
……魔力は代謝が早いから一週間もすれば既に俺のじゃなく世界樹由来の魔力に置き換わるが……まぁ口に出すのは野暮だな、うん。
「よし、四階到着! ……なんだこりゃ?」
「ぬぬ……? 何か岩肌のようにゴツゴツした内装じゃの……それに奥は朧気にしか見えぬが……曲がりくねった通路のみ? 一体何なのじゃこのフロアは?」
岩肌、確かにそう見えるのも頷ける。壁面はゴツゴツした木の瘤に覆われ、天井からは蔦や鍾乳石を模した様な枝が伸びている。ここは迷宮の入口! ってSNSに上げたら誰でも信じるだろうな……まぁこっちにSNSは無いけど。
「ふぬぅ……面白い内装じゃの♪さてさてこの先には何があるか……」
……カチッ
「? 今何か音が……? ふにゃぁっ!?」
パカッ……ヒューン……ドサッ。
「ちょっ!? ノルン!! 大丈夫か!?」
「ふえぇ……だ、大丈夫じゃ~……樹木人が受け止めてくれた~」
穴から覗いた先には樹木人に受け止められたノルンの姿、いきなり目の前から消えて焦ったがどうやら三階に落とされただけで済んだらしい、キャッチしてくれた樹木人には感謝しないと……ってかなぜに落とし穴??
「ノルン! 大丈夫か?」
「うぬぅ……吃驚したのじゃ……何であのような場所に落とし穴が……?」
「わからん……が、まだああいう罠があるかもしれないからな。気を付けて進もう」
樹木人からノルンを受け取り再度四階へ。どうやら床にスイッチがあり落とし穴が発動したらしい、他にもあるかもしれないから慎重に……。
カチッ!
「あっ……」
パカッ!
「おっ……お前様!?」
「っとと……よっと、壁にもスイッチがあるとは……こりゃ迂闊に触れないな……」
危ない危ない、俺まで三階に落とされるとこだった。ってか落とし穴まみれって……ここはロ〇ダルキアの洞窟じゃねーんだぞ本当に……。
「何がなんだか分からんが我が家にこんなもんがあるとなると由々しき事態だな……どうにかしないと……」
「感知魔法でどうにかならぬかの?」
「感知魔法は魔力の濃淡で見分けるからな……ここは全体に万遍なく魔力が流れてるから見分けがつかない、違いがあったとしても俺は繊細な魔力調整は苦手だからな……」
「確かに……ここに来たばかりの頃よく料理を焦がしておったの……」
「……慣れもあるからなぁ……料理用の火力調整って難しいんだよ」
元々魔力量が膨大だから火力だけは無尽蔵だけど細かい調整にになると壊れた蛇口を調整するみたいなもんだからな……。ってか壁が発光するほど流れてる辺りこの世界樹も俺と同じ様なもんかもしれないが……。
「考えても仕方が無いと言うことじゃの、まぁ進めば分かることじゃろ」
カチャッ……ガサガサッ!
「にゅおわああぁあぁああ!?」
「言った先からこれか……網の捕獲罠とかまた古風な……」
カキョッ……ガサガサッ!
「ぬおっ!?」
「……言った先からこれじゃの?」
ノルンさんそんな目でこっちを見ないで下さい……あ~もう恥ずっ!
「ぬぬっ……うぬぅ……この網固すぎじゃろ……ぐぐぐ……ぬわっ!? あ、ありがとうなのじゃ」
「網自体にも魔力が流れてるな……こりゃノルンじゃ破れないだろ。いいか、俺から離れないように気を付け……ぐぇっ!」
「うぬ! 安心するのじゃ、妾は絶対お前様から離れぬぞ♡」
離れるなってのは側を離れるなって意味でな……ってか抱き付くはいいが尻尾を巻き付けるな……肺が潰れ……っ!
カキョンッ!
「「あ゛っ……」」
ガラン……ゴロゴロゴロゴロ……。
「……ノルンさん……あの音が聞こえる?」
「……うぬ、この音ときたら古典中の古典の……」
ガツン! ゴッ! ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!
「ちょっ……マジか! マジかよっ! なんで家ん中にこんなもんあんだよ!」
「にゅわああぁぁあ! おっ……お前様! 早く! もっと早く走るのじゃ! うぬぬ……ハッ? これがスリルとロマンス!? 吊り天井効果とやらで旦那様をメロメロにっ?」
……吊り橋効果な、吊り天井だと絶体絶命だが……ってか命の危険のドキドキを勘違いならそっちも理にかなってる?? ……っつーか、今正に絶体絶命!! 何がどうなったらこんな家になるんだよ! マリーか……マリーだな! あいつ今度会ったら承知しねぇぞこんちくしょおおぉぉぉお!!




