物件情報:世界樹の迷宮
「ゼェ……ゼェ……うぅ……あ゛~……ちくしょう……魔力根こそぎもってかれたぞ……」
「お前様! 大丈夫かの? 一体なにがどうなったのじゃ?」
「うわぁ~凄いねぇ~、まさか単独で世界樹を育てきる程の魔力があるとは……。この世界樹エルフの里にあるやつよりおっきぃんじゃない?」
凄いねぇじゃねぇよ……なんかあるとは思ったがやっぱこいつを信用しちゃいけなかった。欠片でも『今回は行けるんじゃないか?』なんて思った少し前の自分を殴り倒したい。
「てめー何が大丈夫だ……ゼェ……危うく魔力全部吸われて干からびるところだったぞ……っ! あっ! 畑! 畑は!?」
「お前様安心するのじゃ、畑は無事じゃぞ!」
あっぶねぇ……養分吸われるのもヤバかったが危うく世界樹の成長に巻き込むとこだった……。あんな中でもきちんと成長をコントロールした俺グッジョブ!
「……にしても……これはでかすぎだろ……。頂上雲に届いてるんじゃねーか?」
「ほぁ~……頂上が霞みがかって見えぬのぅ……。もぅ、お前様はアピールが激しいのぅ♡一体何部屋作ったのじゃ♡」
「まぁ二人の愛の巣だし? こんな大豪邸に住むなんて一国の王でも出来ないよ? やったじゃない得したね? イェイ!」
「イェイ! じゃねーよ! ノルンと! 俺は! ここに『隠れ住んで』るんだぞ! 誰が10キロ離れても分かるランドマークにしたいっつったよ!?」
平和に暮らしていて忘れがちだがわざわざこの危険地帯に居を構えているのはノルンの安全の為だ。その安全が脅かされるならばここにはもう住めない……それが……それが例え丹精込めた畑を……ぐぅっ……すっ……捨てることになろうとも……うぅっ……。
「作っちまった後だが流石にここにはもう住めないな……」
「なっ? なんでじゃ? これから妾と二人で部屋数を埋めていくのであろう? なぜ!?」
「単純に目立ちすぎる、忘れているみたいだが俺らの存在は外部にバレちゃ駄目なんだ。それをこんな目立つ物に住んでたら見つけて下さいって言ってるようなもんだ」
ノルンが尚も不満そうに服の裾を掴んで見上げてくる……。が、流石にこればっかりは譲れない、ただでさえ危険な場所に住んでいるんだからこれ以上のリスクを背負うのは頂けない。
「なら見えなくしちゃえばいーんじゃない?」
「っ……見えなくって……どんな規模の結界作らなきゃなんないと……」
周囲から見えなくするための認識阻害結界というものは存在する。だがそれを運用するためには複雑な術式と膨大な魔力を必要とするのだ、頻繁に家を離れなければならない上に魔獣除けの結界と併用となると流石に維持が難しい。
「きみが結界張らなくてもこの子に張らせればい~のよ!」
? マリーの指差す先にはマイホーム、もとい世界樹。世界樹に? 結界?
「エルフの里に結界があるでしょ?」
「認識阻害と催眠誘導の結界な、あれは確かに便利だが……え? そういうこと?」
「そうそう、あれはエルフの里の世界樹の魔力で運用してるの。流石に森を丸ごと結界で包み続けるなんて芸当きみでも居ないと無理でしょう?」
「結局どういう事なのじゃ? 妾達はここに住めるのかの?」
ノルンが不安そうに裾を引っ張る。
「あ~、あれだ、つまり俺が結界を張らなくてもこの木が結界の維持管理をしてくれる」
「と、いうことは?」
「大丈夫、このままここに住むことが出来る」
「おぉ! やったのじゃ! ならば準備もせねばのう、ベビー服を一体何着縫えば良いやら……妾もこれから忙しくなるのう♡」
……まぁ、そういうのは置いといて、問題はどうやってそれを実行するかだよなぁ……。
「まぁ理屈は分かるが……それをどうやるかが問題だ。陣を描くにも相当複雑だろ?」
「んっふっふ~、そこを解決出来るのがマリーおねーさんの凄い所よ♪ジャジャーン! 術式封印石~♪」
「封印石? それ精霊石か? 虹色に光ってるが……珍しいな」
「こいつは地水火風の四属性の精霊の力が宿った霊王石、私が術式を内部に刻んでるから根元に埋めるだけで効果が発動出来るよ~♪早速埋めて世界樹に魔力をリンクさせたら……っと、ほらっ」
マリーが石を埋め、世界樹の幹を軽く一撫でするとみるみる間に辺りを濃密な魔力が包み込む、確かにこれなら外部にここの存在はバレないだろう。……だが……。
「……この霊王石とやら、とんでもねー値打ちもんだろ……?」
「あっ? わっかる~? 実はお城が買えちゃう位の価値があってだねぇ……。コホン、古来から魔術師というものは対価を……」
「あ~、分かってる分かってる。何が必要だ? すきなもんもってけ」
「んじゃあダイキくんの貞操……」
『影に坐す闇の皇帝……深淵より出は……』
「……はノルンちゃんのものだからぁ……。う~ん……どうしよっかなぁ? あっ、そうだ! 灰輝龍の鱗ってまだある?」
「ん? ああ、確かこの辺に……ほらよ、数はあるけど全部は困るぞ?」
「何枚かでいいんだよ~、ってかなんか匂う? 醤油? ……味噌?」
「皿とか調味料入れとか色々使ってっからな……多少匂いはついてるかもな」
「……きみって奴は……無頓着というか度胸があるというか……。ほいほい、んじゃ何枚か貰ってくね~、それとあともう少し足りないんだけどなぁ……?」
マリーが上目遣いに体をくねらせる、あれかな? 都市伝説の『くねくね』の物真似かな? ……まぁ、しゃーない、原因はマリーにあるとはいえ助かったっちゃあ助かったんだ。
「……はぁ、仕方ない、夕飯食ってけよ」
「わ~い! ありがとう!」
「……食べたらすぐに帰るんじゃぞ?」
「うぐっ……ノルンちゃん連れないわね……もうちょっと交友を深めましょうよ~」
「お主は信用ならん、妾が寝ておる間に旦那様に触れでもされたらどうする! よいか? 次何かしたら跡形もなく消滅させるぞ!」
いやん、ノルンさんたら男前……とまぁ、流石に昨日あんな目に遭ってちょっかいはかけてこないだろうが……即帰宅させるのは俺としても大いに賛成、ってか夕飯食わずに帰ってくれてもいいんダヨ? 建ったばっかりの新居を失うのは流石に嫌だしなぁ……。




