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水炊き

『……よい顔になったものだな』


「? どういう意味だ?」


『表情から険がとれておる、穏やかでありながら一分の隙も見当たらない……。今の貴様とやり合っても儂では勝てぬだろうな』


「お前から褒められるのはなんか気持ち悪ぃな……俺は何も変わってねぇよ、気のせいだ」


『ククク……あの青臭い若造が一端になりおって、こう見えて儂は貴様の事を評価しているのだぞ?』


「さんざお前にゃ苦しめられたからな、ダールガート防衛戦の恨みは忘れちゃいねーぞ?」


『戦争というものはそういうものだ、恨みを胎み怨嗟の螺旋を産む。過去に囚われる内はまだまだ青い……ノルンを任せるにはまだ頼りないかのぅ? ククク……』


「……俺だって分かってるさ、過去を憎んでも何も変わらない。俺だって数え切れない程の命を奪ってきた……。そういうのが戦争だ。だが、その記憶を、悔しさを、恨みを、忘れられる物じゃないんじゃないのか? 忘れているように見せても燻り続けるものじゃないのか?」


『前言を撤回せねばならぬかな? 貴様は確かに強くなった、だが同時にどうしようも無いほどに弱くもなった。……その問いかけ、問う先は儂ではなく自分自身に対してであろう? ……信じてやるがよい、あの幸せそうな笑顔が全てだ』


「……」


「お前様! どうした黙りこくって? 口を動かしながらでも手は動くじゃろ? 森人脚エルブンフットを摺り下ろしてくれぬか?」


「お、おぅ……」


『ククク……』


「……何がおかしいよ?」


『いや、もう尻に敷かれておるのかとな、存外似合いの夫婦だな、貴様らは』


「……ふん、ぬかしてろよ」


 夫婦……ねぇ……魔王に呪いをかけられて成り行き任せにこんなとこまで来て……。俺の望み……ノルンの望み……。責任? 贖罪? 同情? 義務感? ……。


「お前様! 伯父上! 出来たぞ♪ 妾特製鳥の水炊きじゃ!」


「お、おぅ! お~、美味そうだな。ノルン、頑張ったな」


「うむ! 妾はもう子供ではないからの! ささ、熱い内に食べようぞ♪」


 ……ただ一つ言えるのは……俺は今の生活を気に入っている、って事か……。まぁ先のことなんか考えても仕方ない、今は冷めないうちに鍋を食う!


「うん、美味いっ! 鳥の出汁がよく出てるな!」


「お前様に教わった通り手羽元をじっくり煮込んだからの♪ささ、伯父上も冷めぬ内に召し上がられよ」


『うむ、頂こう……。おぉ……これは美味い、骨からほろりとほぐれる柔らかい鳥肉、出汁をたっぷり吸った野菜、なんとも滋味深い……魂が洗われるようだ……』


 ……気になってたが死霊リッチって幽体でそれでいて骨なのにどうやって飯食ってんだろ? 食った物が床に落ちてないとこを見るとどっかに吸収してんのかな? ってかなんだか光ってない? え? 死霊って食事の時光んの?? うおっ! 眩しっ!?


「お、伯父上? どうしたのじゃ? そんなに光って! 何をどうしたらそんなことに!?」


『おごごごご……ひ……か、り……じ、じょう……かの……ひかりが私、を、満たす……』


 光……? 浄化……? ……!! あ~~っ!! 浄化付与水!? やばっ!!


「伯父上! 伯父上!? 体が消えていっておるぞ!? 待つのじゃ伯父上! まだ鍋の締めが残っておるんじゃぞ!」


『食ったさ……腹ぁ……一杯だ……』


 違う! ノルン、締めはどうでもいい! おじさん消えちゃう!! ってかてめーはてめーで名言っぽいの呟いて余裕だな! つーか、あ……光の粒子が宙に溶けて……あ~あ……。


「伯父上……消えてしもうた……」


「……すまん、アンデッドに浄化はマズいって失念していた……」


「不味くはないぞ! 鍋は美味しく出来ていたはずじゃ!」


「いや、そっちの不味いじゃなくてだな……」


「鍋は締めまで食べてこその鍋じゃろうに! 妾の手料理を前にして召されるとは! 失敬千万じゃ!」


 えぇ……? 今正におじさん消滅したんだけど……怒るポイントそこなの?


「むうぅ! それに腹いっぱいじゃなかろうに! 食事の後の挨拶は『ごちそうさま』じゃ! そんなこともわからんかあああぁぁぁぁ!」


 ノルンが床に落ちた空っぽの服を振り回しながら荒れ狂う。だが返事がない、ただの抜け殻のようだ?


「ノルン! の~る~ん! 先ずは落ち着け! な? 二人で締めにしよう? 何がいい? 麺か? 雑炊か? 炊き込みご飯か? とりあえず落ち着けってば!」


「ぬうぅ! 炊き込みご飯! 伯父上も返事をせんかあぁ! 炊き込みご飯でいいのだのぉ!?」


「だ~か~ら~! もう消滅しちゃってるってば!」


「……!!」


「……!?」


「……」




……





 う……朝か……? それにしても昨日は酷い目に遭った……あれから怒りの収まらないノルンを宥めて宥めて締めを食って風呂に入れてやって……。尚も機嫌の治らないノルンに一晩中腕枕……あ~、左腕の感覚が全く無い……。これ痺れが残ったりしねーよな? なんだっけ? ハネムーン症候群っつーんだっけ?


