ノルンの大冒険 ※挿絵あり
「確かこの辺りじゃったのじゃが……」
以前牧場に行く際に旦那様の背から見ていたから分かる、解熱と強壮の効果のある薬草がこの辺りに群生しておったはずじゃ……。
「ぬぅ……怒られるかのぅ……家から一人で出るなと言われておるし……。じゃが、じゃが旦那様の危機なのじゃ、妾がやらずになんとする! 妾も魔王の娘! そこらの魔物には遅れはとらぬ!」
クェー!
「ふぇっ? なっ!? たっ高い! 高いのじゃ!? な、何が……鳥ぃい!?」
瞬きする間に地上がぐんぐん遠ざかっていく……! 一体どこから襲い掛かって来たのじゃ!? いつの間に間合いに入られたのか全く分からぬ! ってぬあああぁぁぁぁぁあ! 薬草の群生地帯があぁ!
「こらっ! 離せ! 離せと言うに! 妾は旦那様に薬草を持って帰らねばならぬのじゃ! お主なんぞに捕まってる時間はないのじゃ!」
クエッ! クアァ
「ぬうぅ……虚仮にしおってぇ……! ならば是非も無し!!」
『昏き闇の帳の中……主を失いし糸車は廻る……狂繰る狂繰る狂繰る狂繰る……因果の糸を導き紡ぐ……! 闇の縛鎖! 『壱之鎖!』』
クエエェェエ!?
「ふふん、飛びづらかろう! 解いて欲しくば元の場所に妾を……ぬぅっ!? こ、これ、抵抗するでない! そんなに暴れては危ない!」
クエッ! カルルアアアァァァァァァ!
な、なんじゃ……? 飛びづらくなったからと言ってもここまで慌てふためくとは……。
……? どうした? 晴れておったはずなのに急に暗く……?
グルルルルル……グオアアァァァァァアアア!!
クエッ! クアアァァア!?
「んなっ!? ど、ドラゴンじゃと!? ま、まて! いや、もっと早く飛ぶんじゃ! このままでは食われ……!! ぬぅっ! はっ! 離せ! 妾を巻き込むな! ぐうぅ……!!」
ま、まずい! このままではこの鳥もろとも食われてしまう! ええい! こうなったら……妾の邪魔をしたのを恨むがよい!
『逆巻く砂塵……不可視の刃……一陣の風吹き抜け積もるは骸! 『風精刃!』』
クェアッ!? ギィッ! クルアアアァァァァァ……! ……ッ!!
よし、ようやく離した! 妾の言うことを聞かぬからこうなるのじゃ、さらば鳥よ……お主の犠牲は忘れぬぞ……。
…………って……高っ……!!!?
「うにゅあわあああぁぁぁああぁぁぁあああ!?」
高い
速い
風圧
魔法 詠唱?
無理
着地 どうやって?
嫌だ
会いたい
助けて
お前様
ダイ……。
バフンッ! パキンポキンバキバキバキッ! ボフンッ! メキッグシャッ!
「っつつ~……。痛ひゃい……が……生きておる……」
フシュルルル……キチッ……
「うぬぅ……綿大樹か……これの枝がクッションになって……そして地面にも何かあるの、これが潰れたおかげで無事じゃったのか……ぬぬ、なんじゃこの白っぽいのは? なんかべとべとして生臭いの……」
ガサガサッ……シュル……フシュル……キチチチッ
「これは……卵? それに……何じゃ? 先程からシュルシュル……と……!?」
メキメキッ……フシュルルルルルル……
「あ……お、お邪魔していますなのじゃ……えっと……お寛ぎの所を失礼致しまして……妾はそろそろお暇を……」
キチキチキチキチキチキチ!!
……
「ひっ! ひいいいあああぁぁぁあ!! じゃっ……じゃから卵を台無しにしたのはすまんと言うに! 後日菓子折を持参するゆえ見逃してくりゃれ!!」
ギチチッ! キチキチキチカカカッ!!
「ゼェゼェ……よりにもよって落下した先が大百足の巣とは! ケホッ……ぐうぅ……このままでは追い付かれる……!!」
身体強化魔法で底上げしても妾の体力では逃れきれぬ、ならば躱しながらも迎え討つしか……!
「ぐぬぅ、妾を食おうというのなら覚悟せよ! 妾には旦那様の元に薬草を届けるという神聖なる責務があるのじゃ! 邪魔立てするなら容赦はせぬ!」
ギチギチッ! ギシャアアアァァァアア!
ぬうぅ! 所詮は虫! やはり意思の疎通など出来ようはずも無い……ならば!
『ゼェ……混沌の坩堝に差す光……灼かれども灼かれども……ケホッ……そを求めし久遠の旅人……泥濘に埋もれし亡骸は……光と戯れ歪に嗤う……! 煉獄の炎! 『焦熱地獄!』』
!? ……!! キッ……キチッ……!! キィキィキィ……キュイッ……キチチチ……チ……チ……
「ゼェ……ゼェ……お、思い知ったか……! ……っと? おお! 薬草!! 逃げ回っておった間に元の場所に戻って来ておったのじゃな! ならば後は採取するだけじゃ!」
これを煎じて飲ませれば旦那様は元気になるはずじゃ! 紆余曲折あったが終わりよければ全てよし! さて、早速掘り起こして……?? なんじゃ? 薬草が揺れておる? いや……これは地面が……?
ギチギチ! ギチチッ! ギギギギギギギ!!
「んなっ!? なんじゃと? ま、まだ生きておったのか!」
もう一度……! いや、間に合わぬ!! なによりもう魔法を撃つ魔力は残っておらぬ……妾は、妾は目的を前にしてこんな場所で果てるのかえ? お前様……不甲斐ない妾を許して……? ……なんじゃ? ……何も来ぬぞ?? まさか……? まさか! この展開は??
ズズン……ギッ……ギギ……ギィ……
『ノルンちゃん大丈夫か? なんだ? 一人でこんな所におって、ダイキはどうした?』
「……むうぅ……なんじゃ、伯父上か……生きておったんじゃの?」
『……折角助けたのにその言い様はないんじゃないかな?』
「こういう時格好良く助けに来るのは旦那様じゃと相場が決まっておろう! じゃが……助かったのじゃ、伯父上、かたじけない」
ザザザ……ズズズ……
『凄まじい火柱が見えたので何事かとな、だがノルンちゃん、ここらであんな魔力を垂れ流したらいかんぞ』
ズザザザザザザ……
「? 何がじゃ? ぬぅ? 百足を倒したのに地鳴りと地震が止まぬ……何故じゃ?」
ドドドドドドド……
『いや、ここらの魔獣や魔物は魔力に敏感だからな? あんな派手なことしたらそこらの魔獣を呼び寄せて……』
ズドドドドドドド……
「な、なんじゃ? 辺り中から砂煙が押し寄せて……!?」
グェッ! キェーカカカカッ! グルルル……グオォォォオ! キシャアアアアァァア!
『……これはまた……』
「の、のう……伯父上、ここは一つぱーっと第三軍将軍の実力を見せて……」
『無☆理☆だな、ノルンちゃんここは逃げるぞ! って速っ!』
「伯父上! 早く逃げねば狩られるぞ! 急ぐのじゃ!」




