パウンドケーキ
「ふい~、ようやく家か……疲れたのう」
「疲れたって、行きも帰りも文字通りおんぶに抱っこだったろうが。オマケに帰りは荷物満載だぞ? ちったぁ労えよ」
「ふふふ……わかっておるよ、お前様はよく頑張ってくれておる。よしよし、いいこいいこじゃ♡」
「んなっ!? お、お前なぁ、いい歳した大人の頭を撫でるとか……!」
「なんじゃ? 嫌かえ? たまには良いではないか、妾にもお前様を褒めさせてくれてもバチは当たるまい?」
バチは当たらない、当たらないが……なんかどうも勝手が違う……。なんか、こう、なんて言うんだろ、悪い気は全くしないんだが、自分が駄目になっちまいそう感が凄い。
「そういえばお前様、あの牛頭人……テリオスと言ったかの? どういう風に知り合ったのじゃ?」
「あぁ、そういや話してなかったな。元々あいつは冒険者してた頃の仲間で、ハーレム牧場を作る夢を追うって抜けていったんだが……。ここに来て少しした位の頃にバッタリ再会してな」
「このような危険地帯で? それはまた何故に……」
「何でも悪徳牧場主に虐げられていた牛達を開放して逃げて来たんだとよ。まぁ悪徳っても真っ当な商売してる相手を襲ったんだから当然お尋ね者、静かに暮らせる土地を探してよりにもよってここに辿り着いたんだとさ」
「そこをお前様が助けて牧場の魔獣除けの結界を張ってやった……といったことかの? お前様は偉いのう、こんなところでも人助けとは……いいこいいこじゃ♪」
ぬぐぐ……尻尾でがっちりホールドされてのなでなで続行……あかん、これ駄目になる。気合を入れて動くんだ、俺!
「ノルン、嬉しいがそろそろ開放してくれ、あまり撫ですぎたら禿げちまう」
「? 禿げても問題ないぞ? 妾はどんな姿になったとしてもお前様を愛しておるぞ♪」
「うぐっ……! 俺は禿げるのは嫌なの! さ、バターたっぷり貰ったからおやつ作ってやるよ、だから開放しなさい!」
「むぅ……もう少し位いちゃいちゃしたかったのじゃがのぅ……。!! ……お前様耳が赤いぞ? 照れておるのかの?」
あ゛~っ! もう! あ゛~っ! もう! もう!
「ほほほ……そう悶えずとも……愛いのう♡……さてさて、今日は何を作るのかの?」
「カトルカール、まぁ俗に言うパウンドケーキだな」
「パウンド、ケーキ……ケーキは分かるがパウンドとはなんじゃ?」
「あっちの世界での重さの単位だな、使用する材料を全て同じ分量使うからそういう名前になったらしい」
「もういっこのカトルカールというのは?」
「向こうの言葉で4分の4って意味らしい、これも四つの材料を同じ量だけ使うからって意味だな」
「それは分かり易くてよいのぉ、全部同じなら間違えようもない♪」
「さて、それじゃ材料だ。小麦粉、バター、卵、砂糖を同量ずつ」
「材料はホットケーキとほぼ変わらないんじゃの、バターを中に入れるか外に塗るか、といった違いかの?」
「ケーキと聞くと複雑な気はするが大体焼き菓子の材料はこの四つだ。その配分を変えたり作り方を変える事で食感や味の調整をするんだよ」
「ふ~む……奥が深い物だのう……」
さて、分量を量ったら小麦粉は振るっておいて、卵は卵白と卵黄に分けておく。バターをクリーム状に練って砂糖を入れてすり混ぜ、卵黄を入れて更に混ぜる……と。
「お前様、卵の白身は使わぬのか?」
「ここでちょっと一工夫でな、そのまま卵白を入れても良いんだが食感を良くする為にメレンゲにする」
「メレンゲ?」
「卵白を泡立てた物だ、理由は分かるな?」
「ホットケーキと同じだの! ふわふわになるのじゃな?」
「あそこまでふわふわにはならないがな、多少食感が良くなる、まぁメレンゲ使わない固めのズッシリしたやつもそれはそれで美味いから俺は好きだな、んじゃ泡立ててみるか?」
「うむ、やってみるのじゃ!」
ボウルに入った卵白と泡立て器を渡すと早速ノルンが卵白と格闘を始める。最初は嬉しそうにかき混ぜていたが徐々にその勢いが弱くなり、首を傾げてボウルを覗き込みこちらに持ってくる。
「お前様、これでいいのかの? もう腕がパンパンなのじゃが……」
見てみるボウルの中身はサラサラに液状化した卵白の上に膜を張る程度の泡が……。うん、知ってた。子供の力で泡立てようとしてもなかなか難しいんだよなぁ。
「これじゃあまだまだだな、あれだよ、風呂で石鹸の泡で遊んでるだろ? あれ位の泡にするんだ」
「むぐっ? あそこまでじゃと?? 無茶を言うでない! もう腕を動かす事は出来んぞ!」
「んじゃ簡単なやり方教えてやろう、ボウルの上に結界を張る」
「ぬぬ? こうか?」
「そしたらボウルの中に旋風の魔法を発生させ……」
『加減しろよ』との一言を付け加える前に発生した旋風がボウルを粉々に吹き飛ばし、床を貫き床下の地面に鋭い穴を穿つ……。うん、知ってた。こうなるの知ってた。ズボンが卵塗れですどうもありがとうございます。
「……お前様……これで……成功かの?」
うん、これが成功だったらこの世の全ては成功で満ちあふれているな。世界の未来は明るい……。
「さぁ! 気を取り直して掃除したらもう一回いってみようか!」
「う、うむ! そうじゃの! 何が起きたかは分からぬが不幸な事故じゃった! 気を取り直して頑張ろうぞ!」
不幸な事故で済ませるには燦々たる有様だがあえて言うまい、お子ちゃまが失敗するなんて想定の範囲内! ただ被害規模が予想外だっただけだ! うん! うん……。
「まぁ床は後で直すとしてもう一回だ、今度はちゃんと加減しろよ?」
「さ、さて……何の事やら……。結界の中に旋風じゃの、こうしてこうして……よし! どうじゃ?」
「おぉ、いい泡立て具合だな、二度目にしては感心感心」
「どうじゃ、初めてやった割に上手くいったであろう」
……思いっきり無かったことにしようとしているのが気になるが、まあ聞かなかった事にしてやるか……。ただ誤魔化す悪い子は床の修理をきっちり手伝わせなければな……!