「ん……ふぇ? あ、お前様おはようなのじゃ」


「おう、おはよう。機嫌は治ったか……!? っっ……すまんノルン、腕にしがみつくのやめて、今めっちゃ痺れてるから……」


「あぁ……腕枕のせいかの? すまぬすまぬ、じゃが……こういう反応も新鮮でよいのぅ……ホホホ」


「ちょっ、待て! ノルン! 今触られたらっ! やめっ!」


「ほれほれ、ここかの? それともここかの? ホホホ、面白いのぅ」


 何かツボにはまったのかノルンが嬉しそうに痺れた腕をつついてくる。あかん、あかんて、ちょっ……ビリッとくるビリッと……!


 ……カタン


 と、突然した物音にノルンと二人身をすくめる、今この家には俺達二人だけ、外から何か侵入してきた? いや、あの結界を越えられるはずは……だが何かの気配がしているのは間違いない。

 ノルンと顔を見合わせ、いっせーのーせ! で寝室からリビングへの扉を開く。


「はぁ!? 伯父上??」


「んなっ!? てめー消滅したはずじゃ!」


『うむ、朝食を先に頂いているぞ。やはり朝はしっかり食べねばな、お前らもお盛んなのは良いことだが食事はしっかり摂れよ?』


「ぶふっ!? お、伯父上!? 聞き耳を立てておったのか??」


「っつーかさっきのはそういうのじゃなくてだな……ってあ~っ!? 俺の晩酌用の笹身ジャーキー!」


『おお、これは手作りか、中々イケるな』


「お前様に妾に隠れてこっそりそんな物を……あっ! 妾のマグカップ!!」


『むぅ? ノルンちゃんのじゃったか、少し借りておるぞ?』


「ってかてめー昨日消滅したはずだろ! 何でまだ生きてんだ!」


『生きてるも何も最初から死者だが? 不死王と呼ばれる儂があの程度で完全に消えるはずがあるまい? それはそうと魔界の方は今相当な混乱期と見える、ほとぼりが冷めるまで暫くここに間借りさせて貰うぞ? なに、邪魔はせんから存分に励んでくれて……』


 勝手気ままに喋りたくるネクロス、それを聞いていたノルンの双肩から闇を煮詰めたような魔力が湧き上がる……。


「……お前様、あの喋るぼろ布、相当汚れが酷いと見える。……洗濯する必要があるのではないかの?」


「……奇遇だなぁ、俺も今日はしっかり洗濯したい気分なんだ……」


『……? なんだ? お前達、おい、引き摺るな、一体庭で何を……ぬっ……ぬぐああぁぁぁぁあ!? ひっ……光の奔流がっ! 浄化の言霊がっ!? わ、儂の中を浸食……っこっ……これは結構洒落にならん……ぬほおぉあぉ!?』


「ノルン、そこの隅まだ汚れてるぞ?」


『ぬがだりゃああぁぁあぁあっ!?』


「お前様、この金だわしでこすった方がよく落ちるぞ?」


『おっふ……ぬごっふっ!?』


「「は~い、浄化水追加はいりま~す」」


『あああぁぁぁぁぁぁぁあ……』


 よし、ボロボロで汚かった布がある程度綺麗になった! あとは干すだけ!


「あ~つまづいてしまってかぜにとばされてしもうた~」


「あら~のるんたらうっかりやさんだなあ」


「……これで戻ってはこぬじゃろう、それにしても今日は風が強い。どこに飛んでいったかのぅ……」


「さぁ? そりゃ風に聞いてくれ……」


 今日もポカポカいい陽気だ……なんかスッキリしたし、のんびり昼寝でもして過ごすかな。

水炊き


 時期はずれですが書いちゃったので一応(´-ω-`)


鳥手羽元:人数×3~4本

野菜:大根白菜ネギ等お好みで

豆腐:食べたいだけ


1.鳥手羽元を洗い、鍋に入れてヒタヒタになるくらい水を入れる。大根やネギも切って入れておくと鳥の出汁が移って美味しくなります。


2.蓋をして弱火で一時間~二時間煮る、途中様子を見て水が少なくなっていたら足して煮ていきます。


3.白菜、豆腐等を加えて加熱し、白菜に火が通ったらポン酢で頂きましょう(*´ω`*)


 昆布等を入れなくても手羽元の骨からしっかり出汁が出るので美味しく頂けます、手羽先でもいいですが少し脂っこくなるので注意が必要です。

 しっかり弱火で煮ることでホロホロになった鳥と出汁をしっかり吸った野菜の旨さは抜群ですm(・ω・m)


 締めというと麺や雑炊ですが我が家では翌日の朝食に炊き込みご飯にする事が多いです、余った手羽元をほぐして顆粒の鶏ガラスープと醤油を加えて洗った米を入れて炊き上げます。しっかりと出汁が出ていて美味しい炊き込みご飯ができますのでお試しあれ(っ´ω`c)

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