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猪突猛進

「いや~、すまねぇなダイキ! 俺じゃ結界張ったりができねぇからよ!」


「……これは貸しだぞ? ってか牧場の拡張ねぇ……」


 いつものように牛乳やバターを補給しに来たら妙に腰の低いテリオス。なんだか嫌な予感がすると思ったら案の定……。ってか子供が出来たから牧場を大きくしたいって……しかも十頭同時にご懐妊とは……お盛んなことで……。


「ったく、お盛んなのはいいけどよ? 不能になっちまった俺への嫌みかよ?」


「おいおい、めでてぇ事なんだから邪推せずに素直に祝ってくれや。それとも何か? もう我慢できねぇってか? ……やっぱお前幼女趣味が……」


「その口から詰めもんされてローストにされたくなかったら要らないことは喋らないこった……オーケイ?」


「わ、分かった分かった! 切っ先をこっちに向けるな! 冗談だよ冗談!」


 ったく軽口ばっかり叩きやがって……予定地に住み着いてる魔獣を討伐して結界を張ってくれって事だが……。はぁ……こんな事なら連れてくるんじゃなかったなぁ……。


「おお! お前様! 空を何やらでっかいのが飛んでおるぞ? 鳥かの? ドラゴンかの?」


「あんまはしゃいでると攫われるぞ? って事だからテリオス、ノルンの護衛は任せた」


「本当に討伐もやるのか? 討伐は俺様に任せてお前は結界張りだけでも……」


「みなまで言わせんじゃねーよ、身重の嫁待たせてる奴に怪我させる訳にはいかねーだろ? 一足早い出産祝いだ、とっとけ」


「むぅ! お前様が怪我したら妾が悲しむんじゃぞ! そこもきちんと考えるんじゃぞ!!」


「お~っ、熱いねぇ! 俺様熱気に当てられて熱が出ちまいそうだぁ」


「……ノルン、ノルンにも仕事をやろう」


「何かの?」


「そこらに生えてるハーブをありったけ摘んどいてくれ、あんまりそいつの口が過ぎるようならハーブを詰めて昼飯にする」


「お前様、これから一仕事するんじゃから先に精をつけておくべきではないかの?」


「おっ……お前らそんな目で俺様を見るんじゃねぇ! だ~か~ら! 嬢ちゃんは涎をたらすなぁ!」


 さて、まあ冗談はこれくらいにして(ノルンは冗談じゃないっぽいが……)それじゃあ俺は俺の仕事をするかね。

 対象は突撃猪チャージボア、以前からここらに来る度遠目に見かけてた大物だな……。争う意味も無いから縄張りを避けていたけどまぁ仕方ない、あちらさんには災難だろうが諦めて貰おう。


 ……藪を突っ切ってくる音がするな……そろそろ縄張りの周回の時間だからこっちに……って、はぁ!? ちょっ……でっかぁ……。


「のう、のう、テリオス、チャージボアとはあれ程までにでかい物かの?」


「いんや、ありゃぁ通常の奴の数倍はあるな……体高5メートル、体長10メートルってとこか? ここら一帯の主だなこいつぁ」


「てめぇテリオス! ここまででかいなんて聞いてねーぞ! 危険手当よこせ!」


「冒険者時代にそんなもんなかったろ! 達成しなかったら報酬抜きだ! 気合入れろよぉ! あと血が染みたら土が駄目になるから流血は抑えろ!」


「畜生めえええぇぇぇぇ!!」





「のう、テリオス、お主旦那様と一緒に冒険者をしておったというのはまことかの?」


「なんでぇ、嬢ちゃん昔のあいつが知りたいのか?」


「旦那様は自分の過去についてあまり語ってくれんでの……」


「好きな人の事だからなんでも知りたいってか? いいねぇ嬢ちゃん青春だぁ。……そうさなぁ、あいつと初めて会ってからもう三年かぁ……懐かしいねぇ……。そういやあいつ初めて会ったとき迷宮ダンジョンの中だったんだがよ? 失礼なことに俺様の姿を見て腰抜かしやがってよぉ」


「旦那様が……腰を? ……信じられん、あの旦那様にそんな弱気なことがあるのかの?」


「ガハハハ! 今でこそああも生意気になったがな、あの頃は本当に酷いもんだった。魔法を扱ったことも魔獣や魔物をみたこともねぇ、流血を見て卒倒しそうになるわ獲物に止め刺して吐くわ……。まぁ、そういうのがねぇ世界から来たってんだから仕方がねぇっちゃそうだったがな」


「異世界の事かの? 異世界の事はどう話しておった?」


「まぁ懐かしんではいたがな、嫌なことがある度に帰りたい帰りたい、まぁその度乗り越えて順応していったが……。いや、俺らが順応させたんだ……させちまったんだよ、厄介なもんを背負わせるって分かっていながらな……」


「帰りたい……か……。のう、テリオス……旦那様は……。……いや、いい、聞かなかったことにしてくれ」


「……? ふむぅ……。嬢ちゃんの心配は分かるがな、だが心配する必要はねぇと思うぜ? 俺ぁここに来てよぉ、久し振りにあいつに会ってびっくりしたんだ、どこか張り詰めた余裕のない表情してたあいつがよ? 初めて会った頃みてぇに屈託無く笑ってんだ。あいつをそうさせたのは、あいつをそう戻せれたのは間違いなく嬢ちゃんの力だ……嬢ちゃんはあいつの嫁なんだろが? 自信持って、どーんと胸張ってりゃ大丈夫だよ!」


「うむぅ……うむ! そうじゃな! じゃが……」


「じゃが?」


「張るほどの胸が無いのが目下の悩みなのじゃ……のう、本当に牛乳は効果があるのかえ?」


「ぷっ……ガハハハハハ! 応ともさ! うちの嫁達を見て見ろよ! みーんなバインバインのエクスプロージョンボディだ! 嬢ちゃんもしっかり食って牛乳飲めばあっという間にバインバインよぉ!」



「お~い! 仕留めたぞ~? 川に運んで血抜きするから手伝ってくれ~!」


 やれやれ、ようやく動かなくなった……。ってかあいつらめっちゃ笑ってるけどいつの間にあんなに仲良くなったんだ?


「おぅ! 早かったなぁ、っつーか近くで見たらとんでもねぇなぁ……。感謝するぜぇダイキ!」


「まぁ食材調達にもなったしな、こんだけあれば暫く狩りの必要は無さそうだ。……ってかお前ら楽しそうに何話してたんだ?」


「あっ……えっ……あ~……そのじゃな~……そっ、そう! 牛乳が胸に本当に効果があるのか相談に乗って貰っておったのじゃ!」


「うぇっ!?」


「……ノルン、ハーブを摘んで来るんだ、少し早いが昼飯にしよう」


「ちょっ……ダイキ! 待て! 誤解だ! ちょっ……嬢ちゃんもハーブを集めるな!! 待て! 待てってば!!」

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