「それじゃあメレンゲを生地に半量混ぜ込んで、混ざりきったら残りを加えて泡を潰さないようヘラで切るように混ぜる。後は小麦粉を加えて混ぜたら生地のできあがり」
「案外簡単だったのぅ♪」
「……これを熱したオーブンに入れて半時待てば完成だ。さて、焼けるまでの間にやることは……わかるな?」
「わかっておる、お前様に可愛く甘えればよいのであろう?」
無理矢理に作った笑顔で可愛くポーズを決めるノルン、床の穴を尻尾で隠しても無駄です、早く床の修理を行いましょうそうしましょう。
……
「う~、面倒くさかったのじゃ……」
「今回はあくまで応急処置だからな、また材料揃えて仕上げをやるぞ」
「むうぅ……なんでこんな事に……!」
「さあなんででしょうかね? よっし、修繕頑張ったからおやつにするか」
「おぉ! 作業中ずっと甘い香りがしておったからな! 我慢できん、はよ! はよ!」
ノルンが待ちきれない様子で席に着き机をバンバンと叩く。なんかこんなアスキーアートあったな……リアルにやる奴を見られるとは貴重な経験な気がするわ。
「行儀が悪いから机を叩かない! 飲み物は牛乳でいいかな?」
「うむ! 牛乳を飲めば胸が大きくなると聞いたからの! これさえ飲めばお前様好みのないすばでぃにあっという間じゃ!」
「……? つかぬことを聞くがその情報はどこから?」
「?? テリオスじゃぞ? 流石牧場主は牛乳の効能にも詳しいのだのぅ。さてさて美味そうじゃの、いただきま~す♪」
……あんの牛野郎……ノルンに何吹き込んでやがんだ……! 今からこっそり牧場の結界解除してきてやろうかな……。
「おぉ! モフっとしていてよい食感じゃの! 確かにホットケーキと材料が変わらぬのに食感が全く違う、不思議なもんじゃのう。材料をくれたテリオスに感謝じゃな!」
……まぁ、バターとか手に入らなくなったら困るからな、今は勘弁しておいてやるか。
あ、そういえば牛頭人印の強壮剤、呪いに効かないかと試してみたけどピクリとも反応しないどころかムラッともしなかったよ。いや~、魔王の呪いって凄まじいねコレ……ハハハ……チクショウメ……。
パウンドケーキ
お菓子の基本、パウンドケーキです(*´ω`*)
作中でも紹介したとおり分量が単純で非常に分かり易いのですが配分を微調整する事で変化を楽しめる非常に奥深いスイーツです。今日は我が家のレシピをご紹介m(・ω・m)
小麦粉:90g
ベーキングパウダー:5g
砂糖:100g
バター:120g
卵:2個
1.粉類をまとめて振るっておく。
2.バターを室温に戻しマヨネーズ状になるまで練る。白っぽくなってきたら砂糖を2~3回に分けて入れてすり混ぜる。
3.メレンゲを入れたい場合はここで卵白と卵黄を分けて卵黄のみ入れて混ぜ、卵白は別のボウルで角が立つくらいに泡立てておく。(全卵の場合は卵を溶いて加えふんわりするまで泡立てる)粉類を入れる前に泡立てたメレンゲを1/3程度生地に混ぜ込んでおく。
4.振るっておいた粉類を2~3回に分けて入れ、粉っぽさが無くなる程度に切るように混ぜる。メレンゲの残りを投入し泡を潰さないようにさっくりと切るように混ぜ込む。
5.型に分量外のバターを塗り、小麦粉を少量振る(焼いた際の生地のくっつきを防ぐ、ですが綺麗に剥がそうと思うとクッキングシートで型に内張りをした方が綺麗に出来ます。)生地を流し込み4.5回10cm程の高さから落とし隙間の気泡を追い出す。
6.180℃に予熱したオーブンで40分程焼く、15分位焼いた所で生地の表面に縦に切れ込みを入れると焼き上がりの膨らみが綺麗になります。
7.焼き上がったらオーブンから出してケーキクーラー等の上で冷まします(*´ω`*)
パウンドケーキの配分で卵を増やすとふんわり、バターを増やすとしっとりとします、あまり大きく配分を変えると失敗の元になりますので徐々に調整して自分の味を見つけていきましょう(っ´ω`c)




