お洗濯日和
「うぬ、今日もいい洗濯日和だのう。こうもポカポカしておるとまた眠く……? なんじゃ? これは……?」
あ~あ、今日もいい陽気だ、日課の畑いじりも終わったしたまにはこうしてのんびり……。
「お前様、これを見て欲しいんじゃが……」
「ん~、どした? また洗濯物引っくり返したか? ……? なにこのぼろ布」
ノルンが引きずってきたのは泥だらけの薄汚れたカーテン程のサイズのぼろ布、大型犬が庭で遊ぶのに使ってるのか? って位にボロボロの用途の分からない布切れだった。
「妾もそう何度もひっくり返したりはせぬ! その布は庭に落ちておったんじゃよ、見覚えの無い物じゃからお前様の私物じゃったらと思ってな」
「う~ん……俺も見覚え無いなぁ……袖があるから服か? ってかこんな真っ黒な服俺もお前も持ってないよなぁ」
「洗ってみれば違う色になるかの? 妾の洗濯テクを使えばあっちゅう間じゃぞ♪」
「それも俺の浄水魔方陣の恩恵なんだがな」
「水源に浄化の魔方陣を置いて水に浄化の付与を付ける、のう……。よくもまあそんな事思い付くもんじゃ」
「ふふん、もっと褒めて崇め奉ってくれていいぞ? ……んん? この布切れ、なんか紋章みたいなのが入って……これは……魔王軍第三部隊!?」
魔王軍第三部隊は死霊で構成された部隊で常に最前線で剣を合わせていたからよく知っている、倒せど倒せど立ち上がるゾンビやグールの群れには手を焼かされた。そしてこの紋章はそれを率いた……。
『ぐおおおぉぉぉ……我が眠りを妨げるのは誰だ……!』
突然ぼろ布の中から地を這うような呻き声が鳴り響き、宙に浮いたその外套のフード部分に半透明のしゃれこうべが、はためく袖からは杖を持った手が伸び、彷徨うようにしゃれこうべの中を動き回っていた赤い眼光がこちらの姿を捉え炎のように燃え上がる。
「ノルン! 俺の後ろに居ろ! こいつはまた厄介な奴が……!」
『ぬうぅ……騒がしいからと目を覚ましてみれば貴様はダイキか? くくく、久しいな……国境線でやり合って以来か?』
「おう、手前ぇは相変わらず顔色悪ぃな! 不死王ネクロス! 何だ? 今更俺の首を取りに来たか? それとも……」
俺への個人的な復讐なら構わない。だが、もしもこいつの狙いがノルンなら……魔界の政争にノルンが利用されるような事があるならば……こいつを斬っ……!
「伯父上? 如何なされたのじゃ? こんな辺境で」
『おぉ? ノルンちゃん……? え? どしたん? なんでこんなとこにおるん?』
「まてまて! ノルン、おじさんから離れて……ん? おじさん?? ちょっと待って! 今おじさんって言った?」
『ダイキ! 貴様ノルンちゃんを連れてなにをしておる! さては人質? 人質か? ぬうぅ卑怯な! 汚いな! 流石人族汚い!』
「えぇ~い! 二人とも静まれぃ! お前様も伯父上も剣と杖を納めよ! まずは対話からじゃ! わかったな?」
「いや……でも……」
『だがな、ノルンちゃん、此奴と儂は……』
「うるさい!! 席に着くのじゃ!!」
「『はいっ!』」
……なんとも奇妙な画だ……。戦場で幾度も幾度も命のやり取りをした宿敵と今こうして机を挟んで対峙している。ってかおじさん? あ、そりゃ魔王の娘だしな、身内が魔王軍の要職に就いていてもおかしくはない。でもなぁ……こいつはどうも苦手なんだよなぁ。
「さて、二人とも落ち着いたかの? まずはお前様、なぜにそこまで殺気立つ、普段から妾に『争いはよくない』と言って聞かせてくれとるだろうに?」
「う……。確かにそうだが……こいつが魔王軍残党からの追っ手である可能性もあるわけだしな?」
「むぅ……それはそうじゃが……して伯父上、伯父上は追っ手なのかの?」
いやストレート、いやいやいや、そんなストレートに聞いて答える追っ手はいないでしょ? いくらなんでもそりゃ無いよノルンさん。
『追っ手? 残党? 何の事だ? 儂は鍛錬の為にこの荒野を訪れて、陽気に誘われ昼寝をしておったのだが……なぜか気が付いたら目の前にダイキが居たのだ。まず状況が摑めぬ、兄上はどうした? それにノルンちゃんはなぜダイキと共におるのだ? それに『お前様』などと親しげに……どういう事なのだ?』
「? 魔王崩御にあわせた混乱の中で何かしようって来た訳じゃないのか?」
『崩御!? 兄上が? いつ? なぜ? 一体どうなって??』
「父上は討たれた、他ならぬこの旦那様の手によってな。そして妾は父上の遺言に従い愛しい旦那様の元で花嫁修業中じゃ♡」
『あ~、なるほど~。……まぁ兄上のことだ、戦いに満足し死ぬことが出来たのだろう。だがこいつの元に嫁入りとはまた思い切ったものだなぁ』
……納得しちゃうのか……まぁ魔族には魔族の独特の死生観があるのは理解するが、仇を前にしてこのリアクションは無いと思う。力こそ正義ってのは分かり易いが行き過ぎたら狂人の類いにも見えかねない……。まぁその感覚自体が人特有の物か。
「まぁ、あれだ、魔王と約束しちまったからな。自分を殺した相手に娘を預けるってんだ、何か考えあっての事だろうさ」
『いや、恐らく兄上は何も考えてはいない……元々ノリとテンションで生きていた方だからな。恐らくその場の思い付きだろう』
「じゃがその思い付きのお陰で妾は今幸せじゃぞ♡」
え? なにそれ……それってーとなに? 俺その場のノリと思い付きで役勃たずにされたわけ? ……いくらなんでも酷すぎるんじゃない……?
『ふむ……まぁノルンちゃんが幸せなのなら儂は構わん、よき伴侶に巡り会えたな。幸せになるのだぞ』
「伯父上、心配せずとも妾は毎日幸せじゃ! これからもっともっと幸せになるぞ! そうじゃ! 伯父上今日は食事をとっていくがよい! 妾が腕によりをかけよう!」
「あ、ノルン、俺も手伝……」
「お前様は伯父上と交友を深めておれ! なに、簡単なめにゅーじゃ、泥船にのったつもりで任せておけい!」
……泥船じゃ沈んじまうがな……まぁ取り出した材料見る限り作るのは『あれ』だな、あれならノルンにも作れるか……。……さて、となると問題はこっちか……。
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